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独断時評

伊達 信夫
伊達 信夫 デュッセルドルフ在住経済アナリスト。在独歴は14年。大手邦銀の駐在員を務め、ケルン大学経営学部にも留学した。現在はブログYouTube「日独経済日記」のほか、X(@dateno)でドイツ関連テーマを幅広く解説する。訳書に『毎日が必ずうまくいく366のヒント』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。
https://dateno.hatenablog.com

第38回エネルギー危機の再来 ドイツ経済に急ブレーキ!

ドイツ5大研による春季合同経済予測は、中東情勢緊迫化に伴うエネルギー価格の再高騰を受け、半年前の堅調な見通しから一転して厳しい内容となった。本稿では、5大研経済予測の分析を基にドイツ経済の注目ポイントを整理し、インフレや低成長が続く厳しい環境下において個々に求められるライフスタイルの転換について考える。

  • エネルギー価格急騰により、ドイツ経済の回復に急ブレーキがかかっている
  • 物価高が政府の景気刺激策の効果を吸収してしまい、経済低迷が長期化する恐れがある
  • 交通手段の見直しや在宅勤務の活用など、化石燃料に頼らない生活へのシフトを

ドイツ経済成長予想を大幅下方修正

ドイツにおける五つの主要経済研究所(以下、5大研)が毎年春と秋に合同で発表する経済予測(Gemeinschaftsdiagnose)が、4月1日に公表された。「エネルギー価格ショックが財政刺激策を覆い隠すー枯渇する成長力」というタイトルが示唆する通り、今回の分析の最大の特徴はエネルギー危機再来によるドイツ経済低迷長期化リスクの高まりである。

ドイツ経済は、ウクライナ戦争後にドイツを襲ったエネルギー危機以来、低迷が予想以上に長引いていたが、メルツ政権が打ち出した大胆な積極財政(国防・インフラへの公共投資増強)の効果が出始めていたため、5大研は昨年10月の前回予測時には、今年+1.3%/来年+1.4%という比較的堅調な経済成長を予想していた。しかし今回は、今年+0.6%/来年+0.9%へと過去にあまり例がない規模での大幅下方修正(各▲0.7/▲0.5%ポイント)を強いられた。イラン戦争でドイツ経済に急ブレーキがかかった格好だ。

5大研春季合同経済予測

2025年 2026年 2027年 一言メモ
実質GDP
(前年比)
+0.2% +0.6% +0.9% 今年、来年と大幅下方修正
名目GDP
(前年比)
+3.3% +2.9% +4.0% 名目ベースでは高成長維持
インフレ
(前年比)
+2.2% +2.8% +2.9% 再上昇で生活苦が長期化
1人当たり賃金
(前年比)
+4.5% +3.5% +3.4% インフレをかろうじて上回る
失業率 6.3% 6.4% 6.2% 人手不足深刻化は先送り
財政収支
(GDP比)
▲2.7% ▲3.7% ▲4.2% 積極財政強化で赤字拡大
経常収支
(GDP比)
+4.5% +3.4% +3.5% 国際競争力低下で黒字縮小継続
※▲はマイナス

エネルギー価格高騰とインフレのダブルパンチ

メルツ政権は、発足当初から積極財政に転じ、ドイツ経済を従来の輸出主導型から内需主導型へ転換しようとしているが、今般のエネルギー価格高騰のせいで、その内需の勢いが削がれてしまうことになりそうだ。国際原油価格の高騰により、すでにガソリン、電気、ガスなどのエネルギー価格が大きく上昇し始めているが、今後これらがドイツ国内での製造・運送コスト全般を押し上げる。

今年と来年のインフレはイラン戦争勃発前の予想から少なくとも1%程度は切り上がる見込みだ。財政出動の規模は予算・金額ベースであらかじめ決まっているので、コストが上がれば調達できるものの数量は少なくなる。同様の理屈で、ドイツ経済全体としては高めの名目成長を維持できる見通しながら、インフレで食われてしまうため、実質成長は切り下がってしまう。食品価格は+4%程度とインフレの平均値より高めで推移していく可能性が高く、生活苦を実感する人が増え、個人消費も盛り上がりそうにない。

個々のライフスタイル転換でエネルギートランジションへ

今ドイツに暮らす私たちには、このような状況下で生活スタイルを見直す必要に迫られている。そのなかで食費や光熱費の削減余地は限定的かもしれない。しかし、移動手段を見直すことは、私生活においても仕事においてもコスト削減のための一つの打開策となるだろう。

ガソリン価格の高止まりが長期化するなら、できるだけガソリンを使わないようにするのが最も効果的だ。ドイツの政治家や専門家も、ガソリン価格高騰を受けて道路の速度制限や在宅勤務の必要性を訴えている。車通勤から電車などの公共交通機関へのシフト(政策的運賃引き下げも検討されている)や、自転車インフラが整ったドイツならではの自転車通勤への切り替えは、即効性ある家計防衛策にもなる。さらに、コロナ禍をきっかけに社会に定着した在宅勤務の活用拡大で、出勤回数そのものを減らすことも検討価値があるだろう。

こうした個人のライフスタイルの見直しは、単なる一時的な節約術としてではなく、化石燃料からの脱却を目指すドイツ社会全体の構造転換(エネルギートランジション)の方向性とも合致する適応プロセスだ。在独日系企業としても、従業員から柔軟な働き方への要望が増えることに備えるとともに、本報告書(下表を参照)を事業計画見直しのベースとして活用いただきたい。一人ひとりが日々の移動手段や働き方をよりサステナブルな方向にシフトさせることの意義は、決して小さくないはずだ。

 
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