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ドイツの冬の健康対策

ここ数年、クリスマスマーケットが始まる頃に風邪をひきます。冬は手の指先にあかぎれができて困ります。知人は毎年冬は何となく気が沈んであまり外出をしなくなるとのことです。冬の健康対策を教えてください。

Point

  • 冬は気温が低く、日照時間が短く、室内の湿度低下
  • 上気道炎やウイルス性胃腸炎が増える季節
  • 気分の落込み・過食・過眠は冬季うつのことも
  • 保湿クリームで皮ふ乾燥・あかぎれ予防
  • 太陽に当たってビタミンD不足を防ぐ
  • インフルエンザ予防はワクチン接種が最も効果的
  • 十分な睡眠、うがい、手洗いを心がけて

日本とドイツの気候の違い

● 気温が低い

ドイツの冬の気温(Außentemperatur)は低く、東京の1月の平均気温が5.6℃(気象庁、2018年)に対し、暖冬とされた2018年1月のベルリンは平均1.6℃、寒さの強かった2017年1月は平均マイナス0.8℃、同年のミュンヘンでは平均マイナス3.4℃でした。

● 日照時間が短い

冬期間の日照時間(Sonnenscheindauer)が短く、今年1月の東京の日照時間が222時間/月あったのに対し、デュッセルドルフのあるノルトライン=ヴェストファーレン州では約20%の45時間/月。これは、雪国の新潟の51時間/月とほぼ同じくらいです。

ドイツの各月の日照時間

ドイツの各月の日照時間
(デュッセルドルフでの値をもとに作図)

● 湿度(室内)が低い

冷たい外気の湿度(Luftfeuchtigkeit)は70〜80%と高いものの、同じ空気が暖かな屋内に入ると飽和水分量が増えるため一気に低湿度となり、乾燥した空気になります。

風邪(Erkältung)の季節

● 冷たい外気と乾燥した室内

冷たい外気は上気道(鼻や喉)の粘膜を刺激します。眠っている時にいびきをかく人や鼻炎のため口呼吸している人は、乾燥した空気が喉を直接刺激して炎症が起きやすくなります。

● 風邪ウイルスの活動も活発

冬はRSウイルス、アデノウイルス、コロナウイルスのように乾燥した冷たい温度を好む風邪ウイルスの活動が増します。感染性胃腸炎を引き起こすノロウイルス、ロタウイルスなども秋から冬にかけて流行します。

● 副鼻腔炎になったことのある人は注意

副鼻腔炎を患ったことのある人は、風邪や軽い鼻炎でも炎症が副鼻腔に波及することがあります。細菌が繁殖して黄色や緑色の鼻汁やたんが出てきたら要注意。

気分が沈みこむ冬

●「ウィンターブルー(冬季うつ)」をご存知ですか?

 寒い暗い冬になると、外に出たり人に会うのが億劫になりがち。仕事が前に進まず、朝から疲れた感じで、1日中眠い(過眠)、甘い炭水化物を欲する(過食)状態になると、「冬季うつ」(Winterdepression、ウィンターブルー、季節性情動障害)も考えられます。

ウィンターブルー(冬季うつ)を疑わせる症状

・ やる気が減退
・ 人に会うのが億劫
・ 昼間でも眠れる
・ 甘い炭水化物を好む
・ 何となく疲れている
・ ネガティブに考える
・ 冬にゆっくり始まり、春に改善

● 太陽光の不足が原因

日照時間が減ることで、体内時計と関係する脳の松果体からメラトニン分泌が順調に起こらなくなることが原因の1つと考えられています。諸症状は「冬眠」の前準備の名残と考える人もいます。

●「光療法」が効果的

強い光を浴びる光療法(Lichttherapie)により改善することが知られています。家庭用にも複数の家電メーカー(例えば、Bauer社など)より光療法機器が販売されています。効果を実感するには一定以上の強い光量(1万ルクス)を浴びることが必要で、単に部屋を明るくしておけば良いというわけではありません。

● 音楽会やパーティーへの参加

外出が億劫な季節でも、明るいコンサートホールで良い音楽を聞いたり、人と会って話をしているうちに次第に生活リズムが回復してくることがあります。ドイツの冬はコンサート、オペラ、バレエ公演の季節。せっかくのドイツ生活ですので、少しおしゃれして出かけてみるのも一案です。

ビタミンDが足りなくなる季節

● 紫外線と活性型ビタミンD

丈夫な骨をつくるには、太陽光(紫外線)が皮膚のコレステロールに作用して生成されるビタミンD3が必要になります。日照時間が少ないドイツの冬、1日中ほとんど室内で過ごしているという人はビタミンD不足に要注意です。

● 晴れた日は散歩、日光浴

日陰ができるくらいの晴れた週末は歩いて街へ散歩に出かけたり、自宅のバルコニーで日に当たりましょう。手、足、顔のどこでも週に2回30分ずつ(もしくは毎日10〜15分間)直射日光が当たるだけで、十分なビタミンDがつくられます(日本骨代謝学会)。

冬は皮膚乾燥の季節

● 指にあかぎれやひび割れ、どうして?

冬になると指先の皮膚の亀裂(Schrunde、rissige Haut)が痛くて困ることが。①寒くなって皮膚からの皮脂や発汗が減ること、②屋内の空気が乾燥していること、が関係しています。

● 予防、治療は保湿クリームで

予防のため、シャワー後にひび割れのできやすい部位に丹念に保湿クリーム(Feuchigkeitscreme)を塗ってください。痛い裂け傷ができてしまったら、創傷治癒軟膏(Wund- und Heilsalbe)を用います。亀裂に細菌感染を伴った場合は、医療機関を受診してください。

視力が落ちた?

● 街灯が少なく、コートは黒系の冬

ドイツは日本に比べて照明が少なく、冬の歩道では黒っぽいコートを着る人が多く見られます。周辺が暗いため対向車のヘッドライトは眩しく感じられ、自転車は自転車レーン内外を駆け抜けていき、ハッとすることがあります。

● 明るい時の視力、暗い時の視力

明るい時は網膜の錐体(すいたい)細胞、暗闇では桿体(かんたい)細胞という視細胞が働いています。明るいところでの視力自体に変化はなくとも、冬は暗いところでの運転が増えるため、より注意深く車の運転をするよう心がけましょう。

インフルエンザの予防接種は済みましたか?

● 今年は9月より流行

東京では、今年は9月よりインフルエンザが流行し始めました。年末年始を日本で過ごす予定の人は、ドイツで予防接種を受けていくことをおすすめします。

● ドイツと日本のワクチン内容は同じ

インフルエンザ予防ワクチンは日本もドイツも、毎年WHO(国際保健機構)が流行予想した4種のウイルス株に対してつくられているワクチンです。日本で受けてもドイツで受けても予防効果は同じです。

● 100%予防するものではありません

インフルエンザの予防接種は①インフルエンザにかかりにくくする、②症状を重症化させない、③合併症を減らす、などの効果があります。100%予防するわけではないので、うがい・手洗いは欠かさずに。

● インフルエンザと診断されたら

インフルエンザにかかったら(もしくは強く疑われたら)、無理して出勤、登校はせず、また長距離飛行機などでの旅行はあきらめてください。新たな感染源としてインフルエンザの拡散を防ぐ上で大切です。

冬を健康に乗り切るために

・ とにかく十分な睡眠をとる
・ 帰宅したらうがい・手洗い
・ 晴れた日は太陽に当たる
・ 入浴後は保湿クリームも
・ 時々おしゃれして外出
・ インフルエンザは自宅療養

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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