特集


2019年版 ドイツの秋祭りガイド - オクトーバーフェストなどテーマ別フェス

伝統的なお祭りからユニークなフェスまで ドイツの秋祭りガイド

食欲の秋、スポーツの秋、行楽の秋、芸術の秋……などの言葉があるように、秋はさまざまな風物詩が楽しめる豊かな季節。加えてドイツではビアフェストが始まり、「ビールの秋」が盛大に祝われる。今回の特集では、秋のドイツで開催される魅了いっぱいのお祭りをテーマ別にご紹介。長い冬が到来する前のこの時期に、ぜひ出かけてみては?(Text:編集部)

ドイツの秋はビールの季節! 三大ビアフェスト

秋といえば、ドイツにビールの季節がやってくる。ビールファンなら誰もが知っているミュンヘンのオクトーバーフェストをはじめ、ほかにも地方色が濃い個性豊かな各地のビール祭りをご紹介!

これぞ、ビール祭りの王様! Oktoberfest オクトーバーフェスト

Oktoberfest
Oktoberfest
Oktoberfest

ドイツビール好きが毎年待ち望んでいるのが、世界最大級のビール祭り「オクトーバーフェスト」。その起源は1810年10月12日、バイエルン皇太子ルートヴィヒとテレーゼ妃の結婚祝いにさかのぼる。当時は競馬や古代オリンピックのような競技会が催され、結婚祝いは大いに盛り上がった。その後、市民たちから毎年開催してほしいとの声が上がり、次第に世界最大のビールの祭典へと成長していった。オクトーバーフェストは、ミュンヘンっ子たちの間で親しみを込めて「Wiesnヴィーズン(野原)」と呼ばれている。およそ42ヘクタール(東京ドーム約9個分)の広大な会場は、テレーザ王妃にちなんで「Theresienwiese(テレージエンヴィーゼ)」と名付けられ、ミュンヘン市内の6つの醸造会社が運営する14の巨大ビールテントをはじめ、小さな屋台やアトラクションが並ぶ。華やかな民族衣装を身にまとった人々も、このお祭りのシンボル的存在だ。

2019年9月21日(土)~10月6日(日)
ミュンヘン(バイエルン州)
https://www.oktoberfest.de

オクトーバーフェストを紐解くキーワード

Reinheitsgebot ビール純粋令
1516年にバイエルン公ヴィルヘルム4世が制定した法令。「ビールは、麦芽・ホップ・水・酵母のみを原料とする」という内容で、ビールの品質を保証するために発布された。ドイツの醸造家は、現在でも純粋令に則った質の高いビールを造り続けている。

「O'zapft is!」樽が開いたぞ!
オクトーバーフェストの初日、開会式ではミュンヘン市長が「O'zapft is!(樽が開いたぞ!)」の掛け声とともに最初のビール樽を開栓。お祭りの始まりが高らかに宣言される。開会式の前に行われる、盛大なパレードも見どころの1つ。

オクトーバーフェストと並ぶ「ビールの祭典」 Cannstatter Volksfest カンシュタッター・フォルクスフェスト

Cannstatter Volksfest
Cannstatter Volksfest

ミュンヘンのオクトーバーフェストのおよそ1週間後から始まるのが、カンシュタッター・フォルクスフェスト。地元の人たちから「Wasenヴァーゼン(芝)」という愛称で呼ばれる会場に、毎年およそ400万人が集う。このお祭りは、1818年、のちに「農民の王」と呼ばれるヴュルテンベルク国王ヴィルヘルム1世によって、長い飢饉を乗り越えた感謝祭として開催されたのが始まり。翌年からも収穫祭として毎年開かれ、市民のためのビール祭りとして発展していった。

2019年9月27日(金)~10月13日(日)
シュトゥットガルト(バーデン=ヴュルテンベルク州)
https://www.cannstatter-volksfest.de/

ビアフェスト最古の歴史を誇る Freimarkt Bremen ブレーメン自由市場

Freimarkt Bremen
Freimarkt Bremen

北ドイツの「オクトーバーフェスト」と呼ばれることもあるが、その起源は1035年で、ビール祭りとしては最古。「フライマルクト(自由市場)」という名前は、当時の神聖ローマ皇帝コンラート2世がブレーメンに市場権を与え、この期間だけ市内・市外の人が関税なしの自由な商売を行っていたことに由来する。そのため郊外の商人や一般客が集まるようになり、商業の場から市民のお祭りへと姿を変えていった。この地方の名物「燻製うなぎ」は、ぜひお試しを!

2019年10月18日(金)~11月3日(日)
ブレーメン(ブレーメン州)
https://www.freimarkt.de

秋の夜長にタイムトラベル? 歴史を体感するお祭り

活気ある市場に商人や農民たちが集まり、騎士たちが通りを練り歩く……そんな歴史的なシーンを垣間見れる、タイムトラベルのような体験ができるお祭りはいかがだろうか。

街がまるごと中世時代に大変身 Freudenberger Mittelalter- und Herbstmarktフロイデンベルク中世秋祭り

フロイデンベルク中世秋祭り
フロイデンベルク中世秋祭り

白い壁に黒い木組みで造られた三角屋根の家屋が立ち並ぶ、フロイデンベルク。毎年開催される中世祭りでは、街の通りに中世商人の店が軒を連ね、騎士や農民の仮装をした人々や、大道芸人のパフォーマンスも楽しめる。フラスコ型の瓶に入った蜂蜜ワインや果実酒はお土産にもおすすめ。夜にはランタンで幻想的に街がライトアップされ、昼とは一味違う雰囲気が味わえる。

2019年10月19日(土)~20日(日)
フロイデンベルク(ノルトライン=ヴェストファーレン州) https://www.freudenberg-wirkt.de

300年続く伝統的パレード Die Tölzer Leonhardifahrtレオンハルト騎士行列

レオンハルト騎士行列
レオンハルト騎士行列

動物の守護聖人である聖人レオンハルトの聖名祝日である11月6日に、1718年から毎年開催され、バイエルンの無形文化遺産(P12)に登録されている。メインの聖レオンハルト礼拝堂への騎馬行列では、聖レオンハルトの聖像を描いた馬車が花で装飾され、伝統衣装を着た人々が華やかに行進。ブラスバンドの演奏や、男性たちの鞭を使った迫力あるパフォーマンスもお見逃しなく!

2019年11月6日(水)
バート・テルツ(バイエルン州)
http://www.toelzer-leonhardifahrt.bayern

芸術の秋を堪能! アートフェスティバル

芸術をゆったりと味わえるイベントが盛りだくさんのこの季節。期間中にさまざまなアートやパフォーマンスを街中で楽しめるのは、アートフェスティバルならではだ。

光のアートに包まれる魅惑の夜 Festival of Lights ベルリン光の祭典

ベルリン光の祭典
ベルリン光の祭典

今年で開催15年目を迎える、ベルリンの秋の風物詩。ランドマークであるブランデンブルク門やテレビ塔をはじめ、50棟以上の新旧の建築物やモニュメントが色鮮やかなプロジェクションマッピングに彩られ、いつもと違った顔を楽しませてくれる。本年のテーマは、ベルリンの壁崩壊30周年にちなみ「自由の光」。ベルリンらしいメッセージ性の強い祭典になりそうだ。

2019年10月11日(金)~20日(日)
ベルリン(ベルリン州)
https://festival-of-lights.de

あらゆる芸術が集結する22日間 Düsseldorf festival!デュッセルドルフ・フェスティバル!

デュッセルドルフ・フェスティバル!
デュッセルドルフ・フェスティバル!

芸術の街・デュッセルドルフで毎年開催される芸術祭。国内外からアーティストが集まり、音楽イベント、演劇、ダンスなどが、街のいたるところで繰り広げられる。今年は、ダンスと現代アートが色濃く表現されたモダンサーカスが見どころ。期間中は旧市街に特設ステージが入った巨大テントが登場し、入り口にはレトロなバーも。ほろ酔い気分で芸術の秋を楽しもう。

開催中~2019年9月30日(月)
デュッセルドルフ(ノルトライン=ヴェストファーレン州)
https://www.duesseldorf-festival.de

食いしん坊はご注目! 実りの秋を楽しむお祭り

どこからともなくやってくる食欲を満たしたい……そんな人におすすめなのは収穫祭。色鮮やかな収穫物を目と舌で存分に味わおう。今回は野菜の種類を限定したユニークなお祭りをピックアップ。

華やかな玉ねぎ飾りはインスタ映え必至 Zwiebelmarkt Weimarワイマール玉ねぎ市

ワイマール玉ねぎ市
ワイマール玉ねぎ市

ワイマールの人口がまだ5000人にも満たなかった1653年に始まった、テューリンゲン州最古のお祭り。ワイマールの住人や周辺地域の人々が玉ねぎや野菜を冬の備えとして買い置きすることを目的に始まり、現在は約30万人が集まる大規模なイベントへと発展した。お祭りのシンボルである2色の玉ねぎや花を編み込んだ飾り(Zwiebelrispen)を売る屋台がとても華やか。食用の玉ねぎも農家から直接購入することができ、この地方の名物である玉ねぎケーキ(Zwiebelkuchen)が販売されるなど、左も右も玉ねぎ尽くし!

2019年10月11日(金)~13日(日)
ワイマール(テューリンゲン州)
https://www.weimar.de/kultur/veranstaltungen/maerkte-und-feste/zwiebelmarkt/

ユニークすぎるかぼちゃのオブジェは必見! Kürbisausstellung Ludwigsburgルートヴィヒスブルクかぼちゃ展示会

ルートヴィヒスブルクかぼちゃ展示会
ルートヴィヒスブルクかぼちゃ展示会

2000年に始まった、世界最大級のかぼちゃのお祭り。2019年のテーマは「Wald(森)」。およそ6万個のかぼちゃを用いて、会場であるルートヴィヒスブルク宮殿の庭園に森や動物たちが表現される。食事メニューももちろん、かぼちゃスープ、かぼちゃとリンゴのシュトゥルーデル、かぼちゃのお酒など、かぼちゃ好きにはたまらないラインナップ。期間中のイベントも豊富で、かぼちゃの大きさを競う「かぼちゃ選手権大会」やかぼちゃ彫刻の実演、キッズ向けのプログラムなどがある。

開催中~2019年11月3日(日)
ルートヴィヒスブルク(バーデン=ヴュルテンベルク州)
http://www.kuerbisausstellung-ludwigsburg.de

ちょっと斜めから見るお祭り文化 地域のお祭りをどう守っていくか?

消えつつある地域文化

ドイツでは秋になると、みんな当たり前のように「ビールの季節が来た」と思い、「そろそろビアフェストが開催される時期だ」と、お祭りによって季節の変わり目を知らされる人もいるかもしれない。その土地と深く結びついているお祭りのことを、誰も「今年も開催されるかな?」と心配しないだろうし、人々はお祭りの存在を「当たり前にあるもの」として日々の生活を送る。その一方で、実は今、世界では地域文化の消滅が加速している。担い手不足や資金難、グローバル化など、地域によってさまざまな問題を抱えているが、その土地固有の文化が消えてしまうことは、この世界の多様性を失うことでもある。

形なき文化を守るユネスコの無形文化遺産

そのような危機感から、地域に根付く文化を保護するために2003年から始められたのが、ユネスコの「無形文化遺産」だ。ドイツの「ケルン大聖堂」や広島の「原爆ドーム」など、後世に伝えるべき自然・文化を登録する「世界遺産」は一般に知られているが、それに対して「無形文化遺産」の保護対象は、お祭りや伝統工芸の技術、言語や伝承など、文字通り「形のない文化」。日本では2013年に「和食」が登録されたことが話題になったが、ドイツではこれまで「協同組合の思想と実践」や「オルガン製作とその音楽」などが無形文化遺産に認定されてきた。

また、ドイツのユネスコ協会が作成する国内のリストには、「ライン川地方のカーニバル」や、本特集でも紹介した「レオンハルト騎士行列」など数多くの地域に根付いたお祭りをはじめ、「ドイツのパン文化」や「陶器の絵付け技術」、比較的歴史の新しいものでは「モダンダンス」などが取り上げられている。さらには、「ビール純粋令」の無形文化遺産への登録を目指そうという活動もある。

「無形文化遺産」の特徴は、それらが現在も生き続けている文化であるということだ。そして「生きている文化」とは、文化を支えるために人々が「コミュニティー」をつくり、その文化を共有し、伝統として引き継いでいくこと。世界遺産のように「卓越した価値のある物(不動産)」ではなく、無形文化遺産では「人の営み」そのものに価値を見出すのだ。このような考え方は、私たちが当たり前に存在すると思っている自分や他者の文化が、実は人々の長い努力や時間によって積み上げられてきた大切な遺産であることに、今一度気づかせてくれるだろう。

グローバルな社会でローカルな体験を

グローバル化が進み、私たちは世界各地のお祭りへ簡単にアクセスできるようになった。資本主義経済が発展し、世界が均一化されていくこの時代にこそ、訪れた土地でローカルな人々が織りなす文化を体験することは、自分や社会をこれまでとは違った視点で眺めるきっかけになるかもしれない。お祭りが開催される場所、お祭りを担う人々、そして文化のあり様に思いを馳せながら、ドイツで開催される秋のお祭りを楽しんでみて。

最終更新 Freitag, 20 September 2019 15:12
 

演出家 筒井潤さん 『釈迦ヶ池 -SHAKAGAIKE – Der Buddha-Teich』

演劇「釈迦ヶ池」 SHAKAGAIKE – Der Buddha-Teich 演出家・筒井潤さんインタビュー

9月25日からデュッセルドルフの劇場FFT(Forum Freies Theater)にて、大阪を拠点とする公演芸術集団dracom(ドラカン)の作品「釈迦ヶ池(Shakagaike) – Der Buddha-Teich」が初演される。1880年の大阪で実際に起きた日独間の外交問題をモチーフにした本作では、登場人物であるドイツ人と日本人の俳優がそれぞれの母語を話し、異なる言語同士によるコミュニケーションを試みる。言語・文化における「分かりあえなさ」、あるいは人間同士の対話の難しさは、異文化の中に暮らしたことがある人のみならず、誰しも経験があるかもしれない。演出家でありdracomのリーダーである筒井潤さんに、本作についてお話を伺った。(Text:編集部)

演劇「釈迦ヶ池」

筒井潤 Jun Tsutsui

筒井潤
Jun Tsutsui
演出家、劇作家。大阪を拠点とする公演芸術集団dracom(ドラカン)のリーダー。最近ではdracomとしてNippon Performance Night 2017(デュッセルドルフ)等に参加するほか、個人での演劇、ダンス、アートツーリズム作品等の演出多数。様式やジャンルを問わない活動を行っている。 www.dracom-pag.org

筒井潤さんとFFTによる本公演のプロジェクトは、すでに2年以上前から始まっている。2016年、筒井さんが大阪で上演した作品にFFTのキュレーターが来場していたことが最初の出会い。翌年には、筒井さん主宰の公演芸術集団 dracomが、毎年FFTで開催されているNippon Performance Night 2017に参加した。2018年、筒井さんは作品のリサーチのためにおよそ1カ月間デュッセルドルフに滞在し、そして今回の公演を迎える。

謝る日本人、謝らないドイツ人

2017年にFFTで公演をした時点から、「謝罪」という行為について何となく考えていました。日本人は、ちょっとしたことですぐに謝る、なんなら何もしてないのに謝る、なんてよく言われますよね。それに対して、ドイツ人はなかなか謝らない、という印象がありました。ふとそう思ってネットなどで調べてみたら、同じような意見も多くて。「すぐ謝る日本人と、なかなか謝らないドイツ人」、この違いはどこから生まれてくるんだろう、と。そのことが気になって、「謝罪」をテーマに作品をつくろうと思ったんです。

Nippon Performance Night 2017Nippon Performance Night 2017 ポストパフォーマンストークの様子、FFTにて

作品のタイトル「釈迦ヶ池」とは、大阪府吹田市に実在する池の名前。この池では、1880年に「釈迦ヶ池遊猟事件」が起きた。当時、ドイツから来日していたプロイセン王国の17歳の皇族ハインリヒが、「禁猟制札の場所」である釈迦ヶ池にてお忍びで鴨猟をし、それを発見した村人が彼を皇族と知らずに殴打。最終的には、ドイツと日本の間の国際問題にまで発展してしまった。この事件は、当時の日本とプロイセンとの国力の差を政府が考慮したこともあって、日本側からの一方的な謝罪という形で収められた。

この「謝罪」というテーマを足掛かりに、翌年ドイツでリサーチ滞在をしたのですが、思い返せばその期間、ドイツ語の勉強ばかりしていました(笑)。平日は語学学校に毎日通って、基礎のクラスを受講していたのですが、そんな生活を送るなかで「謝らないドイツ人」を実際に体感する場面もあって。その時すでに、釈迦ヶ池の事件についての情報を得ていたので、それについてFFTのスタッフに話してみたら、これは面白いテーマだ、となりました。

インターネット時代の
「他者とのコミュニケーション」

ハインリヒと村人、事件当時の2人のコミュニケーションは、ドイツ語と日本語という異なる言語によって分断されてしまっていた。しかし、彼らの間に起きていたコミュニケーションの齟齬は、単に「言語」だけが理由ではない、と筒井さんは考えている。

コミュニケーション能力においては、「自分がどういう空間で声を発しているか」をどれだけ意識できるか、が重要だと思っています。言い換えるならば、「公共」というイメージをどこに設定しているのか、ということです。個人の言動や行動は、自分とその周囲の小さな世界だけにとどまっているものではなく、必ず公共性をはらんでいる。本人が意図しようとしまいと、社会に対して何かしらの影響力を持ってしまうものなのです。釈迦ヶ池の事件で言えば、ハインリヒも村人も、それぞれの行為がどれだけのことを意味するのか、事件そのものが後々どういう広がりを持つかをお互いに想像できていなかったのでしょう。

釈迦ヶ池釈迦ヶ池は、吹田市内では最大にして最古のため池。最近では、周辺に桜の植樹が行われるなど、市民の憩いの場でもある

釈迦ヶ池の事件が起きたのは1880年だが、現代を生きる私たちにとっても「コミュニケーションの齟齬」は大きな課題である。近年、インターネットや翻訳機能の発達により、世界中の言語や文化へのアクセスが容易になる一方で、人間同士のコミュニケーションはより複雑化しているようにも思われる。

現代では、インターネット、特にツイッターなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を通して、考え方の分断がどんどん広がっているように感じます。SNSは気軽なツールであるが故に、ちょっとした感情の揺れやブレを、冷静さを失った状態でもパッと言葉にして投げられてしまう。自分の声がどこまで広がって、どういう影響力を持つかを予測せぬまま発信してしまうために、ディスコミュニケーションが生まれます。「公共」をどこまで想像できているか、ということが個人レベルですごく問われる時代ですね。

「字幕」は何を伝えるか?

「釈迦ヶ池」の登場人物は、ドイツ人と日本人、それぞれ1人ずつ。ドイツ語と日本語、異なる母国語を持つ2人の俳優は、それぞれの言語を使ってコミュニケーションを図る。そのため舞台に映し出される「字幕」は、観客にとってだけでなく、俳優にとっても重要な役割を果たす。

一般的に字幕には、言語の分からない人に内容を理解してもらう、表現を伝えるという機能がありますよね。今回はそれと絡めて、「俳優にとって字幕とはなんなのか」という問いも、作品の中に織り込んでいます。字幕があれば相手のことを理解できた気になるけど、本当に分かっているのか、実際のところ定かではない。そういう「相互理解ができているかのような状態」について、「字幕」という存在を通して考えられればと思います。

「すべての翻訳は誤訳である」とも言われるように、翻訳によって100%正確なニュアンスまで伝えることはほぼ不可能に等しい。「釈迦ヶ池」の観客たちもまた、その人がどの言語や文化をバックグラウンドに持っているかによって、作品に対してさまざまな感想を持つことになるだろう。

ドイツ語と日本語、両方とも流暢に会話できる人にとっては、あまり混乱は起きないかもしれませんが(笑)。釈迦ヶ池の事件は、そもそもは言葉が通じなかったことから起きたので、どちらかの言語しか分からない人には、事件当事者の2人が感じたであろう、意思疎通できないことのもどかしさを体感してもらえるといいなと思っています。字幕はあるけれど、劇場での体験ができるだけ実際の事件時と近いものになるように、創作においていろいろ試行錯誤しています。

鎌田菜都実さん(左)とナジャ・デュスターベルクさん(右)俳優の鎌田菜都実さん(左)とナジャ・デュスターベルクさん(右)が、村人とハインリヒをそれぞれ演じる

「分からない」ことへの戸惑いを楽しむ

「釈迦ヶ池」はFFTでの初演後、12月に日本の京都芸術センター*1で上演が予定されている。デュッセルドルフと京都、それぞれの場所で作品に対する異なった反応が得られそうだ。

*1 京都芸術センターでの公演は、2019年12月6日(金)〜8日(日)www.kac.or.jp

字幕は基本的に、日本人のセリフにドイツ語、ドイツ人のセリフに日本語、というふうについているのですが、途中で「そうじゃない時間」をわざとつくる予定です。ネタバレになってしまうので、何が「そうじゃない」か、ということは秘密にしておきますが……。とにかく、どちらかの言語しか分からない人にとっては、とても戸惑う時間を劇中に設定しています。なので、デュッセルドルフ公演と京都公演とで、お客さんのリアクションは変わってくるだろうな、と。一方で、作品に対する理解度は、できるだけ変わらないようにしたい。ここで言う「理解度」とは、「分かりやすい」という意味ではなくて、「分かりにくさ」の程度も同じくらいにならないだろうか、ということです。

「分からない」という感覚を、常に大事にしている筒井さん。それは観客にとってだけでなく、自分自身の創作の上でも、とても重要なことだと語る。

作品をつくっていると時々、自分で何をやっているのかよく分からなくなる瞬間があります。それがこの仕事をやっていて面白いところですね。演出家という立場は、もちろん上演においての責任者ですが、一方で、自分の手に及ばないことも想定しながらつくる。そうすると、途中で「演出家」という自分の存在が危うくなることがあるんですよ。

例えば、ドキュメンタリー演劇の演出をするときや、演者のアドリブシーンがある作品などの制作中に、スタッフとの会話の中で「この後のシーンは具体的にどうなりますか」や「こうするとお客さんはどう反応すると思いますか」などと聞かれることがありますが、たまに本当に「分からない」としか言いようがないことがあったりして。そういう時は「分かりません」って答え切っちゃう(笑)。結果的にすべてをコントロールしようとしないことで、作品が思いもよらない形に育ってくれたりするんです。

私たちの世界では一見、「分かる」ということを中心にコミュニケーションが進められている。「分かる」とは、出来事の原因や理由をすでに自分が知っている価値観や常識と結びつけて理解することでもあり、その思考の枠の中にいることで、私たちの安全と平穏は保たれるかもしれない。

対照的に、芸術が行われる空間・時間では「分からない」ことが表現として私たちに向かってくる。筒井さんも話すように、表現をする人、受け取る人にかかわらず、たとえ作品のすべてを頭で理解したつもりでいても、自分自身の身体がそれを裏切ることがあるのだ。そしてこの感覚は、私たちを楽しませ、悩ませ、さまざまに思考するきっかけを与えてくれるだろう。

FFTでの公演は9月25日(水)から。戸惑いの時間を味わいに、ぜひ劇場に足を運んでみてほしい。

公演情報

Nippon Performance Nights vol.7 招聘作品
『釈迦ヶ池(Shakagaike)- Der Buddha-Teich』
筒井潤 / dracom / FFT

日時:9月25日(水)、27日(金)、28日(土)20:00開演
会場:FFT Juta, Kasernenstraße 6, 40213 Düsseldorf

https://fft-duesseldorf.de/stueck/shakagaike-der-buddha-teich-3/
最終更新 Freitag, 06 September 2019 20:56
 

今注目すべきドイツのメッセ - ビジネス関係者から、一般来場者まで

ビジネス関係者から、一般来場者まで 今注目すべき
ドイツのメッセ

ドイツは言わずと知れた見本市大国。世界中の人々とさまざまな製品が集まり、古くから商談に利用されてきた見本市は、現代ドイツにおいてもビジネスには欠かせない重要な場だ。今回はその背景や理由を紐解くとともに、近年、特に日本企業からも注目されている見本市を中心にピックアップした。さらにビジネス関係者には見本市への参加を成功させるヒントを、一般来場者にはプライベートでも楽しめる見本市をご紹介。ビジネスチャンスをつかみに、そして自分の世界を広げに、見本市へ足を運んでみよう。 (Text:編集部、参考:ジェトロ「ドイツ展示会動向調査報告書2019年3月」)

メッセの歴史と現在 - 始まりはなんと850年前!

歴史上最も古いメッセ(見本市)とされるのが、ライプツィヒの見本市だ。1165年にマイセン辺境伯オットーがライプツィヒに都市権と市場権を与えたことが始まりで、当時は各地を旅する商人たちが物と情報を交換する場だったという。さらに、神聖ローマ皇帝のマクシミリアン1世が1497年と1507年にライプツィヒの市場に特権を与えたことで、国際見本市へと発展していった。

見本市が現代のように屋内会場で開催される形式になったのは、産業革命後の19世紀半ば以降のこと。鉄道が発達したことで、見本となる商品を持ってライプツィヒにやってくる出展者が徐々に増え、露店での開催が限界に達した。そして、1893年にライプツィヒは大きな展示ホールの建設を開始し、1901年に世界初の見本市会場が完成。現代見本市の基礎をつくったライプツィヒのアイデアは他都市にも波及し、その後ロンドンやフランクフルトでも同様の展示ホールが建設された。今日においても、ライプツィヒ・メッセはドイツの重要なメッセ会場の1つとなっている。

ドイツ見本市産業連盟(AUMA)によると、世界最大の見本市会場の8つのうち4つがドイツにあり、主要な国際見本市の3分の2がドイツで開催される。ちなみに、世界一の総面積を誇るのはハノーファー国際見本市会場(Hannover Messegelände)だ。2014〜2017年の直接的な経済支出の平均は年間約145億ユーロで、さらに全体的な経済効果も合わせると280億ユーロ、23万1000名分の雇用を生んでいるという。

また、ドイツで行われる国際見本市と全国見本市を合わせると、毎年出展者数は約18万社・団体、来場者数は1000万人で、国際見本市の約60%の出展者、約30%の来場者が海外から参加している。国別では1位が中国、それ以降はイタリア、フランス、オランダとドイツの隣国が続く。アジアからの来場者が増加傾向にある一方で、来場者数の約8割弱は欧州域内から参加するため、欧州への企業進出や事業拡大を図る上でドイツの見本市は重要な役割を担っていると言える。

参考:Leipziger Messe「Geschichte als Antrieb: 850 Jahre Leipziger Messen」、citytourist「Leipzig: Messestadt von Anfang an」

ドイツの10大見本市会場

ドイツの10大見本市会場❶ Deutsche Messe 
ドイチェメッセ・ハノーファー
展示総面積世界第1位 46万3165平米

❷ Messe Frankfurt 
メッセ・フランクフルト
展示総面積世界第3位 36万6637平米

❸ Koelnmesse 
ケルン・メッセ
展示総面積世界第7位 28万4000平米

❹ Messe Düsseldorf 
メッセ・デュッセルドルフ
展示総面積世界第9位 24万8580平米

❺ Messe München International 
メッセ・ミュンヘン
展示総面積世界第15位 20万平米

❻ Messe Berlin 
メッセ・ベルリン
18万平米

❼ NürnbergMesse 
ニュルンベルク・メッセ
18万平米

❽ Messe Stuttgart 
メッセ・シュトゥットガルト
12万平米

❾ Leipziger Messe 
ライプツィヒ・メッセ
11万1900平米

❿ Messe Hamburg 
メッセ・ハンブルク
9万7000平米

ビジネスチャンスがたくさん!
ドイツの見本市への参加を、
より充実させるには?

国際的にも重要視されているドイツの見本市には、多くのビジネスチャンスが転がっている。しかし、出展者や来場者が見本市への参加にメリットを感じられるには、ちょっとした秘訣があるよう。ここでは、日系企業の海外進出を支援するジェトロ(日本貿易振興機構)・デュッセルドルフ事務所の木場さんに教わった、ドイツの見本市の特徴やトレンドに加え、見本市への参加をより一層充実させるためのヒントを紹介する。

お話を聞いた人


木場亮さん
(ジェトロ・デュッセルドルフ事務所)
ジェトロの見本市データベース www.jetro.go.jp/j-messe

ドイツの見本市は「商談の場」

日本で見本市というと「ショー」のイメージが大きく、国内の既存のお客さんを相手にしていることがほとんどです。それに対して、ドイツの見本市は基本的に「商談の場」。1年分の商売をここで決める、という場なのです。たしかにドイツ国内からの出展者がメインですが、欧州最大や世界最大とうたわれる見本市がいくつもあり、外国からの出展者が多いことも特徴です。日本からドイツの見本市に参加すると、ドイツだけではなく、アジアやアフリカなど全く異なる地域のお客さんと出会うことも少なくありません。その一方で、会場内にドイツ語の表記しかなかったりするなど、完全に国際化できていない見本市もあります。

独企業も感じる見本市のメリット

ドイツの見本市に参加することのメリットは、なんと言っても、その場で商談ができること。というのも、ドイツの企業には、とりあえず話だけ聞いてみようという考え方がなく、メリットが感じられたり、人脈を通じてという場合でない限り、なかなか会ってくれません。そのため、日本企業にとってドイツで営業するというのは本当に難しいことなのです。しかし見本市は、誰でもブースを訪れることができる、というのが前提になっているので、基本的には話を聞いてくれます。そういった意味で、いろいろな企業の方と話ができることは見本市の大きなメリットではないでしょうか。

ちなみにこういったメリットは、多くのドイツ企業も実感しているようです。2019年1月にドイツ見本市産業連盟(AUMA)が発表したところによると、見本市参加のメリットについて、99%の企業が「担当者との直接的なコンタクトが取れること」と回答。さらに、82%の企業が「デジタルなコミュニケーションと比較し、見本市を活用することで自社製品をより信頼できる形で紹介できる」と答えています。

見本市でもスタートアップが熱い!

最近の見本市のトレンドで言うと、スタートアップゾーンを設けることが増えてきています。昨今、国や各連邦州レベルでも優秀なスタートアップの輩出のため、出展を支援するという動きも目立ってきました。見本市に出展すると、規模にもよるのですが、約100万円単位でお金がかかるんですね。しかし、スタートアップゾーンは出展料がかなり抑えられている上、ブースにパソコンとポスターさえ持っていけば、すぐに展示ができたり、プレゼンテーションの機会が与えられることもあります。ただし、スタートアップゾーンが入り口から遠い場所や会場の端っこに割り当てられているため、人の流れが少ないというケースも。ですので、見本市によってスタートアップゾーンの盛り上がり方には大きく差があるようです。

業界ごとのトレンドを知りたいという場合は、その年の見本市のテーマをウェブサイトなどで確認してみるといいでしょう。さらに会場にはそのテーマで特集されたゾーンがあるため、そういった場所でキーワードになっている言葉がその年のトレンドとも言えます。たとえば「省エネ」であれば、省エネにまつわる技術が特集されているといった具合です。また、ほとんどの見本市でツアーが組まれていて、無料で参加することができます。ツアーはドイツ語や英語ですが、注目すべきパビリオンを効率よくまわってくれるので、手っ取り早く業界のトレンドを知ることができますよ。

基本こそ大切!
見本市出展を成功させるヒント

1最低でも3回は出展しよう

1回目は赤字となるケースが多く、効果を実感できないことがほとんどです。しかし、1回目でどういったお客さんが来てどんな製品が注目されるのかが分かるので、回数を重ねていくことで、次はここをアピールしてみようなど出展者側のブラッシュアップが図れます。さらに連続出展すると、ブースを確保しやすくなるというメリットも。ですから、最低でも3回は出展することをおすすめしています。

2事前準備に力を入れて成果をあげよう

大きな見本市には数百という企業が出展するため、単にブースを構えるだけでは期待するような成果は得られません。そこで大事になってくるのが、どれだけ事前に準備したかということ。特に中小企業の場合は人手が足りないこともあると思うのですが、少なくとも英語、できればドイツ語で資料を作ったり、当日に英語で製品説明ができる人を手配するなど、できる限りの準備を心掛けましょう。

3積極的に声をかけてチャンスをつかもう

特に日本の方の場合、異業種のブースは自社の製品とは関係ないと考え、話しかけるのを躊躇する傾向にあります。でも、出展者側は基本的にいろいろな人が話を聞きに来るというスタンスでいるので、ブースで待つだけでなく、むしろ積極的に訪ねて会話してみてください。一通り概要を説明されて終わってしまうこともありますが、そこにチャンスが転がっていることも十分に考えられます。

一般的なメッセ出展スケジュール

日程 すること
9~12カ月前 見本市選定と出展・スペース申し込み
6~9カ月前 スペース確定
6~12カ月前 スペース確定後すぐ、ホテルの予約
出展商品、輸送会社、装飾・施工会社決定
主催者指定の期日まで 出展・スペース料の支払い
スペース確定~1カ月半前 広報内容の確定と制作(招待状、会社概要や製品紹介
パンフレットなど)、輸送会社への搬入
2、3日前~前日 会場への貨物搬入、出展者会場入り
2日前~前日 出品物の設置・装飾
終了前日~終了日 出品物の処分(売却/日本への返送/寄贈/廃棄)
貨物の搬出
帰国直後~1カ月 商談した企業のフォロー

ビジネス関係者向け
日本企業も注目のメッセはこれ!

特に日本企業が力を入れている見本市を中心に、それぞれの業界のトレンドも交えながら、引き続きジェトロの木場さんに教えていただいた。※チケットは業界関係者しか入手できない場合もあるため、各ウェブサイトで詳細をご確認ください。

日本の医療技術が生きる
MEDICA / COMPAMED メディカ / コンパメッド

MEDICA / COMPAMED医療技術の見本市 MEDICA / COMPAMED
MEDICA / COMPAMED医療技術の見本市 MEDICA / COMPAMED
MEDICA / COMPAMED医療技術の見本市 MEDICA / COMPAMED

次回会期:2019年11月18日(月) ~ 21日(木)
会場:メッセ・デュッセルドルフ
来場者数:12万116人 出展社数:5286社 ※2018年実績
MEDICA:medica.messe-dus.co.jp 
COMPAMED:compamed.messe-dus.co.jp

1969年にスタートした毎年11月に開かれる医療技術の見本市。完成品を展示するメディカと、医療機器を製造する材料や技術を紹介するコンパメッドの2つを同時開催。欧州最大規模であるため、医療系市場参入において、新規顧客の獲得や関係構築のための重要なプラットフォームになっている。

日本企業も注目!

日本とドイツは世界で最も少子高齢化が進んでおり、状況が似ているという背景からも、日本の最先端の技術は関心を集めています。特にコンパメッドでは、極細の注射針の製造など微細加工技術を得意とする地方の中小企業が多く出展しており、日本の技術がより生きると言えるでしょう。(木場さん)

日本から酒蔵が大規模出展
ProWein プロヴァイン

ProWeinワインを中心としたアルコール飲料の見本市
ProWeinワインを中心としたアルコール飲料の見本市
ProWeinワインを中心としたアルコール飲料の見本市

次回会期:2020年3月15日(日) ~17日(火)
会場:メッセ・デュッセルドルフ
来場者数:6万1500人 出展社数:6900社 ※2019年実績
prowein.messe-dus.co.jp

プロヴァインは、毎年3月に開催されるワインを中心としたアルコール飲料の見本市。世界各国のワインが集まり、試飲スペースが充実している。またドイツ見本市業者は近年経済成長の著しいアジア圏の開拓に力を入れており、同メッセはシンガポールや上海でも開催されている。

日本企業も注目!

昨年より日本酒造組合中央会がジャパン・パビリオンを出しているのですが、今年は日本から36社の酒蔵が出展しました。近年は日本食ブームも相まって、日本酒の人気が高まっており、ブースは大盛況。まだまだ市場が限られていますが、今後が楽しみです。(木場さん)

2年に1度の食メッセ
Anuga アヌーガ

Anuga アヌーガ食品業界最大規模の見本市

次回会期:2019年10月5日 (土)~ 9日(水)
会場:ケルン・メッセ
来場者数:16万5008人 出展社数:7405社 ※2017年実績
www.anuga.de

隔年で開催する食品業界最大規模の見本市で、100カ国以上からの出展、190カ国から来場がある。ジャパン・パビリオンでは約60社が出展し、特に日本産農水産物および食品の販路拡大を支援。日EU経済連合協定(EPA)の発効により、ほとんどの品目で関税が撤廃されたため、今後輸出が伸びることが期待される。

生活を彩るアイテムが大集合
Ambiente アンビエンテ

Ambienteインテリアの総合見本市

次回会期:2020年2月7日(金)~ 11日(火)
会場:メッセ・フランクフルト
来場者数:13万6081人 出展社数:4460社 ※2019年実績
https://ambiente.messefrankfurt.com

毎年開催されるインテリアの総合見本市。国外からの出展・来場が多く、今年は92カ国が参加。3つのジャンルに分かれ、Diningではキッチンウェア、Livingでは家具や装飾品、Givingでは贈り物をテーマに展示。最近では環境に優しい製品をリストアップしたガイドを制作し、「エシカルスタイル」がトレンドの1つに。

世界一のオーガニック見本市
BIOFACH ビオファ

BIOFACH世界有数のビオ(オーガニック)食品の見本市

次回会期:2020年2月12日(水)~ 15日(土)
会場:エキシビションセンター・ニュルンベルク
来場者数:5万1488人 出展社数:2982社 ※2019年実績 
www.biofach.de

1990年から毎年開催される世界有数のビオ(オーガニック)食品の見本市。2019年のジャパン・パビリオンでは、日本から14社・団体が出展。「日本の発酵と職人技術」をコンセプトに味噌、たまり醤油などの発酵食品を中心とするビオ製品をアピールした。和食ブームがある一方で、市場参入が難しい分野の1つでも。

最先端のロボット技術が見られる
Automatica オートマティカ

Automatica 世界有数のビオ(オーガニック)食品の見本市

次回会期:2020年6月16日(火) ~ 19日(金)
会場:メッセ・ミュンヘン
来場者数:4万6000人 出展社数:890社 ※2018年実績
https://automatica-munich.com

2004年から隔年で開催されるオートメーションとロボット業界の見本市。ドイツ政府が提唱する、製造業の自動化を目指す計画「インダストリー4.0」を見据え、デジタル化、ロボット、人工知能(AI)がこの見本市の大きな柱に。メッセ・ミュンヘン日本代表部の報告によると、2018年には30社以上の日本企業が出展した。

一般来場者向け
世界が広がるおもしろメッセ5選

見本市は基本的にビジネス関係者のために開催されるものだが、一般開放日を設けている見本市も少なくない。最後に、子どもから大人まで楽しめる5つの見本市をご紹介。まずは気になった見本市へ出かけてみよう!

メッセに馬場?まるでふれあい動物園
Grüne Woche 国際グリーンウィーク

Grüne Woche国際グリーンウィーク
Grüne Woche国際グリーンウィーク
Grüne Woche国際グリーンウィーク

次回会期:2020年1月17日(金)~26日(日)
会場:メッセ・ベルリン
www.gruenewoche.de

ベルリンの黄金の20年代と称された、1926年に始まった食品、農業、園芸のための国際見本市で10日間かけて開催される。世界中の国々やドイツの連邦州が各ブースで特産品の紹介や販売をするほか、ビオ製品のブースや大きな庭園が設置される展示場も。なかでも目を引くのは、馬や牛をはじめとした動物のパビリオン。屋内に作られた馬場でショーが行われたり、実際に動物たちと触れ合うことができ、親子連れの姿も多い。

新作ゲームのためならドイツ人も並ぶ!
Gamescom ゲームズコム

Gamescomさまざまな種類のゲームが紹介される見本市
Gamescomさまざまな種類のゲームが紹介される見本市

次回会期:2019年8月20日(火)~24日(土)
会場:ケルン・メッセ
www.gamescom.de

ゲーム機からスマートフォンまで、さまざまな種類のゲームが紹介される見本市。2018年で10回目を迎え、オンラインゲームやバーチャルリアリティー(VR)、e スポーツなどが近年のトレンドになっている。新作ゲームには列ができ、コスプレ姿の来場者も見られ、毎年会場は大盛況。イベントやブースの最新情報がゲットできるアプリも配信しているので、出かける前にダウンロードしよう。

世界中から本の虫たちが集う
Frankfurter Buchmesse フランクフルト・ブックフェア

Frankfurter Buchmesse世界最大級の書籍およびデジタルコンテンツの見本市
Frankfurter Buchmesse世界最大級の書籍およびデジタルコンテンツの見本市

次回会期:2019年10月16日(水)~20日(日)
会場:メッセ・フランクフルト
www.buchmesse.de

毎年開催される世界最大級の書籍およびデジタルコンテンツの見本市。小説や児童書、アートブック、専門書まであらゆる分野を取扱っており、世界中から出版業界者や読書家が集まる。また新人作家の発掘の場でも。マンガやアニメ専門の展示場もあり、多くのコスプレイヤーが来場。グルメギャラリーも人気で、料理や旅行と関連付けたコンテンツの展示やクッキングショーなどが催される。

ボートにも乗れるド迫力の見本市
Boot Düsseldorf ボート・デュッセルドルフ

Boot Düsseldorf世界最大のボートショー
Boot Düsseldorf世界最大のボートショー

次回会期:2020年1月18日( 土)~26日(日)
会場:メッセ・デュッセルドルフ
www.boot.de

毎年開催される世界最大のボートショー。小型から大型のボートやヨットおよそ1500台が9ホールにわたって並んだ風景は圧巻で、実際に船に乗り込むこともできる。近年マリンスポーツの人気がさらに高まっており、今年は25万人の来場者を記録した。サーフィン用のプールが設置されたホールでサーファーのパフォーマンスが行われ、90メートルのコースではパドリングなどが体験できる。

外まで続く展示会場には本物の電車
InnoTrans イノトランス

InnoTrans公共交通機関・鉄道技術の見本市
InnoTrans公共交通機関・鉄道技術の見本市

次回会期:2020年9月26日(土)~27日(日)※一般開放日
会場:メッセ・ベルリン
www.innotrans.de

1996年からベルリンで隔年で開かれる公共交通機関・鉄道技術の見本市。基本的にはビジネス関係者が来場するメッセだが、週末の2日間は鉄道のエリアが一般開放される。本物の電車が屋外の会場にもダイナミックに展示され、実際に車両の中にも入れるなど、鉄道マニアや乗り物好きの子どもたちには夢のようなイベントとなっている。一日券は3ユーロで、子どもは無料で入場可能。

最終更新 Montag, 19 August 2019 15:15
 

ピナ・バウシュ - 踊りと演劇の垣根を超えた表現者

踊りと演劇の垣根を超えた表現者 ピナ・バウシュ PINA BAUSCH

コンテンポラリーダンサー、振付師として世界を舞台に活躍し、ダンスの国際的な発展に貢献したピナ・バウシュ。踊りと演劇を融合させた「タンツテアター」というモデルを成熟させた彼女は、2009年に68歳という若さでこの世を去った。没後10年の節目を迎えた2019年、ドイツが生んだ稀代のアーティストの功績にスポットを当てる。(Text:編集部)

参考資料:
ウェブサイト Tanztheater Wuppertal Pina Bausch、公益財団法人 稲盛財団、京都賞
書籍『ピナ・バウシュ−タンツテアターとともに』、『ドイツ文化を担った女性たち−その活躍の軌跡』、『月刊百科(1996年)』
映画『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』、『ピナ・バウシュ 夢の教室』

ピナ・バウシュ

1940年ドイツ西部の街、ゾーリンゲンで生まれたフィリッピーネ・バウシュ(Philippine Bausch)。「ピナ」の愛称で親しまれていた彼女は、幼い頃からよく両親が営むカフェレストランで人々が行き交う姿や談笑する表情を観察していたという。その経験によって培われた観察力は、のちに彼女が踊り手として唯一出演する作品「カフェ・ミュラー」の創作に大きな影響を与えている。

独米の巨匠に師事し、
刺激を受けた10代

6歳から正式にバレエを習い始めたピナ・バウシュは、14歳になるとエッセンの現フォルクヴァング芸術大学(Folkwang Universität der Künste)で、振付師のクルト・ヨース* に師事。18歳になり学校を首席で卒業すると、ドイツ学術交流会(DAAD)からのサポートを受けて、ニューヨークにある名門ジュリアード音楽院(The Juilliard School)に特別学生として渡米した。

そこでは、「心理表現の振付師」と呼ばれる英国出身のアントニー・チューダーや、モダンダンスの開拓者の1人である米国出身のマーサ・グレアムら、一流のダンサーのもとで技術と知識を吸収していく。その傍ら、講師のチューダーとともに舞台を踏む機会も与えられた。

* 1901-79。ダンサー、振付師として世界的に知られる。代表作には反戦をテーマにした「緑のテーブル」がある。

ダンサー・振付師として
頭角を現し始める

米国での生活に慣れてきた1962年、恩師であるヨースからの要請を受けてエッセンに戻る。そこで彼女はヨースの作品を踊りながら振付を手伝うようになるが、新たな試みの必要性を感じ独自の手法で振付を手掛けるようになる。1968年に初作品となる「フラグメント(Fragment)」や「時の風の中で (Im Wind der Zeit)」を創作。翌1969年には、ケルンで開催された国際振付ワークショップで「時の風の中で」が1位に輝く。

振付師として頭角を現していたピナ・バウシュの才能にいち早く目をつけたのが、ヴッパータール劇場の監督、アルノ・ヴュステンホーファーだった。そして彼女はヴュステンホーファーの推薦で、1973年33歳でヴッパータール劇場の芸術監督兼振付師に就任する。その翌年には、ヴッパータール・タンツテアター(ヴッパータール舞踏団)に改名し、新たなスタートを切るのだった。

ドイツを拠点に世界へ
コンテンポラリーダンスを発信

1920年にダンサーのルドルフ・フォン・ラバンが最初に解釈した「タンツテアター」が目指すところは、バレエの慣習からの解放と表現の完全なる自由だった。その意図を汲みながら踊りと演劇の融合を試みたピナ・バウシュの作品は、古典バレエの舞台に慣れ親しんでいた観客たちからの賛否両論が巻き起こったという。それでも独自の解釈でタンツテアターという言葉を具現化した。

こうして1975年に振付を担当した「春の祭典」は、繊細な感情としなやかな身体性を表現した画期的な作品で、本作で表現したスタイルはピナ・バウシュ作品における軸となっている。

ダンサーとの
対話から生まれる創作性

「カフェ・ミュラー」と「コンタクトホーフ」が生み出された1978年になると、ピナ・バウシュはワーキングメソッドを変化させる。作品を制作するにあたり、ダンサーたちにその構想について問いかけをして、話し合う手法を試みたのだ。国籍や文化、表現方法など、異なる背景を持つダンサーたちの言葉や考え方からテーマの根源的なものを抽出して構成していく方法だ。

さらに、あらゆる国や都市の人々と共同制作することにも積極的だった。ローマのアルジェンティーナ劇場との共作「ヴィクトール(Viktor)」(1986年)を皮切りに、ブラジル、埼玉、香港、イスタンブールなど、まったく異なる音楽や慣習に接してその異文化体験を基に共同制作を始めた。その一部には以下のような作品がある。

  • 炎のマズルカ(Masurca Fogo)1998年
    リスボン国際博覧会、リスボンのゲーテ・インスティトゥートとの共同制作
  • アグア(Água)2001年
    サンパウロのゲーテ・インスティトゥート、エミリオ・カリルとの共同制作
  • ネフェス(呼吸/Nefés)2003年
    イスタンブール国際演劇祭、イスタンブール文化・芸術財団との共同制作
  • 天地(TEN CHI)2004年
    埼玉県芸術文化振興財団、日本文化財団との共同制作
  • バンブー・ブルース(Bamboo Blues)2007年
    インドのゲーテ・インスティトゥートとの共同制作
  • 石の上のコケのように("...como el musguito en la piedra, ay si, si, si..." (Wie das Moos auf dem Stein))2009年
    チリのサンティアゴ市立劇場の国際演劇祭、チリのゲーテ・インスティトゥートとの共同制作

1998年には、ヴッパータール・タンツテアターの25周年を記念した回顧上演を果たすとともに、世界31カ国から400人以上のダンサーを迎えて舞踏芸術祭を開催するなど、インターナショナルな交流を図った。

また、1978年の作品「コンタクトホーフ」では、ダンス経験のない踊り手たち(詳細はP13作品紹介を参照)による公演を完成させ、コンテンポラリーダンスの表現の多様性、可能性を世界に知らしめた。

ピナ・バウシュの世界観は
次世代へと引き継がれる

表現手法の柔軟さと創作性を体現してきたピナ・バウシュは、2009年6月30日、68歳の若さで死去した。彼女がダンスと演劇の垣根を超えて、常にスタイルを刷新し続けたヴッパータール・タンツテアターには、現在約15カ国のダンサーが所属している。ピナ・バウシュがこの世を去った後にも、同舞踏団は彼女の遺志を引き継ぎながら精力的に公演を行なっている。

ピナ・バウシュが手掛けた主な作品

春の祭典 春の祭典
Das Frühlingsopfer

音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
上演時間:35分
初演:1975年12月3日 オペラハウス・ヴッパータール

ピナ・バウシュ作品で最も多く上演されているプログラムで、彼女の名を世界に知らしめた代表作。1913年に作曲家のイーゴリ・ストラヴィンスキーがロシア・バレエ団のために作った音楽をピナ・バウシュの振付で演出。犠牲をテーマに生贄にされる女性の観点から物語が描かれている。

コンタクトホーフ コンタクトホーフ
Kontakthof

音楽:アントーン・カラス、 チャールズ・チャップリン、フアン・リョッサス、ジャン・シベリウス
上演時間:2時間50分
初演:1978年12月9日 オペラハウス・ヴッパータール

「カフェ・ミュラー」と同時期に制作された作品。カラフルなドレスを身にまとった女性とスーツ姿の男性が、迫力あるダンスで見る者を魅了する。ピナ・バウシュはこの作品でダンス経験がない65歳以上の踊り手と、14歳から17歳のダンサーが出演する舞台を監督・上演している。

カフェ・ミュラー カフェ・ミュラー
Café Müller

音楽:ヘンリー・パーセル
上演時間:40分
初演:1978年5月20日 オペラハウス・ヴッパータール

ピナ・バウシュがダンサーとして舞台に立つ唯一の作品。映画『トーク・トゥ・ハー』の冒頭では、ピナ・バウシュ本人が踊っている。 劇中に流れるヘンリー・パーセルの「アリア」が印象的な本作の演出には、彼女が幼い頃に両親が営んでいたカフェレストランから受けた影響が感じられる。

TEN CHI 天地
TEN CHI

音楽:森山良子、Underkarl、Tudôsok、Plastikmanほか
上演時間:2時間50分
初演:2004年5月8日 ヴッパータール劇場

ピナ・バウシュが日本の埼玉県芸術文化財団、日本文化財団と共同制作した作品。日本文化を象徴する「サムライ」、「スシ」、「ゲイシャ」など、さまざまな日本語が舞台上で飛び交う。桜に見立てた紙吹雪が舞い散るステージは幻想的で、ピナ・バウシュが感じた日本の姿が伺える。

フルムーン Vollmond フルムーン
Vollmond

音楽:アモン・トビン、ルネ・オーブリー、キャット・パワー、三宅純ほか
上演時間:2時間20分
初演:2006年5月11日 ヴッパータール劇場

アップテンポな楽曲に合わせて躍動感あふれるダンスを披露する本作。踊りもさることながら、長年ピナ・バウシュと親交を深めてきたアートディレクターのペーター・パプストによる圧巻の舞台美術も見どころだ。2020年6月26〜28日にはヴッパータールで上演を予定している。

そのほかの作品

七つの大罪 Die sieben Todsünden (1976年)
カーネーション Nelken (1982年)
ヴィクトール Viktor (1986年)
パレルモ、パレルモ Palermo Palermo (1989年)
過去と現在と未来の子どもたちのために
Für die Kinder von gestern, heute und morgen (2002年) など

下記のヴッパータール・タンツテアターの公式サイトから作品の動画が見られます。 http://www.pina-bausch.de/de/medien/videos/

TANZTHEATER WUPPERTAL PINA BAUSCH ピナ・バウシュが芸術監督・振付師を務めた 「ヴッパータール・タンツテアター」

ヴッパータール・タンツテアターヴッパータール・タンツテアターの公演が行われる「オペラハウス・ヴッパータール」の外観

デュッセルドルフからほど近いドイツ西部の工業都市、ヴッパータールを拠点に活動する「ヴッパータール・タンツテアター」。1973年にピナ・バウシュが芸術監督兼振付師に就任したのち、実験的ダンスの手法を取り入れながら、さまざまな作品を上演してきた。2011年に公開されたドキュメンタリー映画『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』には、同劇場のメインダンサーたちが出演した。ピナ・バウシュ没後10年となる29019年は、欧州をはじめ北米やアジアでも公演を行う予定となっている。

ヴッパータール・タンツテアター公演情報
ピナ・バウシュが手掛けた作品の公演予定
(会場:オペラハウス・ヴッパータール)

  • 2019年10月3〜6日 
    「石の上のコケのように」 "...como el musguito en la piedra, ay si, si, si..." (Wie das Moos auf dem Stein)
  • 2019年11月16、17、19、20、22〜24日
    「緑の大地」Wiesenland
  • 2020年1月24〜26日、28、29、31日
    「青ひげ:『青ひげ公の城』を聴きながら」 Blaubart. Beim Anhören einer Tonbandaufnahme von Béla Bartóks Oper „Herzog Blaubarts Burg“
  • 2020年3月7、8、10、13〜15日
    「七つの大罪」Die sieben Todsünden

※スケジュールやチケット購入については、公式サイトよりご確認ください。
www.pina-bausch.de

ピナ・バウシュ財団主催のプログラム

ピナ・バウシュの芸術的遺産を保存し、未来へと受け継ぐために2009年、ヴッパータールに設立されたピナ・バウシュ財団。2019年に10周年を迎えた同財団では、2019年から2020年にかけて彼女の作品を再発見するためのイベント、プログラムの開催を予定している。下記に一部のプログラムを紹介していこう。

  • 2019年10月26日
    「パレルモ、パレルモ」映像上映会
  • 2019年12月5、8、10、12、15日
    ゼンパー・オーパー(ドレスデン) バレエ・プログラム「タウリス島のイフィゲーニエ」
  • 2020年1月1日
    ピナ・バウシュ親睦会「MEET THE FELLOWS! 2020」

※イベントやプログラムの詳細は、公式サイトよりご確認ください。
www.pinabausch.org/en/home

3つの小さなエピソード ピナ・バウシュと生き、その未来を担う人々

現代ダンスの分野のみならず多くの人々に影響を与え、今もなお世界にその名をとどろかせているピナ・バウシュ。ここでは、彼女の同志、友人、そして担い手の3人を紹介しよう。

ルッツ・フェルスター ダンサー
ルッツ・フェルスター Lutz Förster

1956年ゾーリンゲン生まれ。75年からヴッパータール・タンツテアターで踊り始め、78年にメンバーとなった。2013~2016年に同舞踏団の芸術監督を務め、フォルクヴァング芸術大学で教授としても活躍した。

日曜にピナに呼び出されて……

学生時代にピナに見初められ、34年間ともに働いたルッツ・フェルスターさん。「ピナと私は誠実と大きな信頼、そして愛とも呼べるもので結ばれた仲」だったと語っている。彼が稽古場のすぐ後ろに住んでいた頃、日曜にもかかわらず「ちょっと来てくれない?」と、ピナから電話があったという。稽古場に行くと、「この動きなんだけれど、この椅子の上でできるかしら?」と彼女に質問され、実際にその動きを試しながら議論したそう。ピナがいかに仕事に夢中だったかが、よく分かるエピソードだ。

参考:Der Tagesspiegel「Interview mit Lutz Förster „Pina hat 24 Stunden gearbeitet“」

ヴィム・ヴェンダース 映画監督
ヴィム・ヴェンダース Wim Wenders

1945年デュッセルドルフ生まれ。戦後の新しいドイツ映画の先駆者として、1970年代から国際的にその名が知られるようになる。代表作に映画『パリ、テキサス』、『ベルリン・天使の詩』など。

20年かけて完成させた2人の作品

1980年代に初めてピナの作品を鑑賞したヴィム・ヴェンダ―スさんは、人生を変えるほどの衝撃を受け、一晩中泣いたという。その後ピナと会い、一緒に映画を作ることを約束する。友人関係は続いたが、彼女の作品の臨場感や感動をどう伝えたらいいか答えが見つからぬまま20年が経過。そうしてやっと出た答えが3D撮影だった。すぐにピナと製作に取り掛かったが、彼女は撮影前に他界。一度は製作をあきらめたヴェンダ―スさんだったが、彼女のために映画『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』を完成させた。

参考:Collider「Director Wim Wenders PINA Interview」

サシャ・ヴァルツ Sasha Waltz 振付師
サシャ・ヴァルツ Sasha Waltz

1963年カールスルーエ生まれ。「ポスト・ピナ・バウシュ」と呼ばれ、コンテンポラリーダンスの世界で最も影響力がある振付師の1人。「サシャ・ヴァルツ&ゲスツ」を主宰し、オペラ演出なども手掛けている。

日本のオペラも手掛けた次世代のピナ

細川俊夫さんのオペラ「松風」の演出と振付は、サシャ・ヴァルツさんが担当。日本の伝統芸能や美意識について学び、能や書道からヒントを得て動きを考えたという。また声だけでなく肉体でも表現することは自身のオペラ演出の特徴でもある。ベルリン在住のアーティストの塩田千春さんの作品も融合させた舞台は、2011年にベルギーで初演され反響を呼んだ。また2013年に「春の祭典」をサシャ・ヴァルツ版で発表。賛否両論がありながらも、2019年はベルリン国立バレエの芸術監督に就任し、さらなる活躍が期待される。

参考:新国立劇場「オペラ『松風』演出・振付 サシャ・ヴァルツ インタビュー」

初心者からコアなファンまで楽しめる
コンテンポラリーダンスの祭典

現在進行形のコンテンポラリーダンスを見たい、知りたい、体験したい!そんな方に、8月に開催されるダンスの祭典をご紹介しよう。さまざまなダンサーや振付師が集まるイベントで、お気に入りのパフォーマーを見つけてみては?

ドイツ最大の国際ダンスフェス
タンツ・イン・アウグスト
Tanz im August

WO CO日本人振付師の関かおりさんが主宰する関かおりPUNCTUMUNの作品「WO CO」

期間:2019年8月9日(金)~31日(土)
会場:HAU ほか(ベルリン)
ウェブサイト:www.tanzimaugust.de

毎年8月にベルリンで開催される、コンテンポラリーダンスの国際フェスティバル。主催は、ベルリンのダンスや劇場、パフォーマンスシーンを発信するHAU(Hebbel am Ufer)だ。新人から国際的に知られるダンサーまで世界中から参加があるほか、ワールドプレミアやドイツ初演など、貴重な機会が目白押しのイベント。

ダンスも見られる国際芸術祭
ルールトリエンナーレ
Ruhrtriennale

ルールトリエンナーレメイン会場の1つであるボーフムのJahrhunderthalleはガス発電所跡

期間:2019年8月21日(水)~9月29日(日)
会場: Jahrhunderthalle(ボーフム)ほか多数
ウェブサイト:www.ruhrtriennale.de

工業地帯・ルール地方で毎年開催される国際芸術祭。製鉄所跡のラントシャフトパークなどの産業遺産を会場に、コンテンポラリーダンスはもちろん、音楽、演劇、インスタレーションなど、さまざまな分野の芸術が楽しめる。ディレクターは3年ごとに変わり、2018~2020年はドラマトゥルギーのステファニー・カープが担当。

最終更新 Dienstag, 15 Juni 2021 08:45
 

ドイツ各地のご当地酒

旅行先でぜひ試したい! ドイツ各地のご当地酒

ドイツにはその地域に根付いた食べ物はもちろんのこと、ご当地ならではのお酒もたくさんある。ビールやワイン、ちょっと変わったスタイルのお酒まで、ドイツで暮らしているからこそ味わいたいご当地酒をご紹介していこう!(Text:編集部) 

シチュエーション別で使えるドイツの乾杯!

  • カジュアルに乾杯
    Prost!
    プロースト!
  • 上品に乾杯
    Zum Wohl!
    ツム・ヴォール!
  • お祝いの乾杯
    Auf 'Xxxx'!
    アウフ・(名前/代名詞)!

ドイツ地図 ドイツ北部 ドイツ西部 ドイツ南部 ドイツ南部

北部

1

リキュール
イエガーマイスター
Jägermeister

イエガーマイスター

世界的に有名なリキュールは、ニーダーザクセン州のヴォルフェンビュッテルで生まれた。サフランやシナモンの皮など、56種類もの原料が配合されているハーブ系の独特な味わいが特徴。ドイツでは薬酒としてストレートで飲むのがスタンダード。

2

ビール
ボック
Bock

ボック

ニーダーザクセン州アインベックが発祥、バイエルン地方で発展したビール。芳醇なホップの香りが楽しめて、コクのある味わい。アルコール度数はほかのビールに比べて高い6.0~6.5%。さらに濃厚なドッペルボック(Doppel Bock)は、断食中の栄養源として液体パンと呼ばれていた。

3

ビール
ゴーゼ Gose

ハルツ地方のゴスラーが発祥。原料に塩を加え、乳酸発酵させるユニークな製法のビール。また、コリアンダーがミックスされているため、独特の酸味が楽しめるのもポイント。ゴーゼから派生したライプツィガーゴーゼ(Leipziger Gose)は、東部の都市ライプツィヒの特別なビールとして地域に根付いている。

4

スピリッツ
コルンブラント Kornbrand

ドイツで15世紀頃から造られている伝統的な穀物の蒸留酒。原料には、ライ麦、小麦、大麦、オート麦、そばなどが使用されている。フレーバーや着色料など添加物は一切加えないスタイルで、クセのない味わい。北西部の町、ノルデンにオフィスを構えるドールンカート社による商品がよく知られている。

5

カクテル
ファリサイ Pharisäer

北ドイツとオーストリアを中心に普及している。甘めのコーヒーにラム酒をミックスして、仕上げに生クリームを浮かべたお酒。19世紀の北ドイツで禁欲的な生活を強いられていた人々が、見た目ではお酒だと分からない方法でアルコールを楽しむための手段として飲み始めたのが起源だと言われている。

西部

6

ビール
アルトビア Altbier

アルトビア

デュッセルドルフで発展したビール。19世紀中期に考案されたレシピを元に製造されている。同地にはアルトビアをメインに取り扱うクナイプ(居酒屋)もたくさん存在している。各メーカーによって味わいが異なるので、はしご酒を楽しむのも◎。

7

ビール
ケルシュ Kölsch

ケルシュ

ケルンで発展したビール。淡色麦芽を使用しているため、アルトビアよりも色味も味わいもすっきりとしている。アルトビア、ケルシュともに小さいグラスに注がれていて、飲み干すとウェイターが新しいビールを自動的に持って来てくれる。

8

カクテル
リューデスハイマーカフェ
Rüdesheimer Kaffee

リューデスハイマーカフェ

リューデスハイムで親しまれているコーヒーとブランデーをミックスしたお酒で、1957年に発明された。ブランデーは同地が発祥のアスバッハ(Asbach)が使用されている。特別なカップに角砂糖とアスバッハを加えて火をつけながら攪かくはん拌していく。その後コーヒーを加えて、生クリームを添えれば完成!

9

ワイン
アプフェルヴァイン
Apfelwein

アプフェルヴァイン

フランクフルトの名産。リンゴを圧搾してその果汁を酵母とともに発酵させることで酸味のある味わいに仕上げる。ヘッセン州などでは市販品を購入することも可能。ひし形のシェイプが入った特別なグラス、ゲリップテス(Geripptes)が使用されており、注ぐピッチャーはベンべル(Bembel)と呼ばれている。

10

ビール
ドルトムンダー
Dortmunder

ドルトムンダー

ドルトムントで生まれたピルスナースタイルの辛口のビール。通常のピルスナーに比べて透き通った淡色で、苦味は少し弱いがボディーがしっかりとしていて味も濃い。第二次世界大戦後から1970年頃までドイツから輸出していた最もポピュラーなタイプだった。

11

ジン
シュタインヘーガー
Steinhäger

シュタインハーゲンで造られていることから名付けられた。オランダ発祥のジンをドイツ独自にアレンジしたもの。大麦を原料とし、杜松の実やスパイス類を加えて香りづけをしている。ビールを飲む前にこのジンをショットグラスで1杯飲むのがドイツ流。

12

リキュール
キュメリング
Kuemmerling

キュメリング

ハーブのリキュールを製造するメーカー、キュメリング社によって発明・販売されているハーブのリキュール。1963年からマインツ近郊のボーデンハイムで製造されている。ほんのりとした苦味があるテイスト。

東部

13

リキュール
ライプツィガーアラーシュ
Leipziger Allasch

ラトビアが発祥のお酒。1830年にライプツィヒの見本市で発表されたことで、同地で人気となる。度数が40%近く、通常のリキュールよりも高アルコールで、糖分が高いのが特徴。ヴィルヘルムホルン社の「Echter Leipziger Allasch」がよく知られている。

14

ビール
ベルリーナーヴァイセ
Berliner Weiße

ベルリーナーヴァイセ

ベルリンで醸造されたビールのみが、その名を冠することが許されるご当地ビール。1600年半ばに生まれたとされている。イーストと乳酸菌による発酵工程や、ストローで飲むスタイルが特徴。赤いラズベリー、緑のクルマバソウ(Waldmeister)のシロップで香りづけする。19世紀にはベルリンで最も人気のあるアルコールとして親しまれていた。

南部

15

カクテル
ラドラー
Radler

ラドラー

ビールをレモネードで割ったお酒。自転車乗りを意味するラドラーは、サイクリング愛好家たちから親しまれていたことからその名がついた。南部ではルス、ルッセと呼ばれることも。また、北ドイツではアルスターヴァッサー(Alsterwasser)の名で知られている。

16

ビール
コーラヴァイツェン
Colaweizen

ドイツ南部で親しまれているビールのスタイル。コーラとヴァイツェンを半々に割っていただく、シンプルなレシピ。コーラの甘さがビールのほろ苦さを中和して飲み口がまろやかになるため、ビール初心者にもおすすめ。

17

ビール
ラオホビア
Rauchbier

オーバーフランケン地方のバンベルクが発祥のビールで、芳醇な風味が特徴。実際にブナの木で燻した麦芽を使用している。ブラックコーヒーのようなコクとスモークベーコンのような香ばしさがクセになる味わい。特にシュレンケラ醸造所から発売されている商品が有名だ。

18

ビール
メルツェンビア
Märzenbier

メルツェンビア

その年の春に仕込んだメルツェンビアを熟成させたものをオクトーバーフェストで飲むため、別名オクトーバーフェストビアと呼ばれている。南部で親しまれているビールで、大きめのグラス、マース(Maß:写真右)に注ぐのが一般的。

19

ビール
ヴァイツェン
Weizen

ヴァイツェン

バイエルン地方で発展したビール。麦芽を50%以上使用した、苦味のないすっきりとした風味で、クリーミーな口当たり。瓶の中で発酵させるため、底にはオリが沈んでいることもある。

20

スピリッツ
キルシュヴァッサー
Kirschwasser

キルシュヴァッサー

さくらんぼを種ごと使って発酵させた蒸留酒の一種。シュヴァルツバルト地方の名産、黒い森のさくらんぼ酒ケーキ(Schwarzwälder Kirschtorte)にも香りづけで使用されている。※写真はEMIL SCHEIBEL SCHWARZWALD-BRENNEREIの「PREMIUM Kirschwasser 0.7l」

21

ビール
シュヴァルツビア
Schwarzbier

バイエルン地方が発祥。デュンケルよりもローストする温度が高いため、より香ばしい味わいで、甘みの少ない黒ビール。

22

ビール
ミュンヘナー
Münchner

ミュンヘンが発祥。濃色麦芽と焙煎の度合いを強めるカラメル麦芽を使用する、コクのある黒ビール。ミュンヘナーデュンケル(Münchner Dunkel)と呼ばれることも。

23

リキュール
ティフィン(紅茶リキュール)
Tiffin

ミュンヘンのアントン・ライメーシュミット社が製造。紅茶のリキュールは各国で造られているが、最も有名なのが同社によるもの。厳選された茶葉を使用した高品質のリキュールなので、ソーダやミルクで割ったり、お菓子の風味づけにも活用できる。

24

ビール
ヘレス
Helles

ヘレス

バイエルン州とバーデン=ヴュルテンベルク州で発展したビール。麦芽の風味が爽快感のある味わい。1328年に創業した醸造所、アウグスティーナ・ブロイ (Augustiner Bräu)や海外でも名の知られているレーヴェンブロイ (Löwenbräu:写真右)は、人気の高いメーカーだ。

25

ビール
デュンケル
Dunkel

ドイツ南部が発祥の褐色のビール。デュンケル(暗い)はシュヴァルツ(黒)よりもシャープですっきりしている。また、苦味とまろやかな味わいのバランスが良いため、黒ビールが苦手な人でも挑戦しやすい。

 
最終更新 Dienstag, 15 Juni 2021 08:43
 

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