#16 でっかい泣いちゃった

「どんちっち」。2歳の息子はたこ焼きのことをそう呼ぶ。なぜかは分からない。ほかにも彼独自に名付けたものはいろいろあって、例えば卵は「ばぶ」、デヴィッド・ボウイのことは「怪獣ポー」と呼んでいる。独特なネーミングセンスだけれど、そう呼びたくなる気持ちが何となく分かるような気もするから面白い。
今、息子は言葉を覚えるフェーズにあって、その早さには僕らも日々驚いている。しかし、家では日本語、保育園ではドイツ語だから、その複雑な言語環境では戸惑いも大きいことだろう。そんな彼は、しばらく前から保育園に行くことを嫌がるようになった。登園の際は泣き叫び、一日中ベビーカーに座ったまま遊ばず、ごはんもほとんど口にしないらしい。相当なボイコットである。
ある日、保育園のお迎えの際に、息子に「今日もいっぱい泣いた?」と聞いてみた。すると彼は「でっかいでっかいないちゃった」と言う。「いっぱい」と「でっかい」を混同しているのだけれど、たくさん泣いたことがむしろ伝わってくるようだった。僕らはいつも、言葉は何かを正確に伝えるためのものだと考えがちだけれど、伝えきれない言葉を受け取り、それを想像で補いながらのコミュニケーションには、確かに豊かなものがある。
続いて「どうして泣いちゃったの?」と聞いた。すると息子は、「Suppe(スープ)あまかった。だからないちゃった。ママー! ってないちゃった」と答えたので、思わず吹き出してしまった。「そうかぁ、Suppe甘かったかぁ」と言いながら、僕はその小さな体をぎゅっと抱きしめた。



インベスト・イン・ババリア
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