ジャパンダイジェスト

コロナ禍の秋冬の健康管理

新型コロナウイルスも収拾する気配がなく、これからの季節はどんなことに気を付けたら良いか気になっています。例えば、インフルエンザの予防接種は受けるべきでしょうか?

Point

  • 風邪、インフルエンザ、新型コロナウイルスの季節
  • インフルエンザ予防接種は早めに
  • 気温低下と空気乾燥から皮ふが乾燥
  • 日照時間減少は「冬期うつ」の原因に
  • 太陽に当たりビタミンDを増やす
  • 十分な睡眠で免疫力を高める
  • 散歩、外出、小旅行で気分転換

風邪・インフルエンザが増える季節

● 風邪の季節

季節の変わり目は体調を崩しやすくなるという人は多いでしょう。ウイルスが鼻やのどから感染すると、鼻水(laufende Nase)や急性扁桃腺炎によるのどの痛み(Halsschmerzen)を伴う風邪となります。

風邪の症状がみられる病気*

症状 風邪 インフルエンザ 新型コロナ
ウイルス
花粉症
鼻症状
目のかゆみ
のどの痛み
発熱
筋肉痛・関節痛
味覚・臭覚異常
腹部症状
* 起こりうる症状。必ずみられるものとは限りません。

● インフルエンザの季節

9月頃より徐々に増え始め、12月から2月にかけてがピークです。今のところ今年のインフルエンザ患者数は昨年より少ないことが報告されています(9月11日の厚生労働省発表)。これはコロナ禍におけるマスク着用と手洗いの徹底に加え、患者が受診に慎重になっているためと推測されているようです。

● 新型コロナウイルス

7月はドイツ国内の1日当たりの新規感染者数は数百人程度に抑えられていましたが、8月以降に再び増え始め、9月には2000人を超えた日も。これから通常のコロナウイルスの活動も高まる季節となるため、しばらくは予断を許さない状況が続きます。

● 秋の花粉症による鼻炎

10月に入ってもイネ科の草(Gräser)、ヨモギ(Beifuß)、イラクサ(Brennessei)、アカゲ(Gänsefuß)、オオバコ(Wegerich)などの花粉が飛び交います。また、早い年では12月よりヘーゼルナッツ(Hasel)、ハンノキ(Erle)の花粉症が始まることも。

新型コロナウイルスとの鑑別

ワクチンに関して

● 同じような症状

風邪、インフルエンザ、新型コロナウイルスでは似た症状も多く、時として鑑別が容易でないことがあります。今までは筋肉痛を伴う高熱はインフルエンザに特徴的で、小児ののどの痛みでは溶連菌感染も念頭に置きますが、新型コロナウイルスでも同じような症状がみられることがあるのです。

● PCR検査(PCR COVID-19)

急性の上気道炎症状がみられ、新型コロナウイルス感染の可能性を除外できない場合、PCR検査が勧められます。PCR検査は綿棒を使って鼻咽頭(あるいは口腔内)からスワブ(拭い液)を採って行い、結果が出るまで数時間~ 2日を要します。

● 二つの病原体の重複感染も?

新型コロナウイルスとA型インフルエンザ(4月のEFIM誌、6月のEmerg Infect Dis誌)やほかの呼吸器ウイルスや細菌(5月のJ Infect誌)との同時感染も、わずかながら報告されています。

皮ふの乾燥

● 乾燥肌が増える

かゆみ(Jucken)やシャワー浴でのヒリヒリ感を伴う乾燥肌(皮ふそう痒症)が増えてきます。皮ふの乾燥に加え、入浴時の石けんの使い過ぎで皮ふ表面の皮脂バリアーが壊れることが関係します。

● 手や足のあかぎれ

冬が近づくと、手の指先、足の指の付け根、かかとが裂けて痛い思いをしている人も。気温が下がり皮ふの皮脂や汗が減ってくることと、室内空気の湿度の低下が関係しています。

● 保湿クリームが効果的

シャワー・入浴後に保湿クリームを塗り込み、皮ふ表面を守ることでかゆみやあかぎれが改善することが少なくありません。保湿ローション(Lotion)よりはクリーム製剤(Creme)の方が効果的です(薬局で扱っているCetaphil® Feuchtigkeitscreme など)。自己判断でステロイド含有クリームを安易に使用することは避けましょう。

心の沈む季節

● 気分の落込み

どんよりとした空、外の風景は寂しく、人と会うのも億劫。だけど食欲は増し、甘いもの(Süßgkeiten)を好み、いつも眠たい……。このような冬に生ずる気分の落ち込みは「冬季うつ」(Winterdepression、Winterblue)と呼ばれます。

● 冬期うつの治療法

日照時間の減少と関係するため、一定強度以上の強い光を浴びる「光線療法」(Lichttherapie)が効果的です。起床時に朝の明るさを演出する目覚まし照明や、自宅治療用の照明器具が市販されています。

冬時間が始まる頃は

● 活性型ビタミンDの不足

日照時間が短くなって家の中に閉じこもりがちに。私たちの骨を維持しているのは、太陽の紫外線が皮ふに当たってできる活性型ビタミンDです。天気の良い日は外を歩いたり、バルコニーで10〜15分間だけでも太陽の光に当たるようにしましょう。

● 夜の運転が見えにくい?

視力は同じでも、ドイツの道路はネオンなど周囲を明るくする照明設備が少なく、冬に多い黒っぽい衣服の歩行者は見えにくいため、ヒヤッとすることも。初めての土地を夜間運転する時は、いつもより慎重に速度を落とすようにしましょう。

この冬の健康対策

● 対人距離、手洗い、マスク、換気

対人距離(Abstand)、手洗い(Hygiene)、マスク着用(Alltagsmasken)の「AHA–Formel」は新型コロナウイルスだけではなく、インフルエンザやほかの感染症予防にも役立ちます。寒い冬ですが、オフィスでの換気もお忘れなく。

● インフルエンザ予防接種

インフルエンザ予防接種は感染・発症を減らすとともに、重症化を抑える最も有効な手段です。今年は新型コロナウイルス感染症の流行が懸念されるなか、ワクチンの需要が高まる可能性があります(日本の厚生労働省)。高齢者、基礎疾患のある人、妊娠している人、受験生とその家族は早めに接種を受けられると良いでしょう。

● 十分な睡眠で免疫を高める

ウイルスや細菌に対する免疫(抵抗力)は良質な睡眠により維持されます(2019年のPhysiol Rev誌)。「睡眠不足が続くと風邪をひきやすくなる」、「病気の回復には十分な睡眠」といわれているのはそのためです。

● 適度な外出と小旅行

定期的な運動をして外気に当たることは、筋力の保持だけではなく、心肺や消化器の機能、メンタル面にも好影響を及ぼします。異なる環境を体験できる小旅行は、ストレス解消と気分転換に役立ちます。

● 周囲の感染者を特別視しない

新型コロナウイルスの感染者はドイツ国内だけでも28万人を越し(9月28日現在)、自宅で自己隔離を行った人もまれではありません。感染機会はどこでもあり、ほとんどの場合は感染者の不注意や責任によるものではないため、感染者や家族を非難視することは避けましょう。

● 家庭内でのメンタルヘルス

新型コロナウイルスの影響で家庭で過ごす時間が増え、その良さを再認識したり、逆に負担が増えたという人もいるかもしれません。家族に気分の落込みがみられる場合は、そのことを責めるのではなく、理解してあげることが大切です。

心身の健康を保つ工夫

  • 規則正しい生活・食事
  • 十分な睡眠
  • 適度なスポーツ・外出
  • インフルエンザ予防接種
  • 家庭内でのワークシェア
  • ホームオフィスで家を独占しない
  • 夫婦(家族)での外出、
  • 小旅行
  • 大宴会は控える
 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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