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第10回 二重家計

デュッセルドルフに自宅を構えながら、ウィークデーはハンブルクで仕事、というように、被用者は今日、勤務体制に柔軟に対応することを求められています。就職や転職、部署の異動などを機に、勤務地に第2の住居が必要になる場合も少なくありません。こうして「二重家計(Doppelte Haushaltsführung)」が発生する場合は、税制上、様々な優遇措置を受けることが可能です。二重家計に伴う出費は、雇用者から非課税で払い戻しを受けるか、確定申告の際に必要経費として控除するか、どちらかを選択をすることができます。

1. 二重家計の条件

二重家計とは、被用者が「第1の勤務地(Erste Tätigkeitsstätte)」、つまり原則的に毎日勤務する場所に第2の住居を構え、並行してそれ以外の場所に自宅(第1の住居)を持つ状態を意味します。勤務上の理由から、2つの住居を構える必要が生じたということが、二重家計の前提条件です。

二重家計と認められるためには、勤務地以外の場所にある自宅が、生活の場としてふさわしく整えられ、被用者が家計を支えていることが条件となります。自宅は、恒常的にその人の生活拠点となっていなければなりません。生活の拠点とは、既婚者にとっては家族が一緒に暮らす場所であり、独身者にとっては個人的な繋がりを持つ場所、 つまり両親やパートナーなど近親者との関係を育む場所を指します。

自宅が遠方の外国にある場合(日本、オーストラリア、インドなど)には、最低でも2年に1度は帰国することが条件となります。国内転勤の場合と違い、この場合は本人(被用者)が不在でも、第1の住居で通常の家庭生活が営まれていることが二重家計の前提となります。つまり、配偶者や子どもがその住居に恒常的に住んでいなければなりません。

二重家計は、被用者が個人的な理由から住居を勤務地とは別の場所に移し、その上で勤務地の近くに第2の住居を構えた場合にも認められます。

2. 二重家計で発生する費用

二重家計が勤務上の理由で発生する場合、以下の費用が追加の必要経費として考慮されます。

① 第2の住居の費用

第2の住居で実際に発生した費用は、月額上限1000ユーロまで控除対象となります。特に家賃(基準は勤務地での60㎡の物件の平均家賃)、光熱費、共益費、引越し費用(2015年4月3日発行・第999号掲載の本コラム参照)、不動産業者への手数料、テレビ・ラジオ受信料、清掃費、第2住居税(Zweitwohnungssteuer)などが控除対象として認められます。住居を賃貸するのではなく購入した場合には、上記費用のほか、減価償却費、土地所有税(Grundbesitzsteuer)、保険料、各種修理費、銀行ローンの利子なども控除対象となります。

② 交通費

二重家計の開始時と終了時、つまり第2の住居を構えたときと引き払うときに発生した交通費(公共交通機関のチケット代、自家用車の場合は走行1km当たり0.30ユーロ)は、控除の対象となります。このほか、週に1度の帰宅についても、被用者が実際に帰宅した場合のみ、距離に応じた定額交通費が控除されます。ただ、雇用契約で社有車の利用が認められている場合は、この規定は除外されます。

③ 食費

第2の住居でやむを得ず発生した食費として、勤務地に引っ越してから3カ月の間、1日12ユーロまたは24ユーロの定額控除が認められます。個人的な理由から自宅が勤務地と別の場所に移されたケースでも同様ですが、この場合は、被用者がそれ以前の時点に3カ月間、勤務地に住んでいなかったことが条件となります。

3. その他の留意点

以上のように、二重家計では第2の住居への引っ越しと生活を営む際に発生する費用を、必要経費として控除対象とすることが可能です。しかし、被用者にはもう1つの選択肢があります。2)の諸費用の合計額ではなく、自宅と勤務地の往復で実際に発生した交通費の合計額を控除対象とする方法です。これは、例えば被用者が週に1回以上の頻度で帰宅する場合など、交通費の月額が第2の住居の維持費+週1回の帰宅に伴う交通費を合計した月額を上回れば、有利になることがあります。 ただし、二重家計が発生した時点で、その選択を迫られますので、どちらの方法が有利になるかを実際に試算しておくと良いでしょう。

どちらの選択をするにしても、二重家計で追加費用が発生することが確実であれば、税務署に課税控除を申請することをお勧めします。申請が受理されれば、毎月の給与計算で賃金税があらかじめ減免されることになります。

まとめ

以上のように、二重家計においては様々な費用が必要経費として認められています。本コラムでは、基本的な条件と控除の可能性をご紹介しましたが、個々の事例では、それぞれの事実関係によって、さらに控除が可能になる場合も少なくありません。 弊社までお気軽にご相談ください。

(筆者:税理士クリスティーネ・フュッセル)

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