新型コロナウイルスも収拾する気配がなく、これからの季節はどんなことに気を付けたら良いか気になっています。例えば、インフルエンザの予防接種は受けるべきでしょうか?
Point
- 風邪、インフルエンザ、新型コロナウイルスの季節
- インフルエンザ予防接種は早めに
- 気温低下と空気乾燥から皮ふが乾燥
- 日照時間減少は「冬期うつ」の原因に
- 太陽に当たりビタミンDを増やす
- 十分な睡眠で免疫力を高める
- 散歩、外出、小旅行で気分転換
風邪・インフルエンザが増える季節
● 風邪の季節
季節の変わり目は体調を崩しやすくなるという人は多いでしょう。ウイルスが鼻やのどから感染すると、鼻水(laufende Nase)や急性扁桃腺炎によるのどの痛み(Halsschmerzen)を伴う風邪となります。
風邪の症状がみられる病気*
| 症状 | 風邪 | インフルエンザ | 新型コロナ ウイルス |
花粉症 |
| 鼻症状 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
| 目のかゆみ | ◯ | |||
| のどの痛み | ◯ | ◯ | ◯ | |
| 咳 | ◯ | ◯ | ◯ | |
| 発熱 | ◯ | ◎ | ◯ | |
| 筋肉痛・関節痛 | ◎ | ◯ | ||
| 味覚・臭覚異常 | ◯ | |||
| 腹部症状 | ◯ |
● インフルエンザの季節
9月頃より徐々に増え始め、12月から2月にかけてがピークです。今のところ今年のインフルエンザ患者数は昨年より少ないことが報告されています(9月11日の厚生労働省発表)。これはコロナ禍におけるマスク着用と手洗いの徹底に加え、患者が受診に慎重になっているためと推測されているようです。
● 新型コロナウイルス
7月はドイツ国内の1日当たりの新規感染者数は数百人程度に抑えられていましたが、8月以降に再び増え始め、9月には2000人を超えた日も。これから通常のコロナウイルスの活動も高まる季節となるため、しばらくは予断を許さない状況が続きます。
● 秋の花粉症による鼻炎
10月に入ってもイネ科の草(Gräser)、ヨモギ(Beifuß)、イラクサ(Brennessei)、アカゲ(Gänsefuß)、オオバコ(Wegerich)などの花粉が飛び交います。また、早い年では12月よりヘーゼルナッツ(Hasel)、ハンノキ(Erle)の花粉症が始まることも。
新型コロナウイルスとの鑑別
ワクチンに関して
● 同じような症状
風邪、インフルエンザ、新型コロナウイルスでは似た症状も多く、時として鑑別が容易でないことがあります。今までは筋肉痛を伴う高熱はインフルエンザに特徴的で、小児ののどの痛みでは溶連菌感染も念頭に置きますが、新型コロナウイルスでも同じような症状がみられることがあるのです。
● PCR検査(PCR COVID-19)
急性の上気道炎症状がみられ、新型コロナウイルス感染の可能性を除外できない場合、PCR検査が勧められます。PCR検査は綿棒を使って鼻咽頭(あるいは口腔内)からスワブ(拭い液)を採って行い、結果が出るまで数時間~ 2日を要します。
● 二つの病原体の重複感染も?
新型コロナウイルスとA型インフルエンザ(4月のEFIM誌、6月のEmerg Infect Dis誌)やほかの呼吸器ウイルスや細菌(5月のJ Infect誌)との同時感染も、わずかながら報告されています。
皮ふの乾燥
● 乾燥肌が増える
かゆみ(Jucken)やシャワー浴でのヒリヒリ感を伴う乾燥肌(皮ふそう痒症)が増えてきます。皮ふの乾燥に加え、入浴時の石けんの使い過ぎで皮ふ表面の皮脂バリアーが壊れることが関係します。
● 手や足のあかぎれ
冬が近づくと、手の指先、足の指の付け根、かかとが裂けて痛い思いをしている人も。気温が下がり皮ふの皮脂や汗が減ってくることと、室内空気の湿度の低下が関係しています。
● 保湿クリームが効果的
シャワー・入浴後に保湿クリームを塗り込み、皮ふ表面を守ることでかゆみやあかぎれが改善することが少なくありません。保湿ローション(Lotion)よりはクリーム製剤(Creme)の方が効果的です(薬局で扱っているCetaphil® Feuchtigkeitscreme など)。自己判断でステロイド含有クリームを安易に使用することは避けましょう。
心の沈む季節
● 気分の落込み
どんよりとした空、外の風景は寂しく、人と会うのも億劫。だけど食欲は増し、甘いもの(Süßgkeiten)を好み、いつも眠たい……。このような冬に生ずる気分の落ち込みは「冬季うつ」(Winterdepression、Winterblue)と呼ばれます。
● 冬期うつの治療法
日照時間の減少と関係するため、一定強度以上の強い光を浴びる「光線療法」(Lichttherapie)が効果的です。起床時に朝の明るさを演出する目覚まし照明や、自宅治療用の照明器具が市販されています。
冬時間が始まる頃は
● 活性型ビタミンDの不足
日照時間が短くなって家の中に閉じこもりがちに。私たちの骨を維持しているのは、太陽の紫外線が皮ふに当たってできる活性型ビタミンDです。天気の良い日は外を歩いたり、バルコニーで10〜15分間だけでも太陽の光に当たるようにしましょう。
● 夜の運転が見えにくい?
視力は同じでも、ドイツの道路はネオンなど周囲を明るくする照明設備が少なく、冬に多い黒っぽい衣服の歩行者は見えにくいため、ヒヤッとすることも。初めての土地を夜間運転する時は、いつもより慎重に速度を落とすようにしましょう。
この冬の健康対策
● 対人距離、手洗い、マスク、換気
対人距離(Abstand)、手洗い(Hygiene)、マスク着用(Alltagsmasken)の「AHA–Formel」は新型コロナウイルスだけではなく、インフルエンザやほかの感染症予防にも役立ちます。寒い冬ですが、オフィスでの換気もお忘れなく。
● インフルエンザ予防接種
インフルエンザ予防接種は感染・発症を減らすとともに、重症化を抑える最も有効な手段です。今年は新型コロナウイルス感染症の流行が懸念されるなか、ワクチンの需要が高まる可能性があります(日本の厚生労働省)。高齢者、基礎疾患のある人、妊娠している人、受験生とその家族は早めに接種を受けられると良いでしょう。
● 十分な睡眠で免疫を高める
ウイルスや細菌に対する免疫(抵抗力)は良質な睡眠により維持されます(2019年のPhysiol Rev誌)。「睡眠不足が続くと風邪をひきやすくなる」、「病気の回復には十分な睡眠」といわれているのはそのためです。
● 適度な外出と小旅行
定期的な運動をして外気に当たることは、筋力の保持だけではなく、心肺や消化器の機能、メンタル面にも好影響を及ぼします。異なる環境を体験できる小旅行は、ストレス解消と気分転換に役立ちます。
● 周囲の感染者を特別視しない
新型コロナウイルスの感染者はドイツ国内だけでも28万人を越し(9月28日現在)、自宅で自己隔離を行った人もまれではありません。感染機会はどこでもあり、ほとんどの場合は感染者の不注意や責任によるものではないため、感染者や家族を非難視することは避けましょう。
● 家庭内でのメンタルヘルス
新型コロナウイルスの影響で家庭で過ごす時間が増え、その良さを再認識したり、逆に負担が増えたという人もいるかもしれません。家族に気分の落込みがみられる場合は、そのことを責めるのではなく、理解してあげることが大切です。
心身の健康を保つ工夫
- 規則正しい生活・食事
- 十分な睡眠
- 適度なスポーツ・外出
- インフルエンザ予防接種
- 家庭内でのワークシェア
- ホームオフィスで家を独占しない
- 夫婦(家族)での外出、
- 小旅行
- 大宴会は控える
新型コロナウイルス - 分かってきたこと、今後のこと -質問:今後も長期化する気配のある新型コロナウイルスですが、現在どこまで分かっていて、何が分かっていないのか不安です。また、予防ワクチンはいつから接種できるのでしょうか? Point
空気感染(エアロゾル感染)も● 空気感染とは? 長期間空気中に漂っている非常に小さな飛沫核(エアロゾル、Aerosol)を吸い込んで感染することをいい、「エアロゾル感染」と同義です。麻しんウイルス、水痘ウイルス、結核菌の感染経路として知られています。 ● いきさつ 今年2月頃から示唆され、中国のレストランでエアコンの気流に沿う形での集団感染(4月のmedRxiv誌)が発生し、疑いが濃くなりました。7月にオーストラリアと米国の学者が世界中の237名の研究者と共に「空気感染」の可能性を主張(米国感染症学会誌)、続いてWHOも「空気感染」を否定できない旨を発表しました。 考えられる感染経路
季節を選ばず● 夏も衰えないウイルス 通常のコロナウイルスの場合、夏の間は冬の10分の1程度まで減ります(2015~ 2019年の病原微生物検出情報)。紫外線増加によるウイルスの不活化(山内一也著「ウイルスの意味論」)による収拾も期待されましたが(4月のScientific Report誌)、新型コロナウイルスはこの夏も世界中で強い感染力を維持しています。 ● ウイルス遺伝子の変異 新型コロナウイルスは遺伝子の変異が起こりやすい1本鎖のRNAウイルスです(4月のPNAS誌)。例えば、ウイルス表面の突起(スパイク)の遺伝子配列は、5月末に採取した時は78%がすでに変異型で占められていました(7月のCell誌)。 抗体(IgG)が消える・できない● できた抗体がなくなる? ドイツの第1号感染者の抗体(IgG)は3カ月後には陰性化してしまいました(7月28日のAFP通信)。中国(6月のmedRxiv誌)、英国(7月のmedRxiv誌)、米国(7月のNEJM誌)でも抗体価が数カ月を経て低下することが観察され、抗体が長く保たれない可能性が指摘されています。 ● 感染したのに抗体(IgG)ができない? リューベック保健所から感染後の抗体陽性率が71%と低いことが(6月5日の報告)報告されましたが、スペイン(6月のLancet誌)や中国(6月のmedRxive誌 )の入院後患者でも陽性率は90%前後でした。無症状・軽症者ではさらに抗体ができにくいとの推測もされています(バッキンガム大学のSikora教授、6月7日のDaily Mail紙)。 再感染 or ウイルスが残っていた?● PCR、陰性化してから再び陽性 PCR検査で陰性判明後に再陽性が出たことで、韓国が注目されました(韓国疾病予防管理局)。その後日本、イタリア(5月のInfection誌)、フランス(6月のJ Infection誌)、中国(7月のBMC Infect Dis誌)でも同様にPCR検査の再陽性の報告がされています。 ● 便へのウイルス排出 口からのPCR検査が陰性でも血液や肛門スワブの陽性が続いたり(2月のEMI誌)、便へのウイルス排出が1カ月以上続くという報告(3月のLancet Gastroenterology & Hepatology誌)があり、ウイルス感染は長く続いている可能性も考えられています。便中のウイルスの感染力は不明ですが、排泄物にも注意が必要といわれています(6月のJAMA誌、8月のEmerg Infect Dis誌)。 急性期の症状● 命に関わる肺病変 肺は非常に柔らかいデリケートな組織です。肺は強い免疫反応を起こしてウイルスを退治しようとしますが、同時に肺自体も多大なダメージを受けます。浸出液と血球成分の残骸が、血液と空気のガス交換の場である肺はいほう胞を埋め尽くし、短時間の間に呼吸が悪化します。 ● 血栓ができる 血管壁が傷つき血栓(Blutgerinnsel)ができます。その血栓により脳卒中、心筋梗塞、足の末梢血流障害、時には聴覚障害(7月のInt J Audiol誌)につながることも。血栓が肺に飛ぶと重篤な肺塞栓(Lungenembolie)を引き起こします。 ● 臭覚・味覚の障害 鼻炎症状がないにもかかわらず、臭覚・味覚(Geruchs-/Geschmackssinn)に変化が生じます。出現頻度は15%(ロベルト・コッホ研究所、RKI)から70%(4月のEur Archiv Oto-Rhino-Laryngol誌)、80%以上(4月のEur Archiv Oto-Rhino-Laryngol誌)と幅があります。1〜2週間での回復が多いようです。 ● ACE2受容体を介する全身の病変 ヒトの血圧の制御に関わっているアンジオテンシン変換酵素2受容体(ACE2-Rezeptor)が、新型コロナウイルスの入り口としてウイルスに利用されます(2月のNature誌)。小腸のACE2受容体(2004年のJ Physiol誌)は下痢、腹痛と関係します。 退院しても後遺症(Post-Covid-Syndrom)● 倦怠感、息苦しさが続く 退院後も不調に悩まされることが問題となっています。イタリアの入院患者では倦怠感(53%、小数点以下を四捨五入)、呼吸困難(43%)、胸痛(22%)が報告されました(8月のJAMA誌)。人工呼吸器を着けて死と直面した患者は、メンタル面への影響も指摘されています。 ● 呼吸機能の低下 肺胞の損傷、肺の治癒過程でできた瘢はんこん痕で機能が正常に戻らないことも。退院時の肺CTでは、94%の患者に変化が残ったとの報告もあります(3月のRadiology誌)。 分かってきたウイルスの特徴
ワクチンに関して● ワクチンの開発状況 世界で179製剤のワクチン(Impfstoff)が開発中で、うち第1相を含む臨床試験に入っているのは42製剤です(8月21日現在、The New York Times紙)。ドイツでは16製剤が開発されています(ドイツ研究開発型製薬工業協会、VFA発表)。 ● ワクチンの効果と安全性 完成したワクチンがその時の変異株に有効か、ワクチンによる抗体(IgG)は何年(何カ月)有効か、安全性は大丈夫かなど、実用化までのハードルは低くありません。 ● ワクチンはいつから? 本来は数年を要する新規ワクチン開発。仮に審査過程を短縮したとして、ドイツでは早ければ2021年には一部を対象とした接種が始まると期待されています(Paul-Ehrilich Institute、8月19日)。ロシアはGamaleya研究所製のワクチンを第3相臨床試験をスキップする形で認可しています(TrialSite Newsより)。 秋から留意すべきこと● 寒くても部屋の換気を 建物内に閉じ籠もりがちになるドイツの冬、オフィスでも自宅でも部屋の換気(Raumlüftung)が感染のリスクを減らします(前述の米国感染症学会誌)。 ● 手洗い、対人間隔、マスク着用を忘れずに ①手洗い(Handwäsche)、②対人間隔(1.5メートル以上、Allgemeines Abstandsgebot)、③公共交通機関や買い物でのマスク着用(Mundschutzmasken)を忘れないようにしましょう。 さまざまな原因で起こるめまい朝、歯を磨き始めると急にクラクラすることがあります。日本の病院で「持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)」ではないかと言われましたが、初めて聞いた病名で、どういう疾患なのかよく分かりません。 Point
めまい(Schwindel)とは● めまい「目眩、眩暈」の言葉 「外界が動揺、あるいは回転しているような感覚を生じる場合の総称」(日本国語大辞典、小学館)で、語源は「目舞(めまひ)」とされます(大言海、冨山房)。会話の中では、受けた印象が強烈、目のくらむような、の意味でも用いられます。 ● 回転性めまい、浮動性めまい、立ちくらみ 自分や周囲が動いているような、一方に引っ張られるような感覚を「回転性めまい(英語でvertigo)」、頭がクラクラする、ふわふわと浮いたような感じは「浮動性めまい(英語でdizziness)」。どちらも日本語では「めまい」、ドイツ語では「Schwindel」と表現されます。立った瞬間にクラッとしたり、立っていて目の前が暗くなるのが「立ちくらみ(schwarz vor den Augen)」です。 めまいの種類
● めまいの頻度 日本人のめまいの有訴者率(人口1000人当たり)は女性30、男性13で、男女とも年齢と共に増加します(平成28年度国民生活基礎調査)。一方ドイツでは、めまいが原因で一度でも受診したことのある人の割合が全体の20〜30%にも上ります(2008年のドイツの週刊医学専門誌 Dtsch Arzteblの記事)。 ● 平衡感覚の乱れ(Gleichgewichtsstörungen) 私たちは動いている時や重力に対して傾いた状態にある時、①目、②耳(前庭器官)、③体からの情報(体性深部感覚)を瞬時に捉え、その信号を小脳で統合して体の空間位置を把握しています。これらの信号のバランスが崩れた時にめまいを生じます。 めまいのさまざまな原因● 貧血(Anämie) 貧血で立ちくらみ、だるさ、疲れやすさがみられることがあります。特に若い女性では徐々に生じた鉄欠乏性貧血に留意が必要です。 ● 低血圧(Hypotonie) 低血圧(収縮期血圧100mmHg以下)は、早朝の立ちくらみの原因になるほか、入浴後や暑い日は血管拡張と汗によって血圧がさらに下がり、めまいを生じます。ドイツでも夏は脱水予防のため飲水への配慮が必要です。 ● 耳からのめまい 回転性めまいは、耳の前ぜんてい庭(Vestibulum)機能の障害と関係します。例えば、メニエール病(Menière-Krankheit)、良性発作性頭位めまい、BPPV(後述)などが挙げられます。 ● 目からのめまい 眼鏡補正が強すぎたり、左右の補正視力が極端に違う場合、また長時間のコンピューター作業から生じる疲れ目(さらに首こり、肩こり)もめまいの原因になります。 ● 首からのめまい 筋緊張性頭痛や頚けいつい椎の障害からくる頚性めまいは、首を回したり、伸ばした時に生じます(日本平衡神経学会 1987年)。加齢と共に増加し、若い人ではデスクワーク、壮年以降では庭仕事など前かがみの労作、高齢者では上向きに寝そべってテレビを視聴するなどで生じることが多くなっています(2016年の日農医誌の論文)。 ● 治療薬が原因のことも 降圧剤や前立腺治療薬のα1ブロッカーによる血圧の下がり過ぎ、もしくは睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬、パーキンソン病の治療薬の副作用としてめまいがみられることがあります。 ● 心の病としてのめまい? 診断の付かない時に「心因性では?」と疑われることがあります。過大なストレス、軽いうつ状況からめまいがみられることもあり、頻繁なめまいが逆に強いストレスとして作用している場合も。その診断は慎重に行われるべきものです。 今まで原因不明だっためまい● PPPDは機能性のめまい 「持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)」とは、2017年に新しく確立された慢性の機能性めまいです(2017年のJ Vestibular Res誌)。発症のきっかけはさまざまな原因による急性めまい、これらが治った後に続発してみられます。今まで原因不明とされてきた多くのめまいがこれに含まれます。 めまいの原因の内訳 ● PPPDの原因 最初の急性めまいに対して体が適応し、平衡感覚のバランスがシフトしたままの状態となり、急性めまいが治った後も視覚や体動に対して過剰に反応し続けるためと考えられています。 ● PPPDの症状 ①3カ月以上にわたる自覚的なめまい、②何らかの急性めまいが先行して発症、③立位、体の動き、視覚(動いているものや複雑な模様)刺激の状況で増悪しやすい、などの特徴があります。 ● PPPDの頻度 良性発作性頭位めまい(後述)に次いで、多くみられるめまいです。ドイツではめまい患者の15〜20%がPPPDと考えられています(2019年のDeximedの記事)。日本でも同様で、新潟大学のめまい外来では慢性の持続性めまい患者の23%がPPPDと診断されました(2018年の日経メディカル誌)。 ● PPPDの診断 貧血、低血圧、神経学的異常など、ほかの病気では説明できず、先述の①〜③と一致する場合には強く疑われます。特に検査方法はありません。 ● PPPDの治療法 患者による病態の背景の理解が大切です。目・頭・体の一定の動きを繰り返す「前庭リハビリ」と呼ばれる理学療法(Physiotherapie)を基本に、必要に応じてSSRI薬などを用いる薬物療法(2018年のNeurol Opthalmol Otol誌の論文)や認知行動療法が併用されます。PPPDは心の病とは独立しためまいですが、不安や苦痛が大きく、臨床心理士(klinische Psychologin/klinischer Psychologe)との連携も時として大切です。 そのほかのめまい● 最も多い「良性発作性頭位めまい(BPPV)」 BPPV(paroxysmaler Lagerungsschwindel)は、寝返りなど頭の位置の変化でみられ、1〜2分の短時間で治まる回転性めまいです。三半規管の耳石の一部が剥がれ、浮遊して起こります。めまいを繰り返すことにより、症状が良くなります。最も頻度の高いめまいで、めまい患者全体の40〜50%を占めます。 ● 脳血管障害によるめまい 平衡感覚の神経経路である小脳や脳幹の微小脳梗塞(2011年の臨床神経学誌)や栄養血管の椎骨脳底動脈循環不全でもめまいが起こります。アルコールを飲みすぎてフラフラと平衡感覚がにぶくなるのは、小脳機能の低下によるものです。 ● 起立性低血圧によるめまい 立ち上がって収縮期血圧が20mmHg以上低下する場合を「起立性低血圧」と呼び、自律神経系の機能障害を伴う糖尿病患者などでよくみられます。自律神経の機能調節がまだ不十分な10〜16歳の子どもでは、「起立性調節障害(OD)」がみられることも。 ● 脳脊髄液減少症とめまい むちうち損傷などの交通事故、スポーツ外傷、尻もちなどに起因し、脳脊髄液が漏出して起こります。起立時の頭痛、めまい、頚部痛、耳鳴りなどの多彩な症状がみられます。 ● 高所恐怖症のめまい ヒッチコック監督の映画「めまい」のように、高所恐怖症により自分が置かれていた空間認識障害で生じるめまいです。目を閉じると改善しますが、もし落ちたらと想像する恐怖心が症状を強めます。 |
この夏、ドイツでの旅行は?新型コロナの現状新型コロナウイルス感染拡大の防止措置で家の周りしか出歩けなかったため、夏は旅行に行きたいと思っています。どんな点に気をつけるべきでしょうか? Point
ドイツ国内の感染状況● 規制は緩和、しかし危険はまだ去らず 毎日ロベルト・コッホ研究所(RKI)から発表されている再生産数(R-Werteと7-Tage-R-Werte、Reproduktionszahl、1以上は感染拡大のリスクあり、1未満を収拾の方向を示す)は最近まで1前後で推移していましたが、6月後半に一時的な急増がみられ、まだ予断を許さない状況です。 ● ドイツ国内で感染が多い地域も? 6月に入ってから、バイエルン州のアスパラガス工場、ノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州の精肉工場、ニーダーザクセン州のゲッティンゲンで集団での新規感染が次々に確認されました。人口10万人当たりの新規感染者が1週間で50人を超えた地域 (ギュータースロー郡など)では、期間限定で生活・行動制限が再導入されました。 6月の再生産数(R)の変動 欧州内の感染状況● 封じ込められているが注意必要 「欧州におけるパンデミックは封じ込められているが,まだ過ぎ去ってはおらず、引き続き責任ある振る舞いと注意が求められる」状況です(ドイツ連邦内務省、6月10日のプレスリリース)。 ● 欧州連合(EU)域内の渡航が可能に ルクセンブルクとの国境は5月15日に、オーストリア、フランス、スイス、デンマーク、イタリアに係る暫定的国境管理は6月15日、スペインとは6月21日をもって終了しました。 欧州内で旅行可能な国(6月15日現在) ● 渡航警告は8月31日まで 全世界(EU加盟国、シェンゲン協定加盟国、英国を除く)に対する渡航警告(Reisewarnung)は8月31日まで延長されます(独外務省)。7月1日より、EUは日本をはじめ状況が落ち着いている国からの入域を早期に認める意向を固めました(6月29日現在)。 日本への一時帰国● 日本入国の際 ドイツから入国した日本人には空港でのPCR検査と、入国の翌日から起算して14日間は自宅や宿泊施設などで待機することが求められます。到着から入国まで数時間かかる状態が続いています。 ドイツ国内の衛生基準● 各州による措置(Maßnahmen) 外出時は、公共の場における対人間隔(Allgemeines Abstandsgebot)、マスク装着(Mund-Nasen-Bedeckung)、接触制限(Kontaktbeschränkung)に加え、各州政府ごとに措置が制定されています。必ず旅行前に確認しましょう。 新型コロナウイルス感染の予防のためAHA
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 対人間隔 | A = Abstand、 1.5メートル以上 |
| 手洗い | H = Hygiene |
| マスク着用 | A = Alltagsmasken |
● ホテル(Hotel)
ホテル内では1.5〜2メートルの対人間隔を保ち、施設内には消毒液器(Desinfekitionsspender)を設置。朝食も基本的に従来のビュッフェではなくなり、部屋の消毒は宿泊客がチェックアウトした後に行われます(NRW州の場合)。RKIが定める前述 のリスク地域からの訪問者は、ホテルなどの宿泊施設を利用できません。
● 鉄道(Deutsche Bahn)
車内では6歳未満の子どもと、飲食時を除いてマスク着用が必要です。IC、ICEなどの長距離列車では事前にオンラインで座席を確保しておくことが勧めらています(Deutsch Bahn AGより)。食堂車(Boardbistro)は営業していますが、座席へのサービスは当面行われません。
● バス(Busreisen)
一列おきで着席し、車内ではマスクを着用。車内のトイレは使えません。ただし、対人間隔を保ちにくいとの指摘もあります(5月29日のDas Ersteの番組Brisant)。
● レストランでの食事(Restaurant)
テーブルの間隔は1.5メートル以上あけ、住所、氏名、連絡先を記載し、マスクを着けて着席します。途中で化粧室へ行く時、店を離れる際は店内でもマスクをしましょう。
ドイツ国外での措置
● ドイツからの渡航警告の出ていない国
ドイツの渡航警告から除外されている国々でも、それぞれ規制や制限が設けられていることがあります(例えば、英国は入国後に14日間の自己隔離)。
● 空港(Flughafen)
1.5メートルの対人間隔を取り、マスクを着用して移動します。空港内のサービス施設の営業が停止していて飲食物の入手が困難なこともあるため、出発地から食べ物を持参することが勧められています。
● 航空機機内(Flugzeugkabine)
定期的に座席周り、トイレのドアノブなどの消毒が行われます。機内は衛生上安全とされますが(Tagenschau24でのTUI旅行会社のインタビュー)、長時間に渡り対人間隔が必ずしも保てない状況で過ごすため、リスクを指摘する声もあります。
留意すべきポイント
● ドイツの人気観光地に旅行客が集中?
今夏はドイツ国内の観光地に旅行客が集中し、特に人気の高いジルト島、東フリースラント諸島、アルゴイ地方、黒森地方は多少混雑も予想されます。衛生概念が疎かにならないように注意が必要です。
● マスク持参を忘れずに
マスクを忘れた時は、ハンカチやバンダナのようなもので「鼻と口」両方を覆うようにしてください。不特定多数が用いるトイレを利用する際も、マスクを着用した方が安全かもしれません。なお、マスクは周囲への感染を防ぐのに役立ちます(5月7日のRKIの疫学レポート)。
● レジオネラ症への注意
長期間に渡りホテルの水道施設が使われていなかったため、レジオネラ症(Legionelleninfektion)のリスク増加への注意喚起が出されています(6月11日のRKIの疫学レポート)。バスルームやプールで感染し、呼吸器症状を起こすことも。特に高齢の方は注意が必要です。
分かってきたこと、分からないこと
● 子どもの感染率は低い可能性あり
ドイツの大学病院の共同研究によると、子どもの感染率は大人より低く(6月16日、ウルム大学のDebatin教授)、また他国からのデータ解析でも20歳以下の若年者の新型コロナウイルスの感染率は大人の約半分(6月16日のイギリスの医学誌 Nature Medicine)と報告されています。
● 抗体ができると感染しないのか?
新型コロナウイルスはウイルス専門家にとっても未知との遭遇で、まだ分かっていないことがたくさんあります。感染して抗体ができると2度と感染しないのか、来年はウイルス変異で再感染があり得るのか、ワクチン効果との関係でこれからの解明が待たれます。
胸焼けや空咳がサイン?胃食道逆流症
2カ月以上も胸焼けと朝方の空咳がみられます。知人から胃食道逆流症(逆流性食道炎)ではないかと言われましたが、咳も関係するのでしょうか?
Point
- 胸焼け、口内の苦味が主症状
- 空咳、ゲップ、背部痛、耳の痛みもみられる
- 食道括約筋の緩み、食道裂孔ヘルニアが原因
- 食生活、肥満、ピロリ菌除去も関与
- 胃酸分泌を抑える薬が有効
逆立ちしても逆流しない理由
● 食道の下部括約筋
食道と胃の境にある帯状の筋肉です。いつもは胃の内容物が食道に逆流しないように閉じた状態で、食べ物や飲み物が通る時だけ開く仕組みになっています。
● 食道の蠕動(ぜんどう)
食道の筋肉が波のように動く蠕動(Peristaltik)により、食べ物はのどを通過すると、胃の方向に送られます。
胃液に強い胃、弱い食道
● 胃の中には強酸と消化酵素
胃液に含まれているのは、pH1〜2の強い酸(胃酸)とタンパク質分解酵素(ペプシン)。粘液が胃壁を覆い、自身の胃液で胃が消化されないように守られています。
● 酸に弱い食道粘膜
口の中と同じ扁平上皮でできている食道粘膜には、胃酸に対する防御はありません。そのため胃内容物の逆流が刺激になったり、炎症を起こしたりします。
逆流を起こす要因
● 括約筋の締まりが悪くなる
食道括約筋が一時的に開いてしまったり(日本消化器病学会の「胃食道逆流症診断ガイドライン 2015」、以下ガイドライン)、加齢により括約筋が緩んで逆流(Gastroösophagealer Reflux)を起こします。
● 食道裂孔(れっこう)ヘルニア
食道と胃の境をつくる横隔膜の筋肉が緩み、胃の一部分が横隔膜の上にはみ出すと逆流が起きやすくなります。食道裂孔ヘルニアの割合は年齢を重ねるとともに増加します(1982年の日本消化器学会誌の論文より)。
● 妊娠・きついベルト・肥満
妊婦や肥満の人は、体を横たえると腹圧で胃が頭側に押し上げられるため逆流を起こしやすくなります。痩せている人でも、お腹を締め付ける衣服やきついベルトを着用している際は注意が必要です。
胃食道逆流症の原因
● H. ピロリ菌の除菌後
ヘリコバクター・ピロリ菌は、菌体の周りにアルカリ性のアンモニアのバリアをつくって強酸の胃の中で生息しています。除菌により酸の度合いが強くなると、症状が増すと考えられています。
● 遅い夕食・過食・高脂肪食
食事の食べ過ぎ、就寝直前の夕食では、胃が圧迫されて逆流が生じやすくなります。 脂肪分は胃内に長く留まり胃酸分泌を刺激するため、逆流症状を強くすることも。
胃食道逆流症(GERD)
● 有病率は10人に1人
日本の成人の10〜20%にみられるといわれています。健康診断受診者の 5人に1人は胃食道逆流症(gastroösophageale Refluxkrankheit)の症状があり、胃カメラを受けた10人に1人は食道に炎症所見(食道炎)が認められています(前述のガイドライン)。
● 胃食道逆流症(GERD)の分類
食道に炎症所見が認められる場合を「逆流性食道炎」と呼び、①自覚症状を伴うタイプと、②自覚症状のないタイプがあります。③自覚症状があり炎症所見がないタイプは「非びらん性胃食道逆流症(NERD)」と呼ばれます。
胃食道逆流の種類
| 胃食道逆流症 | ||||
| 逆流性食道炎 | 非びらん性胃食道逆流症 | |||
| 食道の炎症 | あり | なし | ||
| 逆流症状 | ①あり | ②なし | ③あり | |
| なりやすい人 | 年配者・肥満 | 若い女性・やせ型 | ||
胃食道逆流症の症状
● 胸焼け、どん酸(Sodbrennen)
胸焼け、どん酸(のどや口の中が苦酸っぱく感じられる)は胃食道逆流症の主症状です。胸焼けは前胸部のチクチク感、詰まった感じなど胸痛(Brustschmerzen)として捉えられることもあります。
● よくみられる症状
のど・あごへ放散する痛み・違和感、背中の痛み、肩こりを感じたりします。 頻回にゲップ(Rülps)、お腹が張った感じ(Bauchauftreibung)がみられることも。
● 慢性的な空咳(trockener Husten)
起床時や会話中の空咳(痰を伴わない咳)が8週間以上も続く場合は、胃食道逆流症も疑われます。逆流が下部食道の神経やのどを刺激するためです。また咳自体が逆流を促進するといわれています(日本呼吸器学会の咳嗽に関するガイドラインより)
食道粘膜の病変
● 逆流性食道炎(Refluxösophagitis)
食道粘膜に炎症(ただれや潰傷)が見られます。逆流性食道炎は胃酸以外の胃内容物、胆汁や膵液などの十二指腸の内容物の逆流によっても生じます。
● バレット食道(Barrett-Ösophagus)
逆流に伴う炎症が繰り返しみられ、食道粘膜の扁平上皮が胃や腸と同じ円柱上皮に置き換わった状態を「バレット食道」と呼びます。
● バレット食道からの発がん率
バレット食道は、食道がん(Speiseröhrenkrebs、Ösophaguskarzinom)のリスク因子(Krebsrisiko)になると考えられています。発がん率は0.4% /年(2009年の米国医学誌 Gut)、もしくは0.12% /年(2011年の米国医学誌 NEJM)などの数値が報告されています。病変の長さが6センチ以上になると、0.65%/年(2011年の米国消化器学会誌)と増加します。
胃食道逆流症の診断
● 症状による診断
胸焼けとどん酸の症状により、胃食道逆流症と臨床的な診断がなされます(2010年の日本消化器病学会の「患者さんと家族のための胃食道逆流症ガイドブック」)。
● 胃カメラによる診断
食道下部の炎症変化の有無を胃(食道)カメラで直接確認します。食道裂孔ヘルニアの有無も分かります。
● 胃酸分泌を抑えての効果(PPI試験)
プロトンポンプ阻害薬(PPI、次項)を 2週間飲んでみて症状の改善がみられる場合に、胃食道逆流症と診断されます。治療と診断を兼ねた方法といえます。
胃食道逆流症の治療
● 胃酸の分泌を抑える薬
ドイツでは、胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)が用いられます(例:オメプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾールなど)。約80%の患者で症状改善がみられます(2019年の日本医事新報の記事)。
● 生活習慣の見直し
胃食道逆流症と診断された場合は、これまでの生活習慣を見直し、下記のような改善策を実施しましょう。
生活上の改善策
| 食事 | 腹八分目、早い時間の夕食 刺激物は控える、高脂肪食は再検討 |
| 嗜好品 | 禁煙、アルコール、カフェイン、炭酸飲料、酸味の強いジュースの取り過ぎ注意 |
| その他 | 体重コントロール、腹部の強い圧迫を避ける |
● 就寝中の身体体位
夜中の睡眠中に胃液が逆流して目が覚めてしまう人は、ベッドの頭側をリクライングで少し持ち上げて横になると、逆流が減り症状が消失する場合があります。
● 手術
内科的治療で症状の改善がみられない食道裂孔ヘルニアの場合は、手術が検討されることも。バレット食道の場合は、外科的切除が行われます。
<< 最初 < 前 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 次 > 最後 >>



インベスト・イン・ババリア
スケッチブック






