Hanacell

Nr. 3 小学校に入学する前に

皆さん、こんにちは。今回からはドイツの現地校をテーマに取り上げていきたいと思います。ドイツの学校生活を見ていくと、「上履きがない」「朝礼がない」など、細かい点が気になりますが、学校のあり方そのものが日本とは根本的に違うことに私はしばしば驚かされました。

例えば日本では4月に新学期が始まるので、4月1日から翌年3月30日生まれの子どもが同学年となります。ドイツの新学期は夏休み直後にスタート。学齢の区分けは7月1日から翌年6月30日です。

私の娘は6月30日生まれで、ドイツの公立小学校に入学したとき、クラスの中では一番の年下でした。日本で言う「早生まれ」で、担任の先生からは「小さな子ネズミちゃん」と呼ばれていました。ただでさえ同年代のドイツの子どもよりも小柄な我が子。「不利だな。ついていけるかな」と心配したものでした。ところが実際に入学すると、娘のクラスには年の違う子どもが混ざっていました。


イラスト: © Maki Shimizu

ドイツでは、小学校入学の数カ月前に『入学適性検査(Einschulungsuntersuchung)』が実施されます。これは6 歳児の発育状態を小児科医が診るもので、「勉強する」という小学校の環境に適応できるかどうかを心と体の側面からチェックするのです

検査内容は、「Haus−Maus、Mund−Hund」などの子音の聞き分けや「ドー・ビー・ジャー」のような耳慣れない発音を真似るテスト。ほかにも「1から5まで数えられるか」「片足で何秒立っていられるか」「複数のイラストから月や星の絵が見分けられるか」など、1人の医師によってじっくり約1 時間も掛けて行われます。検査で発育に遅れが認められたり、小学校に行くのはまだ早いと判断された場合、Vorschule への進学を勧められます。Vorschule は小学校の準備段階的な学校で、ここを経て小学校に進学する子どもは少なくありません。

私の娘がこの検査を受けたとき、片言のドイツ語しか話せなかったのでVorschuleを打診されると思っていました。確かに知っている単語数が少ないと指摘されましたが、「順応性」や「集中力」があることなどを理由に小学校への進学が許可されました。

日本でも似たような検査が行われますが、どのような結果であれ同年齢の生徒で学年が構成されています。一方、ドイツでは子ども1人ひとりの発達状態や学習テンポが重視されるので、義務教育のスタート地点から生徒の年齢層には幅があり、しかも飛び級や留年が頻繁に起こるシステムになっているのです。

小学校で留年があると知って、皆さんはどう思われるでしょうか? 当時、私は娘がVorschuleに通うことを思うと、「1学年落第するのか」と少し落胆しました。しかしドイツの親は違います。「うちの子はのんびりしているから、ゆっくり勉強するのがベスト」と言うのです。その気持ちがどこまで本気なのかは察するしかないのですが、「自分は自分、他人は他人」という姿勢はとても明確なものでした。

人は皆、違っていて良い。この考えを実践しているのがドイツの学校教育の大きな特徴の1 つです。そしてこの考えは教育に限らず、ドイツに生きる人々の根底に流れているものでもあります。大人も子どもも、うらやましいほどポジティブに自分と他人を割り切りますが、この心構えはおそらく、子どものときから自分を型にはめ込むのではなく、「マイぺース」に自分らしい成長と学びのペースを守れる学校教育の中で育まれているようにも思えるのです。

すべての州で実施されているわけではありません


イラスト: © Maki Shimizu

最終更新 Dienstag, 30 August 2011 11:47  
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