NRW州の難民収容施設で警備員が暴力
民間企業への業務委託に批判も
国内複数メディアが、ノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州の難民収容施設で、警備員が住人に暴力をふるうなどの虐待を行っていると報道したことを受け、連邦政府はNRW州に対して徹底的な事実解明を要請した。9月30日付のヴェルト紙が伝えた。
問題となっているのは、民間企業のヨーロピアン・ホームケア(EHC)社が経営する難民収容施設で、ここで警備員から難民申請者に対して虐待が行われたと報じられている。NRW州ハーゲン警察の特別捜査班は6人の警備員に対し、傷害の疑いで事情聴取を行ったほか、100人の難民収容施設住人にも聞き込み調査を実施している。容疑者とみられる警備員の中には前科者も含まれているという。
最も暴力被害が多かったとされるのはブルバッハの施設で、その他、バート・ベルレスベルクとジーガーラントとエッセンでも警備員による暴力行為があった事実が明るみに出ている。アフリカ出身の庇護申請者の1人は公共放送WDRの取材に対して、「我々は、まるで何の権利もない人間のように扱われた。ここは難民収容施設ではなく刑務所のようだ」と現状を訴えている。
今回の事態を受けてNRW州のクラフト首相(社会民主党=SPD)は「言葉を失っている。どうしてそのようなことが人間としてできるのか、恥ずかしく思う」とコメント。一方、EHCの経営者は「驚いていると同時にショックを受けている」と述べている。また、ドイツ警察労組(DPolG)は「ぞっとするような異常な出来事」「難民収容施設のような、本来行政が担うべき任務を、安易に民間に委託してきた結果だ」と述べ、政府の姿勢を厳しく非難している。今年1年でドイツにやって来る庇護申請者の数は20万人に上るとみられており、急増する難民への対応は政府にとっての懸案事項となっている。
EHCは、1989年に難民収容施設の経営を担う民間企業として設立された会社。政府の委託を受け、国内40カ所の施設を運営している。今回問題となったNRW州内には同社経営の難民収容施設が6カ所あり、EHC独自の管理人、調理スタッフ、ソーシャルワーカー、医療スタッフを置いているが、警備員は外部に委託している。