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血圧の基礎知識 -高血圧のリスク-

40代なのですが、健康診断で肥満と高血圧を指摘されました。父も血圧が高く、このところ仕事が忙しかったので心配です。生活改善で血圧は下がるのでしょうか?日常生活で何か気を付けることがあれば、教えていただきたいです。

Point

  • 140/85mmHg以上は高血圧
  • 自宅血圧測定の勧め
  • 高血圧はサイレントキラー
  • 徐々に動脈硬化を促進
  • 高血圧の90%が本態性高血圧
  • 妊婦の降圧剤選択の留意点

血圧とは何ですか?

血管壁にかかる圧力

血圧(Blutdruck)とは心臓が血液を全身に送り出す際に血管壁にかかる圧力です。測定値はmmHg(ミリメーター水銀柱)で表されます。血圧を決めるのは、①1回の心収縮で心臓から送り出される血液量、②血管(動脈)の柔軟さ、③全身の血管内の循環血液量です。心臓が収縮して血液を送り出す際の最大圧力が「収縮期血圧」(最高血圧、上の血圧値、systolicher Blutdruk、Maximaler Blutdruck, der obere Wert)です。心臓が拡張し血液が戻る際の最小圧力が「拡張期血圧」(最低血圧、下の血圧、diastolischer Blutdruck、der untere Wert)です。高血圧の定義 (Bluthochdruck、Hypertonie、hoher Blutdruck)診察室では、静かな適温の室内で椅子に座り、心臓の高さで、右上腕で2回測定した平均値が血圧(Büroblutdruck)として記録されます。収縮期血圧が120mmHg未満、拡張期血圧が80mmHg未満の場合が正常血圧です。診察室での収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が85mmHg以上であれば、高血圧と診断されます(日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025」)。

家庭血圧の意義(Heimblutdruck)

家庭血圧測定は情報の宝庫です。自宅での収縮期血圧が135mmHg以上あれば高血圧です。上腕で測るタイプの血圧計が推奨されています(日本高血圧学会)。

白衣高血圧と仮面高血圧

診察室だけで血圧が高い場合が「白衣高血圧」(Weißkittelhypertonie)です。外来の血圧は正常で、自宅での血圧が高い場合が「仮面高血圧」(Maskierte Hypertonie)です。

高血圧はサイレントキラー

高血圧状態(仮面高血圧も含め[2014年のHpertension誌])が続くと、圧に耐えるために血管壁が厚く硬くなります。自覚症状がないまま動脈硬化が進み、脳出血、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞など致命的な病気につながるため「サイレントキラー」(stummer Killer)と呼ばれます。

高血圧のほとんどが本態性

原因が特定できない、加齢、遺伝的素因、生活習慣、ストレスなどが関与する高血圧を、医学用語で「本態性高血圧」(essentielle Hypertonie、primäre Hypertonie)といいます。高血圧の90%を占め(2003年のLancet誌)、一般的に高血圧というとき、この本態性高血圧を意味します。

原因除去で治る二次性高血圧(sekundäre Hypertonie)

原因がある高血圧で、高血圧全体の約10%を占めます(次項)。主に35歳未満の若年者に多く、降圧薬の効果が乏しく、特徴的な臨床所見を伴う病気もあります。

腎血管性高血圧(renovaskuläre Hypertonie)

腎動脈が細くなった結果、腎臓への血流確保のための昇圧機序が働いて血圧が上昇します。腎動脈の細くなった部分を風船カテーテルで拡げてやると、血圧は正常化します。

内分泌(ホルモン)疾患

副腎皮質でのアルドステロン産生が増え、血圧が上がる原発性アルドステロン症、コーチゾル分泌が増えるクッシング症候群、副腎髄質やほかの場所でのカテコールアミン産生が増える褐色細胞腫があります。

腎臓の病気

慢性腎臓病(CKD)では、腎実質性高血圧がみられます。蛋白尿、尿潜血、血清クレアチニン値の上昇などがみられます。

薬剤、漢方、サプリメントによる高血圧

解熱鎮痛薬の連用(2007年のCirculation誌)、甘草(カンゾウ)製剤(2007年のInt J Toxicol[Suppl.2])、長期のステロイド治療(2007年のRheumatol誌)、経口避妊薬(2007年のEur J Obstet Gynecol誌)で血圧が上昇することがあります。

主な高血圧治療薬

カルシウム拮抗薬

血管平滑筋に直接作用して動脈血管を拡げます。もともとは冠動脈拡張剤として開発され、当時の副作用であった血圧低下が、現在はその主副が交代し、降圧薬として重要な位置を占めています。

ARBとACE阻害薬

ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)とACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬はともに、レニン・アンジオテンシン系という昇圧機構を抑える降圧薬です。ACE阻害薬は突然の空咳が問題になることがあります。妊娠可能な女性では注意が必要です。

少量のサイアザイド利尿薬

塩分を多く摂る人や食塩感受性高血圧で効果が期待できます。上述2項目の血管拡張系の降圧薬と併用して用いられることがあります。

β遮断薬

若年者、ストレスによる高血圧、頻脈傾向のある高血圧など、交感神経系の活動が亢進したタイプの高血圧に効果が期待されます。

妊娠時の高血圧

妊娠高血圧症候群

妊娠時の血圧が140/90mmHg以上の場合が「妊娠高血圧症候群」です。血圧が160/110mmHg以上の場合、母体の臓器障害、子宮胎盤機能障害を認める場合は「重症妊娠高血圧症候群」と診断されます。

服用できない降圧薬も

前記のARBとACE阻害薬は妊娠初期の催奇形性、妊娠中期の胎児毒性が報告されているため、妊娠あるいは妊娠の可能性ある女性では「禁忌」(Kontraindikation)です(1991年のTeratorogy、2005年のBJOG誌、2012年の Hypertens誌)。

日常生活での留意点

どうして塩分取り過ぎはよくない?

血液中の塩分(ナトリウム)濃度を薄めて一定にしようとするため、塩分を取り摂り過ぎると水分も増えて、血管壁への圧力が高まります。

身体運動・減量の効果

有酸素運動(2014年のCirculation誌)、レジスタンス運動(2020年のHypertension誌、2022年のEur J Cardiol誌)で血圧低下への有効性が示されています。肥満者では、体重を1kg減量するごとに、収縮期血圧で平均3.7mmHg、拡張期血圧で2.7mmHgの降圧が報告されています(2001年のAnn Intern Med誌)。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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