Hanacell

4711 オーデコロン 4711 ECHT KÖLNISCH WASSER

4711
金とブルーが美しい
モラニス瓶
©MÄURER+WIRTZ
ケルンで生まれた奇跡の水

ドイツで最も歩行者が多いといわれるヘーヘ通りから横道にそれて、しばらく歩くと見えてくる。「グロッケンガッセ(Glockengasse)」の名の通り、最上部に小さな鐘がいくつもぶら下がったその建物に足を運ぶ観光客は絶えず、定時になって鐘の音とともにからくり人形の兵隊が行進を始めると、みな空を見上げる。入口には「4711」の看板。いまから215年前、ここで「ケルンの 水」が誕生した。

「信じられないくらいすばらしい水」

ドイツ語で「ケルンの水」と言って、もしかしたらピンとこない人でも、フランス語の「オーデコロン(芳香水)」なら聞き覚えがあるだろう。オーデコロン、訳して「ケルンの水」。そう、ケルンが発祥の地なのだ。

1792年10月8日。この街で商業を営んでいたヴィルヘルム・ミュールヘンスは、自身の結婚式が行われたその日、カルトゥジオ会(隠遁生活を主義とするカトリックの一派)の修道士からお祝いに「aqua mirabilis(アクア・ミラビリス)」の調合法がしたためられた1枚の紙を贈られた。これはラテン語で「信じられないくらいすばらしい水」の意。さっそく、その製法通りに調合し、できあがった香りをかいで「これはいける」と直感した彼は、その後まもなくグロッケンガッセに小さな工場兼会 社を設立し、事業をスタートさせた。

グロッケンガッセ4711番地

かのフランス皇帝ナポレオン・ボナパルトが台頭する直前の18世紀後半、ドイツでは神聖ローマ帝国の終えんが近づくとともに、プロイセン王国などが成長を続け、隣国フランスでは革命の嵐が巻き起こっていた。

バスチーユの襲撃で1789年に勃発したフランス革命に続き、オーストリアへの宣戦布告とともに革命政府がヨーロッパ諸国を相手にしたフランス革命戦争の真っただ中にあった1794年、当時フランスの占領下だったケルンにフランス軍が進駐を始める。指揮を執っていたドリエー大佐は、兵士の宿舎を割り振りやすくするため、それまでバラバラになっていた家々の番地に規則正しい通し番号を付け直すことを決める。兵士らは馬にまたがったまま、各家の入口に数字を手書きしていったという。そしてこの時、ミュールヘンスの会社に与えられた番地が「4711」。今日までブランド名に冠され、世界的に有名となった番号の起こりである。

こうした歴史をひも解くと、「ケルンの水」が「オーデコロン」の名で通るようになった経緯が見えてくるようだ。一説によれば、ドイツから「ケルンの水」を祖国に持ち帰ったフランス兵らが、家族や恋人に「オーデコロンだよ」と説明しながら贈ったことから、フランス語名が広まったといわれている。

Topasシリーズ
左)1 番地「4711」誕生の瞬間  
右)店内2階には、歴史を物語るミュージアム

6角形の「モラニス瓶」

「4711」のガラス瓶は、胴体部分が6角形の独特の形をしている。今日まで「モラニス瓶」の名で知られるこの瓶は、保管や持ち運びを容易にしようと、1820年に酒の醸造人ペーター=ハインリヒ・モラヌスが発案した。

2年後には、さらに改良が加えられる。瓶の口と胴体部分の間の首回り部分を、いわゆる「のどぼとけ」のように丸いアーチ型にしたのだ。これは、温度の高い場所でアルコール度の強いオーデコロンが膨張しても対処できるよう考えられたものだった。

中央に大きく「4711」のロゴが入ったラベルも目をひく。ゴールドとターコイズブルーの鮮やかな色合いが互いに引き立つこのラベルは、外光を遮るために通常のラベルより大きな作りで、世界各国の博覧会でかつて受章した勲章が装飾されている。

再びドイツ企業の手に

Tangoシリーズ 第2次大戦で壊滅するが1964年に
再建され、いまは街の観光スポットと
なっているグロッケンガッセの本社屋

時は移り21世紀。「4711」は今年5月、同じくライン地方に本拠を置く香水メーカー「モイラー+ヴィルツ(MÄURER+WIRTZ)」の傘下に入った。

実はここ数年、ケルンに生まれたこのドイツの老舗ブランドは外資の手に渡っていた。創始者ミュールヘンスの血をひくフェルディナンド・ミュールヘンスらは1994年、整髪化粧品大手ヴェラ(Wella)に「4711」を売却。しかしヴェラは2003年に「4711」を米消費財大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)に放出していた。今回M+Wが買収に成功し、再びドイツ企業の手に戻ったわけだ。

観光客や通勤者で、1日中活気がとだえることのないケルン中央駅。陽光がさんさんとふり注ぐホームに降り立ち、顔を上げると、このドームの街の「顔」であることを象徴するかのような一際大きなロゴが目に飛び込んでくる。4711ECHT KÖLNISCH WASSER ──。時代が変わり、持ち主が変わっても、この地で幕を開けた歴史は、これからもこの地で続いていくのだろう。

オーデコロンは、気分をリフレッシュしたいときなど、気軽に香りを取り入れたいときに使われ、シトラスやオレンジの爽やかな柑橘系の香りが心髄だ。でも「4711」の正確な調合法は、200年の時を経ていまだ門外不出。作った人にしかその秘密はわからない。ナポレオンが調合法を公にするよう命じたその昔も、創業者ミュールヘンスは固く口を閉じたという。

4711
アフターシェーブや石鹸も仲間入り ©MÄURER+WIRTZ

4711 ECHT KÖLNISCH WASSER www.4711.com
モイラー+ヴィルツ (MÄURER+WIRTZ)www.m-w.de

 
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