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ビール純粋令、ユネスコ無形文化遺産を目指す

昨年12月、日本の「和食=日本人の伝統的な食文化」がユネスコの無形文化遺産に登録されました。ここドイツでも、「ビール純粋令」が「パン文化」と並んで、純粋令発布の500周年に当たる2016年の無形文化遺産登録を目指しています。ドイツのビール純粋令は、ビールの原料を麦芽、ホップ、水、酵母に限定することを定めた法令で、1516年4月23日に当時のバイエルン公ヴィルヘルム4世によって制定されました。現在でも有効な食品の品質保証の法律としては世界最古のものと言われています。

かんぱい!プロースト
4月23日はビール純粋令の日。皆で応援しよう!

純粋令発布以前の中世ドイツでは、ビールの味付けにホップではなく、ヨモギやタチヤナギなどのハーブをブレンドしたものが使われており、その品質にはばらつきがありました。中には、豚の肝臓や松の皮など健康に害がありそうなものを加える不届き者がいたり、ビールを水で薄めるなどの不正も横行していたようです。劣悪なビールを取り締まり、品質を保証するために発布されたのがビール純粋令。その裏には、主食であるパンの原料である小麦やライ麦の供給に響かないようにするという狙いもあったのですが、そのおかげで今日の美味しいドイツビールがあるのです。

発布当初、適用範囲はバイエルンのみでしたが、プロイセンがドイツを統一した際、バイエルンがドイツ帝国に加わる前提条件としてドイツ全土への純粋令の適用を挙げたことで、1906年からドイツ全土でビール純粋令が適用されるようになりました。ドイツ帝国崩壊後のワイマール共和国や第2次世界大戦中のナチス・ドイツにおいても、純粋令は継承されます。

しかし、欧州共同体(EC)の発足によって純粋令は非関税障壁であるとみなされ、欧州各国からの批判にさらされました。ドイツ政府が欧州裁判所に「ドイツ人のように(大量に)ビールを飲む場合、添加物は健康に害を及ぼす」と訴えたのは冗談のような本当の話。1987年以降、ビール醸造は原産国の法律に従うことになり、ドイツ国外から輸入された添加物入りビールも「ビール」を名乗れるようになりました。ただし、それを望まない消費者が誤って購入しないよう、原料をラベルに表記することが義務付けられています。1993年にドイツ政府はビール酒税法を改正し、上面発酵酵母を使用したビールでは、大麦以外の発芽した穀物や糖類の使用が認められることになりました。

しかし、法律が変わってもドイツの醸造家は純粋令に則ったビールを造り続けています。理由は消費者が求めているからにほかなりません。今や純粋令は消費者に高品質で美味しいビールを保証する呼称となっています。「ビールの伝統工芸は何世紀にもわたって継承され、ほかの食品産業が羨むほど食の安全を保証してきた」とドイツビール醸造業者連盟が表明する通り、純粋令は安全で美味しい現在のドイツの食文化の先駆者なのです。フランス料理や韓国のキムチ文化、日本の和食に続き、ビール純粋令も無形文化財に登録されると良いですね!

 
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