嬉しいことがあると、お祝いだと言って飲み、
気持ちが沈んだときには景気付けだと言ってあおり、
風邪をひいたら健康に良いんだと言って求める。
どんなときも「ビール」を片手に人生を歩むドイツ人。
ドイツでこよなく愛されるビール、
その美味しさの秘訣は500年以上にわたって守られてきた伝統と、
各醸造所のブラウマイスター たちの誇りと情熱。
食欲の秋、ビール三昧のドイツを楽しもう。
ドイツ、ビールランキング 生産量TOP10
数字は年間生産量、 単位:ヘクトリットル
※ INSIDE Getränke Verlags-GmbH, 2009調べ
| 1. | Krombacher Pils | 4.482.000 |
| 2. | Bitburger Pils | 3.589.000 |
| 3. | Warsteiner Pilsener | 2.730.000 |
| 4. | Hasseröder Pilsener | 2.564.000 |
| 5. | Oettinger Pils | 2.107.000 |
| 6. | Veltins Pilsener | 1.900.000 |
| 7. | Oettinger Export | 1.809.000 |
| 8. | Radeberger Pilsner | 1.806.000 |
| 9. | Beck's Pilsener | 1.676.000 |
| 10. | Paulaner Weißbier | 1.325.000 |
地域ごとにバラエティに富んだ食文化を持つドイツ。フランス料理やイタリア料理のような華やかさはないかもしれないが、地産地消を基本としたこだわりの味はその土地でしか出会えない宝物。さて、どこでどんな味が待ち受けているのか、地図を頼りに進んでみよう。今回のテーマは、国内に1300以上の醸造所がしのぎを削っているという「Bier(ビール)」。ドイツは地ビールの宝庫だ。(編集部:高橋 萌)
上面発酵 Obergäriges Bier
上面発酵酵母を使用し、常温で約2週間という短期間で発酵させる醸造法。発酵中に酵母が浮上し、上面に酵母の層ができることからこう呼ばれる。上面発酵の方法をとっても、アルトやヴァイツェンの場合は低温で長期熟成させている。この方法により、香味豊かなビールが生まれる。ヴァイツェン / ヴァイスビア Weizenbier / Weißbier
南ドイツで広く飲まれているヴァイツェンは、「小麦(Weizen)」のビール。かの有名なビール純粋令(原材料を水・ホップ・大麦麦芽・酵母に限定する)の中にある、小麦麦芽の使用規定に従って造られ、専用のヴァイツェン酵母が生み出すフルーティーな香り、またはスパイシーな香りが特徴。グラスは飲み口の方だけ丸みを帯びた特殊な形をしており、乾杯するときは、ガラスが分厚くなっているグラスの足の方を合わせるのが地元民のルール。
アルトビア Altbier
デュッセルドルフとその近郊で造られる地ビール。色は茶褐色で、麦芽は大麦麦芽100%、もしくは小麦麦芽を混ぜたもの。「アルト(古い)」と呼ばれるが、いわゆる古酒という意味ではなく、醸造法(上面発酵)が古い歴史を持つことから命名された。ホップの苦みが効果的な、調和のとれた味わいが特徴。グラスは、200mlの円筒のものが一般的だ。飲み屋では、グラスが空になったら、おかわりの合図。コースターでグラスにフタをするまで延々と提供され続ける。
ケルシュ Kölsch
その名の通り、ケルンのビール。それ以外の地域で造られたものは「ケルシュ」を名乗れない。明るい淡色で、すっきりとしていながら、奥深い味わい。グラスはアルトと同様に200mlの円筒型だが、「Kölsch-Stange」というケルシュ用のグラスは、アルトのグラスよりも細長い。デュッセルドルフとケルン、電車で30分という近距離にある2つの街は何かとライバル意識を燃やしているが、地ビールもそれぞれのこだわりを貫いている。
ベルリーナーヴァイセ Berliner Weiße
ベルリン名物、ベルリーナーヴァイセは特殊な方法で造られる小麦のビール。ポイントは、酵母に合わせて乳酸菌が加えられること。そのため、ビールとしてはかなり酸味が強く、色も白い(Weiß)。飲み屋のメニューには、木いちごのシロップを加えた「rot(赤)」、またはクルマバソウというハーブのシロップが効いた「grün(緑)」という形で提供されていることが多い。これらは、口の広いグラスにストローをさして飲む。
ゴーゼ Gose
ベルリーナーヴァイセのように、乳酸菌を利用した小麦のビール。ゴーゼには、さらに塩とコリアンダーが加わる。このことが「ビール純粋令」に触れるため、ビールとして認められず、一度はビールの歴史から姿を消した。復活を遂げたのは2000年、ライプツィヒの醸造所から。もともとは、ゴーゼ川が流れるゴスラーで生まれ、ザクセンやテューリンゲン地域を中心に発展した。酸味が強いため、キュンメルやスグリの実のシロップを加えて飲む。
その他のビール Stark- und Spezialbiere
季節限定のものでは、断食期間(復活祭前の2週間)に飲まれるアルコール度数が高いビール(Starkbier)のボックやドッペルボック。オクトーバーフェストで出されるメルツェン。また、麦芽に燻製の香りが付いたバンベルクのラオホビアや、ライ麦を使用したロッゲンビアなど、ドイツ国内には季節限定、地域限定のビールがまだまだ多く存在する。
下面発酵 Untergäriges Bier
下面発酵酵母を使用し、低温(6〜15度)でじっくりと時間を掛けて発酵を行い、その後、酵母がタンクの底に溜まることから名付けられた。この手法で醸造されたビールをラガー(Lager)とも言う。19世紀以降、主流となっているビールで、調和のとれた、すっきりとした味わい。
ピルス / ピルスナー Pils / Pilsner
現在、ドイツで最も愛されているのが、ピルス。特に北ドイツでよく飲まれているが、売り上げランキングからも分かるように、その消費量は圧倒的。全体のおよそ65%がピルスで占められているほどだ。そのピルスの製法は、ピルゼン(チェコ)で1842年にミュンヘン出身のドイツ人醸造家が発明した。これにより、透き通るように美しい淡色のビールが完成。ワイングラスに似たピルスナー・グラスで味わう。
エクスポート Export
エクスポートという名前の通り、長時間の輸送(輸出)にも耐えられる日持ちの良さが自慢。オクトーバーフェストで提供されるメルツェンほどではないが、アルコール度数は高く約5.5%。また、麦芽をたっぷりと使用していることも特徴で、濃厚で力強い味となる。この贅沢な原材料の使い方は、日本で言う「プレミアムビール」に相当する。色は、赤褐色や濃い黄色などさまざま。ドルトムントで急成長し、ドイツ全土に広まった。
ヘレス Helles
ピルゼンでピルスが誕生し、高い評価を受け始めた時代、ミュンヘンの醸造家たちがこぞって「それに勝るものを!」と開発した情熱のビール。誕生したのは1890年代。ピルスよりも麦芽の風味が強く、甘みのある、やわらかな味わい。オクトーバーフェストの季節になると、アルコール度数の高い「ヴィーズンビア(Wiesnbier)」に姿を変え、振る舞われる。明るい(Hell)色をしていることから、ヘレスと呼ばれる。
ドゥンケルビア Dunkles / Dunkelbier
ヘレスと比べて、暗い(Dunkel)と表現される色合いのビール。ヘレスが誕生する前までは、バイエルンではドゥンケルが主流だった。色の違いは、ローストした麦芽に由来する。カラメル色にあぶった麦芽が、深い香りとコクを感じさせる濃厚な味わいを引き出す。深みのある色に反して、苦味は控えめ。一方、ヴァイツェン・ドゥンケルなど、ビールの種類ではなく、色が濃いことを示すために用いられる言葉でもある。
シュヴァルツビア Schwarzbier
ドゥンケルよりも、もっと濃い色合いの黒(Schwarz)ビールのこと。下面発酵が主流だが、上面発酵のシュヴァルツビアも存在する。1543年、テューリンゲンの醸造所で造られたものが起源とされている。しっかりと色付くまでローストされた麦芽が用いられ、香ばしさを感じさせる香りと濃 密な泡、甘さと苦味のバランスが程良い。ビスマルク宰相や文豪ゲーテが愛したことで知られ、1990年代以降、再び愛好者が急増しているという。
ツヴィッケルビア Zwickelbier
ブラウマイスターが貯蔵タンクの中のビールを試飲するときに使う取り外し可能な蛇口(Zwickelhahn)から注いだビールのこと。つまりツヴィッケルビアは、まさに貯蔵タンクから直接グラスに注いだ無ろ過のビール。貯蔵ビール(Kellerbier)と も呼ばれる。ろ過されていないことから、ミネラルなどが多く残っており、栄養価が高い。見た目は濁っているが、すっきりとした味わい。フランケン地方で根付いたビール。
オクトーバーフェスト攻略のための
作戦会議
ドイツのビール文化の真髄に触れようと思ったら、やはりオクトーバーフェストは外せない。開幕まであと1週間!規模の大きさも、人の多さも桁違いのモンスターイベントをとことん楽しむためのヒントを求め、5年連続の参加を果たしたというミキ・ライゼンの氏家さんをパートナーに作戦会議を開きました。
氏家さん:ミキ・ライゼン、フランクフルト店勤務。2005~08年、ミュンヘン在住。オクトーバーフェ スト参加歴は5回。
高橋:ドイツニュースダイジェスト勤務。オクトーバーフェスト参加歴1回。席取りに苦戦し、消化 不良。リベンジを誓う。
高橋(以下、高):私は昨年、土曜の午後に参加したのですが、席を探すのに相当苦労しました。
氏家さん(以下、氏):土日はとにかく混みます。 席に座らないとビールを注文できないので、とにかく席取りは必須。平日、また土日でも昼間なら、そこそこ空いているのではないでしょうか。「予約」という手段もありますが、団体(10人以上)向けで、すぐに完売してしまいます。
高:なるほど、平日か土日の昼間が狙い目ですね。
氏:人気のビールテントでも、頑張って待てば席にありつけるかもしれませんが、ちょっと目線を変えて外のテラス席や収容人数200人程度の小規模なテントを目指すと、簡単に席取れることも。昼間は家族連れも多いので、なごやかな雰囲気が味わえると思うのですが、夜になると興が乗ると申しますか、羽目を外す方も現れて物騒な事態にも。そういう意味でも、お昼の時間帯がお勧めです。
高:トイレ事情も、想像以上の長蛇の列に 圧倒されました。
氏:トイレも、たくさん設置されてはいま すが、やはりビールを飲みますからね。おのずと必要回数も増えます。事前にトイレの位置を確認し、余裕をもって席を立ちましょう。(トイレの目印は弓矢を持った天使)
高:14あるメインのビールテントの中で、氏家さんのお勧めは?
氏:それぞれに味わいがあり、魅力があります。 例えば、典型的なバイエルンの雰囲気が味わえるのは、レーヴェンブロイ(10番)やアウグスティーナー(12番)。特にアウグスティーナーは ミュンヘンを代表するビールで、ほかの地域で はなかなか飲めないもの。青空が描かれたハッカー(4番)のテントは、とてもきれいです。有名人がよく訪れると言われるヒポドローム(1番)は若者に人気。ケーファー(8番)は、一味違った ノーブルな雰囲気で、私は特に気に入っています。ここは、食事も美味しいですしね。
高:オクトーバーフェストの名物料理といえば?
氏:フィッシャー・ブローニ(14番)のさばの丸焼きは、脂がのっていて最高に美味い!!レモンを絞って食べるんですが、それこそ、醤油と大根おろしがあれば最高という感じ。
高:My醤油をポケットに忍ばせなければいけませんね。
氏:あとは、巨大なブレッツェルと鶏の半身焼きも定番です。
高:遊園地ゾーンはどうですか?
氏:子ども連れはもちろん、大人も十分楽しめます。特に観覧車は見ごたえがありますよ。上から オクトーバーフェストの全景が見えるんです。午前中は遊園地ゾーンで遊び、早めにテント内に席を確保してからビールを飲む。飲んでから遊ぶとひっくり返ってしまうので注意です。
高:飲んだら、乗るな!を標語にします。ほかに気を付けるべきことは?
氏:緊急医療ゾーンの場所確認。アルコールが入るイベントなので、念のため緊急事態の心構えを。雰囲気に押されて、つい飲み過ぎてしまいがち。ペースを守って、楽しい思い出にしてください。
高:了解です!!ところで、このイベントの一番の醍醐味って何でしょうか?
氏:たまたま隣り合わせになっただけの縁だけど、いつの間にか全員で一緒に歌いながら飲んでた。そういう雰囲気がとても楽しいです。
Oktoberfest 2011
会期:9月17日(土)~ 10月3日(月)時間:平日10:00 ~ 23:30 土日祝 9:00 ~ 23:30
※ Käfer's Wiesnschänke とWeinzelt のみ01:00まで営業
ファミリー割引:毎週火曜12:00 ~18:00
会場:Theresienwiese, 80336 München
アクセス:地下鉄U3/U6 でGoetheplatz またはPoccistraße下車。 U4/U5 でTheresienwiese またはSchwanthalerhöhe下車
www.oktoberfest.de
会場MAP
ビールテント
| テント | 席数 屋内 |
席数 屋外 |
提供されるビール |
| 1-Hippodrom | 3200 | 1000 | シュパーテン・フランツィスカーナー |
| 2-Armbrustschützen-Festhalle | 5830 | 1600 | パウラーナー |
| 3-Hofbräu-Festzelt | 6898 | 3022 | ホーフブロイ・ミュンヘン |
| 4-Hacker-Festzelt | 6950 | 2400 | ハッカー・プシュール |
| 5-Schottenhamel | 6000 | 4000 | シュパーテン・フランツィスカーナー |
| 6-Winzerer Fähndl | 8450 | 2450 | パウラーナー |
| 7-Schützen-Festzelt | 5440 | レーヴェンブロイ | |
| 8-Käfer's Wies'n-Schänke | 1000 | 1900 | パウラーナー |
| 9-Weinzelt | 2500 | 500 | パウラーナー、15種類のワインやシャンパン |
| 10-Löwenbräu-Festhalle | 5700 | 2800 | レーヴェンブロイ |
| 11-Bräurosl | 6200 | 2200 | ハッカー・プショール |
| 12-Augustiner-Festhalle | 6000 | 2500 | アウグスティーナー |
| 13-Ochsenbraterei | 5900 | 1500 | シュパーテン |
| 14-Fischer-Vroni | 2695 | 700 | アウグスティーナー |
オクトーバーフェスト・カレンダー
| 9月17日(土)10:50~ | オープニング・パレード |
| 9月17日(土)12:00 | ビールテント「Schottenhamel」 で樽開き |
| 9月18日(日)9:40~ | 伝統衣装と山車のパレード |
| 9月25日(日)11:00~ | ババリア像前の野外コンサート |
| 9月26日(月)18:00~ | ビールテント「Fischer Vroni」同性愛者が集まるRosa Wiesn |
| 10月3日(月)12:00~ | 閉幕を告げる大砲が鳴る |



インベスト・イン・ババリア
スケッチブック














ベンツゆかりの地マンハイムで一風変わった交響楽団のコンサートが開かれる。オーケストラや合唱団と並び、舞台に上がるのは80台の車たち。車がパーカッションとなり、今までになかった斬新な音楽が奏でられると共に、125年におよぶ自動車の歴史が語られる。「Automobilsommer 2011」の最後を飾る一大スペクタクルショー。

ベルリンの南方120キロ、旧褐炭採掘場に全7コースを備え、2000年に完成した国内最新のサーキット。オートバイ世界選手権からオールドタイマー・レース、ドイツ・ツーリングカー選手権(DTM)まで様々なレースが開催される。その他、フォーミュラのレース仕様車を自ら運転してみたり、助手席に座ってレースのスピードを追体験したり、マイカーを持ち込んで4.5キロのグランプリ・コースを疾走するなどの体験プログラムも盛りだくさん。
1932年にオープンしたサーキットは、ライン・ネッカー地域の表看板的な存在。当初は直線同士を繋いだ単調な超高速コースで危険性が高く、幾度もの改修を重ねて現在の中高速コースになった。F1グランプリ(GP)やDTMなど世界最高峰のモータースポーツの開催地だが、個性的な改造車が集うTuner GP、白熱のドラッグレースNitrOlympx、豪快なドリップ走行が歓声を巻き起こすDrift Challengeなど、変わり種レースも豊富。
1997年、ドイツで3番目に完成したパーマネントサーキット。DTMや世界ツーリングカー選手権が行われる約3.6キロのコースでは、定期的に安全運転の練習プログラムが提供されているほか、その脇にはゴーカート用のコースも設置。場外に出たら10ヘクタールのオフロード・コースが待ち受け、荒々しい道路、階段、水上の走行など、究極のモータースポーツに挑戦できる。敷地内には4つ星ホテルもあり、泊まり掛けで訪れるのにぴったり。
世界で最も過酷なサーキットの1つとされ、当地のF1グランプリやDTM、24時間レースなどに出場することを夢見るレーサーは多い。伝統的なADACアイフェル・レースや改造バイクで競うスーパーバイク世界選手権も例年、熱狂的なファンを集めている。コースは20.832キロの北コースと5.148キロのGPコースの2つあり、レース期間以外は常時マイカー走行が可能。北コースが11周で24ユーロ、GPコースは20分38ユーロと値段もお手頃だ。
ザクセン州ホーエンシュタイン=エルンストタールにあるサーキットの目玉レースは、なんと言ってもロードレース世界選手権(MotoGP)。1927年に初めてオートバイ・レースが開かれたという古い歴史を持つサーキットだが、難所・急所が続くコースで事故が多発したため、72年に閉鎖に追い込まれた。しかし、95年に安全性を実証された新生サーキットとしてカムバック。今ではMotoGPのほか、オートバイ・ドイツGPも高い人気を誇っている。






































