Hanacell
ドクターの診察室


原因不明の胃痛・胃もたれ - 機能性ディスペプシア

食後の胃もたれや胃の痛みが続いているのですが、検査で「異常なし」と言われました。「機能性ディスペプシア」という病気があると聞きましたが、どんな病気でしょうか?

Point

  • 機能性胃腸障害の1つで、胃痛、胃もたれ、早期の腹部膨満感が主な症状です。
  • 日本人の6~10人に1人が患っています。
  • 胃カメラで器質的な異常が見つかりません。
  • 治療は消化機能改善薬、胃酸分泌を抑える薬を使用します。
  • 規則正しい食生活、十分な睡眠が大切です。

機能性ディスペプシア(機能性胃腸症)とは

● 主な症状は?

みぞおち(Oberbauch)の痛み、食後の胃もたれ、少し食べただけでお腹が一杯になる(Völlegefühl、vorzeitiges Sättigungsgefühl)など、不快な症状が続いているにもかかわらず、胃カメラ検査では異常が確認されず、そのほかに原因となり得る全身疾患もありません。命に別状はないものの、QOL(生活の質)を低下させる病状として捉えられています。

みぞおちの症状

● 病気にかかる確率は?

日本人の機能性ディスペプシアの有病率は高く、一般健康診断の受診者でみると10人から6人に1人(11〜17%)、腹部症状を訴えて外来を受診する患者の約半数(45~53%)にも上ると考えられています※。

● 機能性の胃腸障害とは?

消化器系の不快症状はあるのに、内視鏡検査などで形の変化を伴った(器質的な)異常が見つからない、一連の胃腸病を「機能性胃腸障害(Funktionelle Magen-Darm-Erkrankungen)」と呼んでいます。今回取り上げる「機能性ディスペプシア」のほか、「胃食道逆流症」(2013年12月20日発行968号掲載)「過敏性腸症候群」(2011年11月16日発行894号掲載)も機能性胃腸障害の仲間です。以前は「気のせい」「気持ちの問題」として、「慢性胃炎」「神経性胃炎」などと片付けられてきたものも含まれています。

機能性ディスペプシアの原因

● 原因1 胃の動き方の異常

食べた後に胃が「適切に動かない」、逆に「働き過ぎる」といった機能異常が現れます。ストレスによって自律神経系のバランスが乱れた結果、胃の働きがおかしくなることが要因として考えられています。正常な状態の場合、食物が食道から胃に入ると、胃は消化を助けるように形を変えて膨らみます。これを「胃適応性弛緩」といいます。しかし機能性ディスペプシアにかかると、約半数のケースで胃の膨らみ方に異常が認められます。それに伴い、胃の中に食べ物を適切にとどめておけなかったり、十二指腸への排出に問題が生じたりします。消化機能改善薬(アコチアミドなど)を用いると、胃適応性弛緩の改善がみられるという報告があります。

みぞおちの症状

● 原因2 胃の知覚過敏

さらに、刺激に対して胃が痛みを感じやすくなっていると考えられています。そのため、通常では何ということもない少量の食事でも満腹感を覚えたり、胃酸の刺激を、痛みとして知覚することがあります。

胃の知覚過敏

● 原因3 その他の影響因子

ストレス、睡眠不足、食生活の乱れ、脂肪分の多い食事、アルコールやタバコ、幼少時のトラウマといった心理的因子などが、増悪因子として関与していると考えられています※。

機能性ディスペプシアの治療

● 胃もたれ、膨満感に対して

胃が適切に機能していないことが多いので、胃の運動を正常に近づける作用のある消化管機能改善薬(アコチアミド、商品名アコファイド®など)が治療に用いられます。漢方薬の「六君子湯(りっくんしとう)」にも胃運動改善効果があると報告されています。

● 胃の痛みに対して

胃の痛みには胃酸の分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害剤のオメプラゾールなど)が用いられます。

● 不安やストレスに対して

強いストレスが背景にある場合には、医師や臨床心理士と相談しながらストレスを改善する方法を模索します。場合によっては、軽い不安や緊張を取り除くために抗不安薬が用いられることもあります。

● ピロリ菌の除菌

胃・十二指腸潰瘍の原因となるヘリコバクター・ピロリ菌が陽性の場合には、抗菌薬を用いた除菌を進めます。

機能性ディスペプシアの治療
症状
胃のもたれ 胃の運動を改善する薬
早期の満腹感
胃の痛み 胃酸の分泌を抑える薬
強いストレス、心理的要因 リラックスさせる植物製剤、抗不安薬
ヘリコバクター・ピロリ菌 除菌のための抗菌薬

日常生活で気をつけること

● 甘いもの、脂肪、アルコールは控えめに

脂肪分を多く含む食事、強い香辛料、甘いものの摂り過ぎは胃に負担を掛け、胃もたれの原因となります。外食の際、ドイツ食は脂肪成分の比率が和食に比べて多いことにも留意しましょう。過度のアルコールは胃酸の分泌を促し、胃の症状を悪化させます。

● 食後はリラックス・タイムを

食後すぐに活動を開始すると、交感神経が働き、胃の働きがうまくいかないことがあります。胃の運動を促進するのは、心身がリラックスしているときに優位となる副交感神経ですので、食後はひと休みしてから活動を再開しましょう。

● 規則正しい食生活

食事の時間が不規則になってしまうのは現代人の生活の特徴。しかし、深夜の夕食や就寝直前の食事は胃に負担をかけ、夜間の胃酸分泌を促すので、好ましくありません。

● 十分な休養と睡眠

理屈では分かっていてもなかなか難しいのが十分な睡眠時間の確保です。胃腸は、ストレスや睡眠不足の影響を受けやすいので、適度な休養と十分な睡眠がとても大切です。ちょっとドイツ式に「明日でも良いことは明日に延ばす」というスタンスで根を詰め過ぎないようにしてみましょう。夜遅くまでメールをチェックしたり、ウェブサイトを閲覧したりする習慣も好ましいとは言えません。

● 体を動かす

自家用車をお持ちの場合、車での移動の多くなるドイツ生活。通勤時、乗り換えのためにホームを走る機会もなくなり、運動不足になっていませんか? 身体を動かすことは胃腸の運動を改善します。階段を使うなど、日々の生活の中で歩く機会を増やしましょう。


日常生活で気を付けること
脂肪分、アルコール、甘いものは控えめに
食事の直後はリラックスする時間を
就寝直前の食事は避ける
十分な睡眠
仕事、家事から離れる時間を
体を動かす

※日本消化器病学会
「機能性消化管疾患 - 診療ガイドライン 2014:機能性ディスペプシア(FD)」
www.jsge.or.jp/files/uploads/FDGL2.pdf

 

 

最終更新 Mittwoch, 19 Oktober 2016 17:51
 

インフルエンザ予防接種今年の流行シーズンを前に

子供には点鼻によるインフルエンザ予防接種ができると聞きましたが、注射型とどのように違うのでしょうか? 妊娠中も受けられますか?

Point

  • 生後6カ月未満は予防接種をしません
  • 生後6カ月から2歳まで、18歳以上は注射型ワクチン
  • 2〜17歳までは点鼻型または注射型ワクチン
  • 妊婦と高齢者へは予防接種が特に勧められています
  • 十分な睡眠、帰宅後のうがい、手洗いが大切

注射型ワクチンと点鼻型ワクチンの違い

● 注射型ワクチン

注射型は、WHO(世界保健機構)が予測した流行ウイルス株3種類に対しての予防効果が期待できる不活性化ワクチンです。一部に4種のウイルス株に対するワクチンもあります。

● 点鼻型ワクチン

点鼻型は、4種類のウイルス株に対して予防効果が期待できる生ワクチンです。温かい人体の中で活動が弱まるように弱体化させたウイルス株を用い、鼻に噴射することでインフルエンザに擬似感染した状態し、免疫を作らせるワクチンです。注射と違い痛みはありません。

注射型ワクチン/点鼻型ワクチン

注射型ワクチンと点鼻型ワクチンの相違点
注射型ワクチン 点鼻型ワクチン
ワクチンは 不活化ワクチン 生ワクチン
ウイルス株 多くは3種類 4種類
投与時の痛み あり なし
多い副作用 注射部位の発赤 感冒様の症状

年齢によるワクチンの選択基準

● 生後6カ月未満

インフルエンザ(Influenza)の予防接種(Schutzimpfung)は行われません。この時期の乳児において予防効果が証明されていないからです。

● 生後6カ月から2歳

注射型(Intramuskulär)の不活化ワクチンを大人の半分量接種します。副作用のリスクが不明なため、点鼻(Nasal)型の予防ワクチンは用いません。

● 2歳から17歳までは 

18歳誕生日までは点鼻型の生ワクチン、もしくは注射型の不活化ワクチンを選択できます。注射型ワクチンの場合、生後35カ月までは大人の半分量を接種します。

● 18歳以上

注射型の不活性化ワクチンのみが用いられます。

ワクチンのタイプと適応
注射型ワクチン 点鼻型ワクチン
生後6カ月未満 × ×
生後6カ月〜2歳 ×
2〜17歳
18歳以上 ×
妊婦、授乳中の女性 ×
ぜんそくの小児 ×
アスピリン使用 できる 避ける
他の予防接種 すぐできる 4週間空ける
18歳以上 ×

点鼻型ワクチンの留意点

● ワクチン接種後の4週間は予防接種を控える

生ワクチンのため、接種後4週間はほかの予防接種を控えてください。

● ぜんそくがあれば不可

鼻腔内へのワクチン投与がぜんそく発作の引き金になったり、症状の悪化につながることを防ぐため、ぜんそくを有する5歳未満の小児、1年以内にぜんそく発作がみられた人には投与できません。

● 妊婦・授乳中は不可

妊婦および妊娠の可能性のある場合は生ワクチンである点鼻型ワクチンは使えません。また、母乳への移行と乳児への影響が否定できないため、授乳中の女性への接種もできません。

● 免疫の低下している病気の人は不可

血液疾患、悪性腫瘍で免疫の低下した患者、治療のため大量のステロイド剤や免疫抑制剤を用いている人は、点鼻型の生ワクチンを用いることができません。

● アスピリンの併用は控えて

解熱鎮痛剤の一種であるアスピリン(Aspirin、Acetylsalicylsäure)との関連が強いライ症候群(Reye-Syndrom)を引き起こさないよう、点鼻型の生ワクチン接種後の4週間はアスピリンの使用を避けることが大切です。

インフルエンザ予防接種に関するQ & A

● 妊娠中でもワクチン接種は可能ですか?

妊娠中、インフルエンザは症状が重篤化しやすく、合併症のリスクも増えます。そのため2010年以降、ドイツのロベルト・コッホ研究所のワクチン接種委員会(STIKO)は、妊婦への注射型ワクチンによる予防接種を強く推奨しています。妊娠中どのステージでも予防接種は可能ですが、安定期に入った妊娠中期以降の投与がより望ましいとされています。

● 胎児へのワクチン接種の影響は?

注射型ワクチンの予防接種を受けた母親のインフルエンザに対する抗体は、胎盤を通して胎児にも移動します。そのため、生後の新生児にも約6カ月間は母親から得たインフルエンザ予防効果が続くと考えられています。授乳中であっても、注射型ワクチンであれば接種は可能です。

● ワクチンは風邪予防にもなりますか?

通常の「風邪」症状に対して、インフルエンザの予防ワクチンは予防効果がありません。

● 卵アレルギーの人は?

注射型ワクチンは、製造過程で鶏卵を用いるため、卵アレルギーがある人の場合は留意が必要です。詳細はかかりつけの医師へ相談してください。

● なぜ毎年予防接種が必要ですか?

予防接種の効果が5〜6カ月程度と短いこと、毎年少しずつ異なったウイルス株のインフルエンザが流行するためです。接種後、体内で十分な量の抗体が作られるのに約1〜2週間を必要とします。流行シーズン中に日本への一時帰国をされる人は、日程的なゆとりをもってワクチンを接種しましょう。

● ドイツで受けた予防接種は日本でも効きますか?

世界保健機構(WHO)が毎年発表する流行予想のウイルス株に基づいてワクチンが製造されます。そのため、日本とドイツでは同じウイルス株に対しての予防効果が期待されます。

● ワクチン接種の予防効果の割合は?

予防接種のインフルエンザ予防効果は健康な人で60〜70%といわれています。100%の予防率があるわけではありませんが、予防接種によりインフルエンザ感染の機会を減らし、発症した際に重症化することを抑える効果が期待できます。

日常生活での インフルエンザ感染予防

● うがい、手洗い、十分な睡眠

外出より戻ったらまず、うがいと手洗いをしましょう。インフルエンザウイルスは鼻腔粘膜を介して感染・増殖するので、ぬるま湯で軽く鼻腔洗浄をするのも良いでしょう。十分な睡眠は免疫力を高め、予防に役立ちます。インフルエンザにかかったら、お年寄りや子供が集まる場所に立ち入ることは控えます。発熱中や解熱後、すぐに職場に顔を出すことで、同僚に迷惑を掛ける可能性があることも理解しておきましょう。

インフルエンザ感染予防の基本

● 流行前の予防接種
● 帰宅したらうがい・手洗い、鼻腔を洗う
● 睡眠時間を十分にとる
● 発症したら職場に行かない
最終更新 Mittwoch, 08 Februar 2017 10:47
 

夏の旅行と健康

この夏、家族で欧州各地を旅行します。旅行中、異国の地で病気や体調不良にならないよう、どのようなことに注意したら良いでしょうか?

Point

  • 4人に1人が休暇旅行中に体調不良を訴えます。
  • 過密なスケジュール、無理な移動は禁物です。
  • 国・地域によっては飲料水に注意。
  • 旅行中は暴飲暴食を避け、十分な睡眠を。
  • 事前に流行感染症や訪問国の政情の情報を入手することも大切です。

休暇中の病気

● 休暇旅行中、4人に1人が体調不良に

ドイツの休暇(Urlaub)期間中、旅行者の4人に1人が旅先で発熱や胃腸症状など何らかの体調不良を訴え、10人に1人は深刻な体調不良を来たすと言われています。本来はリラックスするための休暇中に体調が悪くなることを、ドイツでは「休暇病(Freizeitkrankheit,Urlaubskrankheit)」と呼んでいます。

  • ウイルス性胃腸炎に際して
  • ● 旅行前の過度なストレス・疲れ
  • ● 過密なスケジュール
  • ● 移動距離・移動時間が長い
  • ● 普段とは異なる食生活
  • ● 時差や気温・気候環境の変化
  • ● 国・地域によっては水の細菌汚染
  • ● 休暇中にメール応答など仕事を続ける

● 風邪症状と消化器症状が多い

発熱、頭痛、咳など風邪症状、腹痛、下痢などの消化器症状が最も多くみられます。下痢や嘔吐のせいで、旅先のホテルの部屋で一日中寝ている状態になることも。

● 兆候は旅の前から

休暇旅行の体調不良には、旅行前のコンディションが関与していることが少なくありません。休暇中はリラックスして治るだろうとの早合点は禁物です。長期滞在型の休暇をとるドイツ人でも具合が悪くなるのですから、移動型の旅行ではさらに負荷がかかります。出発前に日常の仕事を片付けておきたいと無理をすることも過労を助長します。

  • 休暇旅行中の体調管理のポイント
  • ● 旅行前の体調は万全に
  • ● ゆとりあるスケジュール
  • ● 食べ過ぎ、飲み過ぎをしない
  • ● 滞在地では十分な睡眠を
  • ● 土地の気候にあった服装
  • ● 国・地域によっては飲料水に注意
  • ● 休暇中に仕事はしない

● 渡航先の飲料水にも注意

アフリカや中東地域では飲料水にも十分な注意が必要です。訪問国によっては歯磨きで口をすすぐときも、市販のペットボトルの水を使うようにしましょう。また、レストランでは、瓶入り清涼飲料水でも水道水から作った「氷」が入っていれば危険です。

●「休暇病」を防ぐ工夫

スケジュールに振り回されるような計画は避けましょう。普段食べ慣れない食材の食べ過ぎ、アルコールの飲み過ぎは避けましょう。休暇中は携帯電話をオフにし、できれば仕事のメールも読まないスタンスが大切、仕事開始の1~2日前に帰宅し、静かに体調を整えたいものです。

● 疾病保険カード(保険証)と常備薬を忘れずに

ドイツで発行された疾病保険カードを持っていきましょう。事前にドイツ国外での病気にも使えるかを保険会社に確認しておくことも忘れずに。高血圧などの治療中の薬があれば、必要な錠数を持参しましょう。

夏は日照不足解消のチャンス

● 日照不足解消の機会です

日焼けは避けたいと考えている女性の方も少なくない昨今ですが、しっかりした骨を維持するには太陽光に当たることが大切です。太陽光が皮ふに当たることにより、活性型ビタミンDがつくられ、骨(Knochen)へのカルシウムの取り込みを促します。冬の日照時間が日本にくらべて極端に少ないドイツでは、この季節に十分な太陽光を浴びておくことをお勧めします。

● 日焼けと皮ふの急性炎症

太陽光は大切ですが、浴び過ぎにも注意。短時間の間に皮ふが赤くなる日光皮膚炎(Sonnenbrand)は皮ふの急性炎症で、メラニンが皮ふに沈着して褐色になる日焼け(Sonnenbräune)とは異なります。日光皮膚炎を避けたい人は日焼け止めクリームを用意しましょう。

  • この夏報告されている流行感染症
  • ● 東南アジアのデング熱流行
  • ● サウジアラビアでのMERSの流行
  • ● アンゴラでの黄熱流行
  • ● 英国での大腸菌O157の流行
  • ●中南米のジカウィルス感染症
  • ● ブラジル南部でのインフルエンザ流行
  • WHO 2016 年7月、*PAHO 2016 年7月

ドイツの夏、日本の夏

● 暑くなくとも水分の補給を

日中と日没後の寒暖の変動が激しいドイツの夏、夜は薄着で外出して風邪をひくことも。日中も日本に比べて湿度が低く汗ばむことが少ないため、旅先で長時間、何も飲まないで歩いていると、知らず知らずのうちに脱水(Dehydration、Hypohydration)気味になることも。適度な水分補給を心がけましょう。

ドイツの月別の日照時間

● ダニ(ツェッケ)脳炎

3〜10月はダニ脳炎(初夏脳髄膜炎、FSME)の季節です。マダニ(Zecke)によって媒介されるウイルス性脳炎で、症状は日本脳炎(japanisches Enzepalitis)に似ています。ウイルスに汚染されたマダニはドイツ南部から中欧・東欧の森林地帯に多く生息しています。これらの地域の森林や山間部でキャンプやハイキングを予定している人は、ダニ脳炎(FSME)の予防接種と、皮ふに食いついたマダ二を取り除くツェッケ・ピンセット(薬局で購入)が感染予防に役立ちます。

● 猛暑の日本へ一時帰国

真夏に日本へ一時帰国する場合は、長時間のフライトによる疲れ、エアコンの効いた屋内と暑い屋外の温度差から体調を崩したり、睡眠中のエアコンで喉を痛めることも。また、暑さで頭が痛い、何となくボーッとするなど、熱中症の初期症状が疑われたら、生ぬるい水の入ったバスタブに浸かって体温を下げることも有用です。また、7〜9月の日本の夏は食中毒の多い季節です。特に細菌性の胃腸障害、中でもカンピロバクターが原因のものが増えます。

猛暑の日本へ一時帰国

旅先の感染症・安全情報

● 感染症情報

訪れる国や地域によって、ジカ熱、デング熱、チクングニア熱、ウエストナイル熱、マラリアなどの蚊によって媒介される病気の感染症情報に注意しましょう。

● 旅レジの活用

訪問国の政治情勢やテロ情報への留意も大切です。安全情報としては外務省の海外安全アプリ「たびレジ」が有用です。スマートフォンのGPS機能により現在地および周辺国・地域の海外安全情報を表示します。緊急時には安否確認の連絡も行えます。今年の夏、あなたはどのように過ごされていますか?

「たびレジ」登録のメリット

最終更新 Mittwoch, 08 Februar 2017 11:42
 

視界に現れる異常 - 飛蚊症と光視症

最近、ふと空を見上げたときなどに、視界に何か小さなゴミのようなものが浮いているように見えて、気になります。何かの病気でしょうか?

Point

  • 視界に浮遊物が見えるのは、飛蚊症。
  • 暗い所で一瞬光りが見えるのは、光視症。
  • ものがゆがんでみえるのが変視症。
  • 重篤な目の病気の前触れであることも、まずは眼科へ。
  • 偏頭痛に先立つ視覚異常は、脳血流の変化から。
  • 貧血で星が見えるのは、脳の虚血によるもの。

飛蚊症(ひぶんしょう)とは

● 症状は?

明るい壁や空を見たときに、目の前を小さな糸くずやゴミのようなものが移動しているように見えることがあります。眼球の中の硝子体(しょうしたい)と呼ばれる卵白のようなゼリー状の物質に、何らかの原因で濁りができると、その影が飛蚊症として感知されます。眼球内を蚊が飛んでいるように見えるため、飛蚊症(fliegende Mücken)という名がつきました。目を動かしたり、視点を変えると、目の動きに少しおくれて浮遊物も移動します。

飛蚊症

● 原因1:生まれつき

胎児のうちは硝子体に血管が通っており、通常は生まれるまでにこの血管はなくなります。しかし、生後もその一部が硝子体の中に濁りとして残ることがあり、その影が網膜に映ります。特に心配する必要はありません。

● 原因2:加齢

50歳以降、年齢を重ねるに従って硝子体の容積は減り、硝子体と網膜の間に小さな隙間ができます(後部硝子体剥離)。また、加齢によって硝子体の構造が崩れ、硝子体ポケットと呼ばれる水の部分ができ、そこに繊維成分が濁りとして浮遊します。どちらも、飛蚊症を生じさせる原因です。

硝子体

● 原因3:強い近視

強い近視の人は、眼球の長さ(角膜から網膜の長さ) が伸びているため、硝子体も引き伸ばされています。それにより、硝子体の中に空洞ができやすく、そこに繊維成分が集まって飛蚊症の原因になります。また、網膜も絶えず硝子体側に引っ張られることで網膜が薄くなって、丸い穴(円孔)ができ、飛蚊症の原因になります。

● 原因4:網膜の亀裂、眼底出血

何らかの原因で網膜に亀裂が入ると、飛蚊症や光視症が現れます。網膜裂孔(もうまくれっこう)と呼ばれるこの亀裂がさらに進むと、網膜が剥がれて「網膜はく離(Netzhautablösung)」を起こします。また、網膜の血管が破れて血液が硝子体の中に流れ込んだような場合にも、突然の飛蚊症と視野障害をきたします。どちらも放っておくと失明の危険があるので、できるだけ早く眼科での治療が必要です。

視覚の症状の原因

光視症(こうししょう)とは

● 症状は?

光の見えないはずの暗闇の中で、視界にピカっと光が見えたり、キラキラと小さな光の点が横切って見えたりする症状です。

光視症

● 原因1:加齢

眼球内の硝子体の動きに伴い、網膜が刺激を受け、それが光として認知されることによって起きる症状です。原因として最も多いのは。加齢による後部硝子体剥離です。網膜と硝子体の間に癒着ができ、目を動かした際に網膜の一部が引っ張られて、その刺激が光として感じられるのです。

● 原因2:網膜剥離の前触れ

多くの場合、光視症は眼球の老化に伴う症状ですが、中には網膜剥離の前兆として起こる場合もあります。光視症の人の20%が網膜裂孔を生じるとされ、網膜裂孔がさらに進展すると網膜剥離を起こし、失明の危険も出てきます。光視症を経験したら、眼科を受診しましょう。

● 「 眼から火花が出る」?

頭を強く打って「星が見える」という表現がありますが、打撲や大きなくしゃみのような物理的な衝撃が網膜を刺激し、光として捉えられたために生じる現象であると考えられています。貧血や低血圧の人が急に立ち上がったときに見るチカチカ感は、一過性の脳の虚血現象と理解されています。

変視症とは

● ものが歪んで見える?

例えば、まっすぐに立っているはずのスカイツリーが、途中で曲がっているように見える視覚異常です。目のフィルムに相当する網膜の表面がゆがむことによって生じます。必ず眼科を受診してください。

変視症

● 黄斑変性症を疑う

変視症の多くは、網膜の中心にある黄斑(おうはん)の部分が加齢によって変化し、黄斑変性症を発症していることが原因です。黄斑変性症の人は、視野の中心だけがゆがんだり、ぼやけたり、暗く見えますが、視野の周辺部は正常に見えます。黄斑変性症は、日本人の失明原因の4位にランクインしています。

その他の視野の異常

● 偏頭痛の直前に起こる光の前兆

偏頭痛(Migräne)の痛みに先立って、視野に異常が生じ、のこぎりの刃型のギザギザした形が見えたり、ギラギラした光が広がってみえることがあります。これは閃輝暗点(せんきあんてん)と呼ばれ、このような前兆は偏頭痛の約1/2 の人にみられます。脳内の血流変化が原因で、目の病気ではありません。

● 不思議の国のアリス症候群

変わった病名ですが、突然、目の前のものが大きく見えたり(大視症)、周囲のものが小さく見えたり(小視症)、ゆがんで見えたり(変視症)、あるいは時間の経過が速くなったり、遅くなったり、様々なバリエーションの症状があります。多くの場合、数分で元にもどります。偏頭痛、ウィルス性脳炎の感染など、いくつかの原因が考えられます。

視覚異常

眼科受診時の留意点

受診前に電話で予約を取ってください。かかり付けの医師から紹介してもらっても良いでしょう。常用している治療薬、患っている慢性の病気があれば眼科医に伝えてください。目の変化が全身の病気と関係している場合もありますし、散瞳剤などが慢性の病気に影響したり、ほかの治療薬との薬物相互作用を起こすのを防ぐためです。まれに、説明がないまま検査室に案内され、検査結果や測定値の説明もなかった、という話を聞くことがあります。そのような場合、検査結果が後日、紹介元のかかり付け医に郵送されるのか尋ねてみましょう。

 

 

最終更新 Mittwoch, 19 Oktober 2016 17:51
 

子供の予防接種、 ドイツでは?

4月に日本から転勤してきました。日本での予防接種が途中の子供が二人います。続きの予防接種をドイツで受けることができるでしょうか?

Point

  • ドイツの予防接種は世界基準のWHOの推奨にのっとっています。
  • 日本脳炎とBCGは行われていません。
  • おたふく風邪の単独ワクチンはありません。
  • 子供の予防接種の日本での記録は母子健康手帳で分かります。
  • 予防接種のスケジュールは医療機関と相談しましょう。

ドイツの小児の予防接種

● 日本との接種項目の違い

ドイツのSTIKO(予防接種委員会)が推奨する小児の接種項目も、日本の厚労省が定めた定期接種項目も、14種と数は同じです。違いは、ドイツでは日本脳炎とBCG(結核の予防接種)が含まれておらず、代わりに日本では任意接種であるB型肝炎(10月より日本でも定期接種予定)、おたふく風邪、ロタウィルスが含まれています。

予防接種に関するドイツ単語

● 混合接種製剤が多いドイツ

ドイツでは、不活性ワクチン(Totimpfstoff)の6種混合ワクチン(破傷風、ジフテリア、百日咳、ヒブ菌、ポリオ、B型肝炎)を2歳前に4回接種します。生ワクチン(Lebendimpfstoff)も、3種混合生ワクチン(麻しん、風疹、おたふく風邪を含むPriorix®など)や4種混合生ワクチン(3種混合+水痘ワクチンを含むPriorix Tetra®など)が用いられます。その結果、幼児への注射回数が日本より少なくなっています。

● おたふく風邪のワクチンがない?

混合ワクチン製剤が主体となっているため、ドイツではおたふく風邪単独のワクチンは入手が難しく、代わりにMMR(麻しん、おたふく風邪、風疹)ワクチンの接種が行われます。

● 2歳までに大半の予防接種を終了

ドイツの予防接種スケジュールでは、2歳までにほとんどのワクチン接種が完了するようになっています。早い年齢で免疫を獲得し、地域全体として感染症を予防するのに役立っています。そのため、日本からドイツに来たばかりの子供が小児科を受診すると、ドイツの基準にのっとってあれも未接種これも未接種と指摘され、幼稚園や小学校の入園のために接種を勧められることがあります。

ドイツの小児予防接種(2歳未満)

ドイツでは含まれない予防接種

●日本脳炎

ドイツには、日本脳炎を媒介する蚊(Mücke)が生息していないため、日本脳炎の予防接種は行われていません。最近、オーストリアの製薬会社が製造する日本脳炎ワクチン(Ixiaro®)をドイツでも接種できるようになりました。日本脳炎は、日本のみならず東南アジア一帯において感染の危険があるため、アジアでの長期滞在を予定している子供は接種を考慮した方が良いかもしれません。

●BCGの接種

結核の予防接種であるBCGは、ドイツでは1975年以降行われていません。また、BCGワクチンの入手は実質的に困難です。その背景には、結核患者が多くないこと、そしてBCGの効果が疑問視されてきたことがあります。近年の研究で、感染リスクの高い子供にはBCG接種の予防効果があるという報告が多く出ており、WHO(世界保健機構)も欧州全体を結核の感染リスクの高い地域として警告を出しています。2012年にはドイツで約4200人の新規発症の結核患者が報告されています(2014年のロベルト・コッホ研究所の報告)。

欧州の人口10万人当たりの結核の罹患率

成人になってからの追加接種

● 破傷風は10年に一度

幼少時にDPT(ジフテリア、百日咳、破傷風)の3種混合を受けて以来、破傷風についてあまり気にしていない人も多いと思います。しかし、花壇での土いじり、サッカーでの怪我、自転車の転倒など、大人になってからも感染のリスクがある破傷風に対し、免疫を維持するには10年に一度の追加接種が必要です。

●B型肝炎の予防接種

かつてA型肝炎、B型肝炎の予防接種を受けた人も、時間の経過とともに抗体価(感染予防に必要な免疫のレベル)が下がってきます。A型肝炎ワクチンの予防効果は10年以上(から生涯にわたって)、B型肝炎ワクチンは3年以上と考えられています。B型肝炎はワクチンの追加接種により予防効果を維持できます。

初夏脳炎の予防接種

毎年、夏が近づくと話題になるのがマダニ(Zecke)に媒介されるウイルス感染症の初夏脳炎(略してFMSE)です。日本脳炎と似た症状や後遺症を引きおこします。ウイルスを保有している可能性のあるマダニが生息しているのは南ドイツ、スイス、オーストリア、さらにポーランドなどの東欧・中欧地域です。これらの地域での子供のキャンプ活動や森林内でのハイキングを予定する場合には、十分なゆとりをもって予防接種を検討しましょう。

 

留意点

● 母子健康手帳は大切な情報源

予防接種の指針が改定されることがあるため、子供の生年によって接種項目や回数が異なっている現状があります。日本の母子手帳には、予防接種の詳しい記録がなされています。子供の予防接種について相談する際は、必ず母子手帳を持参しましょう。

● ワクチンは薬局で購入

予防接種も多くの場合は医師の書いた処方箋を持って薬局で購入、その後に医師からそのワクチン接種を受けることになります。ワクチンの種類によっては医療施設に置いてあるものもあります。

● 生ワクチン接種後は4週間の間隔を

子供の麻しんやおたふく風邪の生ワクチン接種後4~6週間は、別のワクチン(不活化ワクチン、生ワクチンにかかわらず)の接種はできません。黄熱病の予防接種も生ワクチンです。複数の予防接種が必要な場合には、まず投与スケジュールについて医療機関と相談しましょう。

● 予防接種は義務ではありませんが

ドイツのSTIKOから推奨されている予防接種は、接種を義務付けられているわけではありません。しかし、ドイツの幼稚園への入園や、スポーツクラブでの活動に参加する際に、予防接種の証明書を求められることはあります。

● 予防接種のスケジュールは医師と相談を

例えば、B型肝炎は規定の回数の予防接種終了後4週間で十分な予防効果が確立されます。黄熱病は接種後10日後から予防効果があります。初夏脳炎ワクチンは1回目の接種後、早くて10日ほどで抗体の上昇がみられます。いずれにしても、翌日から予防効果がある予防接種はありません。

 

最終更新 Dienstag, 24 Mai 2016 12:17
 

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