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ドイツ留学
Fr. 28. Apr. 2017

ドイツ歯科事情

ドイツの歯科治療の話になると、「すぐに歯を抜こうとするから行きたくない」「ドイツ人の大きな手で歯を治療されるのは嫌だ」「全身麻酔をすることもあるから怖い」と、事実かどうかは別として、ネガティブなイメージが先行しがちです。しかし、日独どちらも世界に誇る先進国。医療の基本は同じはずなのに、なぜこんなにも認識に差があるのでしょう。当コラムでは、実際の日本とドイツの歯科治療の違いや、国民性や社会的背景も踏まえてお伝えいたします。

歯科医師 宮川順充
1971年札幌生まれ。95年歯科医師資格、2003~07年オーストリア・ドナウ大学院大学の講師およびルドルフィナーハウス病院内歯科医院(ウィーン)勤務。08年歯科医療技術インスティテュート IDEA(カリフォルニア)顎機能矯正学部門講師。09~13年ランドハウス歯科医院勤務。14年より同院の経営パートナー。 www.landhausstrasse.com

学校歯科健診の功罪と口腔衛生の重要性 1

ドイツの長い冬がようやく終わり、新緑が徐々に増えて桜もきれいな季節になりました。日本では、新学期を迎え新しいクラスの友達や環境にも慣れてきたちょうどこの時期に、毎年恒例の学校歯科健診が行われます。学校歯科医師が「5番C、2番CO……」と、小さな鏡を使って口の中をチェックし、助手が歯科健診フォームに記入していたことを覚えている人も多いことでしょう。

歯科健診の数週間後に健診結果が保護者の手に届き、虫歯や口腔(こうくう)内に問題があれば歯科医院で治療をしてもらう、という流れになります。健康診断や予防接種に並び、子供たちの健康を守るために重要であるとの位置付けの学校歯科健診。ところが、現代ではこの学校歯科健診が本来の目的に反し、むしろ弊害となる場合があることは、ほとんど知られていません。そこで今回から、学校歯科健診が行われるようになった背景、そして次の時代を担う子供たちを第一に考えた時に、どのように口腔の健康を維持するのが良いか、時代に合った対策について話をしていきます。

歯科健診

歴史的に見ると、最初の学校歯科健診が始まったのは明治後期(1900年頃)。とは言っても、日本で最初の歯科医師が誕生したのが明治8(1875)年ですから、その当時はまだ市民に歯科医療がほとんど普及しておらず、さらに歯科医師の数も少なかったこともあって、学校歯科健診は一般的ではありませんでした。

現在のように全国一律で健診が行われるようになったのは、学校保健法に基づいて学校歯科医師が必置になった昭和30(1955)年代以降。当時は第二次世界大戦後の経済復興によって、急速に栄養事情が改善されてきた時代ですが、同時に口腔疾患の増加が全国的に問題となっていました。特に昭和40~50(1965~75)年代の第2次ベビーブーム世代の子供たちは「虫歯の洪水」と呼ばれるほど虫歯が多く、1970年の記録では小学生の虫歯罹患(りかん)率は80%を超え、歯列のほとんどが虫歯になっている子供も珍しくありませんでした。そのため、政府としても国民の健康を守るために、まずは義務教育期間の子供の虫歯数を減少させることが急務となっていたのです。

虫歯

子供たちの口腔衛生管理のため重要な役割を担っていた学校歯科健診の成果もあって、最大で80%を超えていた虫歯罹患率は1990年に50%、さらに2016年現在では約24%にまで低下しました。この結果を見ると、学校歯科健診のおかげで子供たちの虫歯が減ったとも言えるのですが、この数年の虫歯数は微減状態で、「現在の歯科健診制度では、これ以上大きな成果を得ることは困難」と多くの歯科医師が考えています。また、80%の虫歯罹患率が24%になるまで40年以上もかかっているのですが、「もっと短い期間で日本の10分の1まで虫歯罹患率を減らしている国や地域」の事例を鑑(かんが)みると、子供たちの口腔の健康を維持するためには、学校歯科健診のあり方そのものを見直さなければいけない時期に来ています。

次回は今回に引き続き、具体的な学校歯科健診の問題点、そしてどのような対策が必要なのかについて掘り下げたいと思います。

 
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