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ドイツの花粉症事情

ドイツに来て4年目になり、昨年から春の時期に涙、くしゃみ、鼻水がひどく出るようになりました。体のだるさや頭がボーッとするのを感じる日もあります。来年は本帰国の予定なのですが、何か良い対処法はあるでしょうか?

Point

  • 鼻炎、結膜炎症状、時に皮ふ、全身症状も
  • ドイツではシラカバ、イネ科植物の花粉症が多い
  • 花粉暴露を減らす工夫が大切
  • 抗ヒスタミン薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬が有効
  • 3~5年かけての減感作療法も

花粉症について

花粉症とは(Heuschnupfen、Pollenallergie)

花粉に対して生じる即時型アレルギー(Typ-I-Allergie、Typsofortallergie)で、花粉に接して数秒~数分以内に症状が現れます。医学的に「季節性アレルギー性鼻炎」(allergische Rhinitis)、花粉による「アレルギー性結膜炎」(allergische Konjunktivitis)と呼ばれることも。

花粉症を生じる仕組み

特定の花粉に数年暴露されると、その花粉(抗原)に対する抗体(IgE)が作られます。IgEは鼻や目の粘膜にある免疫細胞の表面に存在し、花粉と結合すると抗原抗体反応を生じ、免疫細胞からヒスタミン、ロイコトリエンなどの化学物質を放出、神経や血管を刺激して鼻粘膜と目の結膜のアレルギー症状を引き起こします。

花粉症の4大症状

①くしゃみ(Niesen)、②鼻水(Schnupfen)、③鼻詰まり(verstopfte Nase)、④目のかゆみ・涙(juckende Augen)が4大症状です。鼻水は透明で水のようにサラサラしています。目のかゆみ・涙は風邪ではみられない、花粉症の特徴の一つです。

花粉皮ふ炎(Hautreizung durch Pollenallergie)

花粉が付着で、頬、首などに赤み、かゆみ、乾燥が生じることがあります。花粉が付着しやすいまぶた、頬、首、顔周りなど露出部に多く現れます。

花粉症の全身症状

体が熱っぽい、頭が重い、体がだるい、集中力の低下などの全身症状を伴うことがあります。免疫系にエネルギーが消費されること、体が常に炎症状態にあること、鼻症状に伴う睡眠の質の低下なども影響します。

果物アレルギーと密接な関係

口腔アレルギー症候群(あるいは果実野菜過敏症)ともいわれ、花粉症と密接な関係があります。花粉症を起こす樹木・草木と植物学的に同じ科に属する果物を口にすると、口唇や口内のピリピリ感など果物アレルギーを起こすことがあります(詳しくは本誌937号を参照)。

ドイツにおける花粉症

日本はスギ、ドイツではシラカバ、イネ科植物

ドイツで最も頻度の高い花粉症はシラカバ(Birke)、次に多いのはイネ科植物(Gräser)です。ドイツにはスギ、ヒノキはないため、スギ花粉症の人は楽になります。

2月〜春は早咲きの樹木花粉症

1月末ごろからヘーゼル(ハシバミ、Hasel )、3月はハンノキ属(Erle)、3月末〜5月はシラカバ、さらにトリネコ(Esche)、ポプラ(Pappel)、ニレ(Ulme)、ヤナギ(Weide)などの「樹木花粉」(Baumpollen)が飛び交います。これらは1年のうち早い時期に花粉を飛ばすので、早咲き種(Frühblüher)とも呼ばれます。

初夏〜秋は遅咲きの草木花粉症

5~8月の初夏は「イネ科植物」が花粉を飛ばす季節です。7月下旬〜8月(年によっては10月頃まで)にかけては、ブタクサ(Ambrosia)、ヨモギ(Beifuß)の花粉が花粉症の原因となります。これらは遅咲き種(Spätblüher)と呼ばれます。

花粉症の有病率

2008~2011年の調査では、ドイツに暮らす成人の約15%に花粉症がみられています(2013年のロベルト・コッホ研究所[RKI]のDEGS1調査報告)。医療機関で花粉症と診断された小児・青少年の場合は、約10%と報告されています(2018年のRKIのKiGGS調査報告)。ドイツ保険中央研究所(Zi)は、花粉症の頻度は年々増加してきていると報告しています(2021年のZiのプレスリリース)。

花粉症の診断

特定の季節にみられる鼻炎・結膜炎

毎年決まった季節(期間)だけに鼻炎および結膜炎(Rhinokonjunktivitis)を発症するため、診断は比較的容易です。結膜炎(目のかゆみ、流涙)を伴う鼻炎症状は、風邪との鑑別になります。

花粉症の検査

血中IgE値が上昇していると、現在何らかのアレルギー反応が起きていることが分かります。特定の樹木・草木の花粉(アレルゲン)との関係を知るには、疑われる花粉に対する皮ふテスト(Prick-Test)、あるいは特異的IgE抗体を調べます。

花粉への暴露を減らす工夫

外出での花粉暴露の軽減

その日の花粉情報(Pollenflug-Vorhersage)が役に立ちます。外出時のマスクの着用、さらに花粉が付着しにくい素材の衣服が勧められます。花粉期間中の転地療法(旅行を含める)は最も効果的ですが、誰もが簡単にできるわけではありません。

帰宅時に花粉を除去

入口で服や髪に付着した花粉をブラシ等で払い落とし、外出時の衣服の花粉を屋内に撒き散らさないように、すぐに室内着に着替えます。洗顔・洗眼・うがい、鼻うがい(WEPA Nasenspülkanneなど)は有用です。

空気清浄機の利用

部屋の広さに対応したHEPAフィルター付きの空気清浄機(Luftreiniger)は一定の効果を期待できます。床に落ちている花粉は除去できないので、機器を止めて歩き回ると、再び花粉が舞い上がることもあります。

花粉症の治療

抗ヒスタミン薬(Antihistaminika)

経口薬、点鼻薬、点眼薬が、花粉症治療に広く用いられており、薬局にて処方箋なしで購入できます。経口薬(セチリジン、ロラタジンなど)では服薬後に少し眠くなることがあるため、長距離運転前の服用は避けるようにします。目薬や点鼻薬を使用するときは、ぬるま湯で目や鼻腔をすすいでからの方が効果的です。

ロイコトリエン受容体拮抗薬(Leukotrien-Rezeptor-Antagonisten)

アレルギー性鼻炎(特に鼻づまり)や気管支喘息の治療に用いられる薬です(モンテルカストなど)。炎症や気管支収縮を引き起こす物質であるロイコトリエンの働きをブロックします。服用から数日後に効果が出てきます。

ステロイド製剤(Kortisonpräparate)

中等症以上で点鼻薬として用いられます。なお血管収縮性点鼻薬(市販の即効タイプ)は長期使用で薬剤性鼻炎を起こして悪化させることもあります。

減感作療法(Hyposensibilisierung、Desensibilisierung)

特異的免疫療法(SIT)ともいいます。通常は約3~5年間にわたり、アレルギー反応を引き起こさない微量のアレルゲンを徐々に増量しながら繰り返し投与していきます。免疫システムを慣らすことで、アレルギー反応を起こさない「免疫寛容」状態への誘導を目的とします。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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ドイツニュースダイジェスト編集部
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