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ドイツ留学
Mo. 18. Jun. 2018

ドイツ歯科事情

ドイツの歯科治療の話になると、「すぐに歯を抜こうとするから行きたくない」「ドイツ人の大きな手で歯を治療されるのは嫌だ」「全身麻酔をすることもあるから怖い」と、事実かどうかは別として、ネガティブなイメージが先行しがちです。しかし、日独どちらも世界に誇る先進国。医療の基本は同じはずなのに、なぜこんなにも認識に差があるのでしょう。当コラムでは、実際の日本とドイツの歯科治療の違いや、国民性や社会的背景も踏まえてお伝えいたします。

歯科医師 宮川順充
1971年札幌生まれ。95年歯科医師資格、2003~07年オーストリア・ドナウ大学院大学の講師およびルドルフィナーハウス病院内歯科医院(ウィーン)勤務。08年歯科医療技術インスティテュート IDEA(カリフォルニア)顎機能矯正学部門講師。09~13年ランドハウス歯科医院勤務。14年より同院の経営パートナー。 www.landhausstrasse.com

歯科用インプラントについて 2

日本語で「人工歯根」と呼ばれている歯科用インプラント。その名の通り、歯が抜けてできた隙間に人工的な「歯根の代替物」を埋め込む治療方法です。インプラント自体は骨に埋まっている土台で、そのインプラント上部にクラウンを被せることによって、自然な歯に近い機能を回復させます。

前回のコラムでもお伝えしたように、歯科用インプラントのアイデアは古代からありました。しかし、現在普及しているインプラント技術の基礎ができたのは比較的最近のこと。それというのも、人間の身体には免疫機能があり、健康を維持するため、体外から侵入した異物に抵抗するのです。歯科用インプラントの歴史を振り返ると、様々な金属や鉱石などの素材を用いた試みが行われてきましたが、長期的な維持ができず全て失敗に終っていました。顎の骨の中で固定されたかのように見えても、時間が経つにつれて自然に脱落したり、炎症を起こしてしまうのです。

レントゲン写真
インプラントを埋め込んだ後のレントゲン写真

しかし1952 年、スウェーデンの研究者ブローネンマルク博士によって、現在のインプラント治療の基礎となる現象が実験中に偶然発見されました。彼は微細血流の研究のため、ウサギの骨に金属の一つであるチタン製の器具を埋め込み実験を行っていました。研究終了後、骨に埋め込んだ器具を取り外そうとしたところ、なんと骨としっかり結合していて除去できなかったのです。さらにチタンと骨の結合について検証を重ねると、異物であるにもかかわらず、チタンは免疫システムによる拒否反応を起こさずに、骨と強固に結合することが証明されました。

この研究に端を発した技術開発により、1965年に初めてチタン製インプラントが実際に患者の顎骨に施術されることになりました。驚くべきことに、この患者さんは亡くなるまでの41年間、そのインプラントが口の中で機能し続けたそうです。

初めはまだ少数で特殊な治療であった歯科用インプラントですが、特許状況の変化や技術の進歩により、1995年頃から歯科用インプラントを開発・販売するメーカーが急増しました。現在では、世界中で歯科医療市場に出回っているインプラントメーカーは150社を超え、日本国産メーカーも臨床で数多く使用されています。

手術や代替素材を使った治療に抵抗感がある日本人ですが、日本国内でも特にこの10年で急速に広まっていきました。その背景には、世界的に歯科用インプラントの臨床応用数が増加し、有用性が証明されてきたこともありますが、特に技術の進歩により確実性が向上したことが挙げられます。

ブリッジ
3次元レントゲン(CT)でシミュレーション

歯科用インプラントを埋め込むとき、以前は一般的なレントゲン写真や模型、また手指の感覚で位置や角度を決めていました。しかし、この方法ではインプラント手術を習得するまでに相当な時間がかかりますし、またベテランの外科医でも不測の事態が起こることもありました。その状況を大きく改善したのが、「歯科用CT(3 次元のレントゲン映像)」を併用したインプラント手術。歯科用CTは0.1mm単位で顎骨や神経の位置を立体的に確認できるため、最適なインプラントの位置を決定することが容易になりました。さらに、3D プリンターを利用して、個々の症例に合わせたインプラント埋入ガイド器具を作成することが可能になりました。

一昔前までは試験的だった歯科用インプラントが、現在では十分実用的になり、歯が無い部分にはインプラント治療が前提という時代になったのは、歯科医学の中でも最も大きな変化です。

 

 
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