ドイツワイン・ナビゲーター


ドイツワインの歴史を少しだけ:修道院がワイン産業の主役だった中世

前章でご紹介したカール大帝(仏語名シャルルマーニュ大帝)は、ガリア地方、つまり現在のフランス、ベルギー、スイス、オランダとドイツの一部でぶどうの栽培を奨励した人物として知られています。彼の死後は後継者争いなどがあり、843年に、王国は西フランク王国、中フランク王国、東フランク王国の3国に分割されます。この西フランク王国が現在のフランスに、東フランク王国がドイツに当たり、カール大帝はこの両国にぶどう栽培を広く普及させた人物だったわけです。

やがて、それぞれの王国の後継者が途絶え、10世紀には3国とも衰退しますが、ドイツの基盤でもある東フランク王国は962年から1806年まで神聖ローマ帝国として存続します。

一般に中世は、西ローマ帝国の滅亡(476)からルネサンス前までの期間を指します。それはヨーロッパのほぼ全土に及び、封建領主()が台頭して、それぞれの直営地で農奴を支配していた時代でした。そして、この時代のぶどう栽培やワイン醸造は主に修道院で行われていました。また、ワインの取引・輸出業務も主に教会や修道院主導で行われ、ケルンはその中心地でした。

529年にイタリアのモンテ・カッシーノで創設されたカトリック最古の修道会ベネディクト会(ベネディクティーナー / Benediktiner)は、ラインヘッセン地方やラインガウ地方などに広大なぶどう畑を所有していました。例えば、ラインガウ地方のヨハニスベルク修道院の畑がよく知られています。

1098年にはベネディクト会から派生したシトー会(ツィスターツィエンザー / Zisterzienser)が、ブルゴーニュのシトーで設立されました。ラインガウ地方のエーベルバッハ修道院はシトー会の運営で、シュタインベルクという畑が有名です。シトー会は、バルト海方面でもぶどうを栽培していました。

また、1084年にグルノーブル近郊のグランド・シャルトルーズで興ったカルトジオ会(カルトホイザー / Karthäuser)は、ドイツではトリアーに本拠地を置き、ルーヴァー川流域のアイテルスバッハなどにぶどう畑を持っていました。

ほかにも、フランケン地方ヴュルツブルクの大司教がマイン川流域でのぶどう栽培を奨励し、世俗の領主らもワイン造りに取り組んでいました。神聖ローマ帝国ザクセン朝時代(919年以後)には、ザクセン地方とザーレ・ウンストルート地方でのぶどう栽培も奨励されました。また、わずかながら市民が所有する畑もあり、共同所有、あるいは土地所有者や商人の所有という形で運営されていました。

現代のドイツのワイン生産地域の核は、中世に形成されたといえます。大量のワインが生産されていたのは、ワインが生水と違って殺菌効果のある衛生的な飲み物でもあったからです。ドイツ・ルネサンスの曙である1500年頃、ドイツのぶどう畑は過去最大の広がりを見せ、その面積は現在の約4倍もありました。また、当時の主な栽培品種は、エルプリング(Elbling)やロイシュリング(Räuschling)などであったと伝えられています。

注:ドイツの封建領主・諸侯(Fürst)には、神聖ローマ皇帝に直属する帝国諸侯(Reichsfürst)と、皇帝から所領を封土として与えられていた大司教(Erzbischof)、修道院長などの聖界諸侯(Kirchenfürst)がいました。

Weingut Clemens Busch クレメンス・ブッシュ醸造所
(モーゼル地方)

クレメンス・ブッシュ醸造所
©Jan Kobel

創業まもない1986年からビオワインを生産、ビオディナミ栽培法も導入しているクレメンス&リタ夫妻の醸造所。現在では息子のフロリアンもワイン造りに参加している。ピュンデリヒに11ヘクタールの畑を所有。中でもマリエンブルクのスレート岩土壌で栽培されるリースリングは、青色スレート岩が支配するFahrlay(ファーライ)、灰色スレート岩が多いFalkenlay(ファルケンライ)、そして赤色スレート岩が多いRothenpfad(ローテンプファド)というふうに、土壌の種類ごとに昔の畑名で個別に醸造されている。ピュンデリヒからコブレンツへ至るウンターモーゼル地域は別名Terrassenmosel(テラッセンモーゼル)と言われ、急斜面には石垣が組まれたテラス式のぶどう畑が所々に残っている。

Weingut Clemens Busch
Kirchstraße 37, 56862 Pünderich
Tel. 06542-22180
www.clemens-busch.de


2008 Riesling "vom roten Schiefer"
2008年産リースリング
「フォム・ローテン・シーファー (赤色スレート岩から)」(辛口)

11,50€

2008 Riesling vom roten Schiefer

グーツワインとも呼ばれる醸造所の名刺代わりのスタンダードワインの1つ。名醸畑マリエンブルクの赤色スレート岩土壌が支配する部分で育つリースリングから造られている。2008年産は、ゆっくりとした自然発酵を経て、09年8月にリリースされた。09年産はまもなくボトリングを開始するところだそう。ボトルを開けてグラスに注いだ瞬間から、落ち着いた優しい香りを放ち、一口ふくむと豊かな果実味が一杯に広がる。酸味はまるく、とても穏やか。後味も長く上品。テラッセンモーゼルに降り注いだ太陽の刻印と自然の力を信じて育てられたぶどうの可能性を感じさせてくれるワイン。
最終更新 Montag, 07 September 2015 10:28
 

ドイツワインの歴史を少しだけ:カール大帝の登場まで

ぶどうは、世界で最も古くからある植物の1つといわれています。一説によれば、野生ぶどうはすでに1億年以上前に存在し、そのずっと後に登場する人類は、やがてぶどうの果実を圧搾し、ワインを生産するようになりました。ワイン造りは今から約8000年前にメソポタミア地域で始まったとされ、同地域ではその後、ビール造りも始まったそうです。ワイン造りはその後、エジプト、ギリシア、そして古代ローマへと伝えられます。

ドイツでワイン造りを開始したのは、ライン・ドナウ川戦線で活躍したローマの軍人皇帝プロブス(232~282)であるといわれています。また、ドイツにおけるワイン造りが描写されている最古の文献は、ガロ・ローマ期のボルドー出身の詩人アウソニウスが370年頃に書いた旅の詩「モゼラ(モーゼル / Mosella)」だそうです。

帝国の版図を拡大し、小ゲルマニアを領土としたローマ人は最初の頃、アンフォラと呼ばれる運搬・保存用の陶製の容器に入れたワインを故国から運び込んでいたそうですが、やがてゲルマニアの地でもぶどうを栽培するようになります。現在もモーゼル川沿いにローマ時代のぶどう圧搾場の遺跡がいくつか残っています。

476年に西ローマ帝国が滅亡し、481年にゲルマン系フランク族の国、フランク王国が成立します。その初代の王、メロヴィング朝のクローヴィス1世(466~511)はカトリックの洗礼を受け、ガリア一帯のローマ系市民の信頼を得ました。ワインに関しては、同じくメロヴィング朝のダゴベルト1世が、今日のラインヘッセン地方のヴォルムス大聖堂にネッカー川流域のぶどう畑を寄贈したという記録が残っています。

続くカロリング朝のカール大帝(742~814)はフランス名をシャルルマーニュ大帝と言い、ドイツ史においても、フランス史においても重要な人物です。彼が775年に、ブルゴーニュ地方のソリューの修道院にぶどう畑を寄贈したことはよく知られています。コート・ドールの特級畑、コルトン・シャルルマーニュがその畑に当たります。

カール大帝の時代のフランク王国は、現在のフランス、ベネルクス3国、スイス、オーストリア、スロヴェニアの全土、そしてバチカン市国、ドイツ、スペイン、イタリア、チェコ、スロバキア、ハンガリー、クロアチアのそれぞれの一部にまで及んでいました。彼は多くの勅令によって、官職者たちにぶどうの栽培を指示しました。また、征服地に教会や修道院を次々と建設させたことから、日々行われるミサ用のワインや、教会や修道院を訪れる人々にふるまうための大量のワインが必要となりました。同時期に修道院は、土地の有力者の寄進などによってぶどう畑を所有し始め、貴族のほか、聖職者たちもステータスのためにぶどう畑を所有するようになりました。

カール大帝の時代のドイツにおけるワイン造りは、ライン川の西側で集中的に行われていましたが、ローマ時代のワイン造りが修道院によって受け継がれていたモーゼル川支流域、さらにはナーエ川、アール川流域でも続けられていました。また、ライン川の東側でも聖職者たちがワイン造りに取り組み始めていました。今日、フランケン地方でワインの聖人として祀られている聖キリアン(640?~689?)は、その1人として知られています。

Weingut Winter ヴィンター醸造所
(ラインヘッセン地方)

ヴィンター醸造所
写真)シュテファン・ヴィンターさん ©Weingut Winter

ディッテルスハイムの注目株の醸造所。醸造所の起源は15世紀半ばに遡る。2000年、当時まだ20歳だったシュテファン・ヴィンターが家業を継いで醸造責任者となった。シュテファンは、同じくラインヘッセン地方のケラー醸造所とプファルツ地方のヴァッサーマン・ヨルダン醸造所で修業を積んだ実力派。土壌の力を信頼する妥協を許さないワイン造りは、近年成果を上げ始めている。栽培品種は半分がリースリングで、ブルグンダー系の品種やドイツならではの品種、シルヴァーナー、ショイレーベなども大切に育てられている。ディッテルスハイムのガイアースベルク、レッカーベルクの2つの優れた畑からは、最高級のリースリングが生まれている。

Weingut Winter
Hauptstraße 17, 67596 Dittelsheim Hessloch
Tel.06244-7446
www.weingut-winter.de


2009 Dittelsheimer Riesling Kalkstein trocken
2009年産ディッテルスハイマー・リースリング、カルクシュタイン(辛口)

9,80€

2009 Dittelsheimer Riesling Kalkstein
trocken

ヴィンター醸造所の所有するディッテルスハイムのオルツワイン(Ortswein =村名ワイン)の1つ。このリースリングはガイアースベルクとレッカーベルクの土壌の石灰岩含有量が多い部分のぶどうを選りすぐって醸造したもので、凝縮感の中にもエレガントさが漂うワイン。ラインヘッセンの石灰岩含有率の高い土壌のリースリングはスレート岩土壌のリースリングと異なり、より清涼感に満ちた味わい。表現されるミネラル感には柔らかさと爽やかさがある。
最終更新 Montag, 07 September 2015 10:26
 

世界の中のドイツ・ワイン

この章では、ドイツワインが世界市場において、どのようなポジションにあるのかを、統計の数字などを参照しながら把握してみたいと思います。

ドイツは、世界的にはワインの国としてよりも、ビールの国として知られているようです。ドイツ人のビールの年間消費量は1人当たり106.6リットルに達していますが、一方ワインは21.1リットル、ゼクトは4リットルです。分かりやすいイメージに置きかえると、ドイツ人はビールの小瓶を1日1本欠かさず飲み、ワインは週に1~2回、グラス1杯程度を嗜む、という感じでしょうか。また、ドイツ人が消費しているワインは輸入ワインの方がやや多く、全体の55%を占めています。その内訳はフランスワイン(15%)、イタリアワイン(14%)、スペインワイン(8%)、その他の欧州諸国のワイン(11%)、ニューワールドワイン(6%)、その他(1%)となっています。

ドイツのワイン生産量は、830万ヘクトリットルで世界第10位。トップのイタリア(4490万ヘクトリットル)、2位のスペイン(4270万ヘクトリットル)、3位のフランス(4200万ヘクトリットル)の5分の1に満たない量です。そのためドイツワインは、量的にその存在感を世界に印象付けることができません。一方、質においてはドイツワインのレベルは高く、クヴァリテーツワインとプレディカーツワインの合計が約809万ヘクトリットルに達し、総生産量の約96%を占めています。つまり、ドイツワインのほぼすべてが、各指定生産地域の特色が生かされた、原産地呼称保護ワインなのです。

ドイツワインの中で、世界的に最も強くアピールできるのは、リースリングとシュペートブルグンダーでしょう。両者はドイツワインの白品種、赤品種のうち、それぞれ最も多く栽培されているものです。リースリングの栽培面積はドイツが世界第1位(約2万3293ha)で、世界全体のリースリング栽培面積の46.7%を占めており、2位の米国(4852ha)を大きく引き離しています。リースリングの品質とワインの多彩さの点で、他国がドイツを上回ることは非常に難しいでしょう。

また、ドイツにおけるシュペートブルグンダーの栽培面積は1万1775ha。1位のフランス(2万9738ha)、2位の米国(1万6776ha)に次いで世界第3位です。近年のドイツのシュペートブルグンダーの品質の向上は目覚ましく、ブルゴーニュの造り手との情報交換も盛んになっており、多くの醸造所がジャーマン・スタイルとブルゴーニュ・スタイルの両タイプのシュペートブルグンダーを醸造しています。ドイツのクローンのほかに、ブルゴーニュのクローンを栽培している醸造家も増えています。

このほかドイツでは、トロッケンとハルプトロッケンの生産量の合計が65%に達しており、甘口ワインの生産が減っています。また、赤ワインの生産量が全体の36%に達しています。「ドイツは白ワインの国」「ドイツワインは甘口」というイメージは、すでに過去のものとなっています。

ニューワールド・ワイン
伝統的なワイン生産地である欧州以外の、新興生産地のワインのこと。北米、中米、南米、アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドなどのワインがこれに当たる。

Weingut Rudolf Fürst ルドルフ・フュルスト醸造所
(フランケン地方)

ルドルフ・フュルスト醸造所
写真)左からパウルさん、モニカ夫人、息子のゼバスティアンさん
©Weingut Rudolf Fürst

創業1638年、フランケン地方ビュルクシュタットにある家族経営の醸造所。パウル・フュルスト氏は、1975年に亡き父の後を継いでオーナーとなり、79年には醸造所を移転して新たなスタートを切った。2003年版ゴーミヨ・ドイツワインガイドの最優秀醸造家に選ばれたフュルスト氏は、同地方における優れたワイン造りの先駆者。現在は息子のゼバスティアンもワイン造りに加わっている。フランケンならではの伝統種シルヴァーナーやリースリングから優れたワインを生産しているが、フュルスト醸造所の主力商品は、秀逸で繊細なフレンチスタイルのシュペートブルグンダーのコレクション。

Weingut Rudolf Fürst
Hohenlindenweg 46, 63927 Bügrstadt
Tel.09371-8642
www.weingut-rudolf-fuerst.de


2007 Fürst Spätburgunder Bürgstadter
2007年産ビュルクシュタッター・シュペートブルグンダー(辛口)

11,65€

2007 Fürst Spätburgunder Bürgstadter

フュルスト醸造所では、フランケン地方では珍しく、生産量の40%をシュペートブルグンダーが占めている。雑色砂岩のセントグラーフェンベルク、同じく雑色砂岩で、古来からブルグンダー種が栽培されてきたクリンゲンベルガーの畑から生まれるシュペートブルグンダーは、控えめで軽やかながら秘められた味と香りが臭覚と味覚を満足させてくれる。ご紹介するビュルクシュタットのシュペートブルグンダーは、味わいに奥行きのあるヴィラージュワイン。さらにフュルスト醸造所の真髄に触れたい方は、高価ですが、ぜひセントグラーフェンベルクやクリンゲンベルガーの偉大なシュペートブルグンダーをお試しください。
最終更新 Montag, 07 September 2015 10:25
 

醸造の手法 ゼクトの場合

この章ではゼクト(Sekt)の製法をご紹介しましょう。ゼクトはベースワインをさらに発酵させて造ります。二次発酵と呼ばれる2度目の発酵は、タンク内で行う場合と、瓶内で行う場合(伝統的瓶内発酵法 / シャンパンと同じ製法)があります。ここでは後者をご紹介します。

シャンパンと同等のゼクトを醸造する場合は、収穫後、除梗や破砕をせずに圧搾します。シャンパンにならい、ぶどう4000キログラムにつき一番搾り果汁(キュヴェ)を2050リットル、続いて二番搾り果汁(タイユ)を500リットル圧搾し、それらを別々に醸造している醸造所もあります。

ベースワインの醸造法は白ワインに準じます。ヴィンテージ別、品種別、醸造所によってはキュヴェ、タイユ別に、様々なベースワインのコレクションが出来上がったら、これらをモザイクのように組み合わせて試飲を繰り返し、最終的なアッサンブラージュを決めます。1つのヴィンテージや、1つの品種から造られるゼクトもあります。

ブレンドが決まったら、大型タンクにベースワインとティラージュ(ベースワイン、酵母、規定量の砂糖の混合液)を加え、撹拌します。これをボトリングして王冠などで栓をし、温度管理したセラーで二次発酵させます。このとき瓶内で発生した炭酸ガスがゼクトの泡となります。通常のゼクトであれば瓶内二次発酵時も含めて最低6カ月、ゼクトb.A.(Sekt b.A)といわれる原産地呼称ゼクトの場合は最低9カ月、酵母滓を取らずに寝かせておきます。2〜3年、あるいはそれ以上の長期にわたって寝かせる場合もあります。

その後、ピュピトルと呼ばれる専用台に瓶を差し込み、毎日一定の角度をつけながら左右に動かし、酵母滓を瓶の口に集めます(ルミアージュ)。手作業の場合は長くて21日間かかります。ジロパレットと呼ばれる機械を使用すれば、数日から約1週間で終了します。ルミアージュを行って瓶口に集めた酵母は王冠を外して取り除きます。その場合、瓶口の酵母を急冷却して凍らせることもあります。最後にリキュール(ドサージュ、加えない場合はドサージュ・ゼロ)を加えてコルクを打ち、アグラフェと呼ばれる針金の留め具で固定します。ドサージュに含まれる糖分の量が、ゼクトの味覚(ブリュットなど)を決定します。この一連の作業をデゴルジュマンと言い、その行程は機械化されていますが、手作業で行っている醸造所もあります。

ただし、上記の伝統製法で造られるゼクトはドイツ産ゼクトのごく一部で、それ以外はタンク発酵法(シャルマ製法)で造られています。また、瓶内二次発酵ではあっても、デゴルジュマンの手間を省くため、出来上がったゼクトを加圧タンクに戻してフィルターで酵母を取り除き、再度ボトリングする方法(トランスファー方式)がとられる場合もあります。

ところで、ドイチャー・ゼクトとは、100%ドイツ国内で収穫されたぶどうを使用しているゼクトのことです。ゼクトb.A.(Sekt b.A.)と表記があるものは、各々の指定生産地域内で収穫されたぶどうから造られています。ゼクトb.A.のうち、ヴィンツァーゼクトは、生産者元詰めであり、瓶内二次発酵であることなどが義務付けられています。クレマンは地域ごとに使用品種が限定されており、ヴィンツァーゼクトより厳しい基準が設けられています。このほか、ゼクトより圧の低いパールワイン(ペールヴァイン / Perlwein)と呼ばれる製品もあり、セッコ(Secco)と呼ばれています。ゼクトへの炭酸注入は禁じられていますが、パールワインの多くは炭酸を注入して製造されています。

St. Laurentius Sekt ザンクト・ラウレンティウス醸造所
(モーゼル地方)

ザンクト・ラウレンティウス醸造所

モーゼル地方ライヴェンにある、優れたゼクトで知られる醸造所。1982年に父の醸造所を継いだオーナーのクラウス・ヘレス氏は、試行錯誤しながらシャンパン製法のゼクト造りに取り組み、現在の地位を築いた。ギーゼラ夫人、2人の娘カチアさん、ナディーヌさんの家族全員で魅力的なゼクトの数々を生み出している。モーゼル地方のライヴェンとシャンパーニュ地方のメスニル・シュール・オジェール両村が姉妹村提携を結んでいる関係から、シャンパーニュ地方と緊密な情報交換を行っている。現在、所有畑は3ヘクタール。自社ブランドのゼクトはすべて伝統製法で年間6万本を生産。ほかの醸造所のゼクト生産も請け負い、こちらは年間約30万本を生産している。昨年5月に、プチホテル&レストラン/ヴィノテーク「Sektstuuf」もオープン。

Laurentiusstraße 4, 54340 Leiwen
Tel.06507-3836
www.st-laurentius-sekt.de


2007 Spätburgunder Rosé Brut Cuvée Nadine
2007年産キュヴェ・ナディーヌ、シュペートブルグンダー・ロゼ(ブリュット)

11,50€

2009 Lorcher Spätburgunder
Weißherbst Kabinett halbtrocken

モーゼルの伝統品種であるリースリングやエルブルングのゼクトも魅力的だが、今回ご紹介するのは、娘のナディーヌさんが手掛けたシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)。やや濃いめのサーモンピンク、酵母の働きによるフランスパンのような香りと、フレッシュな苺の香り、フルーティでふくよかな味わい、クリーミーな泡立ち。このゼクトがあれば、ほかに何もいらないと思えるような充足感で満たされる素敵なゼクト。
最終更新 Dienstag, 25 August 2015 12:22
 

醸造の手法 ロゼワインの場合

この章では、ロゼワインとその醸造の手法についてご紹介しましょう。

ドイツのワイン法によると、一般的にロゼと言われるワインには、大きく分けて2つのカテゴリーがあります。1つは本来のロゼワイン。赤ワイン用のぶどうを白ワインの要領で醸すローズ色のワインです。ヴァイスヘルプスト(Weißherbst)は、1品種が95%以上を占めるロゼワインの名称で、シュペートブルグンダーのヴァイスヘルプストが一般的です。

もう1つは、厳密にはロゼワインの範疇に含まれない、赤ワインと白ワインを醸造の段階でブレンドしたロートリング(Rotling)と呼ばれるワインです。このブレンドは、収穫後、あるいは遅くとも発酵前のマイシェの段階で行い、一緒に圧搾するという方法がとられ、すでに出来上がっている赤ワインと白ワインをブレンドすることはありません。ロートリングには、主にヴュルテンベルク地方で生産されているシラーワイン(Schillerwein)、グラウブルグンダーとシュペートブルグンダーのブレンドに限定されたバーデン地方のバーディッシュ・ロートゴルト(Badisch Rotgold)、ザクセン地方で生産されているシーラー(Schieler)があります。

本来のロゼワインを仕込む場合は、マイシェの状態でしばらく放置し、色素を少し抽出してから圧搾します。抽出時間が長ければ長いほど、濃いローズ色に仕上ります。フランスには、凝縮した赤ワインを醸造するために、発酵前にあらかじめ抜いておいた果汁からロゼを醸造するというセニエ法があり、ドイツでも実践している造り手がいますが、通常はロゼ専用に収穫したぶどうから醸造します。

ドイツのロゼは、例えばスペインのロゼ(ロサード)のような、いちごジュースを連想させる濃い色合いとは異なり、落ち着いたサーモンピンクが主流です。シュペートブルグンダーのヴァイスヘルプストは、とりわけピュアな味わい。通常、赤ワインとして飲まれるシュペートブルグンダーの、もう1つの姿を味わう楽しみは格別です。また、サーモンピンクは見た目も優雅で美しく、食卓を上品に演出してくれます。

最近、ドイツの醸造所ではブラン・ド・ノワール(Blanc de Noir)と表記された、一見白ワインと見分けのつかないワインを生産するようになりました。ブラン・ド・ノワールとは、もともと黒ぶどうであるシュペートブルグンダーとシュヴァルツリースリングそれぞれから、白いベースワインを得て造るシャンパンの名称。ぶどうの粒を房から外さず優しく圧搾し、すぐに果汁だけを取り分けます。出来上がるシャンパンに色が付いていないことから、黒(ノワール)からできる白(ブラン)と名付けられています。ドイツのブラン・ド・ノワールにはゼクトとスティルワインの両方があります。

Weingut Ottes オッテス醸造所
(ラインガウ地方)

オッテス醸造所
醸造所提供。ゲラルトさんと史子さん、長女のレナちゃん

19世紀半ば頃からワイン造りに従事してきたというオッテス家。現在、風光明媚なロルヒでワイン造りに取り組んでいるのは、3代目のゲラルトさんと史子さん夫妻。ともにエノロジスト(栽培・醸造学士)の独日カップルだ。ラインガウの急斜面の畑で、主にリースリング種を栽培。夏場に開業しているグーツシェンケ(Gutsschänke)もあり、ワインとともに史子さんの和食を楽しむイベントも行われている。

Weingut Ottes
Binger Weg 1a, 65391 Lorch
Tel. 06726-830083
www.weingut-ottes.de


2009 Lorcher Spätburgunder Weißherbst Kabinett halbtrocken
2009年産ロルヒャー・シュペートブルグンダー、ヴァイスヘルプスト、カビネット
(半辛口)
6,50€(写真は2008年産)

2009 Lorcher Spätburgunder
Weißherbst Kabinett halbtrocken

限りなくブラン・デ・ノワールに近い、繊細なサーモンピンクのヴァイスヘルプスト。色素抽出には3時間掛けている。ナッツの香りが漂い、果実味もたっぷりで、軽快かつ引き締まった味わい。低アルコール(11% vol.)で、1杯また1杯とおかわりしたくなるチャーミングなワイン。半辛口とはいえ、感覚的には辛口の味わい。常備しておきたい完璧なヴァイスヘルプストだ。プファッフェンヴィース(Pfaf fenwies)のぶどうのみを使用したヴァイスヘルプストのシュペートレーゼ(8,80€)も生産している。
最終更新 Dienstag, 25 August 2015 12:20
 

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