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「包装法」で暮らしが変わる?プラスチックごみゼロ宣言

使い捨てSTOP「包装法」で暮らしが変わる?プラスチックごみゼロ宣言 プラスチックごみ
ゼロ宣言

2018年10月、欧州議会にて2021年からの使い捨てプラスチック製品の販売を欧州連合(EU)内で規制する法案が可決。それを受け、ドイツでは今年1月1日よりリサイクル不可のプラスチック容器などに規制を設ける法律「包装法(Verpackungsgesetz)」が施行された。環境問題に対して意識が高いドイツにおけるプラスチック製品・ごみの現実や対策を通じて、ドイツで暮らす私たちが考えるべきこと、実践できることなどこれからの生活のヒントを探る。
(text&interview:見市 知)

プラスチック製品の規制Q&A

Q1 なぜ包装法のような法案が出てきたの?

テイクアウトのコーヒーやランチの利用、小分けにされた食品など手軽で便利になったライフスタイルによって発生する包装ごみの量は、ドイツで年間181万6000トン、1人当たり220kgと言われている(2016年連邦統計庁調べ)。このうち最も問題視されているのが、リサイクルされずに海洋に漂うプラスチックごみの存在だ。昨年10月の欧州議会では、2021年からストローや皿、フォークやナイフ、柄の部分にプラスチックを用いた綿棒などの使い捨てプラスチック製品の販売をEU域内で規制する法案を可決した。これに先駆けて米大手コーヒーチェーンのスターバックスも、プラスチック製ストローの段階的な使用禁止方針を発表。使い捨てプラスチックに代表されるごみ問題への厳しい対応は、いまや世界的な流れとなっている。

海の汚染にもつながる、海洋に漂うプラスチックごみ海の汚染にもつながる、海洋に漂うプラスチックごみ

Q2 ドイツにおける包装ごみ問題の深刻度は?

包装ごみの年間排出量は2016年の調査によるとEU平均が年間1人当たり167kg、これに対してドイツは220kg。一方、プラスチックごみに限定した場合には、EU平均が年間31kgなのに対しドイツは37kgに(2015年ユーロスタット調査)。ちなみにプラスチックごみのリサイクル率はEU平均が40%なのに対し、ドイツは49%と平均を上回る。同調査でプラスチックごみの排出量が最も多いのがアイルランドの60.7kg(リサイクル率は34%)、最も少ないのがブルガリアの13.9kg(同61%)となっている。環境保護の意識が高いイメージのドイツにおいて意外な数字だが、テイクアウトのコーヒーや食事に用いられる使い捨て容器、オンラインショッピング利用の人気などが、 包装ゴミが多い理由として挙げられている(連邦環境庁調べ)。

包装ごみ年間排出量/プラスチックごみ年間排出量

Q3 施行された包装法によって変わることは?

包装法により、包装や容器に対して義務付けられるリサイクル率の段階的な引き上げを実施。2019年にはガラス瓶がこれまでの75%から80%に、紙類は70%から85%に、アルミニウムは60%から80%に、プラスチックなどの化学合成物質は36%から58.80%に引き上げられる。2022年には第2段階として、これらの数値をさらに引き上げる予定だ。スーパーマーケットなどの店舗においては、飲料品のボトルが再利用可能なものであるかどうかの表記を、消費者が一目で分かるように明示することが義務付けられる。さらに今後、連邦政府によりパッケージ管理中央センターが設置され、メーカーは商品パッケージに関する申告が義務化される。

リサイクリング義務付け率

製品 2018年まで 2019年から
ガラス瓶 75% 80%
紙類 70% 85%
アルミニウム 60% 80%
化学合成物質
プラスチック製品含む
36% 58.80%

Q4 物価上昇など、消費者の負担は?

包装法の目的は、プラスチックごみを減らすこと。そのため連邦政府はプラスチックなどの包装に課税するのではなく、リサイクルの促進をうたっている。また、一定条件の下で使い捨て容器にもデポジットが義務付けられるが、値上がりするのはデポジット料の部分。メーカーがプラスチック製品を減らし、またはリサイクル可能にすることを通してシステムが強化され、そして消費者がこれに賛同し、リサイクル・システムを機能させていくことが重要となる。リサイクル業者のDer Grüne Punkt(グリューネ・プンクト)などでは、環境に優しいリサイクル可能なパッケージに対して、メーカー側が負担する手数料が引き下げられる仕組みを導入している。

リサイクル可能なボトルリサイクル可能な表示がなされている製品

Q5 プラスチックを使わずに生活することは可能?

2018年1月のシュピーゲル・オンライン版に、マーラ・ファイゲル記者が30日間の「プラスチック断食」にチャレンジした記事が掲載された。なかでもプラスチック回避が最も困難だったのが、プラスチック容器やマイクロプラスチックが用いられていることが多い化粧品や洗剤だったと言う。しかしパッケージフリーショップや自然派ショップを活用し、布製の買い物袋やガラス容器を買い物時に持参、30日間プラスチックを使わない生活を実現させた。ファイゲル記者は「プラスチックを回避して生活することは、簡単ではないけれど可能だ」とコメント。「人はプラスチック製品に依存して生きている。プラスチックに頼らずに生きることは、自分の使っているものに対してより自覚的になることだ」とも述べている。

プラスチック容器プラスチック容器が主流の化粧品は回避が難しい

Q6 包装ごみ問題に対するドイツ人の意識は?

2018年11月に実施された連邦消費者センター連盟の委託で行われたエムニート研究所の世論調査によると、96%が包装ごみを減らすことを重要だと捉えているという結果に。回答者の5人に1人が「週に1回は何らかのテイクアウト用容器を利用する」という。一方で、62%の人が「テイクアウト用容器をほとんど利用しない」と答えたほか、以下のような回答があった。

  • 値引きと引き換えに自分専用容器の持参を支持71%
  • 使い捨て容器の使用を禁止するべき57%
  • テイクアウト用容器にデポジットを適用するべき55%
  • テイクアウト用容器を有料化するべき157%
  • 再利用容器の使用に対して、財政支援を行なうべき50%

梱包ゴミについてのアンケート

パッケージフリーショップのオーナーに聞く! エコな暮らしのヒント

Frau Ramona Dornerルタナトゥア オーナー
ラモーナ・ドーナーさん
Frau Ramona Dorner


rutaNatur

Prinzregentenstr. 7, 86150 Augsburg
https://rutanatur.de

rutaNatur壁一面に並ぶバルク・ビンズ

プラスチックごみ問題に対する意識が高まる中、ドイツで今、静かな広がりを見せているのが「パッケージフリー運動」だ。これは、ゼロ・ウェイスト運動の流れを汲む、プラスチックごみを減らすライフスタイルの提唱として始まったもの。ドイツで最初のパッケージフリーショップは2014年、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州の州都キールに誕生した「ウンフェアパックト(Unverpackt: ドイツ語で「無包装」の意味)で、ここでは定期的にワークショップも開催しており、同様のコンセプトでお店を開きたい人たちのために有料で、具体的なアドバイスと基本情報を提供している。現在、ドイツ国内にあるパッケージフリーショップの数は70軒以上を数える。その一つが、南ドイツのアウグスブルクにある、パッケージフリーショップ「ルタナトゥア(rutaNatur )」だ。

量り売りによって無駄なごみを出さないがコンセプト

市街中心部の片隅の、ちょっと目立たない通りにある「ルタナトゥア」。「偶然通りかかって入ってくるお客さんは少ないです。大半がこの店の存在を知って目指してくる人たち」と、オーナーのラモーナさんは語る。小さな店舗の中で目を引くのが、壁一面にずらりと設置されているバルク・ビンズと呼ばれる円筒形の透明なケースだ。ナッツや米などの穀類、コーヒー豆やパスタなどを、客がセルフサービスで自由に量り、買うことができるというシステム。これは、パッケージフリーショップのシンボル的な存在でもある。店の中央には有機栽培農家がつくった野菜や果物。このほか、小麦粉や砂糖、クッキーやチョコレートも量り売りされている。客はめいめいが、自宅から空き瓶やタッパーウェアを持参、または店で容器を購入することもできる。

「パッケージフリー」のコンセプトは食料品だけではない。仕切りで隔てられた隣のコーナーには、生活用品がずらり。石けんや固形シャンプー、竹を素材に用いた歯ブラシ、そして再生紙で作られたトイレットペーパーもビニール袋に入れずにむき出しの状態で並んでいる。

パッケージフリーショップ rutaNatur
パッケージフリーショップ rutaNatur

環境問題について意識を持つことが第一歩

オーナーのラモーナさんは10代の頃から環境問題や食の 安全などに人一倍関心を持っていた。数年前、旅行代理店に 勤めていたときにキールの「ウンフェアパックト」の存在を知 り、ワークショップに参加。2016年8月に「ルタナトゥア」を オープンさせた。

ルタナトゥアの客層は、「食や環境に対して意識的で、多様な年齢層の人たち」。しかし意識の持ち方はさまざまで、「自分はベジタリアンだけれど、子どもの食事は自由にさせている」と言う30代の母親や、「合成洗剤は使わない。ベーキングパウダーで洗濯する」と言う大学生の女性も。また、「子どものアレルギーをきっかけに、食や環境に気を遣うようになった」と言う50代の男性もいた。

竹を用いた歯ブラシ環境に関して意識が高い人が多く来店する

ルタナトゥアで扱っている食品はすべて品質に配慮したエコ認定されたものなので、通常のスーパーマーケットの商品よりもやや割高だ。たいがいの食品をこの店で調達するという常連の女性に「家計に響きませんか?」と尋ねたところ、「野菜は季節のものを買えばお手頃だし、必要なものは自家製でまかなっているので」との答え。彼女はここで大豆を買って、自宅で自家製豆乳を作っているのだという。また、「自分で食べる野菜は家の庭で育てています」という大学生にも出会った。

ラモーナさんによると、客からの要望も多く、今後力を入れて行きたいと考えている商品は化粧品類。ラモーナさん自身はプラスチックをほとんど使わない生活を実践しているが、「パッケージフリー運動は厳格な思想ではなく、各自が無理のない範囲で生活に取り入れれば良いこと。自分自身が暮らしている環境に対して、より意識的になるのが第一歩」と話してくれた。

竹を用いた歯ブラシ竹を用いた歯ブラシ

最終更新 Freitag, 01 Februar 2019 13:46
 

【保存版】ドイツのスープ事典

【保存版】スープ事典 - ドイツを味わい尽くそう!

冬本番を迎え、ほかほかのスープで身体を温めたい!という人も多いはず。ドイツのスープは野菜やお肉、パスタなどが入り、具だくさんでバラエティー豊か。季節ごとにも楽しめるスープの魅力をたっぷりと紹介する。 (Text:編集部)

ドイツでスープを楽しむための
4つのトリビア

スープトリビア 1 毎週土曜日はスープを食べる日

夕飯は「Kaltes Essen(ハムやパンなどで軽く済ませる冷たい食事)」が好まれるドイツだが、スープは別。ドイツスープ研究所の統計によると、ドイツの80%の消費者が土曜の夕食時にスープを食す傾向にあるという。なお、平日は29%にとどまっている。ちなみにドイツの「スープの日」は11月19日。参考:n-tv「Samstag ist Suppentag」

スープトリビア 2 スープ人気の秘密は「時短料理」だから?

ドイツでスープが愛されるのは、健康に良いだけではなく、調理に時間がかからないことも大きな理由の一つ。かつては、何時間もかけてFond(煮汁)を取るところからスープが作られていたが、忙しい現代人はインスタントや缶詰に頼る傾向にあるそう。またスープ製品は国産が好まれ、輸入品は全体の5%。参考:Deutsches Suppeninstitut

スープトリビア 3 Eintopf(煮込料理)はスープじゃない?

ポットにさまざまな具材を入れて煮込むアイントプフは、日本の「鍋」や「シチュー」と同じようなメニュー。アイントプフとスープとの違いは、メインディッシュとなりえるか、サイドメニューや前菜となるか。また、お肉と多様な野菜をじっくり時間をかけて煮込むことも、アイントプフの特徴。参考:EAT SMARTER「Suppe, Brühe, Eintopf: So löffeln Sie richtig!」

スープトリビア 4 ドイツでプチトレンド「Suppenfasten」

ほとんど固形物を含まないスープのみを食べるスープ断食(Suppenfasten)が、ドイツではプチトレンド。この健康法には守るべき規則がいくつかあり、例えばインスタントスープはNG、1日30〜40分のウォーキングを推奨など。レシピや成功のポイントはウェブや本にさまざまな情報が掲載されている。参考:ELLE.de online「In zehn Tagen bis zu zehn Kilo abnehmen? Das verspricht Suppenfasten」

統計で見るドイツのスープのあれこれ

ドイツで人気のスープ

Quelle: Deutsches Suppeninstitut / Suppen-Zeit & Suppen-Hits

粉末タイプ

  • 1位:チキンスープ
  • 2位:春の素材を使ったスープとアスパラガスクリームスープ
  • 3位:トマトスープ

すっきりとした味わいでアレンジも自在なチキンスープが人気No.1。アスパラガススープは粉末タイプだからこそ、いつでも楽しめるのが人気の理由か。

缶詰タイプ

  • 1位:グラーシュ
  • 2位:ビーフンスープ
  • 3位:えんどう豆のスープ

ハンガリー生まれのグラーシュはドイツでも人気が高い。一から作るのは手間がかかるが、缶詰タイプなら肉や野菜の素材感も楽しめ、調理も簡単。

  • 1人当たりの消費量は年間約100皿分
    Quelle: Deutsches Suppeninstitut
  • 毎年12月〜翌3月までに年間生産量の40%のスープが消費される
    Quelle: Deutsches Suppeninstitut
  • ドイツ人が好きな食べ物でスープは5位
    Quelle: Die Welt / So essen die Deutschen(2017年)

定番から変わりものまで勢ぞろい スープ図鑑

スーパーの棚やレストランでよく見かけるものから、ちょっと珍しい種類まで、ドイツでよく食べられているスープをピックアップ。濃いめの味付けはご愛敬!
参考:DW「Leckere Suppen aus Deutschland」、Deutsches Suppeninstitut

定番スープ

季節を問わずドイツ人から愛されている定番のラインナップ。自分好みの具材を入れるなど、アレンジは自由自在。

じゃがいもスープ
Kartoffelsuppe

じゃがいもスープ

さまざまな種類が揃うドイツのジャガイモを使えば、味わいや食感がバラエティー豊かに。ピューレ状のさらりとした味わいにしたい場合は、煮崩れしやすいたタイプの「Mehlig kocheende」を。ゴロゴロとした食感を味わいたい場合は、煮崩れしにくい「Vorwiegend festkochende」タイプがおすすめ。

トマトスープ
Tomatensuppe

トマトスープ

世界初のトマトスープレシピは、1957年に米国人のEliza Leslieが考案した。一般的なのはトマトをピューレ状にし、生クリームやチキンストックを加える、なめらかな口当たりのもの。サワークリームやクルトンを加えても◎。スペイン生まれの冷たいトマトスープ、ガスパチョはドイツでも夏に親しまれている。

豆スープ
Bohnensuppe

豆スープ

豆を使用したスープの起源は、1430年頃、マルティヌス5世に支えていた宮廷料理人のヨハネス・ボッケンハイムが残したレシピによるもの。レンズ豆や白豆、エンドウ豆など、さまざまなバリエーションがある。エンドウ豆がベースのスープにジャガイモ、玉ねぎ、ソーセージやベーコンなどを加える「Erbsensuppe」は、ドイツ北部で親しまれている(写真下)。


チキンスープ
Hühnersuppe

チキンスープ

欧米では風邪をひいた際に家庭で振舞われることが多く、日本のおかゆ的存在。チキンやお好みの野菜を加えたシンプルなものから、麺や餃子を加えたボリューム満点なものまで、アレンジも自由自在。ドイツでは、デュラム小麦を粗く精製したセモリナから作られるパスタを具として入れるのが一般的。

グラーシュ
Gulaschsuppe

グラーシュ

ハンガリー生まれのグラーシュは、牛肉と野菜を牛肉のブイヨンと赤ワインでじっくり煮込んで作るアイントプフで、ドイツのレストランやクリスマスマーケットでも定番メニュー。故郷ハンガリーではパスタやクネーデルと一緒にいただくのだそう。ドイツ国内では地域による違いはほとんどなく、全国的に人気。

季節限定スープ

旬の時期がやってくると、決まってドイツ人が食べたくなる季節限定のスープ。毎年の楽しみになったら、あなたも相当なスープ通かも?

白アスパラガスのスープ(春)
Spargelsuppe

白アスパラガスのスープ

ドイツの美味、 ヴァイス・シュパーゲル(白アスパラガス)は、4月から6月にかけての短い期間だけ出回る。茹でたヴァイス・シュパーゲルにオランデソースをかけていただけるのもおいしいが、ぜいたくにスープで楽しめるのは、ドイツならではだ。生クリームを加えて作れば、より濃厚な味わいに仕上がる。

かぼちゃのスープ(秋)
Kürbissuppe

白アスパラガスのスープ

アメリカでは11月の感謝祭で振舞われるかぼちゃのスープは、ドイツでも秋に味わうことができる定番。ひょうたん型ののかぼちゃ「スクワッシュ」を使ったスープも。ドイツで出回っている品種でスープに向いているのは、深い味わいと良い香りがポイントの「ホッカイドウ」がおすすめ。 ほくほく甘みのあるテイストに。

ご当地スープ

この材料で一体どんな味になるんだろう? と思わず眉をひそめるようなスープも……。旅行先で見つけたら、ぜひお試しあれ。

ビールスープ(バイエルン)
Biersuppe

ビールスープ

「バイエルンでは食事中にビールを飲み、スープとしてビールを食す」と言われるほど、ビールが欠かせないバイエルン。ビールスープの作り方は、バターでとろとろと煮込んだ玉ねぎに小さくカットしたトーストを投入、さらにブイヨンとビールを入れ、最後に刻んだネギを添えてできあがり。家にあるビールでぜひ試してみて。

洋ナシのスープ(ラインラント)
Birnensuppe

洋ナシのスープ

スープに果物……ちょっと想像しにくいけれど、洋ナシは意外にも塩味とマッチするため重宝する。そして、ラインラントは言わずと知れたワインの産地。モスト(白ワイン原料となる果汁)と生クリームを使ってできる卵色のスープは、黄金色の洋ナシにぴったりだ。シナモンや砂糖を入れて、甘く仕上げることも。

フレーデルスープ(南ドイツ)
Flädle-Suppe

フレーデルスープ

たくさん入った細長い具の正体は、なんとパンケーキ。オーストリアからやってきたフレーデルスープは、バイエルンを中心に南ドイツで食されている。レシピが簡単なのも人気の理由。スープの出汁に細切りにしたパンケーキを入れ、残りものがあればそれも投入。塩胡椒、スパイスで味付けしたらできあがり。

グリースクネーデルスープ(バイエルン)
Grießknödelsuppe

グリースクネーデルスープ

バイエルンでもう一つ忘れてはならない定番が、このグリースクネーデルスープ(またはGrießnockerlsuppeとも)。ナツメグがアクセントのグリースクネーデル(セモリナ団子)をスープに浮かべていただく。バイエルンの人にとっておばあちゃんの味でもあり、病気になったときに飲むスープとしても親しまれている。

魚介スープ(ハンブルク)
Fischsuppe

魚介スープ

ドイツで一番大きな港のあるハンブルクは、ドイツのスープの街とも言われる。試すなら、ぜひ魚介のスープを。基本的にどんな魚介もスープとの相性はいいが、特にハンブルク風のカニのスープ(写真)は昔から人気。その一方で、腎臓のスープ、かめもどきスープ、牡蛎のスープは、現代ではほとんど食べられないそう。

最終更新 Dienstag, 11 Januar 2022 16:07
 

2019年に記念年を迎えるドイツの偉人

2019年に
記念年を迎える偉人
ドイツの著名アーティストたちの軌跡

新年を迎えるにあたり改めて過去を振り返ると、そこにはさまざまな発見や学びがあるもの。今年は世界中でファンが多いドイツ出身の芸術家5人に焦点を当て、その軌跡をたどる。
(Text:ドイツニュースダイジェスト編集部)

2019年はバウハウス誕生100周年 20世紀芸術と造形教育に
大きな影響を与えた総合的教育機関

バウハウス

1919年、ドイツのテューリンゲン州ヴァイマルにて設立された総合的教育機関。建築家のヴァルター・グロピウスやミース・ファン・デル・ローエなど、ドイツを代表する建築家たちが学長を務めた。ナチスによる弾圧で1933年に閉校を余儀なくされたが、閉校までの14年の間に20世紀芸術と造形教育に大きな影響を与え続けた。100周年を迎えた今年は、4月6日に本拠地だったヴァイマルにバウハウス美術館が新たにオープンするのをはじめ、ドイツ各地で展覧会やイベントが企画されている。

没後50年

世界三大モダニズム建築家の一人
ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ
Ludwig Mies van der Rohe 1886〜1969年

ル・コルビュジエ、フランク・ロイド・ライトとともに20世紀のモダニズム建築を代表する建築家。「Less is more.(少ないことは、より豊かなこと)」という建築スタイルを確立した。1886年3月にアーヘンに生まれたミース・ファン・デル・ローエは、地元の職業訓練学校で製図を学んだ後、建築事務所に入り本格的に建築を学ぶ。1929年に開催されたバルセロナ万国博覧会ではドイツ館の「バルセロナ・パビリオン」を設計し、著名な建築家の仲間入りを果たす。1930年からは「バウハウス」の3代目校長に就任。ドイツの「ベルリン美術館 新ナショナルギャラリー」も彼の作品。

没後50年

バウハウスを創立した建築家
ヴァルター・グロピウス
Walter Gropius 1883〜1969年

ヴァルター・グロピウス

奇しくもミース・ファン・デル・ローエと同年に亡くなったヴァルター・グロピウスも、モダニズム建築を代表する建築家の一人。造形美術学校「バウハウス」の創立者であり、1919年から1928年まで初代校長を務めた。1883年5月ベルリンに生まれたグロピウスは、ベルリンやミュンヘンの工科大学で建築を学ぶ。1911年の作品、「ファグスの靴型工場」は、後のバウハウス校舎の構想にもつながるような鉄とガラスを用いた初期モダニズム建築であった。代表作には、「 ヴァイマル・バウハウス校長室のインテリア」(1923年)などがある。

生誕200年

女性音楽家の礎を築く
クララ・シューマン
Clara Schumann 1819〜1896年

クララ・シューマン

ドイツを代表する女性ピアニスト、作曲家。また、作曲家のロベルト・シューマンの妻でもあった。1819年9月、当時のザクセン王国ライプツィヒに生まれたクララは、9歳のときにライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏会で、モーツァルト・ピアノ協奏曲のソリストを務め、プロデビューを果たす。以後、19世紀において最も名高いピアニストに。夫のロベルト・シューマンとの苦難多き人生を歩むことになりながらも、若い頃に共作をするなど、夫婦としてともに試練を乗り越えた。また、ロベルト・シューマンはクララを主題にした楽曲も残している。

没後50年

激動の時代を生き抜いた画家
オットー・ディクス
Otto Dix 1891〜1969年

オットー・ディクス

ドイツで第一次世界大戦後に始まった芸術運動、「即物主義」を代表する画家の一人。ゲーラで生まれたディクスは小学生の頃から画家としての片鱗を示していた。第一次世界大戦では従軍し、惨状を目の当たりにした彼は戦争という悲しい現状をスケッチに落とし込み、多くの作品を残す。終戦後はドレスデンとデュッセルドルフでアートを学ぶ。1920年にはベルリンの国際ダダ見本市に参加し、高い評価を受ける。鋭い観察眼で矛盾に満ちたドイツの実状を作品に昇華し続けた。代表作には、銅版画連作「戦争」や、油彩「大都会」などがある。

没後10年

世界的に活躍したコンテンポラリーダンサー
ピナ・バウシュ
Pina Bausch 1940〜2009年

ピナ・バウシュヴッパータール舞踊団による「春の祭典」

ドイツのコンテンポラリーダンスを世界に広めたダンサー、振付師。ドイツ西部・ヴッパータール・タンツ・テアターの芸術監督を務めた。1940年7月ゾーリンゲンに生まれ、14歳からエッセンのフォルクヴァンク芸術大学でドイツ表現主義舞踊の権威であるクルト・ヨースに師事。米国で活動したのち、1962年にドイツに帰国。世界中で公演を行うかたわら、フェデリコ・フェリーニ監督の映画『 そして船は行く』(1983年) に出演。2002年にはペドロ・アルモドバル監督作品『 トーク・トゥ・ハー』の冒頭で代表作「カフェ・ミュラー」を自身が踊っている。

ベルリンの壁崩壊から30周年 今を生きるアーティストとともに進化する街

ベルリンの壁崩壊から30周年

2019年11月9日、ベルリンの壁が崩れてからちょうど30年の節目を迎える。28年以上も東西を分断していた壁は、民主化を求めた旧東ドイツの市民たちの手によって崩壊に至った。現在は自由に東と西の行き来ができるベルリンだが、30年近く経っても東西の街並みやカルチャーには違いが見られ、さまざまな価値観がぶつかり合い、今なお発展途上の街であることがうかがえる。そんな刺激的なベルリンには世界中からアーティストやクリエイターが集まり、常に新しい発想に溢れている。壁亡き後のベルリンから、次はどんな「偉人」が輩出されるだろうか?

最終更新 Freitag, 05 April 2019 11:18
 

英国・ドイツ・フランスの 「笑い」を大解剖!

新春特集 - 2019年を楽しむために

英国・ドイツ・フランスの「笑い」を大解剖!

あらゆる場を盛り上げ、会話の潤滑油となるユーモア。しかし、世界各国における文化の違いがあるように、笑いの感覚も国ごとに微妙に異なるのではないだろうか。そこで今回は英国・ドイツ・フランスの「笑い」の特徴を、現地編集部が調査した。3国共通で浮かび上がってきた「政治」というキーワードを検証するのに加え、国別の笑いを楽しむコツなどをご紹介。「初笑い」というにはちょっと真面目な欧州の笑いを大解剖する。
(英・独編集部、沖島景)

欧州の笑いの始まり
中世では笑ってはいけなかった?

21世紀の現在、「笑い」と聞くと肯定的な要素が思い浮かぶが、時代や国によって「笑い」に対する評価が変わってくる。近年、中世の笑いが大きく話題になったのは全世界でベストセラーを記録したウンベルト・エーコの小説『薔薇の名前』だろう。この作品は、北イタリアのカトリック修道院で起こる謎の連続殺人事件を解明する物語で、その事件の鍵は「笑い」だ。舞台は14世紀初頭、欧州で笑いが抑制されていた時代。古代ギリシアの哲学者アリストテレスが喜劇について論じた著作を手に入れた修道士ウィリアムは、老修道士ホルヘと「笑い」について論戦を展開する。ホルヘは笑いによって神、教会の権威が失墜することを疑惧し、「笑いは私たちの肉体の弱点であり、退廃であり、失われた味だ」、「笑いは愚かさの徴(しるし)」と言い放つ……。実際、12世紀にアリストテレスの著作が再発見されてからは、笑いについての解釈が議論されるようになった。。『薔薇の名前』はこの時代を舞台にした物語である。

フランスの中世史家、ジャック・ルゴフによれば、笑いは3つの時期に分けられるという。第1期は4~10世紀ごろで、笑いは悪魔の表現であると考えられ、笑いは抑制されていた。第2期には宗教的良心を判断する神学、決議論が成立し、笑いの適法性と笑い方が問いただされる。そして第3期は「解放された笑い」の到来だ。

現在の笑いとは違う概念であった第1期。4世紀以前にも笑いの倫理について述べられている書物はあったが、ふざけた卑猥な話は禁じるが笑い自体は許されていた。4世紀になると修道院で笑いについて問題視され始め、5世紀の神学者、説教者であるヨアンネス・クリュソストモスは笑うことを禁じた。それはエペソ人への手紙で「卑しい言葉と愚かな話やみだらな冗談を避けなさい。これらは、よろしくないことである。それよりは、むしろ感謝をささげなさい」と述べられているからだ。そして「イエスは決して笑わなかった」ということからも、笑いは次第に糾弾されるようになった。例えば中世ドイツ人聖職者のヒルデガルト・フォン・ビンゲン(1098- 1179)は、笑いを悪魔の象徴とし、災いを招くと指摘していた。人間に意味のない音を出させることは人間を動物レベルに落とすとし、また笑いは体液の変化を起こし、バランスが崩れることで病気が生じるとも主張していた。

「人間は笑う力を授けられた唯一の動物だ」と言われているが、歴史を紐解くと時代によって、その授かった力を抑えつけなくてはならない厄介な存在だったことが分かる。

参考文献:『薔薇の名前』(東京創元社)、『図解 笑いの中世史』(原書房)、『キリスト教と笑い』(岩波新書)

英国・ドイツ・フランスの「笑い」の特徴

英国・ドイツ・フランスの人々は、いったいどんな笑いを好むのか。似ているようで微妙に異なる3国の笑いのツボや、その国らしいお笑いを楽しむ方法をご紹介しよう。

UK英国

ブラックな笑いで権威を批判し自らの立場を主張する

英国の笑いと聞いてまず思いつくのは、王室や政治家などの権力を持つ人間や、自国の社会制度を批判した、風刺(Satire)や皮肉(Irony)、そして嫌味(Sarcasm)を含むブラックな笑いではないだろうか。英劇作家のウィリアム・シェイクスピアは『リア王』の中で、王に辛辣な言葉を浴びせる道化を登場させたが、ほかの登場人物が王に対して面と向かって言うことのできない真実を、道化は易々と「笑いを提供する者」という立場を利用して伝えている。ここではユーモアは、都合の悪い事実を暴き出す道具として使われているのだ。

時代が移り、シェイクスピアの子孫である現代英国のコメディアンたちも、ジョークやコメディーを通し、世の中のさまざまな矛盾に物申している。移民の両親を持つコメディアンは英国人が持つ外国人に対する偏見をネタにし、フェミニストや性的少数者も自分の置かれた立場を笑いで表現。質の良いブラック・コメディーは政治や社会問題などつまらないと思っている人々の目を開く役割を果たす。今、最も時代が必要としているもの、それはブラックなお笑いなのかもしれない。

ドイツドイツ

真面目なドイツ人の笑いの歴史は国民性と政治にあり

「真面目なドイツ人」という認識は、万国共通と言えるだろう。ドイツを代表する詩人・ゲーテはかつて、「ドイツ人の演劇は真面目な国民性にふさわしく、たちまち道徳的な傾向に転じた」と述べており、ドイツにおいて質実な国民性が喜劇的な内容に対して不利に作用していることについて言及している。また、劇作家のブレヒトも「われわれドイツ人は真面目さをおおいに鼻にかけている」と、すべてを真剣に捉える自国民に対して疑問を呈している。しかしながら、多才なコメディアン、ロリオー(Loriot)のようにそんなドイツの国民性を皮肉って笑いに昇華させるアーティストが受け入れられていることも事実だ。

また、ドイツにおける笑いには歴史的な背景も色濃く現れている。そのなかで最も象徴的なのが、独裁政治を行ったナチス・ドイツの例。ナチスは自身に向けられるジョークに対して我慢ができなかったとされ、政府を風刺して笑った者は、処罰の対象となったというエピソードだ。裏を返せば、笑いは権力者に立ち向かうための武器になることをドイツ人が知っていたということだろう。

フランスフランス

ブラック・ユーモアも受け入れるフランス革命から続く精神

フランスで日本の漫才や落語のような「お笑い」に相当するものといえば、ワンマン・ショーだろう。ワンマン・ショーは政治家や有名人を揶揄したり、モノマネをしたりすることが多い。ときには人種差別などの社会的な問題を笑いに変えて訴える手法も見られるが、その多くはコメディアン自身がアフリカ系フランス人などの場合で、自ら体験したことを笑いで伝えている。フランスでは他国とはまた違う表現の自由があり、あらゆる権威を笑い飛ばし、批判していくことが許されている社会である。それは絶対王政を倒したフランス革命から続く共和国の建国精神。他国から見ると眉をひそめるユーモアもあるだろう。しかし、特定の人を中傷することや差別的発言、戦争の犯罪を称賛しない限り、公の場でも風刺画という手段を使っても比較的許される風潮があるのがフランスの特徴だ。

フランスの世論調査会社BVA が調査した日常の笑いについての統計によると、フランス人が笑いの中でどのジャンルを好むかという質問では、80%が言葉遊びが好きなことが判明。56%がジョークや面白い話を好むが、モノマネは25%しか支持を得なかった。

三国三様!英・独・仏の人々はいったいどんなところでコメディーを楽しんでいる?

UK英国

ビールを片手にパブでスタンダップ・コメディーを

1人の話し手が観客の前に立ち、マイク片手にとっておきのジョークを次々と浴びせていくスタンダップ・コメディーは、英国のお笑いの王道スタイル。ステージを併設したパブや、コメディー・クラブと呼ばれる劇場などで、話し手は何年もの歳月をかけて練り上げたネタを繰り返し演じることも多いが、日によってアドリブや観客との掛け合いが展開されることも。特に手ごろでおすすめなのは、コメディーを楽しめるパブ。入場料はだいたい5ポンド(約720円)からと敷居も低く、ビールを飲みながら気軽にステージを楽しめる。ベテランの芸を観ることはもちろん、新人コメディアンの発掘の場としても存在する。一方、コメディー・クラブにも大抵バーが付属しており、結局のところ、英国のお笑いは常にアルコールとともにあるといっても過言ではない。

英国で人気のコメディー 登場人物にはこと欠かない

1980~1990年代に民放局ITVで放送され、英国ばかりか海外でも人気を博した風刺人形劇「スピッティング・イメージ」。王室メンバーや国内外の政治家などのグロテスクなまでにデフォルメされた人形が登場し、時事にまつわる風刺劇が繰り広げられる。現在この番組が復活するという噂がある。

スピッティング・イメージ人形劇「スピッティング・イメージ」のサッチャー元首相(写真右)

ドイツドイツ

映画を見れば、ドイツ人の笑いのツボが分かるかも?

ドイツの笑いは政治や国民性などをネタにしたものが多く、日本人にはドイツ人の笑いのツボが分からないこともある。しかし、悲喜劇と呼ばれるジャンルの映画では、比較的分かりやすいドイツの笑いが楽しめる。例えば、「グッバイ・レーニン!」はベルリンの壁によって生き別れた家族を描く悲しい物語だが、思わず笑ってしまうシーンも多々登場する。近年日本でも公開された「ありがとう、トニ・エルドマン」や「はじめてのおもてなし」などもまた、含み笑いを誘いつつ、観る人に考えさせちゃっかり泣かせるところが、いかにもドイツらしい。また「帰ってきたヒトラー」は、現代にタイムスリップしたヒトラーがモノマネ芸人としてデビューを果たすという内容。自国の歴史やメッセージを込めて笑いに変える手法は、現代のドイツならでは。

ドイツで人気のコメディアン 秀逸な自虐的笑い

ドイツ人なら誰もが知っているコメディアン、ロリオーに代表されるような自国民の性質を皮肉った笑い、その系譜を受け継いでいるのがドイツを拠点に活動する26歳のスイス人、ヘーゼル・ブラッガー(Hazel Brugger)。淡々とした話し口調で、時折ブラックなユーモアを投げかけ観衆の心をわしづかみにする。

ロリオー自身が監督を務めた映画『Pappa ante Portas』に主演するロリオー

フランスフランス

フランスで笑いを楽しむなら劇場へ

ジャン=ピエール・ジュネの映画『アメリ』に出演したジャメル・ドゥブーズは人気コメディアンで、フランス国内で毎年ワンマン・ショーを行っている。また若いコメディアンが世に出ていくことを支援し、パリの10区(42 Boulevard de Bonne Nouvelle)に劇場を構えてショーやオーディションを開催。新人コメディアンのショーを満喫できる。古典喜劇を堪能するならルイ14世が発足させた「王立劇団コメディー・フランセーズ」へ。別名「モリエールの家」という名の通り、上演作品のレパートリーにもモリエールの作品がある。ただこの劇団はモリエール劇団と悲劇を得意とする劇団とを統合させた背景を持ち、演目によっては悲劇であることもあるのでご注意。また19世紀に広まった人形劇「ギニョール」(Guignol)でも笑いを楽しめる。

フランスで人気のコメディアン 辛辣なユーモアが人気

20世紀の喜劇俳優としては映画画『大追跡』(1965年)などで活躍したルイ・ド・フュネス、またバイク事故により死亡したコリューシュが不朽の人気。コリューシュは差別や偏見といった題材を扱い辛辣なユーモアで知られていた。現在人気が高い女性のコメディアンは、フローレンス・フォレスティ。

フローレンス・フォレスティワンマン・ショーで人気を博すフローレンス・フォレスティ

笑いが社会に与えた影響からおすすめのコメディーまで
6つの「笑い」のエピソード

英国エディンバラ・フリンジはコメディアンたちの出発点!

毎年8月にスコットランドで開催されるエディンバラ・フェスティバル・フリンジは、演劇やコメディーを中心としたフェスで、申請すれば誰でも参加が可能。そのため、このフェスに出演することで注目を集め、一旗揚げようとする野心旺盛なコメディアンたちが殺到する。その昔、若きローワン・アトキンソン(Mr. ビーン)やスティーブン・フライなども出演した。出演のための審査がないことから、通常のイベントでは考えられない前衛的なネタを披露するコメディアンもいるのだとか。

英国笑えない? 英国流のきついジョーク

第二次世界大戦時、広島と長崎で相次いで被爆し、後に93歳で亡くなった日本人男性を「世界一運が悪い男」と紹介したのが、2012年に放映されたBBC のお笑いクイズ番組「QI」の司会者スティーブン・フライ。ゲスト回答者たちが「93歳まで長生きしたなら、不幸ではないかも」「原爆が落ちた翌日に列車が走るとは、英国では考えられない」などと発言。そのためこの映像を不快に感じた在英邦人らが日本大使館へ連絡をし、BBC と番組制作会社は、連名で謝罪声明を発表するに至った。

ドイツ際どい政治ネタで風刺するローゼンモンタークのカーニバル

普段はどんなにビールをあおっても礼儀正しく真面目なドイツ人が、年に一度ハメを外して楽しむ日が、2月のローゼンモンターク(バラの月曜日)に開催されるカーニバル。 特にドイツ西部のマインツ、ケルン、デュッセルドルフのカーニバルは大規模で、多くの山車が街中を練り歩く。その中でも目を引くのが政治風刺をテーマにした山車。国内政治批判に関わるものから、国外に向けたメッセージなど多岐にわたる。笑いにあふれるカーニバルでもシニカルな要素を盛り込むのがドイツ風。

ドイツドイツ人になるための本、笑われている本人たちも爆笑?

在独英国人、アダム・フレッチャー氏の英独バイリンガル本『ドイツ人になる方法(How to be German)』(C.H.Beck刊行)では、海外から見たクスッと笑えるドイツ人の姿がシニカルに描かれる。例えば「ドイツにおける3つのP(計画・準備・プロセスの頭文字)を身につけるため、数年先まで休暇の予約を取ろう。そのプロセスを簡素化するなら毎年マヨルカ島(ドイツ人定番の休暇先)への旅行がおすすめ」と皮肉りながらも、的を得た内容を展開。ドイツ人にもウケが良くシリーズ化されている。

フランス日仏の「笑い」の感覚の違いが明らかに

ブラック・ジョークを好むフランス人だが、日本人には到底理解できない事柄もある。例えば風刺人形劇でニュースを伝える「レ・ギニョール・ド・ランフォ」が2011年の東日本大震災の後に放送したニュースでは、震災で被害を受けた仙台の町並みと第二次世界大戦後の広島の写真と比べて「日本は60年間も復興に向けた努力をしていない」とコメント。さらに福島第一原発の周辺の現場で復旧作業に当たる作業員をスーパーマリオに見立てるなどし、在フランス日本大使館が抗議をする事態に発展した。

フランス「笑い」が襲撃事件に発展 シャルリー・エブド

過激な風刺画のイラストを多用する「シャルリー・エブド」紙がイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を掲載したことが悲劇を引き起こした。2015年1月7日、武装したテロリストが同社に侵入し乱射、12人を射殺。フランスでは各新聞で政治や社会的問題を風刺画で表現する風習があるが、同紙の絵が「笑い」の限度を超えているかどうかも含めて意見が飛び交った。同社は以前から複数のイスラム系団体から訴えを起こされていたが、政教分離の国、フランスの裁判所は無罪を言い渡していた。

最終更新 Freitag, 04 Januar 2019 14:46
 

ドイツの医療現場に笑いを届けるコメディアン、エッカート・フォン・ヒルシュハウゼン

新春特集 - 2019年を楽しむために

ユーモアと健康の関係を探り続け
ドイツの医療現場に笑いを届ける
医療コメディアン Dr. med.
Eckart von Hirschhausen
エッカート・フォン・ヒルシュハウゼン

「笑うことは最高の薬」と話すのは、ドイツ各地の病院にたくさんの赤鼻ピエロを派遣してきた「ユーモア・ヒルフト・ハイレン(HUMOR HILFT HEILEN)」創設者のエッカート・フォン・ヒルシュハウゼンさん。笑いが健康に良いことが科学的にも立証されつつある今日、どのようにして医療の現場にユーモアを持ち込めるかを長年試行錯誤してきた。2018年に創立から10周年を迎えた団体の取り組みに加え、ドイツの笑いについて詳しくお話を聞いた。

Dr. med. 
Eckart von Hirschhausen 
エッカート・フォン・ヒルシュハウゼン

エッカート・フォン・ヒルシュハウゼン 1967年フランクフルト生まれ、西ベルリン育ち。1995年まで小児神経科の医師を務めた後、医療コメディアンとしてテレビなどにも出演してきた。2008年にユーモア・医療財団「HUMOR HILFT HEILEN」を設立した。ドイツ語の著書多数。ロリオーの大ファン。

笑いで奇跡を起こした赤鼻ピエロ

即興音楽や寸劇で小児病棟の子どもたちを笑わせる赤い鼻のピエロ。彼らはユーモア・ヒルフト・ハイレン(以下HHH)でトレーニングを受けた「ホスピタル・クラウン」(Klinikclown)だ。HHH創設者のヒルシュハウゼンさんは、病気の子どもたちにとって笑うことがいかに重要であるかを身をもって体験したと話す。

「もう何年も前のことです。とある体育館で医師としてマジック・ショーをしたとき、心身症専門の小児科医がショーの間に起きたことを話してくれました。当時彼が担当していた場面かん黙症*で人前で話せない男の子が、なんと周りの子どもたちと一緒に笑ったり、驚いたりしていたと言うのです。そのときから、私はユーモアや音楽、芸術は治療の役目を果たすのではないかと考えるようになり、それがHHH誕生のきっかけになりました」。

*家庭では話せるが、学校や職場など特定の場所で全く話せなくなる精神的な症状

ドイツ医療業界で広がるユーモアの輪

その後、ヒルシュハウゼンさんは財団を立ち上げ、何年もかけてドイツ各地に自身のプロジェクトを広めていった。現在では、HHHのホスピタル・クラウンは小児科を訪れるだけではなく、高齢者施設などでの緩和ケアも行っている。

「ホスピタル・クラウンの派遣は、私たちの活動の一部に過ぎません。優秀なユーモア・トレーナーとユーモア・セラピストと協力し、より専門性のあるホスピタル・クラウンの養成に努めています。また、看護師や看護学校での教育のために特別なモジュールを開発し、すでに全国で1万人以上の看護師が実践しました。現在は、より多くの人がこのモジュールを実践できるよう、アプリの開発も進めています」。

また一方で、HHHは健康とユーモアの関係性を研究する機関でもある。これまで、笑いが病気の治療に有効であることを科学的にも立証してきた。

「ポジティブな感情が心身にもたらす効果については、すでにいくつかの研究がされています。例えば、小児科の手術室にホスピタル・クラウンが患者に同行するという検証では、信頼性を強めるホルモン『オキシトシン』の分泌が増えることが確認されました」。

ユーモアのないドイツ人……はウソ

笑いを専門的に研究するヒルシュハウゼンさんだが、世間で語られる「ドイツ人はユーモアがない」ことについて尋ねてみると、それはただの固定観念でしかない、と答えた。

「ドイツ人にユーモアがないと言われる所以の一つに、『仕事が第一』という炭鉱夫の精神が考えられます。鉱山には全くと言っていいほど、楽しみというものがなかったのです。しかしながら、今日はもちろんそんなことはありません。むしろ、笑いは健康的なことで科学であるということの方が、現代のドイツ人の間では知られていると思います。

2017年に、健康科学と心理学の研究におけるアプローチ方法に大きな変化が起こりました。それまでは、何が人間を病気にするのかということだけが研究されていたのが、何が人間を健康にするのか、何が人間を精神的ストレスから守るのかということも注目されるようになったのです。ユーモアの強みは、まさに人間をストレスから守ることです。ドイツ人の国民病でもある、うつ病や肥満なども気分の変化と大きく関係していることが分かっており、心理療法の分野でも研究が進んでいます」。

今後はより多くの医療関係者にユーモアが持つ力について知ってほしい、と話すヒルシュハウゼンさん。最後はこんなジョークで締めくくった。「病院に持ち込むべきたった一つの『病原体』は、ずばり感染力の高い『笑い』です! 」。

最終更新 Montag, 07 Januar 2019 14:45
 

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