Hanacell
ドクターの診察室


脂肪の摂取と高脂血症

ドイツに来てから脂肪分の多い食事が増えていますが、コレステロールの取り過ぎになっていないでしょうか。

脂肪分の多い食品は摂らないほうがよいのでしょうか。

和食は元々炭水化物が主体だったため、以前はもっと チーズやバターを食べて体力を向上させよう、というキャンペーンもあったほどです。実際、脂肪含有量の多い食品は希少価値があり、お寿司屋に行ってもウニ、大トロ、数の子など脂肪を含んだものほど高価ですし、霜降りの和牛は誰もが知る高級品ですね。エネルギー面からみると、炭水化物が1グラムあたり4キロカロリーであるのに対し、脂肪は倍以上の9キロカロリー。そう聞くと現代人はすぐに「危険」と感じますが、炭水化物が中心の伝統的な日本の食事の中にあっては、脂肪分を含む食品は美味しいだけではなく、エネルギー源としても貴重品であったと言えます。

しかし、日本人の脂肪摂取量は国の経済発展とともに増えて(図1)、脂肪分を含む食品と日本人の関係は確実 に変わってきています。

図1

脂肪分は何のために必要なのでしょうか。

脂肪分は3大栄養素の1つで大変重要な役割を果たしています。脂肪は神経系の主要な構成要素であり、ステロイドホルモン(副腎皮質ホルモン、性ホルモン)も実はコレステロールが元になっています。また、中性脂肪(別名トリグリセリド)は心臓を動かす大事なエネルギー源です。

脂質は生きて行く上で欠かせない栄養素なので、体内には脂肪分が食べられない場合でも糖質またはタンパク質から脂質合成できるしくみが備わっています。また余分に摂ったエネルギーは、飢餓に備えてトリグリセリドとして体内に蓄えられます。これは人類誕生以来の体のシステムで、エネルギーを蓄える能力が高いほど生き残りには有利でしたが、現代ではそうした長所が生活習慣病に結びついているのは何とも皮肉ですね。余談ですが、デリカテッセンのフォアグラは、ガチョウの肝臓にトリグリセリドがたくさん溜まった脂肪肝です。

欧米人並みの脂肪分を摂取するとどうなりますか。

もともと日本人は農耕民族で長年に渡り脂肪摂取量が少なく、コレステロール値が低い国民でした。現在でも、欧米人の食事に比べると日本人の栄養素に脂肪分が占める割合は低めです。ところが、ここで冒頭の質問に触れますが、一般的にドイツの食事(外食)は日本の平均的な栄養素摂取構成比からみるとやはり脂肪量が多くなっています。若い世代は別にしても、私たち日本人の体は欧米人ほど長期にわたる過度の脂肪摂取に対応できないと考えてください。

平成11年の「厚生労働省国民栄養調査結果」によると、日本人男性の30~60歳代の半数以上は中性脂肪が150mg/dl以上、もしくは総コレステロール値が220mg/dl以上の高脂血症であるとの結果が出ました。特に最近は若年層の動物性脂肪の過剰摂取で、高脂血症患者はますます増える傾向にあると言えます。

高脂血症とは何でしょうか?

血中の脂質が高くなることです。痛みはないのですが、長年放置すると動脈硬化が進み、結果として心筋梗塞、狭心症、脳梗塞などの原因になります。そのためサイレント・キラー(音もなく忍び寄る殺し屋)と呼ばれています。血中のコレステロール値が高いほど心筋梗塞の発症頻度も高くなります(図2)。また、高脂血症の1つ、 高トリグリセリド血症は高血圧や糖尿病に関連することが多いので知られています。

図2

高脂血症の最大の原因はなんといっても食生活の偏りです(表1)。運動不足も高脂血症を引き起こす危険因子と言えます。同じ高脂血症でも、高コレステロール血症は過多の脂肪摂取、高トリグリセリド血症は糖質、アルコールの摂り過ぎが原因です。

表1 高脂血症の原因
食事
- 高コレステロール血症は脂肪分の取りすぎ
- 高トリグリセリド血症は糖質・アルコールの取りすぎ
家族性素因によるもの
- 家族性高コレステロール血症
他の病気によるもの
- ネフローゼ症候群、甲状腺機能低下症、糖尿病など

コレステロールには悪玉と善玉があるって本当ですか。

血中コレステロール値が220mg/dl以上の場合を高コレステロール血症と呼びます(表2)。高コレステロール血症が続くと皮膚に黄色腫という脂肪の固まりができたりします。また、血管の内壁にプラークと呼ばれる脂肪腫ができ、これが傷付くことにより血栓(血塊)ができ心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こします。食事療法の基本は脂肪分を減らすことです。

表2 高脂血症の診断基準(空腹時採血による血清脂質値)
診断名 血清脂質
値(mg/dl)
高コレステロール血症 総コレステロール
≥ 220
高LDLコレステロール血症 LDLコレステロール
≥ 140
低HDLコレステロール血症 HDLコレステロール
< 40
高トリグリセリド血症 トリグリセリド(中性脂肪)
≥ 150

動脈硬化症疾患検診ガイドライン2002年版より

コレステロールには、悪玉のLDLコレステロールと善玉のHDLコレステロールがあることが分かっています。LDL(悪玉)コレステロールは、数値が高いほど前述の血管内プラークを形成しやすくなります。一方、HDL(善玉)は血中のコレステロールを掃除する働きがあり、値が高いほど動脈硬化を起こしにくくなります。適度な運動と適度なアルコール摂取がHDL(善玉)コレステロールを増やします。

高脂血症は遺伝するのでしょうか。

遺伝性が強いのが高コレステロール血症です。LDL(悪玉)コレステロールを細胞内に取り込む受容体の異常が原因で、血中のLDLコレステロールがうまく処理されず蓄積されます。若くても動脈硬化や心筋梗塞を起こしたりします。特徴的なのは、アキレス腱に黄色腫と呼ばれるコレステロールの固まりができるため、アキレス健が通常より太く(1cm以上)なります。治療は脂肪摂取の制限と薬物療法が基本です。

日本人の場合、高コレステロール血症患者の20人に1人が家族性高コレステロール血症と考えられています。そのような要因を持つ人は500人に1人で、一般に血中コレステロール値は260mg/dl以上を示します。またその親兄弟の半数が同様の高コレステロール血症になっています。食事に十分気を付けているにもかかわらず、またほかの病気がないのに血中コレステロール値が高いという方は、かかりつけの医師に相談してみると良いでしょう。

どのような治療が一般的ですか。

食事療法と運動が大切で、高脂血症と診断されたらまずタバコは控えてください(表3)。血中コレステロール値が高い人は、最近ではスタチン系と呼ばれる非常によく効く血中コレステロール降下剤を用いることができます。日本人でもこの薬で治療を受けた人は、心筋梗塞の発症頻度が少なくなることが明らかになっています。ただし、これはあくまでコレステロール値を下げる薬で、治す薬ではないということはお忘れなく。

表3 高脂血症治療の基本となるポイント
食事療法
(1) 肉類から魚・穀物中心に
(2) 食物繊維を多く摂取する
(3) 高トリグリセリド血症ではスナック菓子、清涼飲料水、アルコールは減らす
(4) ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール、βカロチンの摂取
運動療法
(1) 運動はHDL(善玉)コレステロールを増やしトリグリセリドが減少
(2) 生活の中での運動(電車、バスはひとつ手前で降りて歩く、エレベーターを使わないなど)
(3) 有酸素運動がベスト(医師に相談してください)
(4) 効果が出るまで3ヶ月はかかることを知っておく
その他
(1) ストレスを避ける
(2) 高血圧、糖尿病を合併に注意

中性脂肪が高いと言われました。

空腹時の血中トリグリセリド(中性脂肪)値が 150mg/dl以上の場合を、高トリグリセリド血症といいます。食事をすると短時間で血中濃度が上がりますので、採血は夜間絶食後の空腹時に行う必要があります。

高トリグリセリド血症は肥満者にみられることが多く、糖尿病や高血圧に関与するインスリン抵抗性に関係すると考えられています。結果的に心筋梗塞などの虚血性心疾患を助長することになり、非常に高値(1,000mg/dl以上)になると急性すい炎を惹起したりします。最近は、空腹時の血中トリグリセリド値が正常でも、食後の値が高い場合も問題があることが分かってきました。多くの人は、1日の半分以上が食後の状態といえるからです。 食事療法の基本は糖質とアルコールを控えることです(表2)

40歳を過ぎたら、年に1度は血中のLDL(悪玉)コレステロール、HDL(善玉)コレステロール、トリグリセリド(中性脂肪)をチェックされることをおすすめします。

最終更新 Montag, 26 November 2012 12:15
 

ストレスと胃潰瘍

若い頃に胃かいようを患ったことがあり、海外生活でのストレスが気になります。胃かいようの原因は細菌の感染とも聞きますが本当でしょうか。

胃で何が起きているのですか。

胃の中にある胃液には塩酸と消化酵素が含まれており、私たちの食べたものを消化する重要な働きをしています。一方、胃壁は粘膜で保護され、胃液による胃自身の消化を防いでいますが、この胃粘膜に障害が起きると胃壁に穴があいてしまうことがあります。胃に組織欠損ができる場合を「胃かいよう」、その先の十二指腸球部の場合を「十二指腸かいよう」と呼びます(図1)。一般に、胃かいようは中年以降に多く、十二指腸かいようは若い人に多くみられます。男性が女性の約2倍の発症率となっています。

図1

なお胃炎(びらん)は、病巣が胃壁中にある粘膜筋板という層を越えない深さの炎症で、胃かいようより症状の軽いものです。

かいようができる原因は?

胃かいようは、胃酸などの胃粘膜の攻撃因子と、それに対する防御因子のバランスが崩れるために起こります。バランスが乱れる原因としては、ストレスや薬剤(痛止めなど)、さらにピロリ菌があります。過度なストレスでは、攻撃因子の胃酸の分泌が亢進するため、また痛止め薬は胃粘膜の防御力を弱めるためです。ピロリ菌は、胃内で様々の障害物質をつくり、胃かいようの下地となる胃炎を引き起こします。

ドイツで暮らし始めてからなんとなく食欲がありません。

胃かいようは昔から心理的なストレスで生じる病気の代表と考えられてきました。緊張すると軟便や下痢になるとか、胃のあたりが重くなるとか食欲がなくなるという方は少なくありません。過大なストレスが加わると、脳の視床下部から全身に様々な指令が出され、ストレスホルモン分泌や消化管運動をコントロールしている自律神経系への影響が出るためです。

ドイツでの生活は、日本の都会では望めない広い住居や時間的なゆとりなど快適な面もあり、ストレスどころか生活を堪能している方も多いと思います。しかし、海外生活は一旦イヤだと思い込むと大変なストレスに変わります。暗く長い冬の単身赴任、ドイツ人上司とのトラブル、狭い日本人社会での付き合い、子供の教育の悩み、日本への郷愁など原因は様々です。胃や十二指腸は本来、多少の暴飲暴食にも耐えるタフな臓器です。しかし、案外デリケートな面もあり、弱点は肉体的、精神的ストレスに弱いことです。

最近よく聞く言葉ですが、ピロリ菌って何ですか?

強いストレスで胃粘膜が損なわれても多くはびらん程度で済みますが、ピロリ菌に感染すると胃粘膜の防御機能が低下し、ついにかいようができてしまいます。ピロリ菌は、慢性の消化性胃かいようにかかわる細菌で、正式名称はヘリコバクター・ピロリ。胃の出口(幽門・ゆうもん)に多く見つかるらせん状(ヘリコ)の細菌(バクター)という意味です。胃酸の届きにくい胃液の粘液層に棲みつき、しかも自分でアンモニアというアルカリ性の物質を生成して胃液の強い酸から自身を守っています。

夏バテに効く食材はありますか。

専門書には豆腐、しし唐辛子、山芋、もやし、枝豆のほか、食欲を刺激するショウガ、ワサビ、コショウなどの香辛料、シソ、ミョウガ、ネギなどの香味野菜などが紹介されていますが、最も大切なことは、1日3食を食べること、そして冷やし麺など炭水化物のみだけではなくタンパク質、ビタミン、ミネラルなどをバランス良く取ることです。食欲 がなくて肉類を食べられない時には、 良質のタンパク質として豆腐がお薦めです。

ピロリ菌と胃かいようの関係は?

日本人の胃かいよう患者の65〜80%、十二指腸かいよう患者の90%以上がピロリ菌感染していることが分かっています。またこれらの感染者には慢性胃炎がみられます。残念ながらはっきりした感染源はまだ分かっていませんが、ピロリ菌の感染率は衛生環境と相関があります。50歳以上の日本人の70〜80%、20歳以下の若年者では約20%が感染しています。日本人全体では全人口の半数が感染していると見られています (感染率は欧米の約2〜3倍)。

ピロリ菌が胃の中に住みついている限り、かいようを繰り返す状態が続きます。最近は胃ガンの発症にもピロリ菌が関わっていると考えられてきています。

ピロリ菌に感染していないか心配です。どこで診断してもらえますか。

ピロリ菌が胃炎や胃・十二指腸かいように関与しているということが明らかになり、日本でもドイツでもその診断と除菌治療に保険が適用されています。感染の有無は胃カメラ による診断、採血による抗体測定、呼気中の尿素の測定、便中の抗原チェックなどで診断されます。

治療としては、日本ではプロトンポンプ阻害薬という胃酸の分泌を抑える薬と抗菌薬2剤を用いた3種類の併用による治療が主流です。1週間内服した場合の除菌率は80〜90%。将来は1剤単剤の2〜3日服用でもよく効く新しい薬が開発されるかもしれません。

胃かいようになったらどのような治療を受けるのでしょうか。

昔は胃かいようと診断されるとすぐに手術が行われたこともありました。今は、余程のことがない限り薬で治る病気と考えられています。急性胃粘膜症候群や消化性かいようの初期治療の基本は、1) 胃酸の分泌を抑える薬剤の投与、2) 食事療法、3) 身体・精神の安静です。そして再発防止には、4) ピロリ菌の除菌が大切です。

日常生活ではどのような点に注意すればよいでしょうか。

食事および生活療法の基本を表2にまとめてみました。規則正しい時間に腹6分目のやわらかい食事をすることが大切です。空腹は胃酸による胃粘膜損傷を助長します。かいようの方には少量でも3回の食事のほかに午前10時、午後3時の軽食をすすめる場合があります。

強いアルコールやタバコは胃粘膜を傷めます。酒豪家の方々はよく「アルコール消毒」などと言われますがもってのほかです。コーヒー、炭酸飲料、柑橘類、脂っこい食事、強い香辛料は胃を刺激するので避けま しょう。乳製品の不耐症でなければ、牛乳は胃粘膜を保護する有効な飲料です。

表1 よくみられる胃かいようの症状
みぞおちや背中への痛み
*空腹の時に増強する胃痛(特に夜中、朝方)
*食事により胃痛が軽減
*胸焼け
*黒色便(出血がある場合)
*ひどい時には吐血

表2 胃かいようの生活療法
規則正しい食生活
*空腹状態を避ける(間食をとる)
*規則正しい食事時間 嗜好品の制限
*カフェイン入りのコーヒーは避ける
*アルコールは避ける
*タバコはやめる
*炭酸飲料、柑橘類は避ける
食事のポイント
*1回の量を少なめに(腹5~6分目)
*柔らかい食品を選び、材料は小さく切って調理する
*就寝前に温めた牛乳を少し飲む
*強い香辛料は避け、味はうす味とする
心身の安静
*思い切って休暇をとる
*現場を離れ、日常とは違った生活をする
*運動、散歩、睡眠、入浴、マッサージなども有効
最終更新 Montag, 26 November 2012 12:15
 

夏バテ

欧州で暮らす私たちも夏バテをするのでしょうか。また、どのようなことに気を付ければよいでしょうか。

「夏バテ」の語源は?

走り疲れた馬の足がもつれてバタバタすることを「バテる」といいますが、暑くて長い夏に疲れて食欲がなくなり、身体がだるく、何もする気がおこらない状態を「夏バテ」 と言います。「夏に疲れ果てる(夏果て)」が夏バテとなったという説もあります。いずれにしても本来の医学用語ではありません。

夏バテと熱中症は違うものですか?

夏バテは、最近日本で話題となることの多い「熱中症」とは違います。高温環境下で重労働や運動をしたため熱放散が不十分となった結果、熱が体内にうっ積した状態(病気) を熱中症といいます。参考のため、 夏バテと熱中症の症状を下の表にまとめました。

夏バテの症状 熱中症(日射病)の症状
1.全身の疲れがとれない
2.食欲がない
3.冷たいものばかり飲む
4.意欲の低下
5.睡眠不足
6.下痢や便秘
1.急激な体温上昇
2.全身的な発汗停止
3.めまい、吐き気、嘔吐
4.強い頭痛
5.混迷、昏睡
6.痙攣(けいれん)など

※全ての症状が見られるわけではありません。

夏でも涼しいドイツですが、夏バテはするんでしょうか?

「日独口語辞典」(伊藤小枝子著)の中では、「日本のような暑さのないドイツには当然『夏バテ』そのものずばりの単語はない」とあります。敢えて言うならば、「Sommerhitze」にやられたということになるようです。数年前、欧州を襲った猛暑を例外とすると、これでもか、これでもか、と暑さの続く日本の夏と違い、寒暖を繰り返し、8月でも長袖シャツや コートを必要とすることもあるドイツでは、夏バテは問題にならないのかもしれません。

手軽にできる予防法を教えてください。

ドイツでも、特に最上階や屋根裏部屋に住んでいる方は、暑い日が続くとつらいですね。自宅にいて暑くてたまらないときは、生ぬるの水シャワーを浴びて(またはバスタブでの行水で)体を冷やすか、夕方涼しくなってから外を散歩して、新鮮な空気に接するなどの工夫が必要です。

夏バテに効く食材はありますか。

専門書には豆腐、しし唐辛子、山芋、もやし、枝豆のほか、食欲を刺激するショウガ、ワサビ、コショウなどの香辛料、シソ、ミョウガ、ネギなどの香味野菜などが紹介されていますが、最も大切なことは、1日3食を食べること、そして冷やし麺など炭水化物のみだけではなくタンパク質、ビタミン、ミネラルなどをバランス良く取ることです。食欲 がなくて肉類を食べられない時には、 良質のタンパク質として豆腐がお薦めです。

夏といえば、やっぱり「うなぎ」が思い浮かびます。

1000年(?)続く夏バテ解消食に「うなぎ」があります。栄養価が高い食べ物であると同時に、ビタミンA、B1、B2、D、Eのほか、カルシウム、鉄分、亜鉛などミネラル類の含有量も多く、動脈硬化を予防するEPAという物質も含まれています。蒸したり蒲焼きにしたり、また独特のタレの味力も手伝って、食欲を多いに誘います。しかし欧州生活者は、残念ながらそう簡単に日本風のうなぎを食べることはできませんね。ドイツにもうなぎ料理はありますが、必ずしも食欲をそそる味付けとは言えないようです。

暑い日は、ついつい冷たいものを飲みすぎてしまいます。

「ペットボトル症候群」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。10年近く前から夏季、小・中・高校生の世代に謎の糖尿病が散見されるようになりました。急な発症様式と高血糖による症状は、1型糖尿病(若年糖尿病)とほぼ同じですが、インスリン治療で血糖値が正常化されると、その後は治療を必要としないという不思議なものでした。その原因は、毎日飲み続けた何本ものペットボトルの清涼飲料水でした。小さなお子さんが、ペットボトルの飲料水ばかり飲んでいるようでしたら注意してください。

ビールの飲みすぎもよくないですよね。

日本では、仕事帰りの生ビールは夏の楽しみのひとつです。しかしここで注意すべきは、アルコールは栄養素の観点からも食事の代替にはならないということです。ビアガーデンで出されているつまみには、ビールをおいしくするように塩分や油類が多く含まれているものが少なくありません。中性脂肪値(トリグリセリド)の高い人、尿酸値の高い人は注意が必要です。飲み過ぎて翌日ぐったりしてしまっては、夏バテを助長することになりかねません。

高血圧と夏バテは関係がありますか。

夏は、抹消血管が開いて血圧が下がり気味になります(冬は逆です)。高血圧の人は、その圧に対応するため血管壁が厚く内腔が狭く、血流調整能も正常の人より低下していることが少なくありません。そのため血圧が下がったところに脱水が加わると(血液が濃縮され粘稠度が増してるため)、脳梗塞の危険も高まります。特にお年寄りの方は注意が必要です。

夏バテの「特効薬」があったら教えてください。

漢方では、夏バテを「中暑」または「注夏病」と呼んでいます。清暑益気湯(セイショエッキトウ)、補中益気湯(ホチュウエッキトウ)、十全大補湯(ジュウゼンダイホトウ)などの補剤が有効とされています。しかし、残念ながら夏バテの特効薬はありません。最も効果的なのは、人工的ではない新鮮な自然の空気に触れることではないでしょうか。その意味ではこの夏、欧州でお過ごしになっている皆さんは、既に自然の良薬を手にされていることになるのかもしれません。

夏バテの予防
1.適切な食事 - 規則正しく
- バランスの取れた内容で
- 炭酸清涼飲料水は控えめに
2.十分な休養 - 遅くまで起きていないで睡眠を十分にとる
- 休暇がとれれば積極的に休む
3.適度の運動 - 仕事の後はアルコールより運動を
- きつい運動は避ける
4.エアコンの使用は適度に - 外気温との差は5〜6度以内に
最終更新 Montag, 26 November 2012 11:55
 

生活習慣病

最近よく聞く「生活習慣病」とは、いったいどのような病気でしょうか。

その原因は?また具体的にはどんな 病気のことを指すのでしょうか。

これは毎日の良くない生活習慣の積み重ねにより引き起こされる病気の総称で「ライフスタイル疾患」とも言われています。具体的には「糖尿病」「高脂血症」「高血圧」です。これらの多くは症状がほとんどなく、知らず知らずのうちに血管障害を助長し、ある日突然「心筋梗塞」や「脳卒中」を引き起こすため、「サイレント・キラー」とも呼ばれています。共通の特徴は、発症に食事、運動、ストレスが大きく関わっていることです。言い換えると、生活習慣の是正により、ある程度予防することができる 疾病群とも言えます。

これらの病気は遺伝するものですか?

「現代の国民病」とまで言われる生活習慣病ですが、発症は遺伝的素因に環境因子が加わることに因ります。しかし、実際に強い遺伝性の糖尿病や高脂血症、高血圧を有する人は一部に過ぎません。一方、興味深いことに、日本国内の糖尿病受診率は車の保有台数ときれいな相関が見られます(図1)。日本人のライフスタイルの向上、すなわち環境の変化 が生活習慣病には大きく関係していると言えるでしょう。

図1

欧州に暮らす私たちにとっては、当地での食事の影響が気になります。

私たち日本人が従来食べてきた和食とは、炭水化物(糖質)が多く(60〜65%)、タンパク質(15〜20%)と脂質(15〜20%)が少なめというものでした。しかし戦後50 年間で、脂質(油)の摂取量が年間7%から 26%に増えているのです。これには欧米型の食事の普及が大きく影響しています。

若い人たちは脂質をかなりうまく処理できますが、ある程度年齢のいった方々が同じように高脂質の食事を毎日続けると、処理能力を超えてきてしまう場合もでてくるのは当然です。

一方、糖尿病では摂取総カロリー、高コレステロール血症では動物性脂肪、高血圧では食塩の過剰摂取がそれぞれ発症の誘因となりますが、ここで問題なのは、同じ量のカロリーもしくは脂質などを摂取しても、欧米の白人に比べて日本人を含むアジア系の人たちは、許容量が低いことです。そのため持続的に摂取すると、コレステロールが大血管内側にプラークとして付着するなどの現象が起こります。

医学的に望ましい食事とは「何を食べたらよいか」ではなく、「栄養のバランス」と「適量」です。私たちの欧州での食生活をもう1度チョックしてみましょう。

予防には、運動をすることが大切だと聞きました。

運動不足は生活習慣病の大きな要因です。一般に、運動の必要性を認識している方は多いといわれており、運動トレーニング器具の購入者数は実際のトレーニング人口よりはるかに多いと聞きます。しかし、私たちは車やエレベーターがあればそちらを使いますね。

運動というと、多くの方は 30分ジョギングして何カロリー消費、などとエ ネルギー消費の効能を考えがちですが、大切なのは筋肉量と筋力の保持です

私たちは年齢とともに同じ体重でも次第に筋肉が減少し、脂肪に置き換えられていきます。筋肉が多いほど細胞内の糖質の取り込み量も良く、血糖制御に役立ちます。

どのような運動が良いかは専門家により多少意見が異なりますが、最も大切なことはできるだけ足を使って歩くことです。なぜなら、両足は体の中で最も筋量の多い部位だからです。

太っている人は生活習慣病にかかりやすいのでしょうか。

昔から肥満と糖尿病の関係は良く知られており、太った人には高脂血症、高血圧が多いこともわかっています。

一方最近では、肥満の中でも特に「上半身肥満」「内臓肥満」「リンゴ型肥満」と言われるタイプが生活習慣病になりやすいことがわかってきました。このタイプの肥満は皮下脂肪の増加ではなく、内臓の周りに脂肪が貯まる状態を指します。いわゆる中年以降、おなかが出てくる状態です。

これはウェスト(cm)・ヒップ(cm)(W/G)比という数値に表れてきます。この数値が男性で1.0以上、女性で0.8以上の場合は、内臓肥満の可能性が高いといわれています。

またもう一つの指標にBody Mass Index(BMI)があります(表1)。正常値は18.5〜25で、疫学的にBMIが22前後であると最も長生きできるといわれています。ちなみに現在の日本人の平均BMIは 22 近辺です。BMIが25を越えると生活習慣病になる確率は2倍以上になるといわれています。

表1

生活習慣病を防ぐために
必要なカロリーをバランス良く摂取していますか。
塩っぽいもの、油っぽいものを好んでいませんか。
実際に運動をしていますか。
最終更新 Montag, 26 November 2012 11:56
 

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