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Di. 27. Okt. 2020

ドクターの診察室
ドクターの診察室: 健康に関する悩み・質問にDr. 馬場が答えます!

新型コロナウイルス - 分かってきたこと、今後のこと -

質問:今後も長期化する気配のある新型コロナウイルスですが、現在どこまで分かっていて、何が分かっていないのか不安です。また、予防ワクチンはいつから接種できるのでしょうか?

Point

  • 空気(エアロゾル)感染もあり得る
  • 抗体(IgG)は数カ月で減少することも
  • 退院後も不調が続くことがある
  • ウイルス遺伝子の変異が速い
  • PCR陰性化しても便からウイルス
  • ドイツでのワクチン接種は早くて2021年
  • 換気、手洗い、対人間隔、マスク着用が基本

空気感染(エアロゾル感染)も

● 空気感染とは?

長期間空気中に漂っている非常に小さな飛沫核(エアロゾル、Aerosol)を吸い込んで感染することをいい、「エアロゾル感染」と同義です。麻しんウイルス、水痘ウイルス、結核菌の感染経路として知られています。

● いきさつ

今年2月頃から示唆され、中国のレストランでエアコンの気流に沿う形での集団感染(4月のmedRxiv誌)が発生し、疑いが濃くなりました。7月にオーストラリアと米国の学者が世界中の237名の研究者と共に「空気感染」の可能性を主張(米国感染症学会誌)、続いてWHOも「空気感染」を否定できない旨を発表しました。

考えられる感染経路

接触感染 ウイルスが付着した手を口に
飛沫感染 くしゃみ、咳の飛沫から
空気(エアロゾル)感染 ウイルスを含むエアロゾルが空気中を漂う
糞口感染* ウイルス排出した便から口へ
*可能性だけでまだ不明

季節を選ばず

● 夏も衰えないウイルス

通常のコロナウイルスの場合、夏の間は冬の10分の1程度まで減ります(2015~ 2019年の病原微生物検出情報)。紫外線増加によるウイルスの不活化(山内一也著「ウイルスの意味論」)による収拾も期待されましたが(4月のScientific Report誌)、新型コロナウイルスはこの夏も世界中で強い感染力を維持しています。

● ウイルス遺伝子の変異

新型コロナウイルスは遺伝子の変異が起こりやすい1本鎖のRNAウイルスです(4月のPNAS誌)。例えば、ウイルス表面の突起(スパイク)の遺伝子配列は、5月末に採取した時は78%がすでに変異型で占められていました(7月のCell誌)。

抗体(IgG)が消える・できない

● できた抗体がなくなる?

ドイツの第1号感染者の抗体(IgG)は3カ月後には陰性化してしまいました(7月28日のAFP通信)。中国(6月のmedRxiv誌)、英国(7月のmedRxiv誌)、米国(7月のNEJM誌)でも抗体価が数カ月を経て低下することが観察され、抗体が長く保たれない可能性が指摘されています。

● 感染したのに抗体(IgG)ができない?

リューベック保健所から感染後の抗体陽性率が71%と低いことが(6月5日の報告)報告されましたが、スペイン(6月のLancet誌)や中国(6月のmedRxive誌 )の入院後患者でも陽性率は90%前後でした。無症状・軽症者ではさらに抗体ができにくいとの推測もされています(バッキンガム大学のSikora教授、6月7日のDaily Mail紙)。

再感染 or ウイルスが残っていた?

● PCR、陰性化してから再び陽性

PCR検査で陰性判明後に再陽性が出たことで、韓国が注目されました(韓国疾病予防管理局)。その後日本、イタリア(5月のInfection誌)、フランス(6月のJ Infection誌)、中国(7月のBMC Infect Dis誌)でも同様にPCR検査の再陽性の報告がされています。

● 便へのウイルス排出

口からのPCR検査が陰性でも血液や肛門スワブの陽性が続いたり(2月のEMI誌)、便へのウイルス排出が1カ月以上続くという報告(3月のLancet Gastroenterology & Hepatology誌)があり、ウイルス感染は長く続いている可能性も考えられています。便中のウイルスの感染力は不明ですが、排泄物にも注意が必要といわれています(6月のJAMA誌、8月のEmerg Infect Dis誌)。

急性期の症状

● 命に関わる肺病変

肺は非常に柔らかいデリケートな組織です。肺は強い免疫反応を起こしてウイルスを退治しようとしますが、同時に肺自体も多大なダメージを受けます。浸出液と血球成分の残骸が、血液と空気のガス交換の場である肺はいほう胞を埋め尽くし、短時間の間に呼吸が悪化します。

● 血栓ができる

血管壁が傷つき血栓(Blutgerinnsel)ができます。その血栓により脳卒中、心筋梗塞、足の末梢血流障害、時には聴覚障害(7月のInt J Audiol誌)につながることも。血栓が肺に飛ぶと重篤な肺塞栓(Lungenembolie)を引き起こします。

● 臭覚・味覚の障害

鼻炎症状がないにもかかわらず、臭覚・味覚(Geruchs-/Geschmackssinn)に変化が生じます。出現頻度は15%(ロベルト・コッホ研究所、RKI)から70%(4月のEur Archiv Oto-Rhino-Laryngol誌)、80%以上(4月のEur Archiv Oto-Rhino-Laryngol誌)と幅があります。1〜2週間での回復が多いようです。

● ACE2受容体を介する全身の病変

ヒトの血圧の制御に関わっているアンジオテンシン変換酵素2受容体(ACE2-Rezeptor)が、新型コロナウイルスの入り口としてウイルスに利用されます(2月のNature誌)。小腸のACE2受容体(2004年のJ Physiol誌)は下痢、腹痛と関係します。

退院しても後遺症(Post-Covid-Syndrom)

● 倦怠感、息苦しさが続く

退院後も不調に悩まされることが問題となっています。イタリアの入院患者では倦怠感(53%、小数点以下を四捨五入)、呼吸困難(43%)、胸痛(22%)が報告されました(8月のJAMA誌)。人工呼吸器を着けて死と直面した患者は、メンタル面への影響も指摘されています。

● 呼吸機能の低下

肺胞の損傷、肺の治癒過程でできた瘢はんこん痕で機能が正常に戻らないことも。退院時の肺CTでは、94%の患者に変化が残ったとの報告もあります(3月のRadiology誌)。

分かってきたウイルスの特徴

ウイルス 変異(点変異)が早く、多い
季節に関係なく感染が続く
体力がある人でも感染
病気 肺の病変では呼吸困難が急速に進行
血栓を作ることがある
臭覚・味覚障害、消化器症状も生じる
退院後も後遺症が続くことがある
抗体 感染しても抗体ができにくい人がいる
抗体が数カ月で減少、消失の可能性
弱点 予防処置を除いてまだ不明

ワクチンに関して

● ワクチンの開発状況

世界で179製剤のワクチン(Impfstoff)が開発中で、うち第1相を含む臨床試験に入っているのは42製剤です(8月21日現在、The New York Times紙)。ドイツでは16製剤が開発されています(ドイツ研究開発型製薬工業協会、VFA発表)。

● ワクチンの効果と安全性

完成したワクチンがその時の変異株に有効か、ワクチンによる抗体(IgG)は何年(何カ月)有効か、安全性は大丈夫かなど、実用化までのハードルは低くありません。

● ワクチンはいつから?

本来は数年を要する新規ワクチン開発。仮に審査過程を短縮したとして、ドイツでは早ければ2021年には一部を対象とした接種が始まると期待されています(Paul-Ehrilich Institute、8月19日)。ロシアはGamaleya研究所製のワクチンを第3相臨床試験をスキップする形で認可しています(TrialSite Newsより)。

秋から留意すべきこと

● 寒くても部屋の換気を

建物内に閉じ籠もりがちになるドイツの冬、オフィスでも自宅でも部屋の換気(Raumlüftung)が感染のリスクを減らします(前述の米国感染症学会誌)。

● 手洗い、対人間隔、マスク着用を忘れずに

①手洗い(Handwäsche)、②対人間隔(1.5メートル以上、Allgemeines Abstandsgebot)、③公共交通機関や買い物でのマスク着用(Mundschutzmasken)を忘れないようにしましょう。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0152-05412673)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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