Hanacell

Nr. 45 ドイツと日本の教師のあり方

ドイツで7年生と言えば、ギムナジウムではいわゆる“お試し期間”が終わる時期。これまでこのコラムでも何度か説明してきましたが、ドイツでは小学校を卒業する4年生の時点というのは、子どもたちの将来を大きく左右する分岐点となります。ギムナジウムと呼ばれる学校は、大学進学を目指す中等教育機関(日本でいう中高一貫教育)に当たりますが、最初の5年生と6年生の2年間は、どの生徒もこの学校が本当に適切かどうかが“テスト”されていて、場合によっては6年生の終了間際に“転校”を勧告されることがあります。その意味で、最初の2年間はまだ正式なギムナジアスト(ギムナジウムの学生)とは言えず、頑張って勉強するよう先生たちから励まされたりして、多少の緊張が保たれているようなところがありました。それが7年生にもなると、その緊張感や束縛から解放されて子どもの気は緩みます(ついでに親の気も抜けます)。よってこの時期は、先生いわく「最も集中力が欠ける時期」になるわけですが、授業は相変わらずハードで宿題も多く、しかも子どもたちの思春期と重なっているため、前回もお話ししたように、激しくすさまじい子ども同士のぶつかり合いも相まって、落ち着きのない時期とも言えます。

この時になって初めて、私は知り合いのドイツ人ママから言われた言葉を思い出し、実感しました。「1人ひとりを親身にサポートしてくれる、制度の整った学校を選んだ方が良い」。そうなのです。ドイツ人ママが私に勧めたキリスト教系の学校では、1生徒1人に付き1人のサポーター(先生だったり先輩だったり)があてがわれて、卒業まで面倒を見てくれるというシステムになっていたのですが、それがどのようなメリットをもたらすのか、当時の私にはよく分かりませんでした。

また、私の娘がドイツにいたくなかった理由は、実はもう1つあります。それは先生に対する不満でした。勉強のサポートはしてくれても、精神的な面での触れ合いがほとんど皆無で、教師であることは単なる一職業、といった割り切った態度。特に当時の娘の担任教師が非常にクールな女性で、授業以外では生徒と余計なことを話すべからずといった、指導者として厳格さを重視していることがありありと感じられる人でした。おまけに、喧嘩している暇があるなら難問に取り組もう! と宿題倍増の“ご配慮”も。

ドイツで子育て&教育相談所
イラスト: © Maki Shimizu

教員のあり方について、日本とドイツの違いなど、一概には言えませんが、最終的には教員自身の個人的人格が、生徒への学習意欲や精神面に大きく影響するものだと私は考えています。そして、ドイツの小学校教員の親しみやすさに比べると、ギムナジウムのような中等教育課程に携わる教員のあり方は、一線を画しています。このような状況の中で、娘は日本の中学校生活を体験し、ドイツとの違いを目の当たりにしたのでした。

ちなみに、私が親の立場から不満に思っていたことは、ドイツの教員は授業を休み過ぎるということでした。代行の先生がいればまだ良いのですが、授業が休講になることなどは日常茶飯事。たまに代行する先生がいても、休んだ先生との間にこれといった打ち合わせや話し合いもないようなので、授業の内容は継続されず、学習内容がガラリと変わることもあります。このことは保護者会でも問題視されるのですが、全く改善されません。人を育てる仕事を選んだにもかかわらず、こんなに頻繁に学校を休むなんて。ドイツ人ってもうちょっと勤勉だと思っていたのに……というのが、私の率直な気持ちなのでした。

ドイツで子育て&教育相談所
イラスト: © Maki Shimizu

 
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