暖かくなってくると、平日でさえ一直線に近場の公園に向かい、
芝生にごろんと寝転がってランチを楽しんでしまう英国人。
彼らはとにかく日光浴+食事という組み合わせが大好きだ。
そんなお国柄もあってか、英国ではピクニックに適した環境やグッズがとても充実している。
せっかくだから、その素敵な文化に便乗してしまおう!ということで、
今回は、歴史からグッズ、休日をのんびり過ごすのに最適な公園まで、
ピクニックを十二分に楽しむための諸々をご紹介。
お気に入りのグッズを片手に、さわやかな夏の英国を満喫しに出掛けよう。
(取材・文: Shoko Rudquist)
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意外と知らない
ピクニックの歴史
ピクニックの起源
単純に外でごはんを頂くのではなく、家族や友人らと集って周りの景色を楽しみながらお弁当を広げるいわゆる「ピクニック」が、いつ頃から人々の生活に定着したのか、ご存知だろうか。実はこの風習、17世紀のフランスで生まれたと言われている。ピクニックに関する記述が確認された最も古い印刷物は、1692年に発刊された「Origines de la Langue Françoise」。フランス語で「pique-nique」と呼ばれた、屋外で食事を楽しむこのスタイルは、時を経て英国にもやってきた。18世紀半ばのことだ。
その文化は、19世紀に入って花開く。19世紀初頭には、当時のロンドン社交界の花形たちによる、ピクニックを楽しむためのサークル「ピクニック・ソサエティー」も誕生した。ちなみに、彼らが出会い、このサークルが誕生するきっかけとなった場所は、当時ロンドン中心部のオックスフォード・ストリートにあった、「ザ・パンテオン」と呼ばれた劇場。今日この跡地に立つのは、老舗スーパーマーケットの「マークス & スペンサー・パンテオン支店(173 Oxford Street W1D 2JR)」だ。

ピクニックを知り尽くしたF&Mの専属歴史家
アンドレアさんにインタビュー
英国でピクニックがどう発展したのかを知るため、英国内で最も古いピクニック・ハンパー販売の歴史を誇る英国王室御用達デパート、「フォートナム & メイソン」(以下、「F&M」)の専属歴史家、アンドレアさん(右写真)にお話を伺った。
まず、この「ハンパー」なる単語、英国に来て初めて耳にしたという人も多いはずだ。ハンパーとは一体、何なのだろう。
「元来はウィッカー(籐など、植物性の繊維)を編んだ籠のことをそう呼んでいました。ですが時間とともに、ピクニック用の食器や食料を詰める籠のことを指すようになったとされています。英国ではもともと、玩具やリネンの収納、また旅行かばんとして使われることが多かったのですが、F&Mでも、やはり当初は顧客の旅行用収納ケースとして売られていました。現在の形のハンパーの販売が開始されたのは、1738年のこと。当時、英国全体で数百家族ほどしかいなかった支配階級の人々を顧客としていた当店に、コーンウォールやバースといった地方の邸宅に向かう顧客から、『食料品などを詰めて持ち運べる籠が必要だ』という声が寄せられたのが始まりでした。ただ、当時はまだ、外で食事をとるという行為は労働者たちが行うこととみなされていて、上流階級の間ではありえないこととされていましたね」。

1848年のピクニックの様子。当時の3D映像とも言える「ステレオスコピック」の手法で撮影され、色づけされている。若干違う角度から撮られた2枚の画像は、専用の特殊なめがねをかけて見ると、画像が浮き上がって立体的に見える
上流階級ではありえなかった外での食事。ところがフランスの影響もあり、19世紀半ばに差し掛かる頃には、にわかにピクニック熱が盛り上がる。ロンドンで「ピクニック・ソサエティー」が活動していたのもこの頃だ。それでは、英国に広がり始めたピクニックとは、どのようなものだったのだろうか。
「ちょうどヴィクトリア朝時代に当たるこの時代、ピクニックは特権階級の人々が郊外の邸宅の庭などに集まり、食事を楽しむためのものとなっていました。持ち寄られる食事の内容は、パンにバター、ハムやチキン、ハード・チーズ、サラダ、『ホット・ウォーター・クラスト』と呼ばれる英国ならではのパイ生地を用いたポークやキジのパイ、桃やぶどうなどのフルーツや、乾燥フルーツがぎっしり詰まったケーキ、『スモール・ビアー』と呼ばれたアルコール度の低いビールの一種など。かなり豪勢ですよね。ポート・ワインやシェリー酒といった甘めのお酒も好まれたようです。
当店で扱っていたハンパーは、当時庶民に人気のあった風刺漫画雑誌「PUNCH」の誌面にも登場したことがあります。クーラー・バッグなどない時代ですから、内部に藁を敷き、バターは冷たいレタスの葉に包むなどして温度調節を工夫しました。また、携帯用として最適な竹を使った使い捨てのカトラリー類を開発したり、今ではすっかりおなじみとなった、ひき肉でゆで卵を包み丸い形に整えた「スコッチ・エッグ」を生み出したのも当店なんですよ。
19世紀も終わりに近づくと、競馬やポロといった屋外のスポーツ観戦時にもピクニックが楽しまれるようになりました。20世紀初頭には車の利用も増え、トランクにぴったりはまる仕様のハンパーなども多く生産されるようになったのです」。
F&Mでは現在も様々なハンパーを販売中。
www.fortnumandmason.com
こうして、私たちの生活に浸透していったピクニック。次は理屈抜きに、ピクニックに持って行きたいグッズの数々をご紹介していこう。
これ一つで準備完了!
こだわりの、食事付きハンパーいろいろ
British Fine Foods The Goodwood £55
www.britishfinefoods.com
「ベスト・フード・メールオーダー」に選ばれた実績を持つ食品サイトが監修。新登場の「ザ・グッドウッド」には、様々なフード賞に輝いた選りすぐりの食品が詰まっている。
http://london.langhamhotels.co.uk
ピクニック用のラグまで付いた、正統派アフタヌーン・ティー・メニュー。ホテルの宿泊とハンパー、リージェンツ・パーク野外劇場のチケットがセットになったパッケージも。
www.daylesfordorganic.com
オーガニック・カフェを展開する「デイレスフォード」では、電話(0800 083 1233)又は店頭で選んだものを籠に詰めてハンパーにしてくれる。料金は内容によって異なる。
www.carluccios.com
ロンドンに多くの店舗を展開する「カールッチョズ」からは、フォカッチャやパスタ・サラダなどが詰められた、イタリアンなハンパーが登場。キッズ用やベジタリアン用も扱っている。
300 Oxford Street, London W1A 1EX
庶民派デパート「ジョン・ルイス」オックスフォード・ストリート店のフード・ホールでは、店内の「ウェイトローズ」で購入した食品をハンパーにしてもらえる。値段は内容により異なる。
かわいくて便利!
ピクニックをより楽しむためのグッズ紹介
王道ハンパーから屋外用ゲーム、そして雨の多い英国には欠かせない防水グッズまで……。どこへでも、何度でも連れて行きたいピクニック・グッズをテーマ別にご紹介。
Fortnum & Mason Gordon Picnic Hamper
(4人用)£250
これぞ英国のピクニック、シンプルな食器がセットになったクラシックなハンパー。英国にいる間に、一つぐらいは手に入れたい?
www.fortnumandmason.com
Optima Blyton Tin(2人用)£99
ハンパーを専門に扱う「オプティマ」社は、レトロな缶の容器に英国らしい花柄の食器が映える、ロマンティックなモデルも展開中。
www.selfridges.com *
Johnston Reversible Tweed Throw
£130
英国でピクニック・ブランケットと言えば、カシミヤの老舗ジョンストン。同ブランドの品はフランス皇帝ナポレオンも愛用していたとか。
www.johnstonscashmere.com
Concept Safari Picnic Bag(4人用)
£105
ステンレスのカップやまな板まで付いた本格セット。普通のバックパックと変わらぬ見た目も、運ぶ男性にはありがたい!?
www.johnlewis.com
Cath Kidston Cool Bag £55
飲み物を詰めるとずっしりと重くなってしまうクーラー・バッグは、男子でも文句を言わないデザインのものをセレクト。
www.cathkidston.co.uk
John Lewis Walker Rug (防水)
£25
雨の多い英国では、当日晴れても、前日の雨で芝生が若干湿っているなんていうことも。防水仕様のブランケットなら安心。
www.johnlewis.com
Cath Kidston Flatpack Picnic Set
£15
ピクニック後は身軽に帰りたいなら、すべてが紙や木でできたハンパーをチョイス。ラブリーな柄付きなら気分も盛り上がる。
www.cathkidston.com
Rice Kids Cooler Bag (保冷剤付き)
£15
お弁当用のクーラー・バッグは、デザートやドレッシングを冷たいまま持って行きたいときにも大活躍。保冷剤も付いて万全。
16a Neals Yard WC2H 9DP*
Sophie Conran Games Bucket £39.95
これさえあれば子供が退屈してしまう心配なし!? 数種の屋外用ゲームがセットになったキット。
www.selfridges.com *
John Lewis Bright Ice Cream Bowls with Spoons Set
£8
ハンパーに意外と含まれていないのが、深さのあるボウル。お皿を安定させて食べるのが苦手な子供たちでも、これなら大丈夫そう。
www.selfridges.com *
Disposable Picnic BBQ£7.99
使い捨てのコンロがあればバーベキューもできる。ただし芝生の上で使うと、芝生がそこだけ焦げてしまうこともあるので要注意。
www.waitrose.co.uk **が付いているのは、主な販売サイト / ショップ
グッズやお弁当の準備ができたら
お気に入りのピクニック・スポット探し
納得のいくグッズとお弁当の準備が整ったら、後は好みのピクニック・サイトを探すのみ。ロンドンには、趣の違う公園が街中や郊外に点在する。それぞれの特徴を吟味して、お気に入りのスポットを見付けよう。
Kenwood House
ケンウッド・ハウス
Hampstead Lane, London NW3 7JR
020 8348 1286
Archway駅からバス
www.english-heritage.org.uk/
ロンドン北部にある広大な公園ハムステッド・ヒースの、北端にあるエリア。「ケンウッド・ハウス」とは、この小高い丘の上に立つ、素朴ながらも洗練されたカントリー・ハウスのことだ。歴史的な重要建築物として国に登録されており、クリーム色のすっきりとした外観や、テラスに置かれた鉄製ベンチなどが、建てられた17世紀当時の穏やかな暮らしを彷彿させる。
そんな美しい邸宅が佇む優雅な丘は、少し大人びたピクニックにぴったり。読みかけの本と軽食を用意して、のんびりくつろぎに出掛けたい。読書に飽きたらケンウッド・ハウスに入館し、品良くこざっぱりとまとめられた落ち着いた内装や壁の絵画を鑑賞してもいいだろう。建物を出てすぐの広場は、緑に囲まれた屋外型カフェになっており、オーガニックの軽食やスイーツもいただける。地下鉄の駅からバスと、たどり着くには少々根気を要するものの、不便さを差し引いても十分な魅力のあるピクニック・サイトだ。夏の間は、日替わりで様々なゲストが登場する「ピクニック・コンサート」も催される。
The Regent's Park
ザ・リージェンツ・パーク
London NW1 4NR
020 7486 7905
Regent's Park駅より徒歩5分
www.royalparks.gov.uk/
ロンドンの街中で、週末の一日を目いっぱい効率良く楽しみたければこちら。まっすぐに伸びる並木道、その数3万本という色とりどりのバラが咲き乱れるローズ・ガーデン、運河、スポーツ広場、そして見事なイングリッシュ・ガーデンと、様々な要素が詰まった公園だ。広過ぎることもないので、お隣のグループとちょうど良い距離を保ちつつもアクティビティーのエリアは共用するような、和気あいあいとしたピクニックが楽しめる。ゾーン1内に位置し、駅からも徒歩数分。気まぐれなお天気に振り回されがちなロンドンでは、思い立ったらすぐに行けるという利便性もうれしい。
毎年5〜9月にかけては、園内の野外劇場で演劇やオペラが催されることでも有名。ほかにも無料のコンサートや大型イベントが多数、開催され、ピクニックがてら楽しめる。また、19世紀初頭の建築家/都市計画家ジョン・ナッシュが手掛けた建築物も、公園内や周辺に点在。リージェント・ストリートやトラファルガー広場を設計、「外観の建築家」とも呼ばれたナッシュによる優雅な建物をのんびり眺めて回るのも悪くなさそうだ。
Morden Hall Park
モードン・ホール・パーク
Morden Hall Road, London SM4 5JD
020 8545 6850
Morden駅より徒歩5分
www.nationaltrust.org.uk/
広い丘陵がどこまでも続き、小川や湖、静かな木立が続く公園。まるで森のような「モードン・ホール・パーク」は、英国の歴史的建築物を保存・管理する「ナショナル・トラスト」所有の公園の一つだ。ただし手付かずの自然ではなく、小川には白く塗られたアイアン・ワークの麗しい橋が掛かっていたり、レンガ製の水路があったりと、人の気配が感じられる造りになっている。ゾーン4と、都心からは若干離れた地区にあるものの、地下鉄ノーザン線の南の終点モードン駅から徒歩で5分ほどと、公共交通機関ですんなり行くことのできる地の利も、車を持たない人間にとってはありがたい。
実はこちらの公園は、1922年までは嗅ぎタバコ工場があった場所。当時のオーナーの邸宅は、今も園内に佇んでいる。また、その広大な土地を利用したフットパスや乗馬のコースがあるのも特徴だ。事前に申請すれば釣りもできるので、お父さんも喜びそう。ゲート付近にはカフェやガーデン・センターも併設。鉢植えを一つ購入すれば、楽しかった一日の思い出をお持ち帰りしたような気分になれそうだ。
Greenwich Park
グリニッジ・パーク
London SE10 8QY
020 8294 2548
Cutty Sark for Maritime Greenwich駅より徒歩5分
www.royalparks.gov.uk/
ちょっぴりアカデミックなピクニックがお好みなら、こちらの公園へ。言わずと知れた「グリニッジ標準時」における経度0度の地点である「グリニッジ天文台」のある公園だ。歴史に残る天文学者や物理学者たちが行き来したこの場所では、まっすぐに伸びて数学的な模様を描く公園の通り道も、その学術的な背景を思い起こさせる。天文台のある丘から眼下を見れば、厳かな国立海事博物館の建物の背後にロンドンの町並みがどこまでも広がり、気分爽快。天文台には時計や天文学の博物館、プラネタリウムも併設されており、子供たちの知的好奇心をそそりそうだ。
Kensington Gardens
ケンジントン・ガーデンズ
London W2 2UH
020 7262 5484
Lancaster Gate / Queensway駅から徒歩1分
www.royalparks.gov.uk/
ハイド・パークの西に位置する「ケンジントン・ガーデンズ」。ヴィクトリア女王(当時は王女)や故ダイアナ元妃なども居住したケンジントン宮殿を有するだけあり、数ある王立公園の中でも群を抜いてエレガントなことで知られている。19世紀初頭までは、単に園内を散歩するだけでもドレス・コードがあったほどだ。「王室の庭」と呼ぶにふさわしい園内は、隅々まで手入れの行き届いた見事な芝や植木、瀟洒な噴水が配置された、絵に描いたような中世の佇まいを今も保っている。ここでは、クラシックな正統派ピクニックを楽しみたい。
Alexandra Palace
アレクサンドラ宮殿
London N22 7AY
020 8365 2121
Alexandra Palace駅より徒歩5分
www.alexandrapalace.com
使える車があるのなら、都心から少々離れた、こんな宮殿の庭でのピクニックはどうだろう。1873年に起こった火災の後、市民のレクリエーション・センターとして再建されたアレクサンドラ宮殿は、今日も、アンティーク・フェアなど大型イベントの会場として利用されている。高台にある広大な敷地内には、ボートが楽しめる湖、鹿を観察できるミニ動物園などもあり、事前に予約すればゴルフも可能。また、ロンドンでは珍しい、一年中滑れるアイス・スケートのリンクも。ピクニックのついでに様々なアクティビティーを楽しみたい、欲張りさんに。



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英国の日本語学習者たちが選んだお気に入りの日本食ナンバー1は、やっぱりお寿司。酢飯と魚介類を組み合わせたこの日本の伝統的な料理は、いまや世界各国にある大手スーパーマーケットのお惣菜コーナーでも見かけるようになった。押し寿司、ちらし寿司、稲荷寿司といった様々な種類がある中で、回答者の間では江戸前握り寿司が一番人気のよう。英国では、英国人起業家のサイモン・ウッドロフが回転寿司チェーン「YO! Sushi」を始めて成功を収めている。



東を代表する日本食が寿司ならば、西の横綱はお好み焼き。ということで、関西地方及び広島で根強い人気を持つ大衆料理、お好み焼きが第2位にランク・イン。生魚を食べることに抵抗を持つ英国人たちにとって、バーベキューのごとく、鉄板を使って焼き上げるパンケーキに似たお好み焼きには、よりなじみを感じやすいのかもしれない。ちなみに、今回のアンケートでお好み焼きに1票を投じた人の中には、関西地方への滞在経験者が複数名いた。



寿司のように米と一緒に握ったり巻いたりするのではなく、新鮮な魚を生で醤油やワサビに付けて食べる刺身の人気も高い。食感が生々しく、食中毒の恐れがある「Raw Fish(生魚)」であるとして、つい最近までの欧米諸国では刺身料理を敬遠する向きがあった。しかし、健康的なイメージに溢れた魚介類の本来の味を堪能できる調理法として、近年、人気は急上昇。寿司と同様、英国にある多くの日本食レストランで刺身メニューが用意されている。


3位に入ったのは天ぷら。野菜や魚介類など幅広い材料を扱えることへの評価が高い様子。ロンドン市内で開催される日本関連イベントでの立食パーティーなどに頻繁に登場するなどして、英国人の間でも既におなじみのメニューとなっている。ご飯、うどん、そばといった様々な主食とセットで提供されたり、天つゆのほかにもソースや塩といった世界各国で簡単に入手できる調味料との相性の良さから、英国でも大衆料理として認知されつつあるよう。

中国の麺料理に起源を持つと言われるラーメンは、今や日本食としても知られるようになった。醤油、塩、味噌、豚骨といったスープの味付け、チャーシュー、ワンタン、メンマ、海苔といった具、さらには札幌、喜多方、博多といった地域の特色を出したものまで、そのバラエティーの豊かさが様々な好みに応えることができるという点に強みがある。また熱湯をかけるだけで手軽に調理できてしまうインスタント食品として活用している人も。



焼き鳥こそ、最も日本の風流を感じさせる食べ物なのかもしれない。お祭りの屋台で出されるおやつや、サラリーマンが仕事帰りに立ち寄る居酒屋のメニューとして語る回答者が多かった。串刺しにされているので、一口ずつ味わうことができるというのも醍醐味なのだろう。もも肉や胸肉、手羽先、肝臓といった異なる部位に加えて、ひき肉を団子状にしたつくね、ネギと肉を交互に刺したねぎまなどのメニューを熟知した人は、確かに日本通に見える。
第4位のラーメンに続いて、小麦粉を原料とする日本の麺料理であるうどんは、6位にランク・インした。油揚げを入れるきつねうどん、天かすを散りばめたたぬきうどん、生卵を落とした月見うどんにカレーうどんなど、回答者たちは各種類に精通している様子。ちなみにラーメン、うどんと並んで日本の代表的な麺料理であるそばは、ランク外に留まった。そばよりも、歯ごたえがよりしっかりしているうどんの方が好みという声あり。



英国が、かつて植民地であったインドから輸入し、脚気防止に適した栄養食として英国海軍が改良した後、ついには日本の海軍へと伝わったと言われるカレーライス。その歴史を受け継いでとのことなのか、現在でも日本の海上自衛隊は週に1回はカレーを食するという。つまり、カレーライスは日本が英国から受け継いだ大切な食文化と言うわけ。日本では「洋食」と呼ばれるのに、英国では「日本食」と認知されているというのは何とも皮肉。

5位にランク・インした焼き鳥と同じく、日本語学習者たちにとっては、タコ焼きは日本の情景を想起させる食べ物のようだ。とりわけ、関西地方の商店やお祭りの屋台のイメージが強いよう。回答者の中には、タコ焼きの魅力を関西弁で語る人もいた。大勢で、一口サイズに分けあって一緒に食べることのできるおやつとして老若男女に愛されているのは英国でも一緒。日本人宅での日本食パーティーや日本関連イベントに出店する屋台で見掛けるおなじみのメニュー。
本家本元の中国では、紀元前から作られていたとの記録も残っているというほどの長い歴史を持つ餃子。日本では戦後になってから庶民の食卓でも出されるようになったのだが、既に立派な日本食となっている。皮で具を包む作業が分業しやすいことから、日本食パーティーを開く際などには、作る過程をも一緒に楽しむことができるというのも人気の理由。食べておいしいだけではなく、作るのも楽しい、一石二鳥の料理として重宝されているようだ。
意外にも、味噌汁が7位にランク・インした。日本の食卓に欠かせない、最も代表的な副食とでも言うべき味噌汁だが、英国にある日本食レストランでお勧めメニューとして掲げられることは極めて稀。その味噌汁に4票が投じられるとは、日本の家庭料理もそれだけ英国の食文化に浸透してきたということなのかもしれない。味噌と出汁でできた汁の中に、野菜、魚、肉ととにかくどんな材料でも入れることができるので、家庭料理としては便利なメニューなのだろう。
主に醤油、砂糖、日本酒を混ぜて作ったたれを、ブリやサケといった魚や、鶏肉などに塗って焼く照り焼きは、確かに日本ならではの味である。食材に塗られたたれの糖分が独特のつやを出すので「照り焼き」と呼ばれるようになったとの所以も興味をそそるらしい。日本ではお米と相性の良いおかずとして知られるが、英国を含む西欧諸国で最も人気のある照り焼き料理は恐らくテリヤキ・バーガーだ。「Sushi」と同様、「Teriyaki」も既に英語の語彙の仲間入りを果たした。
カツ丼、味噌カツなどの回答を含むと、トンカツへは4票が投じられた。明治時代に英国から紹介されたカツレツに改良を加え、やがて日本食の仲間入りを果たしたと言われている。どうりで英国人の好みに合うわけだ。カツレツよりも肉を厚切りにし、そしてより粗めのパン粉を使った衣で揚げるなどの特徴がある。トンカツの呼称を「勝つ」とかけて、受験生が入試の直前に食べたりするなど、日本では縁起かつぎにも使われることを知っている回答者もいた。


























ウィンブルドン選手権では、生クリームをかけたイチゴを食べながら観戦するというのが恒例となっている。開催期間には、生クリームとイチゴのセットを大々的に売り出すスーパーマーケットも多い。さらには合わせてシャンパンを嗜む人も。大会主催者によると、大会中に空けられるシャンパンのボトルは毎年の平均で1万2500本、さらにイチゴの消費量は2万7000キロ。宮廷スポーツとして始まったテニスの伝統を反映した優雅な習慣とのこと。
試合中に、俊敏な動きでボール拾いや選手へのボールの受け渡しを行うボール・ボーイ & ボール・ガール。ウィンブルドン選手権では、地元の子供たちがこの大役を担う。同地区近郊のワーズワース、マートン、サットン地区の学校から毎年15歳前後の応募者を募り、テニスのルールについての筆記試験や体力測定を実施した上で適任者を選抜。毎年2月頃から週4日のペースでボールの捕球練習やイメージ・トレーニングなどの準備を行うという。


ロンドン在住の歌手、鈴木ナオミが、東日本大震災の被災者に向けて応援歌のCDを制作した。CDが売れ続ける限り、その収益金を寄付するという形で継続的に支援が続けられるという彼女の意見に仲間のアーティストたちが賛同。6月28日・29日には、中ノ森文子(中ノ森BAND)、小柳ゆき、夏木マリ、斉藤ノヴといった豪華ゲストをロンドンに招いてのチャリティー・コンサートを主催する。










































「10代後半という、ものすごく色々なことを吸収できる時期なので、コンクールでは日本の中だけでは吸収できなかった、本当に様々なことを吸収できたと思います。80年代当時は今よりずっと情報量が少なかったですし。その頃は高校生でしたが、例えばカラヤンが日本に来て切符を買おうと電話しても、全くつながらなかったんですね。ベルリン・フィルが来たときに発売と同時に電話をしても、つながったときはもう売り切れで。海外でどんな演奏会が行われているのか、情報が入ってこなかったのと、周りにプロ活動をしている人がいなかったので、プロになるというのが一体どういうことなのかを知りたかった。あとは、言葉が話せなくても、色々な国に行って、出ていくだけで拍手をしてくれて、自分の好きな演奏をして……。そういうことがすごく楽しかったんです」。

「食事と同じで、堪能するのに調理法を知っている必要も、素材について詳しい必要もない。こういうときにこういうものが楽しみたい、という要望に応えるのは、我々プロの仕事」、とのグルの心強いお言葉に甘えて、思い切って店に飛び込んでみよう。6月20~25日には、キューバから葉巻のローラーを招いてのイベントが行われる。一本一本の葉巻が丁寧に作られていく様子を、じっくり鑑賞できるまたとない機会だ。
コーヒー片手に朗らかに話すトムさん、最後に言った言葉が印象的だった。「葉巻って、そのものを楽しむというより、こうやって良い時間を過ごすためのものなんだよね」。葉巻に興味のある女性や若者に、ぜひとも足を運んでもらいたいお店だ。
ところで、葉巻はその特性として、吸い口に近付くほど風味がきつくなってくる。そのため、最後の3分の1は吸わずに捨てる人も多い。でもある日、気が付けば最後まで吸い切っていたとしたら、それがあなたの至福の一本なのだそう。騒がしさとは無縁の店内で、ゆっくりと時間を掛けて、あなたの一本を探してもらうのもいいかもしれない。










