ドイツワイン・ナビゲーター


ドイツワイン新潮流② 変わりゆくゼクト・スタイル

ドイツでは近年、シャンパーニュに準じる伝統製法で造られた高品質のゼクトが続々と登場し、プレミアム・ゼクトなどと呼ばれ、世界的に高い評価を得るようになりました。ブドウ品種はリースリングに加え、シャンパーニュに使われるシャルドネ、シュペートブルグンダー、シュヴァルツ・リースリングが主流となっています。味わいはドライで、酸味が豊かで、瓶内二次発酵後、長期間にわたって寝かせた、酵母由来の風味が生かされたものが増えつつあります。消費者には、品質や味わいだけでなく、お値段も魅力的です。

瓶内二次発酵後も長期にわたって酵母と接触させておくという手法にふさわしいのは、伝統的なシャンパーニュ用の品種で、シャンパーニュ由来のクローンも導入され始めています。ドイツでも、プレミアム・ゼクトにふさわしいクローンを選別する作業が始まっています。収穫のタイミングは非常に重要で、遅すぎるよりは早い方が良いと言われます。とはいえ、適度な除葉を行い、十分に熟した風味が得られるようにします。収穫時には健康なブドウを選別し、貴腐菌は完全に排除します。理想的な糖度はカビネット程度。85エクスレを超えると、良いゼクトを醸造するのが難しくなるそうです。ブドウはソフトに全房圧搾し、アルコール度数9~11%くらいのベースワインを造ります。

ドイツのゼクト醸造所の頂点に立つ、ラインヘッセン地方のゼクトハウス・ラウムラントでは、収穫したブドウをオーダーメイドの専用洗浄機で水洗いし、高性能の専用ドライヤーで乾燥させ、選果をしてから使用するほどの徹底ぶりです。オーガニック栽培ゆえに、ブドウにたくさんついてくるテントウムシやハサミムシなどの小さな昆虫類、土ぼこり、オーガニック基準ではあっても残留する農薬などをすっかり取り除いたクリーンなブドウだけを圧搾しているのです。

醸造においては、酸化防止のための二酸化硫黄の使用をできる限り減らす傾向にあります。シャンパーニュ同様に圧搾量を制限し、キュヴェ(一番搾り)とタイユ(二番搾り)を分けている醸造所も増えてきました。意欲的な造り手たちは、シャンパーニュのように複数品種のベースワインのブレンドを行い、瓶内二次発酵を終えたゼクトを長期にわたって寝かせるようになっています。ラウムラントのセラーには、1991年ヴィンテージ以後の、約100万本のボトルが眠っており、複数のヴィンテージで構成される、シャンパーニュに倣ったブレンドにも取り組み始めているところです。

大学の研究所では、ゼクト用ブドウの栽培法、市販のプレミアム・ゼクトの分析的な研究も進められています。造り手も世界各地の生産者と情報交換しており、ゼクトは今後、さらに高品質化するでしょう。

ご存知の通り、ドイツのゼクトのほとんどは、南欧などから輸入したベースワインを使用し、シャルマ製法(タンク内発酵)で造られる安価なものです。「ヴィンツァー・ゼクト」は伝統製法ですが、品質や製法の基準がシャンパーニュやクレマンなどのように厳密ではありません。ドイツのプレミアム・ゼクトが世界的名声を得るには、定義の見直しが必要です。フィッシャー教授も定義とそのネーミングは今後の課題の1つだと言っておられました。

(「ドイツワイン新潮流」はウルリヒ・フィッシャー教授のセミナーで得た新情報をもとに、お届けしています)

 
Andres & Mugler
アンドレス&ミュグラー(ファルツ地方)

ミヒャエル・アンドレス(左)とシュテフェン・ミュグラー
ミヒャエル・アンドレス(左)とシュテフェン・ミュグラー

醸造家ミヒャエル・アンドレスとシュテフェン・ミュグラーが1989年に創業したゼクト醸造所。2人はバイクがきっかけで知り合った学生時代からの友人同士。それぞれ独立した醸造所も運営している。使用するブドウは2人の所有畑で穫れたもの。リースリングのほか、シャンパーニュに使用される3品種、ヴァイスブルグンダー、オクセロワ、ムスカテラを栽培。ブドウの樹の健康を第一に考え、イタリアの剪定専門家、シモ二&シルヒのセミナーに何度も通い「優しい剪定」を実践。「大切に育てた古木は豊かな凝縮感という贈り物をくれる」とミヒャエルは言う。石灰質土壌、雑色砂岩土壌など、テロワールが持つニュアンスを大切にしている。2006年からビオ、2011年にビオディナミに移行した。

Andres & Mugler
Hauptstr. 33A
67152 Ruppertsberg
Tel.06326-8667
www.andresundmugler.de


2014 Cuvée Elena brut2014 Cuvée Elena brut
2014年 キュヴェ・エレナ ブリュット
18.00€

シャルドネ45%、オクセロワ35%、ブラン・デ・ノワールのシュヴァルツ・リースリング20%のブレンド。ドイツのプレミアム・ゼクトのなかでも、例外的にオクセロワを多用しており、それがアンドレス&ミュグラーの個性となっている。キュヴェ・エレナは4年の瓶内熟成を経てデゴルジュマン(澱抜き)を行った。抑制されたフルーティさ、柔らかなテクスチュアを持つ、ほど良い凝縮感のエレガントなゼクト。エレナはミヒャエルの娘さんの名前だ。

最終更新 Dienstag, 13 August 2019 09:14
 

ドイツワイン新潮流① 低アルコール時代の到来

かつては、ワインのアルコール度数を上げるために、果汁に砂糖を加えて糖度を補う「補糖(シャプタリザシオン)」が行われていました。「補糖」は現在もクヴァリテーツワインにおいて認可されています。しかし、気候が温暖になり、ブドウの成熟が早く、充分に熟すようになった現在、「補糖」という言葉をほとんど聞かなくなりました。代わりに、ワインのアルコール度数を下げる研究が進められています。

プファルツ地方を例に挙げると、1980年代は9月下旬から収穫を開始していましたが、近年は1カ月早い8月下旬に収穫が始まっています。最近はより凝縮したワインを造るために収量を削減する傾向にありますが、それによっても糖度は上がりやすくなります。半世紀にわたり、糖度が上がりやすいクローンを優先的に栽培してきたという事実もあります。今日、ワインは以上のような理由で高アルコールとなっているのです。

高アルコールのワインが増えた理由は、ほかにもあります。今日ではワインが飲みごろになるまで何年も待つことは稀で、消費サイクルが早くなっています。造り手は、とりわけタンニンの量が多い赤ワインを早く飲めるようにするため、過熟気味の糖度の高いブドウを収穫するので、アルコール度数が上昇します。過熟ブドウ特有のジャミーな風味を持つ、アルコール度数の高い、味わいのリッチなワインがテイスティングやコンクールで高得点を取りやすい傾向にあることも、高アルコールワインの生産に拍車をかけました。

しかし、現在の市場は健康志向で、低アルコール製品、アルコールフリー製品が求められています。低アルコールワイン、アルコールフリー・ワインの生産は、緊急課題の1つです。

ワインのアルコール量を低く保つためには、栽培段階でも醸造段階においても、対処できることがあります。栽培段階では、除葉することで光合成の進み具合をある程度調整できるため、どの部分をどう除葉すれば効果があるか、実験が行われています。ブドウの葉に植物性オイルを噴射し、光合成を阻害する実験も進められています。収穫のタイミングの見極めによっても調整が可能です。ただし収穫期が早まれば、収穫時の気温も高いため、望ましくない微生物の繁殖を避けるのに、ブドウの冷却が必要になります。そのため、ドイツでも夜間収穫が視野に入ってきています。

醸造段階では活動力の弱い培養酵母を選択する手がありますが、アルコール度数はごくわずかしか下がらず、グリセリンやコハク酸の量が上がるためバランスが失われます。一方、伝統的な赤ワインの製法であるマセレーション発酵を行うと生成されるアルコールが空気中に逃げるので、度数が1~2%下がるそうです。

でき上がったワインからアルコールを除去する方法も研究されています。聞き慣れない設備ばかりですが、真空蒸留器、スピニング・コーン・カラム(SCC)、メンブランコンタクター(MC)による浸透蒸留、逆浸透膜フィルター、ナノフィルターなど、さまざまな方法が実用化され始めています。

(「ドイツワイン新潮流」はラインラント・ファルツ州ブドウ栽培・ワイン醸造研究所の教育機関、ワインキャンパス・ノイシュタットのウルリヒ・フィッシャー(Dr. Ulrich Fischer)教授のプレス向けセミナー「ワイン醸造のトレンド」で得た新情報をもとに、3回にわたってお届けします)

 
Weingut Leitz
ライツ醸造所(ラインガウ地方)

ライツ醸造所のオーナー、ヨハネス・ライツ氏
ライツ醸造所のオーナー、ヨハネス・ライツ氏

ライツ家の起源は18世紀までさかのぼることができる。1980年代半ば、現オーナーのヨハネス・ライツは、母親が維持していた2.5ヘクタールの畑をベースに醸造所を興し、43ヘクタールの規模に成長させた。リューデスハイムの特級畑から、テロワールの個性を生かしたリースリングを生産する一方で、2007年にはカジュアルな辛口リースリング「Ei ns Zwei Dry」という洒落たネーミングのヒット商品を生んだ。2017年には「Eins Zwei Zero」というアルコールフリー・ワインをリリース。1990年に海外進出し、ドイツワインが理解されにくい現実に直面した経験が、革新的なアイデアの源となっている。2011年、ゴー・ミヨ年間最優秀醸造家賞受賞。VDP会員。

Weingut Leitz
Rüdesheimer Str. 8a,
65366 Geisenheim
Tel. 06722-9999-100
www.leitz-wein.de


2017 Eins Zwei Zero Rosé2017 Eins Zwei Zero Rosé
2017年産
アインス・ツヴァイ・ゼロ・ロゼ 7.90€

ライツ醸造所のアルコールフリー・ワイン「Eins Zwei Zero」には、ワインとスパークリングワイン(炭酸注入)がある。いずれもリースリングとロゼの2種類。ご紹介するロゼのベースワインは、メルロ、ポルトギーザー、ピノ・ノワールのブレンドで、グーツワインレベルのもの。真空蒸留器を用い、29度で低温蒸留しアルコールを取り除いた。ローズヒップやラズベリーの風味。ワインらしい味わいも充分に維持されている。残糖は49.6g/Lだが、酸が7.8g/Lあり、すっきりとした軽快な仕上がり。

最終更新 Mittwoch, 12 Juni 2019 15:10
 

フランスワインに近づくドイツワイン

2月上旬、ハンブルク日本人会館で、現在ドイツで栽培されているフランス品種のブドウから造られるワインについて講座を行いました。準備をしながら、隣り合わせるドイツとフランス北部のワインがずいぶん似通っていることに改めて気がつきました。アルザス地方、ブルゴーニュ地方、シャンパーニュ地方の栽培品種は、古くからドイツの栽培品種と共通しています。

ドイツとフランスの狭間で、歴史に翻弄されたアルザス地方の主要品種は、リースリング、ジルヴァーナー、ゲヴュルツトラミーナ、ムスカテラ、ピノ・ブラン、ピノ・グリ、ピノ・ノワールの7品種。ドイツ同様に単一品種で醸造し、品種名をエティケットに明記しています。

リースリングはドイツ、ライン地方原産。 ジルヴァーナーは中央ヨーロッパ原産でオーストリアという説が有力です。ゲヴュルツトラミーナはイタリアの南チロル地方の町トラミーンに由来する名称ですが、原産地は不明。ムスカテラはギリシャ原産といわれます。ピノ・グリはドイツではグラウブルグンダー、ピノ・ノワールはシュペートブルグンダーといい、ともにブルゴーニュ原産。ピノ・ブランはドイツではヴァイスブルグンダーと呼ばれ、原産地はブルゴーニュ、アルザス、ローヌのいずれかだといわれています。

アルザス地方原産の品種には、現在、旧東独のザクセン地方だけで栽培されている希少品種ゴールドリースリング、ドイツ全域で栽培されているオクセロワがあります。これら2つの白品種は、フランスよりドイツの風土に適応したようで、今ではドイツならではの品種として愛されています。

ブルゴーニュ地方の品種で、ドイツで栽培されていないのは、少数派のアリゴテとガメイだけ。ピノ・ノワールはドイツの伝統品種です。シャルドネは比較的新顔で、1990年代前半にドイツでの栽培が正式に認可され、年々栽培面積が増えています。

ブルゴーニュ由来の品種にも、フランスより、ドイツで愛好されている赤品種が2つあります。1つはザンクト・ラウレント(フランス名ピノ・サンローラン)とフリューブルグンダー(同ピノ・マドレーヌ)です。

シャンパーニュ地方の主要3品種である、ピノ・ノワール、ムニエ、シャルドネのうち、ムニエは、リースリングとは関連性がないものの、ドイツではシュヴァルツリースリングという名称で親しまれている赤品種です。ドイツではシャルドネの栽培が可能になった1990年代後半からシャンパーニュと同じブレンドのゼクトが生産されるようになっています。

ドイツにおけるフランス品種のニューカマーは、ロワール地方の白品種ソーヴィニヨン・ブランとシュナン・ブラン、北ローヌ地方の白品種ヴィオニエと赤品種シラー、そしてボルドー地方の赤品種メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、プチ・ヴェルドです。ソーヴィニヨン・ブランはボルドー品種でもあり、ニューカマーの間では最も人気がある品種です。

2月の講座では、品質的に同等であるボルドーの赤とドイツのボルドーブレンドをブラインドで比較試飲したのですが、12名の参加者のうち、1名を除くほぼ全員がドイツのボルドーブレンドをフランスワインだと確信しておられました。参加者の中にはワインに詳しい方も多く、ボルドー品種がドイツに適応していることの確証を得たような気がしました。

 
Weinbau Frédéric Fourré
フレデリック・フレ(ザクセン地方)

フランス人醸造家のフレデリック・フレさん
フランス人醸造家のフレデリック・
フレさん。手にしているのが今回
紹介する「グートエーデル」

90年代頃から、たまにドイツで働くフランス人醸造家に出会うようになった。昨年はザクセン地方でフレデリック・フレさんと出会った。フレデリックさんはパリ出身のソムリエ。20年前に醸造家のパートナー、アムレイ・ニーゼンさんの故郷であるザクセン地方に移住し、ドレスデンのホテルでソムリエとして働いていた。間もなく、ドレスデン近郊ラーデボイルの銘醸畑として知られる「ゴールデナー・ヴァーゲン」に小さな区画を手に入れ、ワイン造りを始めた。趣味で始めたワイン造りだが、2007年に醸造所を立ち上げ、現在では5ヘクタールを擁するまでに成長。ザクセンのテロワールを生かしたフレンチスタイルのワインは、地元のワインのなかでもひときわ輝いている。ザクセン地方の醸造家グループ「ゲミッシュテ・ブーデ」のメンバー。

Weinbau Frédéric Fourré
Kleiststr. 12, 01129 Dresden
Tel. 0179-6790863
www.weinbau-fourre.de
www.gemischte-bude.de


2017 Gutedel
2017年産グートエーデル 辛口 12.50€

フレデリックさんはアルザスでワイン造りを実習した経験を持ち、アルザス品種やブルゴーニュ品種を得意とするが、ミュラー=トゥルガウ、ショイレーベなどのドイツ系品種にも力を入れている。ご紹介するグートエーデルはシャスラとも呼ばれるフランス系品種。閃長岩、花崗岩の風化土壌である「ゴールデナー・ヴァーゲン」の樹齢60年の古木のブドウから造られたもの。熟したリンゴや洋梨の風味、柑橘系とハーバル系の風味が調和し、充実した味わいでありながら、バーデン地方のグートエーデルとは異なり、繊細で軽快だ。

最終更新 Montag, 06 Mai 2019 15:12
 

自然体のスパークリングワイン「ペット・ナット」

最近、ドイツでも「ペット・ナット(Pét Nat)」が生産されるようになりました。「ペット・ナット」はフランス語の「ペティヤン・ナチュレル(Pétillant Naturel)」の略語。「ペティヤン」は、ゼクトより内圧の低いパールワインに相当します。1990年代半ば、フランス、ロワール地方のナチュラルワインの造り手たちの間で、昔ながらのペティヤンの製法がリバイバルしたため、このような呼び名となりました。すでに、世界各地で生産されるようになっています。

昔ながらのペティヤンの製法とは、メトード・リュラル(Méthode rurale/田舎風製法)あるいはメトード・アンセストラル(Méthode ancestrale/古式製法)などと呼ばれるもので、16世紀に南仏のリムー地域で考案されたのだそうです。文献に登場するのは1531年です。

シャンパーニュやクレマン、ヴィンツァーゼクトなどは、シャンパーニュ製法(Méthode champenoise)あるいは伝統製法(Méthode traditionelle)と呼ばれる瓶内二次発酵法で造られます。アルコール発酵を終えたベースワインに、酵母と糖分を加えてボトリングし、ボトルの中で2度目のアルコール発酵を促す方法です。二次発酵で生じた二酸化炭素の泡がボトルの中に閉じ込められ、泡立つワインとなります。

「ペット・ナット」の場合は、二次発酵を行わず、最初のアルコール発酵を、途中から瓶内で行います。発酵途中の残糖のあるワインをボトリングし、瓶内で完全発酵させるのです。通常、出来上がったスパークリングワインの酵母の澱(おり)は取り除かず、味わいを調整するドサージュも行わないため、最もナチュラルなスパークリングワインだと言われます。

ただ、極めてナチュラルな製法であるがゆえに、造り手の思い通りの出来上がりにならないこともあります。ボトリング時の残糖値により、発酵後の残糖やガス圧が異なってきますが、ボトリングのタイミングを調整しても、狙い通りに仕上がらないこともあるのです。「ペット・ナット」には、ゼクトの内圧(3.5bar以上)に達しているものもあれば、それより低いパールワインの内圧で発酵を終えているものもあります。

大抵の「ペット・ナット」は、ボトル内に残る酵母の澱で濁っています。造り手によっては、ゼクト並みの内圧がある場合、動瓶(ルミアージュ)を行い、澱を瓶の口に集めて取り除く澱抜き(デゴルジュマン)という作業を行うこともあります。

1816年に、シャンパーニュメゾン、ヴーヴ・クリコ・ポンサルダン社のオーナー、マダム・クリコらが、ルミアージュとデゴルジュマンの方法を考案するまでは、シャンパーニュも酵母の澱で濁っていました。当時の人々は、シャンパーニュをグラスに注いた後、酵母が底に溜まるのを待ってから飲んだと言われています。濁りのある「ペット・ナット」を味わうときは、シャンパーニュが誕生した頃の人々の味わい方を追体験するような気持ちになります。

フランス同様、ドイツでも「ペット・ナット」は、主にナチュラルワイン、オーガニックワインの生産者によるもので、スキンコンタクトを行い、自然の酵母で発酵させるケースが多いようです。生産者たちも試行錯誤中であるため、今後が楽しみなカテゴリーです。

 
Weingut Meierer
マイアラー醸造所(モーゼル地方)

Weingut Meierer
注目の若手醸造家マティアス・マイアラー

創業1767年の家族経営の醸造所。8代目のマティアスはガイゼンハイム大学を卒業後、フリッツ・ハーグ醸造所に7年勤務、2013年に実家のワイン造りに加わった。ケステンのパウリンスベルクなどにトータル約7haの畑を所有。傾斜は最も急なところで勾配85%(約40度)に達する。栽培品種はリースリングのみ。平均樹齢は35年。辛口だけでなく、均整のとれた中辛口、甘口も生産。時を超越したモーゼルワインの真価を今日に伝えつつ、実験的なワインも生産している。日本には、デンマークのビール生産者「ミッケラー」にリースリングの果汁を提供したクラフトビール「リースリング・ピープル」(NEIPA)が先に上陸。ワインは今春から日本に輸出される。

Weingut Meierer
Am Herrenberg 15, 54518 Kesten
Tel. 06535-7012
www.weingut-meierer.de


2017 Riesling OMG! PET NAT2017 Riesling OMG! PET NAT
2017年産 リースリング OMG! ペット・ナット
16.90€

マティアスは伝統を継承する一方で、3つの斬新なリースリングを生み出している。一つ目は2011年から生産しているオレンジワイン「WTF!?」(What the Fuck!?)。二つ目は2016年産が初ヴィンテージのペット・ナット「OMG!」(Oh my God!)。ペット・ナットは全工程を自分で行えるところが魅力だと言う。残糖約20g/lの時点でボトリング。果汁と自然の酵母の力だけで生まれた「OMG!」は清らかな味わいに。三つ目はリースリングにホップで風味を加えた「HOPS」。革新的な試みだ。

最終更新 Mittwoch, 06 Februar 2019 11:23
 

ワインとスパイス

数年前、イタリア、プーリア地方に出かけたとき、ターラント近郊の醸造家と食事をする機会がありました。海辺のレストランで、彼は自ら醸造した白ワイン、フィオーナをグラスに注ぐと、テラスに生えていたローズマリーの葉を摘んでぽんと入れました。「親父がこうやって白ワインを飲んでいたんだ」そう言って彼は、私のグラスにも入れてくれました。ローズマリーとワインのアロマが重なり、プーリアの香りの記憶となっています。

これも数年前、ハンブルクのカクテルバー「クリスチアンゼンズ」でのこと。300種類以上あるメニューの中に、シャンパーニュベースのものを見つけました。ブリュットに楊枝に刺した赤唐辛子を浮かべただけのシンプルなもので、時間とともに唐辛子が効いてきます。シャンパーニュの愛好家に怒られそうなカクテルですが、興味深い味覚体験でした。

そんなことを思い出したのは、友人がユニークな料理の本を出版したからです。タイトルは「Rezepte für mehr Weingenuss(もっとワインを楽しむためのレシピ)」(ダグマー・エアリッヒ、ベッティーナ・マテイ共著)。まず飲みたいワインが先にあり、それに合わせて簡単に作れる料理のレシピ集で、スパイスやハーブを橋渡しにして、ワインと料理を近づけるアイデアが満載です。ポピュラーな品種を採り上げ、各品種に合う胡椒ベースのスパイスの調合レシピも載っています。

以下はリースリングのページからの抜粋です。

リースリングペッパー
グリーンペッパー、ドライのレモンの皮、カルダモン、ドライミント、ドライのコブミカンの葉、ドライのしょうが、ドライの月桂樹の葉を混ぜ、すり鉢で潰す。

リースリングと好相性のスパイスとハーブ
しょうが、ガランガル、コブミカンの葉、レモングラス、レモンマートル、アニス、カルダモン、ホワイトペッパー、グリーンペッパー、チャービル、ディル、ルリジサ、ラベージ、レモンバーム、バジル、月桂樹の葉、ジュニパーベリー、サフランなど。

リースリングと好相性のアロマを持つ食材
桃、アプリコット、アボカド、ピスタチオ、塩、リンゴ、ココナッツ、柚子、きゅうり、ブドウ、レモンの皮など。

これだけの情報が揃えば、料理好きの人なら次々とレシピが思い浮かぶことでしょう。例えば、グリーンサラダに何かを加えたいとき、魚のカルパッチョをオリーブオイルとビネガーでいただく場合、牛肉のカルパッチョやボイルにマヨネーズ系のソースを添える場合、鶏肉を煮込む場合、このリストからスパイスやハーブ、食材を選ぶとリースリングに合わせやすくなります。

ところで、ワインとスパイスと言えば、グリューワイン。ドイツでは主に、辛口の赤ワインで作ります。ワインは単一品種でもブレンドでも構いません。鍋にワインを入れ、氷砂糖か蜂蜜、シナモンスティック、スターアニス、クローブ、ピメント、カルダモン、レモンやオレンジのスライスを加えて煮るだけ。月桂樹の葉、コリアンダー、タイムなどを加えるレシピもあり、白ワインでも作れます。簡単なので、好きなスパイスで自分流に作ると良いでしょう。ラム酒などを加えることもありますが、お湯を少量加えてライトにするのもおすすめです。

 
Sektmanufaktur Perlgut
ゼクトマニュファクトゥア・パールグート(ザクセン地方)

Sektmanufaktur Perlgut
オーナーで醸造家のヘンドリック・ヴェーバー氏

12月はグリューワインのほかに、ゼクトを味わう機会も多い。そこで2013年に新しく誕生したゼクトマニュファクトゥアをご紹介しよう。オーナーで醸造家のヘンドリック・ヴェーバーはガイゼンハイム大学在学中にゼクトに興味を持ちはじめ、ドイツゼクトの最高峰であるラウムラント、バルドング両醸造所で修業。ザクセン地方の気候はゼクト用のブドウの栽培にふ
さわしいと考え、故郷のマイセンで醸造所を立ち上げた。ゼクトはすべて伝統製法で生産。ワイナリーのロゴである「P」の文字を構成する127個のパールは、創業時にマイセンの急斜面の畑、カピーテルベルクを整備して植えたシュペートブルグンダーの本数にちなむ。ザクセン地方唯一のゼクト専門醸造所。

Sektmanufaktur Perlgut
Hendrik Weber, Kapitelholzsteig 2
01662 Meißen
Tel. 0173 584 5225
www.perlgut.de


Königlicher Weinberg2015 Riesling brut Pillnitzer
Königlicher Weinberg
2015年産 リースリング ブリュット ピルニッツァー・ケーニヒリッヒャー・ヴァインベルク
22.90€

ピルニッツにあるケーニヒリッヒャー・ヴァインベルクの急斜面の畑のリースリングを使用。ヘンドリックはゼクトコレクションのすべてをクレマンの基準で醸造。全房圧搾。150kgのブドウから最大100kgの果汁だけを得て醸造している。リースリングの酸味を活かし、マロラクティック発酵は行っていない。瓶内二次発酵期間を合わせ、24カ月瓶内熟成。ベースワインの段階で控えめだったアロマは、瓶内二次発酵後に開花したという。リンゴやかりんの爽やかな風味のゼクト。

最終更新 Mittwoch, 12 Dezember 2018 12:26
 

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