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30年目のハンブルガー・バーンホフ現代美術館

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2026年の最初の号に、今年創設30周年を迎えるハンブルガー・バーンホフ現代美術館を取り上げてみようと思った。

第2アドヴェントの午後、雑踏のベルリン中央駅で降りて、ハンブルク駅(Hamburger Bahnhof)へ歩く。駅から駅に歩いたというのも妙だが、その名の通り、ここは1846年から1884年までハンブルク行きの汽車が発着していた旧駅舎を利用した美術館だ。中に入ると、トレイン・シェッド(ホームと線路を覆う屋根)が奥へと広がり、わくわくした気持ちになる。通常は一度で全部回るような無謀なことはしないのだが、六つに区分けされた館内図を見ながら、全体のスケールを感じてみたくなった。

クララ・ホスネドロヴァの個展が開催中のハンブルガー・バーンホフ現代美術館クララ・ホスネドロヴァの個展が開催中のハンブルガー・バーンホフ現代美術館

中心に位置する歴史的ホール(H1)では、チェコの作家、クララ・ホスネドロヴァの壮大なインスタレーションが展示されていた。天井から垂れ下がるタペストリーは麻と亜麻の繊維から作られ、巨大な獣のような生き物を想像させる。チェコの伝統的な手工芸の素材を用いて、20世紀のこの地域の文化的記憶を浮かび上がらせた試みだ。

左手奥の連絡口を通って、「リークハレン」という奥に長く続くホール(H6)へ行く。ベルリンのSバーンの駅を模したインスタレーションがクール。このホールは二つに分かれ、手前ではコソボ出身の作家、ペトリット・ハリライによる集合的な夢を主題にした新作オペラの幻想的な世界を堪能した。二つの部分の間には、誰もが無料で参加できるアトリエがあり、絵の具で創作する人たちでにぎわっていた。

それにしても、かつての貨物駅を利用したリークハレンは、あきれるほど広大だ(長さ約300メートル)。2020年、不動産会社が賃貸契約を延長せず、住宅建設の危機を迎えたが、最終的にベルリン市がこのホールを買い取り、文化財に登録して救ったという。本当によかった。ここがあるとないとでは、美術館の(文字通りの)奥行きが断然変わってくるからだ。

駅の面影を残した美術館の外観駅の面影を残した美術館の外観

クライフースホール(H2)では、この美術館の重要コレクションであるヨーゼフ・ボイスの作品がぜいたくな空間に並ぶ。さらにコロンビア出身の作家、デルシー・モレロスの土や粘土、わらなどをふんだんに使った「Madre」も展示。ボイスの理念「社会彫刻」の系譜につながる作品だ。

東翼(H3)では、ベルリン出身のアーティスト、アニカ・カールスの「OFF SCORE」というサウンド・インスタレーション。ヘッドフォンを装着して、イタリアの村、フランスの教会、ベルリンの路上などの映像を街の音とともに楽しんだ。

西翼(H5)の美術館所蔵のコレクションを見て、最後はカビネッテ(H4)の絵画展。タイトルが示すように、ナイジェリア=アメリカ人作家の「U22 –Adijatu Straße」という架空の地下鉄ラインが主題になっている。ハンブルク駅が実際の駅として機能したのは40年弱に過ぎないが、さまざまな世界や人を結びつける駅としての記憶とアウラは、今もアーティストたちを刺激しているようだ。

インフォメーション

ハンブルガー・バーンホフ現代美術館 Hamburger Bahnhof – Nationalgalerie der Gegenwart

ティーアガルテン地区の美術館。ベルリン・ナショナルギャリーに属する現代美術館として運営されている。その歴史は、西ベルリン市が旧ハンブルク駅の駅舎に現代美術館を設置することを決定した1987年に遡る。将来的に膨大なコレクションの一部は、建設中の20世紀美術館に展示される予定だ。チケットは16ユーロ(割引8ユーロ)。

オープン:火水金10:00〜18:00、木10:00〜20:00、土日11:00〜18:00
住所:Invalidenstr. 50, 10557 Berlin
電話番号:030-266424242
URL:smb.museum/hbf

2026年のハンブルガー・バーンホフ

美術館の開館30周年となる2026年には、さまざまな特別企画が予定されている。まず大きな注目は、坂本龍一の欧州で初の大規模な回顧展が開催されることだろう(9月11日〜2027年5月23日)。坂本の多彩で革新的な取り組みに光が当てられ、国際的なアーティストとの共同作業による3Dのサウンド・インスタレーションも。11月13〜15日の週末には、30時間連続オープンの記念イベントが予定されている。

 
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中村さん中村真人(なかむらまさと) 神奈川県横須賀市出身。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。現在はフリーのライター。著書に『ベルリンガイドブック』(地球の歩き方)など。
ブログ「ベルリン中央駅」 http://berlinhbf.com
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