Hanacell
輝け、原石たち


ユーザーエクスペリエンス・デザイナー 笠原清香さん

1980年 東京都練馬区生まれ
2002年3月 多摩美術大学 芸術学部・情報デザイン科卒業
2004年10月~ 渡独、語学学校に通いながら大学受験の準備
2005年10月 ベルリン芸術大学 デザイン学部・ビジュアルコミュニケーション学科に飛び級で編入学
2007年7月~ 大学卒業後、フリーランサーとして活動
2008年8月~ USEEDS ゜ GmbH にてユーザーエクスペリエンス・デザイナーとして勤務。ベルリン在住。
多摩美術大学在学中には、同期生とともに海外で映像作品のグループ展を開催したことも。ベルリン芸大の所属学科をトップの成績で卒業。デザイナーのディプロームを持つ。

「ユーザーエクスペリエンス・デザイン」と聞いて何を意味するかピンとくる人は、相当なIT通に違いない。インタビューの冒頭で、「インターフェイス、インタラクションデザインを手掛けています」と横文字を並べられた時には、正直、先に続ける言葉を失った。

「インターフェイスって何ですか?」と直球の質問を投げかけると、「例えば、BVG(ベルリン交通局)の切符自動販売機のような、入力したものが反映される液晶やパソコン画面のことです」と単純明快な答えをくれた笠原清香さん。現在、全従業員5人というベルリンの小さなコンピューター・ソフトウェアのデザイン制作会社に勤務する。

高校時代から映像やコンピューターに興味があり、大学では当時新設された情報デザイン科に入学。3、4年生の時についた講師がベルリン芸大出身で、同芸大の教育システムをそのまま所属していた学科に持ち込んだという。

その縁もあって、卒業後にベルリンを訪れた際、当地の芸大で自分の研究を続けようと決意した。テーマは、「説明書のいらないインターフェイスをつくること」。例えば、人と人とを繋ぐために言葉があるように、人間とコンピューターを結ぶ媒体としてキーボードやマウスがある。しかし、キーボードを叩かなくても、話した言葉が画面上でそのまま文字になるという方法があっても良い。人間とコンピューターのコミュニケーションをより良くするために、どんな方法があるのか? その可能性に挑戦しているのだ。その根底には、インターフェイスという言葉が本来持つ「何かと何かを繋ぐもの」という意味への関心がある。

職場では、開発からテスト、改善まで、ユーザーの意図を汲んだソフトウェア・デザインの制作の全行程に携わっている。「自分の意見が、直接製品に反映されることが嬉しい」と語る笠原さん。将来の目標に、ハードウェアのデザイン制作を掲げる。笠原さんのアイデアが、今後どんな形となって現れるのか、楽しみに待ちたい。

(編集部:林 康子)


コンセプションの様子。搭載する機能について考察し、シナリオ(実際にそのソフトを人が使ったときにどんな状況が起こりうるか)を作成する


デザインの様子1:まずはアイデアをスケッチする


デザインの様子2:次にスケッチを基に
パソコンで画面を作る

Information

笠原さんが勤務するUSEEDS゜は、社内用ソフトウェアの新開発や既存のソフトウェアの改良を手掛けている2008年設立の若い会社。ユーザーを中心に据えたユーザーセンタード・デザインやクリエイティブテクニックなどをテーマにした企業向け講義も行っている。

USEEDS ゜ GmbH
Rungestr. 22-24 10179 Berlin
TEL: 030-34060050
www.useeds.de

最終更新 Freitag, 09 Dezember 2011 18:07
 

バイオリン職人 茅根健さん

1979年 栃木県宇都宮市生まれ
〜2000年 上智大学外国語学部ドイツ語学科卒業後、(有)文教楽器の楽器製作学校で米国人のLouis Caporale 氏の下、約2年間楽器製作の基礎を学ぶ。
2004年9月~ 渡伊、パルマのRenato Scrollavezza氏の工房で働く。
2008年 ヨーロッパ各国の工房を訪れ、研修を積む。
2008年10月~ Andreas Kägi&Matthias Beimdiekの工房で研修中。ベルリン在住。
4月~6月までマインツのPeter Körner氏の下で学び、6月以降再びベルリンで活動を始める。パルマの弦楽器製作者協会、Violin Society of America(VSA)の一員。

「イタリアで楽器職人として働いています」という言葉を聴いたとき、頭の中で「カントリー・ロード」が流れた。スタジオ・ジブリが制作した映画「耳をすませば」に出てくる中学3年生の聖司くんは、バイオリン職人になるためにイタリアに旅立ったっけ。

イタリアといえば、名器と称される「ストラディヴァリウス」が生み出されるなど、長い歴史を持つバイオリン職人のメッカである。そのイタリアのパルマで、戦後イタリア楽器製作の復興の功労者の1人でもあるレナート・スコロラヴェッツァ氏の下修業を積み、現在はドイツでマイスター資格取得を目指す茅根健さん。大学在学中に始めたオーケストラで、始めてバイオリンを手に取った。

「最初は演奏することがただ楽しくて、でもその内にどうしてこんな音がでるんだろうと、楽器の構造に興味が移っていったんです」と、バイオリンの魅力にはまってしまった経緯を語る。

その後、日本で米国人のルイス・カポラレ氏に師事しながら2年間楽器製作の基礎を一から学んだ。日本での活動を前提に研鑽を積んでいた茅根さんは、友人の付き合いでたまたま立ち寄った米国の楽器屋で運命的な出会いを果たす。後に師事するスコロラヴェッツァ氏の楽器がそこに展示されていたのだ。楽器から溢れ出る雰囲気と美しさに強く惹かれ、かくしてイタリア行きを決めるに至った。

イタリアでは主に新作楽器の製作に携わり、現在までにバイオリン20本、ビオラ2本、チェロ1本を製作した。 「バイオリン作りを始めて7年、やっとある程度自分の望み通りの音が出せるようになってきたんです」

職人の世界で認められるため、外国人というハンデを越えるため、人一倍真剣にバイオリンと向き合ってきた。その成果が実感できるようになった今、ドイツという新しい環境で第一歩を踏み出し始めた。笑顔が頼もしい彼の、今後の活躍に期待がかかる。

(編集部:高橋萌)


レナート・スコロラヴェッツァ氏の工房にて。写真前列左端に茅根さん、中央にスコロラヴェッツァ氏


茅根さんが作ったバイオリン

Information

茅根さんが6月からゲゼレ(職人)として正式に働き始めるケーギ氏とバイムディーク氏のマイスター工房。ここで茅根さんは、楽器の修理・修復を中心に活動する。

Andreas Kägi & Matthias Beimdiek Geigenbaumeister
Wiesenstr.62, 13357 Berlin Aufgang 7, 2. Etage
TEL: 030-8815489(Andreas Kägi)
TEL: 030-88683675(Matthias Beimdiek)
行き方: Sバーンの1,2,25に乗ってHumboldthain駅で下車。徒歩1分。

新作の依頼はこちらから
www.liuteria-parmense.com (パルマの弦楽器製作者協会)
E-mail: このメールアドレスは、スパムロボットから保護されています。アドレスを確認するにはJavaScriptを有効にしてください
TEL: 0152-24104865

最終更新 Freitag, 09 Dezember 2011 18:09
 

コンテンポラリーアーティスト 鍵冨孝暁さん

1973年 千葉県市川市生まれ
1994年 神田外国語専門学校 英会話本科卒業
1994~98年 渡独、日航ホテル・デュッセルドルフ支店にてホテルマンとして勤務
2004年 Kunstakademie Düsseldorf在学、デュッセルドルフ在住
2006年 クンストアカデミーの学生展 ベットブルク=ハオ
2007年~ 「日本からやってきた8つのコンテナ」デュッセルドルフ その他、ベルリン、ボン等で展覧会開催
2008年 「Too high or too low there ain't no inbetween」グラスゴー「Zwei Vögel, Eine Klappe」ケルン
グラフィックから立体、空間インスタレーション、パフォーマンスまで幅広く手掛ける社会派アーティスト。

展示室に置かれた鏡やタンスなどの家具。そのタンスの中に入るとさらに部屋があり、そこにはいくつかの立体が並ぶ。それらを鑑賞する人々……。でも、実はこの2つの部屋はマジックミラーで仕切られていて、最初の展示室からは向こう側の部屋の鑑賞者の姿が鏡に映る仕組みになっている。そんな遊び心満載のインスタレーションを手掛ける鍵冨孝暁さん。作品のコンセプトは、「観る人が作品の一部になること」だ。

昔から海外志向が強く、高校卒業後は外国語の専門学校で英語とドイツ語を学んだ。渡独のきっかけは、デュッセルドルフのホテルの求人への応募だった。現地で音楽や絵と関わる人たちに出会い、ヨーロッパでは芸術と人の距離が近いと感じた。そこで自らも芸術の道に進むことを決意。芸術大学のグラフィック科に入学した。子どもの頃からデッサンは好きだったと言うが、実際に芸術活動を始めたのは来独してから。にもかかわらず、「特に苦労はしなかったですね」と、さらりと言ってのける。

2007年のコンテナを使ったインスタレーション作品では、水槽に亀を泳がせて、その隣にはビデオテープが詰まった狭く薄暗い部屋を置いた。芥川龍之介の小説『河童』をモチーフに、「もし現代に引きこもりの河童がいたら……」と想像を膨らませて作ったという。受け狙いのような制作秘話だが、そこには引きこもりという現代病を生み出した日本社会に対する批判が込められている。

「作品は、日々考えていることや経験したことを記録する日記のような存在です。ただ、そこに込めた自分の思いを表に出そうとは思いません。観る人によって印象や受け止め方は違いますからね」

制作の面白みをそこに見出す鍵冨さん。今後の目標は、2次元の媒体としてのみ存在する作品を増やすこと。3次元の作品を記録保存し、次の世代に遺したいと意気込む。

(編集部:林康子)


グラスゴーの展覧会で出展された家具のインスタレーション


「日本からやってきた8つのコンテナ」展:3匹の亀が泳ぐ水槽(左)とビデオテープがぎっしり詰まった部屋


ケルンの展覧会では、首吊りの縄の形をしたミラーボールを展示
Information

”Rundgang“「ルントガング」
クンストアカデミーの学校祭
期間:2月15日(日)まで 入場無料
時間:9:00~20:00 土日10:00~18:00
場所:Kunstakademie Düsseldorf
Eiskellerstr. 1, 40213 Düsseldorf
TEL : 0211-13960
www.kunstakademie-duesseldorf.de

グループ展「SMALL WORLD」
鍵冨さんのほか、3人の日本人アーティストが出展
期間:3月7日(土)~5月16日(土) 入場無料
※鍵冨さんの作品は4月11日(土)まで展示
時間:14:00~18:00 土10:00~
場所:E105 Halle für Kunst und Design
Endenicher Str. 105, 53115 Bonn
TEL : 0228-4297769
www.e105.de

最終更新 Freitag, 09 Dezember 2011 18:16
 

ジュエリー作家 小川直子さん

1979年 神奈川県小田原市生まれ
2001年 多摩美術大学 立体デザイン科クラフトデザイン卒業
2004年 東京芸術大学大学院 工芸科彫金専攻修了
2004年〜06年 東京都内のファッションアクセサリー会社にてデザイナーとして勤務
2006年 渡独、ベルリンのファションレーベル「BLESS」にてインターン
2007年〜 ベルリンを拠点にジュエリー制作、活動中
大学では鍛金科で学んだため、金属の持つ質感や輝きを生かしたジュエリーが得意。ベルリン・ファッションウィークへの出展、ウィーンのグループ展への出品を控えている。

光と影、日常と非日常をジュエリーの中に閉じ込めたような小川直子さんの作品は、乙女心をくすぐる魅力を放っている。デザイン性とオリジナリティー溢れる「ワーキング」、チェーンやビーズ、石などの素材を鉛筆や絵の具に見立てて体の上に絵日記を書くような感覚でネックレスを作り出す「ドローイング」という大きく2つのシリーズで展開する作品群は、身に着けて初めて完成する。

「人間の身の回りにある『美しさ』を発見し、その人間の周りにしか起こりえない美しさを『ジュエリー』として身に着けられるようにしたい」、そう語る彼女のジュエリーは、身に着ける事ができるアート作品だ。

子どもの頃からキラキラしたものが大好きで、こんな素敵なものを自分でも作れないかと、拾ってきた木の実と糸で作ったネックレスが初めて作ったジュエリーだったというが、その思いは今も変わらない。

小川さんをドイツに向かわせたのは、ファッションレーベル「BLESS」のデザイナー、イネス・カーグ氏との出会い。同氏が日本で講演をしたとき、自分のポートフォリオを持って、「働きたい」とアピールしたというから驚いた。カーグ氏にインターン制度を紹介され、すぐさまドイツに渡った。インターン期間を終えた小川さんは、「自分の仕事を初めてみたら?」と勧めるカーグ氏の言葉に、今度は「1人でやっていこう」と、エンジンをフル稼動。

作品を人に見せると素直に面白がってくれたり、そこから展示会の話をもらったり、手ごたえのある反応や出会い、そしてチャンスに恵まれたベルリンで、地盤を固めようと決心した。

「自分の作品で食べていきたいタイプ」と自己を分析する彼女に、ジュエリー作家としての覚悟を見た。1月、2月は本の出版や展覧会などが目白押し。歩き出したばかりのジュエリー作家は1つの勝負所に立っている。

(編集部・高橋 萌)


絵日記をつけるように作りだすネックレスのシリーズ「ドローイング」


光を反 射し、風を受けるたびにきらめくブローチ


銅版を薄く延ばしたボディージュエリー「Poeny Tatoo」
Information

2月7日(土)からオーストリア・ウィーンで開催されるグループ展に、小川さんは薄い金属の板をくしゃっと握って形作る「ギャザリング・ジュエリー」を出品する。同展では、「輝きと破滅」をテーマに絵画、彫刻、ファッションなど様々な分野の作品が並ぶ。

2月7日(土)~4月19日(日)
グループ展 "Glanz und Verderben"
Freiraum/quartier21, Museums Quartier, Wien, Österreich

naoko ogawa http://naokoogawa.com

小川さんの作品の購入はこちら
CHARMWORLD(日本向け)
www.charmworld.jp
DaWanda(海外向け)
http://en.dawanda.com/shop/drawing-naokoogawa

最終更新 Freitag, 09 Dezember 2011 18:24
 

家具職人 山本滋己さん

1979年 大阪府堺市に生まれる
2000年 大阪総合デザイン専門学校 インテリアデザイン科卒業
2000年 鉄の彫刻家 橘宣行に師事、金属家具創作家としての活動も始める
2006年 渡独、家具職人プログラムに参加
2008年 家具職人資格取得
2008年 sawadee design 所属、ベルリン在住
デザインから制作までの全工程を1人でこなす。家具職人プログラムで木の加工技術などを学び、ゲゼレ職人試験に合格した後、ベルリンに活動の場を構えた。現在はサワデー・デザイン所属の家具職人として木製の家具を作っている。

一風変わった家具を作る家具職人の山本滋己さん。彼の作品は、生活のすぐ側に楽しさ・遊び・笑いの要素を取り入れるという発想から生まれる。見た目の面白さもさることながら、生活スタイルに柔軟に対応する山本さんの家具は、暮らしの良き友ともなりうる存在だ。

日本ではオモシロ家具を作るアーティストとして個展やグループ展を重ねてきたが、オランダのデザインに興味を持ったことから、バックパッカーとしてヨーロッパ中を駆け巡った。そしてドイツのデザインフェスティバル「デザイン・マイ」を訪れたことをきっかけに目標の地をドイツとし、職人プログラムへの参加を決意した。

家具を作り始めたのは専門学校へ入ってから。店舗デザインや家具のデザインの勉強をする中で、「学校の先生たちから『山本、これめっちゃええやないかぁ~!』と、自分のアイデアを評価されたとき、何でもやっていいんだ。こんな自由な、開放された世界があるのかと思った」という。そして、のめりこんでいったデザインの世界で今、まさに正念場に立っている。

これまでは、自分が作りたいと思う「作品」を作ってきた。しかし、今後この活動を生業にしようとしたときに絶対に必要になってくるのが人に欲しいと思わせる「商品」を作るという視点、と自身を分析する。デザイナーであり職人でもある彼の「楽しいもの」を作るという哲学はそのままに、「良いもの=売れるもの」を作ることが今後の課題。

現在制作中なのが、木製家具のシリーズ。出来立てほやほやの新作は「hängen+stehen」Lampe(掛ける+立てるランプ)。このランプは2つの用途を備えていて、普通にフロアスタンドとしても使用可能だが、場所を節約したい時は壁に掛ける事もできる。

「まぁ、やるで!やらなしゃーない」と、不敵な笑みを浮かべる彼の横顔は、新しい挑戦への活力に満ちていた。

(編集部・高橋 萌)


素材となる木は自分で切りに行く


「hängen+stehen」Lampe(フロアスタンド)


場所を節約したいときは壁に掛けてもOK
Information

現在山本さんが所属している工房は「sawadee design」。 この工房では、ベルリン市内の木を素材に家具を作って いる。
※特注家具のオーダーもできます。

連絡先
E-mailこのメールアドレスは、スパムロボットから保護されています。アドレスを確認するにはJavaScriptを有効にしてください
TEL:030-53068355
WEBhttp://shigekiyamamoto.web.fc2.com/
sawadee design
WEB:www.sawadeedesign.de/

最終更新 Freitag, 09 Dezember 2011 18:27
 

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