ジャパンダイジェスト

ドイツの病院・医療システムを知ろう!

日本とドイツでは、病院システムや健康保険の仕組みが異なるため、来独当初は戸惑うことが多いものです。当地で病院にかかる際に知っておきたい基本的な情報から、内科・歯科・小児科・産婦人科・眼科・心理カウンセリングの各専門医や臨床心理士に聞いた、ドイツで健康に暮らすためのヒントをご紹介します。 (Interview & Text:編集部)

1. 健康保険

日本では国民健康保険と被雇用者が加入する健康保険(社会保険)の2種類があり、どちらも同等の治療を受けることが可能です。一部を除き、一般的な医療行為には保険が適用され、基本的に3割負担(年齢によって2割、1割負担の場合があります)という恵まれた医療環境が整っています。ドイツでは公的健康保険(ドイツ語では「疾病保険」の意)とプライベート保険の2種類に分かれており、ドイツで暮らす国民はいずれかに加入する義務があります。また、公的・プライベートによって適用範囲が異なるのが、日本の保険システムとの違いです。各保険の特徴は、下記になります。

公的健康保険
gesetzliche Krankenversicherung

  • 国民の約9割が加入する義務保険(法定疾病保険)
  • 公的保険組合と医療機関公的保険の団体によって毎年予算が決定するため、公的健康保険加入者の間では保険適用の差はなし
  • 保険でカバーされる検査や治療、薬の種類などに一定の制限あり
  • 保険適用の医療行為は無料、公的保険適用外の追加の検査などは自費で支払う
  • 公的保険で認められた薬は一定の少額を薬局で支払う以外は基本的に無料。原則ジェネリック薬が処方される

プライベート保険
Private Krankenversicherung

  • 国民の約1割が加入 (基準以上の収入があると公的保険を解除できる)
  • 一度加入すると公的保険に戻ることが難しいため、将来の収入も考えて加入前によく検討を
  • 保険会社によっては、健康な駐在員用の特別な団体加入のパッケージがある場合も
  • 保険会社と加入者の契約になるため、プライベート保険加入者の間でも適用範囲や支払い金額などに個人差があることも
  • 慢性的な疾患や病気がある場合は、必ず事前に保険会社に申告しておくことが必須。申告漏れがあると、後々トラブルになる可能性が……
  • 治療を受けた後、医療機関(または請求代行会社)から自宅(または会社)に請求書が届くので、請求先に支払いを済ませたら保険会社に振り込みの証明を送り、後日、契約内容に則って保険適用分の金額を振り込みしてもらう

保険会社と加入者の契約内容によって個人差が発生するプライベート保険では、さまざまな注意点があります。プライベート保険への移行を検討する際には、公的保険へ戻ることが難しいという点を考慮してください。例えば、ドイツに住んでいる間に定期的な高収入が見込めない場合は、結局は公的健康保険のほうが安い可能性もあります。ただ、駐在期間が決まっており、ドイツ人の給与の平均よりも収入がある場合は、プライベート保険のほうが有利といえるでしょう。

公的健康保険では診療行為に対しての保険適用あり・なしが明確に決まっているので問題ありませんが、プライベート保険の場合は契約プランによって適用の範囲に違いが出てくることもあります。それに伴い、日本で継続的に治療を受けていて、引き続きドイツでも治療が必要な可能性がある場合は、必ず事前に保険会社へ申告しておきしましょう。申請漏れがあった場合はその分を自費で支払うか、以後、割安な団体プランを変更してさらに高額な保険料を支払わなくてはいけないケースが発生しますのでご注意ください。例えば、糖尿病や高血圧など慢性的な疾患がありながら、出張で定期的に日本に帰国するため日本で診察したり薬をもらう想定で、ドイツでの治療の可能性を考慮せずに疾患についての申告を怠ると、万が一の時にリスクを負うことになります。

また、プライベート保険に加入している邦人は支払いの良い患者とみなされることもあるようで、医師に言われるがままによく理解していない検査を受けると後ほど高額な治療費を請求される場合も。医師にどのような内容なのかをメモに書いてもらい、一度保険会社に適用の有無を確認してから改めて受診するのも一案です。

2. 緊急時の対応

夜間や休日の緊急外来にかかる場合は、直接病院や大学病院に行くことも可能です。また、各地域で緊急・夜間外来を探す際は、インターネットで「Notfallpraxis+地名」と検索すると24時間開いている救急診療所が出てきますので、万が一の際に駆け込める病院をチェックしておきましょう。

ドイツで救急車を呼ぶ際の番号は「112」になります(呼んだ内容や加入している保険によって、有料または保険でカバーされるかが決まります)。3種類の救急車があり、

①日本の救急車と同様のレットゥングスヴァーゲン(Rettungswagen)
②医者が同乗しているノートアルツトヴァーゲン(Notarztwagen)
③患者の搬送のみを目的とするクランケンバーゲン(Krankenwagen)

があるので、状況によってどの救急車を手配してほしいのか伝えましょう。また、万が一のことがあった際にパニックにならないよう右記の項目を紙に書いて家に貼っておいたり、携帯電話にメモしておくと便利です。必ず健康保険証やパスポートの持参をお忘れなく。


番号は112

救急車を呼ぶ際に
伝えるべきことの一例

名前 Name Mein Name ist Taro Tanaka. / Ich heiße Taro Tanaka.
(私の名前は田中太郎です)

住所 Adresse Meine Adresse ist die Immermannstraße XX in Düsseldorf.
(住所はデュッセルドルフのイマーマン通りXX番地です)

症状 Symptom Ich habe starke Bauchschmerzen.
(お腹がとても痛いです)
Ich habe Rückenschmerzen und kann nicht gehen.
(腰痛で歩けません)
※Hexenschuss(ぎっくり腰)
Ich kann nicht atmen.
(呼吸が苦しいです)
Mir ist schwindelig und ich glaube, ich breche zusammen.
(めまいがして倒れそうです)
Ich habe mein Bein / meinen Arm gebrochen.
(足 / 腕を骨折しました)
Ich habe Brustschmerzen.
(胸の痛みがあります)
Er / Sie hat sich den Kopf angeschlagen und ist bewusstlos.
(彼 / 彼女は頭を打ち、意識が朦もうろう朧とします)
Diese Frau ist Bewusstlos.
(この女性は意識がありません)
Dieser Mann hat aufgehört zu atmen und sein Herz schlägt nicht.
(この男性は心肺が停止しています)

3. 病院の種類

日本では開業医院、大学病院など種類を問わず、自分である程度選択することが可能ですが、ドイツではそれぞれの医療機関が担う役割が明確に決まっています。外来患者は原則的にまずはプラクシスと呼ばれる開業医院で受診し、入院が必要な場合は日本の一般的な病院に当たるクランケンハウスへ、より高度で専門的な診察が必要な場合は、大学病院であるウニクリニックに受診するというシステムになっています。クランケンハウスは日本のような外来機能を持たない病棟施設と考えると分かりやすいでしょう。また、ドイツでは日本のように早朝から並べば早く診察してもらえるわけではなく予約者が優先となりますので、予約でいっぱいの日は後回しになったり、後日改めての受診となる可能性も大いに想定されます。そのため、身体の異変を感じたら我慢をせずに早めにプラクシスの予約を取ることをおすすめします。

ドイツの公的保険にはハウスアルツト(Hausarzt)と呼ばれる家庭医の制度があります。ドイツに来たばかりの方はハウスアルツトを見つけておくと、日常的な診察がスムーズに行えます。開業医に自分の家庭医になってもらう場合は、その希望を医師に伝えてください。また、仮にすでに多くの患者を抱えている医院の場合には、断られることも稀にあります。

日本人の医師や通訳がいない地域や、ドイツに知り合いがいない場合は、jameda.de、docinsider.de、imedo.deなどのオンライン医師評価プラットフォームから探してみるのも一つの手です。

ドイツの医療機関の種類

開業医院
Praxis(プラクシス)

外来診療はすべて開業医院(プラクシス)が担っています。風邪や頭痛、腹痛など一般的な症状などの通常の外来診療はかかりつけ医である一般内科の開業医院で行われます。また、専門科の診療が必要な場合もそこからの紹介によって専門科のプラクシスで受診します。まずは電話またはメールやインターネットの予約フォームから診察日の予約を取ります。当日の受診後は、公的保険の場合に追加料金が必要な診察を受けていなければ、そのまま病院を出てしまって問題ありません。その後、医師から薬の処方箋をもらった場合は、近くの薬局(Apotheke)に行き薬を受け取ります。

病院
Krankenhaus(クランケンハウス)

夜間や休日の急患、緊急の際を除き、基本的に入院治療をするための場所です。開業医の診察で入院が必要になった場合は、クランケンハウスで治療を受け、退院後に引き続き受診が必要な場合は、再び元のプラクシスで治療を継続します。

大学病院
Uni-Klinik(ウニクリニック)

夜間や休日の急患、緊急の際を除き、より高度で専門的な診療を行う医療施設。主にプラクシスやクランケンハウスからの紹介状がある患者の診療を行います。

4. 薬について

日本人とドイツ人の体格の違いによって服用量を多く感じる人もいると思いますが、薬局で薬を購入する際は薬剤師の指示に従った分量を服用すれば問題ありません。ただ、成人・子どもでも体格が小さい人や薬が効きやすい人は半分程度服用するなど、工夫をすることも可能なので、ご自身の身体にあった用量を見極めてください。また、薬剤師から口頭で言われたことを忘れてしまった場合は、薬の箱に入っている説明書の3番目の項目に服用方法が記載されているので、確認しましょう。外来診療で処方された薬は、直接医師に尋ねるのがベストです。薬のアレルギーがある方は薬剤師や医師に必ず伝えましょう。日本からお薬手帳を持参し、アレルギーの原因として考えられる成分などをリストアップしておくのが良いでしょう。  

また、ドイツで準備しておいたほうが良い常備薬は下記になります。

準備しておきたい常備薬
  • 解熱・鎮痛薬 Fieber- und Schmerzmittel
  • 胃腸薬 Magenmittel
  • 下痢止め Mittel gegen Durchfall
  • 腹痛止め Mittel gegen Bauchschmerzen
  • 吐き気止め Mittel gegen Übelkeit, Antiemetikum
  • 生理痛薬 Mittel gegen Regelschmerzen
  • 傷口の軟膏 Wund-und Heilsalbe
  • 痔の軟膏 Hämorrhoiden Salbe
  • 絆創膏 Erste-Hilfe-Pflaster
  • 消毒液 Desinfektionsmittel
  • 体温計 Fieberthermometer
  • 偏頭痛の薬 (処方箋が必要) Medikamente gegen Migräne

薬の保管場所は、湿気の多いバスルームは避け、日光の当たらない温度が一定の場所がベストです。また小さな子どもがいる家庭なら、手の届かない場所ということも大切なポイント。薬の使用期限は箱の横に「Verwendbar bis 06.2019」などと年と月が明記されています。多少期限が切れていても安全性は確保されていると思いがちですが、気が付いたら処分してください。また、水に溶いて使う抗菌薬や目薬は使用期限に限らず治療期間を終えたら捨てるようにしましょう。咳止めシロップや風邪薬のシロップなどは、冷蔵庫で保管を。

薬の使用期限

5. その他の注意点

ドイツで生活していると欧州内の旅行や日本への一時帰国などの機会も増えます。その際に自分の健康保険がどのような場合に適用されるかを加入している保険会社に確認しておくと良いでしょう。また、日本への本帰国が決定した場合に、ドイツで定期的に通院をしていて日本でも引き続き診察が必要な場合は、かかりつけの家庭医などに英語の診断書を書いてもらうと、帰国後もスムーズに受診できます。

お話を聞いた医師・監修

馬場恒春先生 医師、医学博士、元福島医大助教授(内科)。ザビーネ夫人が開設したノイゲバウア馬場内科クリニック (Oststraße 51, Tel. 0152-05412673)の分院、プリンツェンパーク外来(Prinzenallee 19)にて診療を行う。JAMSNET(海外に暮らす在留邦人の心身の健康を日本語でサポートするネットワーク)所属。弊誌コラム「Sprechstundeドクターの診察室」にて、ドイツの医療事情やさまざまな症状について分かりやすく解説。 
www.neugebauer-baba.de

最終更新 Donnerstag, 28 Juni 2018 09:03  
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