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ビールの原料 ー 酵母の話

前回の水の話に続き、今回は麦のジュースをアルコールに変えちゃう愛しいヤツ、ビール酵母をご紹介しましょう。形は球形から楕円形、大きさは人間の赤血球と同じ5~10ミクロンほどの微生物。これがビール造りの主役=酵母の姿です。時代は変われども、醸造家は酵母が十分に活躍できるように美味しい麦汁を造り、適した環境を整え、ひたすら酵母のご機嫌を取るお世話役でしかありません。

元気に発酵中
元気に発酵中。活動が終わった酵母は
取り出され、再び次のビール造りに使われます

ビール酵母は、麦芽、ホップ、水などの原材料から、煮沸や糖化といった工程を経てできた甘い麦汁に投入されます。酵母は生物なので、増殖と生命に必要なエネルギーを得るために麦汁に含まれる麦芽糖やブドウ糖を食べて、アルコールと炭酸ガスに分解します。これを熟成させるとビールになるわけです。ビール1ℓを造るのに、約600億個もの酵母が働いているのですよ。このように微生物の働きによって物質が分解され、人間に都合の良い物質ができることを「発酵」と言います。一方、微生物によって具合の悪いものができると、それは「腐敗」と呼ばれます。

ビール酵母は何万種類も存在しますが、大きく2種類に分けられます。1つは「上面発酵酵母」。15~25度で発酵し、3〜4日で発酵を終えます。フルーティーで芳醇な香りが特徴で、これを使ったビールにヴァイツェンやペールエールなどがあります。もう1つは「下面発酵酵母」。発酵後に酵母が沈むことからこの名が付いており、5~10度で7~8日発酵します。穏やかですっきりとした香味で、ピルスナーやラガーはこの酵母を使っています。

ビール酵母は発酵の副産物として、多様な香味成分をビールに残します。ビールを飲んだときに感じるバナナやリンゴ、干しプルーンのようなフルーティーで華やかな香味は、酵母によるものです。酵母の種類や生育条件によってビールの味や香りが変わるので、醸造家にとって適した酵母を選ぶことは重要な仕事です。また、麦汁に投入ビールの原料 ── 酵母の話しただけでは期待通りに発酵が進むとは限らず、発酵の間も醸造家は顕微鏡を覗いたり、糖度を測ったりと、気を抜く暇はありません。

余談ですが、ワインの場合はぶどうの皮に糖をアルコールに変える酵母が住みついているので、ビールのように外から酵母を入れる必要はないのです。

ビール造りに欠かせない酵母ですが、発酵の素が酵母であることが分かったのは19世紀末のこと。フランスのパスツールによって発酵は酵母の生命活動によるものであることが突き止められ、続いてデンマークのハンセンにより、初めてビール酵母が人の手で培養されました。それ以前は、どうやってビールを造っていたかって?ビールの出来栄えは神のみぞ知る。醸造家は経験を頼りに、樽に残った酵母を含む滓を使ってビールを造っていたのです。今では酵母の研究は飛躍的に進歩し、遺伝子レベルで開発が進んでいます。

 
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