新型コロナウイルス感染拡大の防止措置で家の周りしか出歩けなかったため、夏は旅行に行きたいと思っています。どんな点に気をつけるべきでしょうか?
Point
- ドイツもまだ予断は許さない状態
- 夏の旅行は一定の衛生管理を遵守して
- 国外旅行は事前の情報収集が大切
- 一時帰国はどうしても必要な場合に
- マスク、手洗い、対人間隔が基本
- ウイルスはまだ分からないことが多い
ドイツ国内の感染状況
● 規制は緩和、しかし危険はまだ去らず
毎日ロベルト・コッホ研究所(RKI)から発表されている再生産数(R-Werteと7-Tage-R-Werte、Reproduktionszahl、1以上は感染拡大のリスクあり、1未満を収拾の方向を示す)は最近まで1前後で推移していましたが、6月後半に一時的な急増がみられ、まだ予断を許さない状況です。
● ドイツ国内で感染が多い地域も?
6月に入ってから、バイエルン州のアスパラガス工場、ノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州の精肉工場、ニーダーザクセン州のゲッティンゲンで集団での新規感染が次々に確認されました。人口10万人当たりの新規感染者が1週間で50人を超えた地域 (ギュータースロー郡など)では、期間限定で生活・行動制限が再導入されました。
6月の再生産数(R)の変動
欧州内の感染状況
● 封じ込められているが注意必要
「欧州におけるパンデミックは封じ込められているが,まだ過ぎ去ってはおらず、引き続き責任ある振る舞いと注意が求められる」状況です(ドイツ連邦内務省、6月10日のプレスリリース)。
● 欧州連合(EU)域内の渡航が可能に
ルクセンブルクとの国境は5月15日に、オーストリア、フランス、スイス、デンマーク、イタリアに係る暫定的国境管理は6月15日、スペインとは6月21日をもって終了しました。
欧州内で旅行可能な国(6月15日現在)
● 渡航警告は8月31日まで
全世界(EU加盟国、シェンゲン協定加盟国、英国を除く)に対する渡航警告(Reisewarnung)は8月31日まで延長されます(独外務省)。7月1日より、EUは日本をはじめ状況が落ち着いている国からの入域を早期に認める意向を固めました(6月29日現在)。
日本への一時帰国
● 日本入国の際
ドイツから入国した日本人には空港でのPCR検査と、入国の翌日から起算して14日間は自宅や宿泊施設などで待機することが求められます。到着から入国まで数時間かかる状態が続いています。
ドイツ国内の衛生基準
● 各州による措置(Maßnahmen)
外出時は、公共の場における対人間隔(Allgemeines Abstandsgebot)、マスク装着(Mund-Nasen-Bedeckung)、接触制限(Kontaktbeschränkung)に加え、各州政府ごとに措置が制定されています。必ず旅行前に確認しましょう。
新型コロナウイルス感染の予防のためAHA
(AHA - Formel gegen Corona)
対人間隔 | A = Abstand、 1.5メートル以上 |
手洗い | H = Hygiene |
マスク着用 | A = Alltagsmasken |
● ホテル(Hotel)
ホテル内では1.5〜2メートルの対人間隔を保ち、施設内には消毒液器(Desinfekitionsspender)を設置。朝食も基本的に従来のビュッフェではなくなり、部屋の消毒は宿泊客がチェックアウトした後に行われます(NRW州の場合)。RKIが定める前述 のリスク地域からの訪問者は、ホテルなどの宿泊施設を利用できません。
● 鉄道(Deutsche Bahn)
車内では6歳未満の子どもと、飲食時を除いてマスク着用が必要です。IC、ICEなどの長距離列車では事前にオンラインで座席を確保しておくことが勧めらています(Deutsch Bahn AGより)。食堂車(Boardbistro)は営業していますが、座席へのサービスは当面行われません。
● バス(Busreisen)
一列おきで着席し、車内ではマスクを着用。車内のトイレは使えません。ただし、対人間隔を保ちにくいとの指摘もあります(5月29日のDas Ersteの番組Brisant)。
● レストランでの食事(Restaurant)
テーブルの間隔は1.5メートル以上あけ、住所、氏名、連絡先を記載し、マスクを着けて着席します。途中で化粧室へ行く時、店を離れる際は店内でもマスクをしましょう。
ドイツ国外での措置
● ドイツからの渡航警告の出ていない国
ドイツの渡航警告から除外されている国々でも、それぞれ規制や制限が設けられていることがあります(例えば、英国は入国後に14日間の自己隔離)。
● 空港(Flughafen)
1.5メートルの対人間隔を取り、マスクを着用して移動します。空港内のサービス施設の営業が停止していて飲食物の入手が困難なこともあるため、出発地から食べ物を持参することが勧められています。
● 航空機機内(Flugzeugkabine)
定期的に座席周り、トイレのドアノブなどの消毒が行われます。機内は衛生上安全とされますが(Tagenschau24でのTUI旅行会社のインタビュー)、長時間に渡り対人間隔が必ずしも保てない状況で過ごすため、リスクを指摘する声もあります。
留意すべきポイント
● ドイツの人気観光地に旅行客が集中?
今夏はドイツ国内の観光地に旅行客が集中し、特に人気の高いジルト島、東フリースラント諸島、アルゴイ地方、黒森地方は多少混雑も予想されます。衛生概念が疎かにならないように注意が必要です。
● マスク持参を忘れずに
マスクを忘れた時は、ハンカチやバンダナのようなもので「鼻と口」両方を覆うようにしてください。不特定多数が用いるトイレを利用する際も、マスクを着用した方が安全かもしれません。なお、マスクは周囲への感染を防ぐのに役立ちます(5月7日のRKIの疫学レポート)。
● レジオネラ症への注意
長期間に渡りホテルの水道施設が使われていなかったため、レジオネラ症(Legionelleninfektion)のリスク増加への注意喚起が出されています(6月11日のRKIの疫学レポート)。バスルームやプールで感染し、呼吸器症状を起こすことも。特に高齢の方は注意が必要です。
分かってきたこと、分からないこと
● 子どもの感染率は低い可能性あり
ドイツの大学病院の共同研究によると、子どもの感染率は大人より低く(6月16日、ウルム大学のDebatin教授)、また他国からのデータ解析でも20歳以下の若年者の新型コロナウイルスの感染率は大人の約半分(6月16日のイギリスの医学誌 Nature Medicine)と報告されています。
● 抗体ができると感染しないのか?
新型コロナウイルスはウイルス専門家にとっても未知との遭遇で、まだ分かっていないことがたくさんあります。感染して抗体ができると2度と感染しないのか、来年はウイルス変異で再感染があり得るのか、ワクチン効果との関係でこれからの解明が待たれます。