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ビールの原料 ― 麦の話

今回はビールの大切な原料である麦の話をしましょう。

大麦は穀粒の実り方によって、穀粒が2列の二条大麦と6列の六条大麦がありますが、ビールに使われているのは、主にデンプンが多くタンパク質が少ない二条大麦です。しかし、麦の状態のままではビールは造れず、麦を発芽させた「麦芽」を使います。

ところで皆さん、米飯を口の中で何度も噛んでいたら、次第に甘くなるような感じがしたという経験はありませんか? これは、米の中のデンプンが唾液に含まれる酵素によって分解され、糖に変わるためです。穀物は栄養をデンプンとして蓄えています。デンプンを細かく切断して、エネルギーとして使いやすい糖に変えてくれるのが酵素なのです。穀物は芽を出す過程で、自ら酵素を作り出します。

ビール造りに使われる麦芽は、大麦を水に浸し、少し芽が出て酵素ができた段階で、熱風で乾燥させて成長を止めたものです。酵素は麦芽を湯で煮る「糖化」と呼ばれる行程で活躍し、デンプンを糖に変えて甘い麦汁を作ります。ビール酵母はこの糖を食べてアルコールを作るわけです。酵素を作るためだけに発芽させるなんて、人間って狡賢いですよね!

麦芽の見本
麦芽の見本。どの麦芽をどれだけ使うかによって、
ビールの色や味に違いが出てきます

麦芽は麦の種類と工程の違いにより、様々な色や風味を持った麦芽になります。80度前後で乾燥させた黄金色の麦芽は「淡色麦芽」と呼ばれ、すべてのビールのベースになります。100度以上で乾燥させると麦芽に焦げ色が付きはじめ、「濃色麦芽」になります。濃色麦芽には、キツネ色で香ばしい「カラメル麦芽」やチョコレート色でほろ苦い「チョコレート麦芽」などがあります。

そう、すでにお察しの方も多いと思いますが、濃い色のビールには濃色麦芽が使われています。とは言え、どんなに色が濃くても、濃色麦芽は全体の1~10%しか使用されていません。濃色麦芽は、わずかな量でも十分に色やロースト香、苦み、コクの決め手になるためです。ビールの色が濃くなると、ナッツやチョコレート、レーズンを思わせる複雑で印象深い香りが出るのは、濃色麦芽をブレンドすることによって生まれる麦の魔法なのです。醸造家は多種多様な麦芽から選択し、組み合わせて、自分の理想とする味を追求しています。

ちなみに、南ドイツに多いヴァイツェンは、全体の50~70%ほどを小麦麦芽が占めています。小麦は、ビールに濁りと独特のフルーティーな風味を与え、泡をコーティングして強くするタンパク質を多く含んでいます(だからヴァイツェンは泡持ちが良いのですね!)。しかし、大麦のようにしっかりとした殻がないので、麦芽を作るときに割れやすい上、麦汁を煮出すときにフィルターが目詰まりを起こしやすいので、小麦麦芽だけでビールを造ることはできないそうです。

 
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