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Nr. 41 ドイツ流!? 子育てと仕事の両立

以前、米国の国際空港の管制塔に職員が自分の息子を連れて来て、しかもその子に旅客機を誘導させていたというニュースがありました。そのとき私はふと、「ドイツでもあり得るんじゃないか?」と思ったのでした。人命に関わる現場に子どもなんて!! と日本だったらお叱りを受けるくらいでは済まされないようなショッキングな報道ではありましたが、職場に我が子を連れて来るケースは、実はドイツでは珍しくありません。

例えば、私の娘がドイツの公立小学校に通っていた頃、臨時のクラス担任だった若い女性の先生は、たびたび自分の子どもを学校へ連れて来ては教室の隅に座らせていました。この頃、娘の“本来の担任教師”は、腰のけがで休職中でした。最初は1カ月のリハビリ後に復職するはずだったのですが、2カ月、3カ月、そして半年経っても姿を見せず、結局は1年後に挨拶もなく退職してしまいました。担任不在の間、臨時の教員が次々とやって来ては授業を受け持つことになりました。数えてみれば、1年間に4~5人の教員が入れ替わったのですが、その中に子連れで登校する先生が何人かいたのです。連れて来られる子どもは2歳児くらいのことも、中学生くらいの女の子のこともありました。ドイツでは、毎朝職員会議のような時間もないので、子連れで登校し、授業が終わればそのまま直帰するといった感じです。

ドイツで子育て&教育相談所
イラスト: © Maki Shimizu

私が通ったドイツの大学のゼミでは、かなりまれなことではありましたが、学生が生まれたばかりの赤ん坊を連れて来る、といったこともありました。授業中に子どもがぐずりそうになると、母親はすかさずカバンの中からおしゃぶりを取り出して、子どもの口に突っ込みます。するとまたスヤスヤと大人しくなって、そんな様子を周りは温かく見守る感じでした。

おしゃぶりと言えば、ドイツではおしゃぶりをした赤ちゃんをとてもよく見かけます。赤ちゃんが泣いていると通行人から、「おしゃぶりはどうしたの?」と聞かれてしまうほど。私の娘はおしゃぶりが大嫌いで、結局一度も使わないまま大きくなりましたが、ドイツのおしゃぶりは種類も多く、デザインも可愛いので、私は集めるほど買ってしまいました。

少し脱線してしまいましたが、私の大学時代の講師も「子どもがいて大学に行けないから」と、自宅でゼミを開催したことがありました。「そういう理由なら!」と、その時は私も5歳の娘を連れて行ったのです。その日は講師宅のリビングに学生10人ほどが集まり、リラックスした雰囲気の中で授業が行われました。講師の子どもはまだ0歳児で、ゆりかごの中。私の娘はリビングから見える中庭で1人で遊んでいました。帰り際には子育て談義になり、子連れで行くことに少し不安を感じていた私も、子どもが“お荷物”などと感じることなく、むしろ楽しく過ごすことができたのでした。

ドイツで子育て&教育相談所
イラスト: © Maki Shimizu

ドイツで生活していると、子どもを連れて働くお父さんやお母さんの姿をよく見かけます。小包を届けてくれる宅配便のおじさんが、小学生くらいの男の子をトラックの助手席に乗せて仕事をしていたこともありました。病院では、看護師さんの娘らしき子が椅子に座っていたことも。こんなところに子どもが!? と驚くこともしばしばです。けれども私の経験上、働く親の側にいる子どもはどこか冷静で、仕事の邪魔をしている印象は受けません。子育てと仕事の両立は難しいけれど、社会全体に何の違和感もなく子どもを受け入れる雰囲気が感じられる時、子育てをする喜びを共有していると実感します。

 
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