Hanacell
特集


ドイツの星付きレストラン

味覚の真髄に迫るドイツ星付きレストラン

実りの秋の到来と共に芽生えてくるのが、美味しいものに対する食欲。
「たまには奮発して、高級レストランへ!」と思っても、
膨大な数のレストランの中から1軒に狙いを定めるのは、なかなか難しい。
そんなときに役に立つのが、レストランを星の数で格付けする「ミシュラン」や
1~20点の採点方式で評価する「ゴー・ミヨ」など、世界的に有名なガイドブックだ。
今号では、これらガイドの2012年ドイツ版の中から厳選8店をご紹介。
今宵は大切な人と星付きレストランで、こだわりシェフの自信作に舌鼓を打ちながら、
大きな地図を見る至福のひと時を過ごしてみませんか。
(編集部:林 康子)

ミシュラン.... ★
ゴー・ミヨ....16点

伝統を保ちつつ、進化し続けるレシピ
Landhaus Scherrer

ハンブルクで最も美しい並木道「エルプショセー」がまだ畦道だった 1840年に、通行人が休憩するための酒屋として開業し、日曜・祝日通行料の支払いが義務付けられた際には料金所の役目を果たしたという時代を経て、1975年にアルミン&エミ・シェーラー夫妻が開いた小さな飲食店が、このレストランの原形だ。彼らの料理は地元市民の評判を呼び、たちまち有名店に。その後、2代目シェフのハインツ・ヴェーマンが現在に至るまで30年以上、1日たりとも星を失わずに営業を続けている。同店のモットーは、「伝統と革新が交わる場所」。地元で採れる厳選食材を使用し、調理過程で起こる食材の変化に科学的視点からアプローチするフランス生まれの「分子調理法」を用いた創作料理から、ハンザ地方の伝統的なレシピによるジャガイモサラダまで、新旧様々な味を展開している。人気メニューは鴨のカリカリ焼きと骨付きイシビラメ。シェフがゲストの目の前でさばき、調理してくれる。

Landhaus Scherrer
Landhaus Scherrer Landhaus Scherrer
Landhaus Scherrer Landhaus Scherrer

Landhaus Scherrer
12:00~15:00(LO14:30)
18:00~オープンエンド(LO22:30)
日休業 ※予約推奨
Tel: 040-883070030
Elbchaussee 130, 22763 Hamburg
www.landhausscherrer.de
ミシュラン.... ★★★
ゴー・ミヨ....19点

素材本来の味をとことん追求
La Vie

歴史情緒溢れるオスナブリュックの旧市街、市庁舎の真向かいに建つレストランを営むのは、これまでフランス料理界のあらゆる賞を総なめにしてきたドイツきっての名コック、トーマス・ビューナーと、サービスを仕切るスリランカ出身の妻タヤルニ。「グルメな人のメッカ」を謳い、18世紀築の威風堂々たる建物にふさわしい最上級の料理を提供している。「素材の味に適う味はない」と言うビューナーは、食材の味を最大限に引き出すためのレシピを何週間も掛けて考案している。その一例が年々洗練されていく鹿料理で、ソースには調味料を一切使わず、真空パックした肉をぬるま湯で温めて搾り出した肉汁を使うという徹底ぶり。また、肉や野菜は焼くのではなく自家製オイルを使い、低温でじっくり煮込んで味を凝縮させている。こうして完成するコース料理は、異なる料理の寄せ集めではなく、1皿1皿に盛られた素材の味がつながることで奏でられる「極上のシンフォニー」なのだ。

La Vie
La Vie La Vie
La Vie La Vie

La Vie
19:00~オープンエンド 
水〜土12:00~オープンエンド 
日月休業 ※予約推奨
Krahnstr. 1-2, 49074 Osnabrück
Tel: 0541-331150
www.restaurant-lavie.de
ミシュラン.... ★
ゴー・ミヨ....17点

高級食材を、そっとやさしく調理
bean & beluga

ドレスデンの名店Bülow Residenz で約10年間、修行を積んだ後、料理の極意を探るべく米ニューヨークやスペイン・マヨルカ島などの名店をめぐったシュテファン・ヘルマン。彼が2007年に格調高いユーゲントシュティール建築が特徴の旧カフェBinneberg を改築して開いたレストランは、オープンからわずか5カ月後に星を獲得した。「豆とチョウザメ」という一風変わったレストラン名には、素朴な豆類からキャビアまで、ここではあらゆる食材を堪能できるというヘルマンの想いが込められている。彼のこだわりは、新鮮な高級食材の味を損ねないよう大切に、やさしく調理し、口の中に入れて初めて完成するという型破り のレシピだ。今年3月からは7品のベジタリアン・コースもスタートし、メニューの幅は大きくグレードアップ!レストラン下の地上階には、軽い食事ができるビストロバーとデリカテッセンの店が併設され、星付きシェフ自慢の味を気軽に楽しめる。

bean & beluga
bean & beluga bean & beluga
bean & beluga bean & beluga

bean & beluga
18:30~22:00 日月休業
地上階ビストロバー:
10:00~23:00 日月休業
Tel. 0351-44008800
Bautzner Landstr. 32, 01324 Dresden
www.bean-and-beluga.de
ミシュラン.... ★
ゴー・ミヨ....17点

1品1品に遊び心とストーリーを込めて
Villa Merton.

フランクフルトの高級住宅街にあって、瀟洒な佇まいが一際目を引くレストランは、もともと1925年、「グリュンダーツァイト」と呼ばれる興隆期に地元の富豪リヒャルト・メルトンが建てたネオバロック様式の別荘だった。2009年に大々的にリフォームされ、地元のセレブリティーたちから絶大な支持を集めている同レストランを仕切るのは、ワインの選定とサービスを担当する支配人ティーリー・フェルデンと、ズュルト島やシュトゥットガルトの名門で修行した若手シェフ、マティアス・シュミット。地元の食材から世界に通用する味を作り出すため、オリーブオ イルや柑橘類、海水魚など、地元で採れないものは材料リストから省き、代わりにハマナスやブナの実、松の芽、小麦の苗汁など珍しい食材を使って遊び心溢れる独創的な料理に挑戦している。「1品1品にストーリーを込めている」と語るシェフが四季折々の旬な食材で作る料理は、味わう人の目と舌に新鮮な驚きと感動を与えてくれる。

Villa Merton.
Villa Merton. Villa Merton.
Villa Merton. Villa Merton.

Villa Merton.
12:00~14:00 / 18:00~22:00 
土日休業 ※予約推奨
Am Leonhardsbrunn 12, 60487
Frankfurt am Main
Tel: 069-703033
www.villa-merton.de
ミシュラン.... ★

豊かな自然の中に映えるモダンな新名所
schanz. restaurant.

絵に描いたように美しく長閑な自然と名産のモーゼルワインが、ハイキングやワインの愛好家を惹き付ける町ピースポートに2011年夏、新たな名所が加わった。小さなホテルとワイナリーを営むガブリエル&エーリッヒ・シャンツ夫妻のもとに、長いコック修行の旅を終えた息子トー マスが戻ってフランス料理店を開き、同年秋に早速、星を獲得したのだ。「上質な食材が手に入る場所で作られる料理を志向している」と語る彼のスタイルは、モダン・フレンチ。天然ヒラメやブルターニュ産のオマールえび、トリュフなど、自ら吟味した高級食材の価値を、匠の技と言えるほどに凝った調理を通して最上級にまで高めている。そこへさらに彩りを添えるのが、彼のパートナーであり建築家のブリッタ・ティボが手掛けたレストランの内装。周囲に並ぶ昔ながらの石造りの建物とは一線を画す、ガラスや金属をふんだんに取り入れたスタイリッシュなデザインは、建築物としてだけも一見の価値あり。

schanz. restaurant.
schanz. restaurant. schanz. restaurant.
schanz. restaurant. chanz. restaurant.

schanz. restaurant.
12:00~14:00 / 18:30~21:00 
火18:30~21:00 
月休業
Bahnhofstr. 8a, 54498 Piesport
Tel: 06507-92520
www.schanz-restaurant.de
ミシュラン.... ★★
ゴー・ミヨ....18点

無駄のない食事に、最適なワインを
Becker’s Restaurant

古代ローマの遺跡群が壮大な歴史ロマンを感じさせるドイツ最古の町、 トリーアにある高級ホテル内のレストラン。ホテルのオーナー兼レストラン・シェフのヴォルフガング・ベッカーは1997年に先代から経営を継ぎ、妻でソムリエのクリスティーナとともに大改装を決心。そしてついに2011年、伝統的な石造りの建物と無駄を省いたフォルムが特徴のバウハウス様式の建物を融合させたデザイン・ホテルに生まれ変わった。同ホテル内のレストランで味わえる料理は、「意味のないものは皿に乗 せない」とヴォルフガングが断言する通り、無駄な飾りを一切省いた、食材の色が際立つ逸品ばかり。カリフラワーのトルテやあんこうのかぼちゃ・オレンジ・にんじん添えなど、定期的に替わる創作コース料理は8品または5品。それに合わせてクリスティーナが勧めてくれるワインの中には、ぶどう畑を所有するベッカー夫婦が自ら醸造したヴァイスブルグンダーやシュペートブルグンダーも含まれている。(下写真 Fotos: © Becker's)

Becker’s Restaurant
Becker’s Restaurant Becker’s Restaurant
Becker’s Restaurant Becker’s Restaurant

Becker’s Restaurant
19:00~オープンエンド 
日月休業
※予約推奨
Olewiger Str. 206, 54295 Trier
Tel: 0651-938080
www.beckers-trier.de
ミシュラン.... ★★★
ゴー・ミヨ....18点

食材の価値を調理によって完結させる
Amador

工業都市として発展を遂げたライン=ネッカー地域の町マンハイム。そ の工場街の一角にある、旧人形製造工場を改築した建物が同レストランだ。目立った看板はなく、ここがレストランであることを示すのは、重厚な鉄の扉に記された「A」という文字のみ。しかし、無機質なレンガ造りの外観とは対照的に、中には白を基調としたインテリアに赤いアクセントが際立つ近未来的な空間が広がる。同店のシェフ、フアン・アマドールはここで、伝統的なフランス料理に両親の故郷であるスペイン、そしてドイツ料理の要素を織り交ぜたアヴァンギャルドな料理の開発に勤しんでいる。1997年に一つ星を獲得し、2002年に2つ星、08年に三つ星シェフへと昇格したアマドールは、米国のグラント・アケッツや英 国のヘストン・ブルメンタールら世界屈指の料理人たちと評判を分ける実力派。あらゆる食材に関する膨大な量の科学的知識を有する彼が、最新の調理法を駆使して素材の価値を完全なものへと引き上げる。

Amador
Amador Amador
Amador Amador

Amador
19:00~オープンエンド 
日月休業
※予約推奨
Floßwörthstr. 38, 68199 Mannheim
Tel: 0621-8547496
www.restaurant-amador.de
ミシュラン.... ★★★
ゴー・ミヨ....18点

世界に名立たるスター料理人のお墨付き
Historisches Eck

「完璧な食事とは何か── それはゲストを幸せにすること」。このポリシーを胸に、同レストランのシェフ、アントン・シュマウスは日々厨房 に立っている。ホテリエを父に持ち、幼い頃から料理人になることを夢 見ていたバイエルン出身のシュマウスは、スイスとスウェーデンの星 付きレストランで急速に頭角を現し、米ニューヨークに乗り込んで、世界に名を馳せるスター料理人、トーマス・ケラーを感服させた。さらに、そのケラーが経営するフレンチの殿堂Per Seで腕に磨きを掛け、2009年、ついに念願叶って地元レーゲンスブルクで独自の店を構えた。ドナウ河畔の古都レーゲンスブルクの大聖堂至近に建つレストランは、アーチ型の天井が重厚感を醸し出す歴史的な建築。グルメ界の最新の流行を取り入れたフュージョン料理から、地中海料理、バイエルンの伝統料理まで、トップクラスのご馳走には、フレンドリーなスタッフたちの笑顔とシェフの愛情というスパイスがよく効いている。

Amador
Historisches Eck Historisches Eck
Historisches Eck Historisches Eck

Historisches Eck
12:00~14:00 / 18:00~01:00 
日月祝休業
※予約推奨
Watmarkt 6, 93047 Regensburg
Tel: 0941-46524734
www.historisches-eck.de


最終更新 Montag, 15 Juli 2019 16:15
 

パウル・クレー x 100 絵の物語

パウル・クレーX100 絵の物語

詩情豊かな作風で時代を超えて愛されている画家、パウル・クレー。デュッセルドルフのNRW州立美術館が100点目のクレー作品購入を記念して、9月29日からK21で全収蔵作品を一挙公開する。題して『パウル・クレー×100 絵の物語』。クレー作品の芸術的価値だけでなく創作プロセスもじっくり検証し、さらにはその社会的側面も紹介する斬新な展覧会だ。

2013年4月21日(日)まで延長!
会期:2012年9月29日(土)~2013年4月21日(日)

入場料:大人12ユーロ、割引9.50ユーロ、子ども2.50ユーロ
Kunstsammlung Nordrhein-Westfalen K21
Ständehaus Ständehausstrasse 1, 40217 Düsseldorf
Tel.: 0211-8381 204
http://www.kunstsammlung.de/

100 × Paul Klee : Geschichte der Bilderスイス生まれのパウル・クレーは、20世紀のドイツを代表する画家である。1911年にワシーリー・カンディンスキーと知り合い、表現主義のグループ『青騎士』に参加。20年代には造形学校バウハウスのマイスター、そしてデュッセルドルフ美術アカデミーの教授を歴任するが、ナチスの台頭後まもなく“退廃芸術家”とみなされて国を追われ、1940年にスイスで死去している。  

60年の生涯で遺した作品の数は約9000点。モザイク状のカラフルな幾何学的抽象画や、謎めいた表情を湛える魚や猫の絵、晩年のシンプルな天使のスケッチなどを、読者の皆さんもご存知ではないだろうか。作品のほとんどが小品なのに、クレーの絵は不思議と観る人を引き込んで放さない。作風こそ時代とともに変わったが、クレーの絵には常に静かな詩情とバランス感覚が通底している。キュビズムやシュールレアリズムなど、様々な美術の潮流が押し寄せては去っていった20世紀前半、クレーが結局はどの流派にも属さず独自の位置を確立できたのは、自然から学んで人間を相対化する、東洋的とも言える世界観が作品に反映されていたからだ。  

クレーは、「芸術家は人間であり、人間は自然界の一部で、宇宙の座標のようなもの」と説いた。自然を観察し、木の葉や苔などを集め、自然界に存在する「数」や「比率」を分析した。自然の法則は造形にも生かせるし、生かすべきだとクレーは考えたのだ。造形は恣意でなく必然。そう認識したクレーだから、作品も過剰さやアグレッシブさと無縁に控えめで、調和の感覚に満ちたものになった。「絵画とは目に見えるものを写し出すのではなく、見えないものを見えるようにすることだ」とも発言している。  

さて、展覧会ではクレーのこうした精神世界を改めて検証すると同時に、作品に使用されたマテリアルにも焦点を当てることで、その創造プロセスをより深く掘り下げる。クレーは伝統的な画材にこだわらず、様々な素材を投入してその芸術的効果を確認する堅気な職人でもあった。たとえば油彩、パステル、墨、チョークといった異なる画材はもちろん、カンバス表面に厚紙、絹、ジュートなど異色の素材を使って効果を試した。額縁もクレーにとっては作品の一部で、作品ごとに慎重にフレームを選んでいる。今回の展覧会では、有名な「ラクダ」(1920年)などの作品を、表だけでなく裏からも見えるように展示し、クレーの素材研究の軌跡を明らかにする。  

本展はまた、クレーを支援した画商やコレクターの存在もクローズアップする。たとえば州立美術館の100点にしても、もともとは1960年に州が米国のコレクターからクレー作品88点を一括購入したことが決定的であり、その裏には当時の州首相に働きかけたスイス人コレクター、エルンスト・バイエラーの存在があった。さらに、絵の裏側に記された貸出記録をもとに、過去半世紀の間にクレー展が催された各国の政治事情と当時の世相もドキュメントしている。クレーの作品世界だけでなく、クレーを起点に広がる現実世界を十分に満喫できる展覧会だ。

(NRW州立美術館非常勤スタッフ・田中聖香)

1. Paul Klee, Kamel (in rhythm. Baumlandschaft), 1920, 43, 48 x 42 cm Foto: © Kunstsammlung NRW 2. Paul Klee, omphalo-centrischer Vortrag, 1939, 690 (KK 10), 70 x 50,5 cm Foto: © Kunstsammlung NRW 3. Paul Klee, Schwarzer Fürst, 1927, 24 (L 4), 33 x 29 cm Foto: © Kunstsammlung NRW
4. Paul Klee, Kleinode, 1937, 214 (U 14), 57,6 x 76,5 x 2,1 cm Foto: © Kunstsammlung NRW 5. K21 Ständehaus(外観)Foto: © Helke Rodemeier, © Kunstsammlung NRW

* 読者の皆様を、9月28日(金)午後7時からのオープニングにご招待いたします。お誘い合わせの上、どうぞお越しください。また28日(18 時以降)、29~30日(全日)には会場前の公園Ständehausparkで「光の祝祭」が開催されます。オープンエアコンサート、美しいイルミネーション、ロマンチックなボートツアーなどの催しがあります。9月28~30日までの3日間は、展覧会、「光の祝祭」ともに入場は無料です。

* 展覧会会場は、クレー作品を常設しているK20でなく、K21です。ご注意ください。

* 日本語によるガイドツアーは10月28日(日)、11月11日(日)、12月9日(日)の11:30~12:30に予定されています。

お申し込み、お問い合わせは田中まで。
Tel: 0160-944 64 170,
E-Mail: このメールアドレスは、スパムロボットから保護されています。アドレスを確認するにはJavaScriptを有効にしてください

最終更新 Montag, 15 Juli 2019 14:27
 

坂本龍一インタビュー:ドイツは、音楽的には「我が故郷」

坂本龍一インタビュー ドイツは、音楽的には「我が故郷」

「世界のサカモト」が、ひたむきに鍵盤を叩く姿、そこから奏でられる音色に、これまでどれほどの人が心揺り動かされてきただろう。卓越した音楽的才能と並々ならぬ量の知識に裏付けされた確かな音は、聴く者の感性を刺激して止まない。その音楽が、今年もまもなく欧州に響き渡る。ドイツ人ミュージシャン、アルヴァ・ノト氏とのデュオ・ツアー を目前に控えた坂本龍一氏に、自身とドイツとの音楽的関わり、今回のツアーに懸ける想い、そして積極的に展開している社会問題への取り組みについてうかがった。

坂本龍一インタビュー:ドイツは、音楽的には「我が故郷」
さかもと りゅういち
1952年1月17日東京都生まれ。東京藝術大学大学院音響研究科修士課程修了。1978年に「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」に参加し、一躍注目を集める。映画『ラストエンペラー』(1987年)で、日本人初の米アカデミー・オリジナル作曲賞を受賞。その他の代表曲に映画『戦場のメリークリスマス』(1983年)のテーマ曲「メリー・クリスマス・ミスター・ローレンス」やテレビCMに起用された「エナジー・フロー」など。環境・平和問題に関する社会活動にも積極的に参加している。米ニューヨーク在住。

これまでに何度か欧州ツアーを実施されていますが、音楽の歴史という意味において懐が深く、聴衆の耳も肥えた当地で本場の音楽に触れ、自ら演奏することにより、何を得られたとお考えですか。

もう10年以上も前のことですが、ベルリンで公演中、私の好きなブラームスの間奏曲に影響されて作った曲を弾いている最中に、突然ある想いが脳に飛び込んできて、その場は最後まで弾ききりましたが、「ゲシュタルト崩壊」を経験したことがあります。  

なぜなら、極東に生まれた私が19世紀のドイツ音楽を真似したものを、当のドイツの聴衆の前で弾いていることで、自分のアイデンティティーとは何か、どこにあるのか、自分が作るべき音楽とは何かが、宙に放り出されたように分からなくなったからです。しかし、それは良い経験でした。それ以来、自分が作るべき音楽、自分にしかできない音楽を、それ以前より真剣に考えるようになったのです。

今回の欧州ツアーは、ケムニッツ出身のミュージシャン、アルヴァ・ノト(本名:カルステン・ニコライ)氏と共に行われますね。彼との出会いや、一緒にコンサートを開催するに至った経緯を教えてください。

坂本龍一&アルヴァ・ノト
右がアルヴァ・ノト

カルステン・ニコライとは1990年代の後半、彼が日本でコンサートをした時に友人の紹介で出会い、すぐに彼の音楽やアートに興味を持ちました。2001年にブラジル音楽の巨匠アントニオ・カルロス・ジョビンのカバーアルバムを作った際に、彼にリミックスを頼んだのが初めての仕事です。ドイツの音響派とブラジル音楽という組み合わせ!突拍子もないアイデアですが、私は彼ならきっといいものを作ってくれるに違いないと確信していました。そして予想通り、彼は素晴らしいリミックスを仕上げてくれました。

それ以来、ピアノの即興をしては彼に送り、自由に"料理"してもらうようになったのです。この10年で彼とは5枚のアルバムを作り、何度も欧州をツアーしました。今回の「S」ツアーは、これまでの10年にわたる彼と私とのコラボレーションの集大成となるツアーです。

近年はユーストリームでの生中継など、インターネットの動画技術を駆使したコンサートが話題を呼んでいますが、今回のツアーでも新たな試みを予定していますか。

今回のツアーでは特にネットの新しい使い方は試しませんが、音楽とビジュアルの新しい関係を見ることができると思います。これはやはりライブで経験していただくのが一番良いですね。ネット上でその臨場感を再現するのは、なかなか難しいと思います。

これまで足を踏み入れられた数多の国の中でも、特にドイツの国柄や人、音楽について、どのような印象をお持ちですか?また、今回のツアー開催地の1つとなるデュッセルドルフに対する特別な想いはありますか。

以前に数年間、ベルリンでアパートを借りていたことがあるくらい、私はドイツが好きです。幼少時からバッハやモーツァルト、ベートーベン、ブラームスなど、ゲルマン語圏の音楽に親しんで育ったので、音楽的には「我が故郷」という感じがしていますね。古く落ち着いた街並み、石畳、コンサートホール、あるいは美しい森や川、高原など、好きな所はたくさんあります。近年では、ドイツ国民のエコ意識の高さには、先進的なエネルギー政策にも大きなリスペクトを持っています。もちろん、ベルリンフィルをはじめ、たくさんの素晴らしいオーケストラ、そして映画祭や音楽祭のレベルの高さにも、いつも感心させられます。  

特にデュッセルドルフは、私がいわば兄貴分として、またテクノ音楽の文字通りの先駆者として敬愛するクラフトワークを輩出した都市です。彼らは今もこの地をベースに、世界中で活躍しています。今年7月に私たちが開催した「no nukes 2012」という音楽フェスティバルにも積極的に参加してくれました。彼らは福島の原発事故のことで大いに心を痛めており、日本の原子力政策に強い関心をもって見守ってくれています。

坂本さんは音楽活動の傍ら社会活動にも積極的に参加されていますが、その中でも現在、原発問題は特に主要な地位を占めていると思います。日本では、政府の原子力政策に反対する大規模デモが連日のように行われている一方で、東日本大震災から時は移り、ここドイツで日本の原発をめぐる状況に焦点が当てられる機会は、はるかに減りました。時間とともに社会の温度差が広がっていくような現状を前に、今すべきことは何だと思われますか。

情報や関心が時とともに薄れていくのは仕方がないと思いますが、私個人はずっと福島に寄り添っていきたいと思っています。福島からはいまだに16万人が避難していますし、その中には、おそらく今後何十年と故郷に帰ることができない方もいます。私たちの日本の国土に、人の住めない所ができてしまったのです。その責任を、政治家や官僚、当事者たちはどのくらい深刻に考えているのでしょうか。チェルノブイリの原発事故と並ぶ人類史上最悪の事故を起こしておきながら、誰も処罰されず、責任も取らないなどという理不尽があって良いのでしょうか。  

福島や関東には、子どもを抱え、いまだに避難したくてもできない家族がたくさんいます。避難しようにも雇用がないからです。かつての軍国主義政府でさえ、子どもたちを疎開させていました。今の政府は、コストが掛かり過ぎるという理由で多くの国民を被ばくさせ続けています。このことは、世界の多くの人々に伝える必要があると思います。

音楽の分野でも、社会活動においても、今後のさらなるご活躍がとても楽しみです。長期的な視野で見て、坂本さんが「こうありたい」と思う作曲家・音楽家像を教えてください。

やりたいプロジェクトなどは、いくつか頭の中にありますが、一番大事なことは自分に嘘をつかず、自分の心の声を真摯に聴くことだと思っています。世の中は喧噪にまみれていますので、ノイズが多く、自分の心の声を聴くには、まず心を鎮めて静かに保つことが必要です。とはいえ、それがなかなか難しいのですが。

コンサート情報

坂本龍一&アルヴァ・ノト 「S」ツアー 
デュッセルドルフ公演

alva noto + ryuichi sakamoto "s" tour 2012 @New Fall Festival
10月4日(木)20:00
31.90ユーロ
New Fall FestivalTonhalle
Ehrenhof 1, 40479 Düsseldorf
Tel: 01805-669029
http://new-fall-festival.de

*イタリア、ドイツ、スウェーデンを巡るツアーの日程は、
www.sitesakamoto.com/tour 参照。

最終更新 Montag, 15 Juli 2019 14:48
 

ドイツの秋の夜にお勧めの本

ドイツ関連お勧めの本

最近、本を読んでいますか?日に日に夜が長くなるこの季節、じっくりとページをめくる喜びを思い出してみましょう。1冊の本との出会いから、ドイツ生活が楽しく、そしてこの国がもっと好きになるきっかけを得られるかも。ドイツで読むとさらに味わい深い本を、厳選してご紹介します。(編集部:高橋 萌)

日本人にお勧めの本は?

対談:Mayersche × ドイツニュースダイジェスト

読書の秋を迎えるにあたり、まずは本のスペシャリストである書店員さんに、お勧めの本について聞いてきました。

こんにちは!デュッセルドルフのショッピングエリアの中心地、ケーニヒスアーレーのすぐ側にある書店Mayerscheにやって来ました。この立地、そして品揃えの多さから日本人客も多いようですね。
当店ではドイツ語の書籍のほか、英語、仏語、伊語などの書籍も充実していますし、客層は国際色豊か。日本人のお客様も大勢いらっしゃいますよ。
早速ですが、日本人にお勧めしたいドイツの本をいくつか挙げていただけますか?
まずは、A.シュロプスドルフの「Du bist nicht so wie andre Mütter(あなたはほかのママとは違う)」。これは、ユダヤ人であるシュロプスドルフの母親の伝記を娘の視点から書いたフィクション。ナチス政権誕生の前後で大きく揺れ動いた母親との日々が綴られていて、私たちドイツ人に大きな驚きと共感を与えた1冊です。

H.J.オルタイルの小説「Die große Liebe(大きな愛)」では、美しいドイツ語表現を堪能できます。

現代ドイツ社会の闇に迫るなら、新進気鋭の女流作家A.ペーントの作品が読みやすいでしょう。老人ホームの閉塞感を描く「Haus der Schildkröten(亀の家)」や「Mobbing(いじめ)」など、小説という形で社会問題を鮮明に浮き彫りにします。

ドイツを深く知る手助けとなる本をご紹介いただき、ありがとうございます。御店で日本人に人気のある本はありますか?
分野としては、ユーモアエッセイが人気です。例えば、「Darum nerven Japaner(日本では「イケてない日本―日本人のホントのところ」として出版)」。日本人に対する皮肉満載なのに、なぜか日本人のお客さんが買っていきます。ドイツ人より、日本人の購入者の方が断然多いくらい。不思議だわ。

日本のマンガで、ドイツ語に訳されたものも人気です。あとは、贈り物用の本「365 tage(365日)」シリーズやポストカードも。
イラストや写真が多くて、テキストが少ない、見ているだけで楽しくなるような本が人気なのですね。言葉の壁は越えがたいという人にお勧めの本はありますか?
子ども向けの本はどうでしょう? 日本でもきっと知られている「Pipi Langschtrumpf(長靴下のピッピ)」、M.エンデの「Jim Knopf(ジム・ボタン)」、大人になっても心に響く児童文学として、O.プロイスラーの「Die Kleine Hexe(小さい魔女)」や、「Der kleine Wassermann(小さい水の精)」E.ケストナーの「Emil und die Detektive(エーミールと探偵たち」」もお勧めです。
最後に、ドイツ人に人気の日本の作家を上げるとしたら?
村上春樹ですね。彼の人気の高さは圧倒的で、25~50歳という幅広い年齢層のファンを獲得しています。私も「Gefährliche Geliebte(国境の南、太陽の西)」を読んで感動しました。
Mayersche Droste今回、ご協力いただいたのは
Mayersche DrosteのRegine Danscherさん


Königsallee 18, 40212 Düsseldorf
TEL: 0211-542 56 900
www.mayersche.de

ドイツ関連お勧めの本

ドイツニュースダイジェストの 
 ライター&編集者が本気で選んだお勧めの本

「ベルリン発掘の散歩術」中村真人さん

Saitensprünge: Erinnerungen eines leidenschaftlichen Kosmopoliten:
Erinnerungen eines Kosmopoliten wider Willen
Hellmut Stern(著)
出版社:Aufbau Taschenbuch(2000)

日独の音楽家による自伝から選んでみた。1冊目は、かつてベルリン・フィルの第1ヴァイオリン奏者として活躍したヘルムート・シュテルン氏による作品。ベルリンのユダヤ人家庭に生まれ、1938年の「水晶の夜」事件を機に、一家で亡命を決意。上海、果ては満州にまで至る。次々と押し寄せる苦難にもかかわらず、ある種の楽天性を失わずに生き抜いた彼らのエネルギーに圧倒される。『ベルリンへの長い旅』(朝日新聞社、1999)というタイトルで邦訳も出ているが、平易なドイツ語で書かれた原書もお勧めだ。

私のオペラ人生―ドイツオペラ界のまんなかで
柏木博子(著) 出版社:朝日出版社(2010)

筆者は福岡県出身で、東京藝大大学院を卒業後、渡独。1970年にラインオペラでドイツ初舞台を踏んだ後、20年以上にわたって数多くの歌劇場で活躍したソプラノ歌手である。東洋からやって来た女性歌手が、ドイツのオペラ界の中心で仕事を続けることがどれだけ大変であるかは想像に難くない。だが、そんな苦労も喜びも、率直かつ瑞々しい言葉で綴られており、読後は爽やかな気持ちが残った。特にドイツで日々奮闘している人にとっては、何かしらの勇気が得られる本ではないだろうか。
私のオペラ人生―ドイツオペラ界のまんなかで

Masato Nakamura
神奈川県横須賀市出身。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。現在はフリーのライター。著書に『素顔のベルリン』(ダイヤモンド社)、『街歩きのドイツ語』(三修社)がある。

「ドレスデンの地域レポーター」福田陽子さん

ドイツ人の家屋 坂井洲二(著)
出版社:法制大学出版局(1998)

どうしてドイツの木造家屋は5、6階の高層なのか? なぜ日本の住宅の壁はドイツのそれと比較して薄いのか? ドイツを旅行した人ならば、ふと疑問に思うドイツと日本の家屋の違いを、ドイツ民俗学を専門とする著者が、政策や社会的背景や人々の暮らしや建設技術といった視点から、豊富な事例を用いて解き明かします。おとぎ話に出てきそうな木組みの家や豊かな森林など、ドイツならではの風景の裏と内側を深く知ることができます。

Yoko Fukuda
横浜出身。2005年よりドレスデン在住。専門はヨーロッパの住居史、現在は建築ジャーナリスト。著書に『20世紀建築研究』(INAX出版、1998、共著)、建築雑誌『A+U』2011年11月号「パッラーディオ特集(ゲストエディター)」などがある。

「ベルリンの特集やニュースの翻訳」見市知さん

わたしが子どもだったころ (ケストナー少年文学全集(7))
エーリッヒ・ケストナー(著), 高橋健二(翻訳)
出版社:岩波書店(改版、1962)

戦前のドレスデンに生まれ育った児童文学者のエーリッヒ・ケストナーが、自分の子ども時代の思い出を綴った作品です。その思い出を彩る美しかったドレスデンの街並み、おやつに食べた、レバーソーセージとブタのあぶらをぬったパン……。子どもの視点から見た、20世紀初頭の庶民の慎ましい暮らしぶりを覗き見ることができます。

ブッデンブローク家の人びと (上・中・下)
トーマス・マン(著), 望月市恵(翻訳)
出版社:岩波書店(1969)

ノーベル文学賞作家のトーマス・マンが自分の出自をモデルにした年代記小説。19~20世紀初頭にかけての富裕な市民階級の暮らしぶりが描かれています。歴史的背景や当時の社会の仕組みなども織り交ぜながら、市民生活を通してドイツとドイツ人気質が垣間見られる1冊。日本語の翻訳版とドイツ語のオリジナルを並行して読むと、ドイツ語学習にもなるので二重におすすめです!

Tomo Miichi
ライター。ベルリン在住。著書に『ベルリン 東ドイツをたどる旅』(産業編集センター)がある。2012年9月28日には、『ドイツ クリスマスマーケットめぐり』(同社)が刊行予定!

「ドイツ子育て&教育相談(イラスト)」 清水麻紀さん

Wir können ja Freunde bleiben Mawil(著)
出版社:Reprodukt(第3刷、2005)

ドイツ・コミック界のプリンスを自称するマービルのデビュー作。下火なドイツのコミック・シーンを熱くした、その火付け役である彼の作品は、ベルリンっ子の日常の笑いと涙を描き出し、一度読むとファンにならずにはいられない。現在、5カ国語以上に翻訳されているベストセラー。

Dieses Buch sollte mir gestatten den Konflikt in Nah-Ost zu lösen, mein Diplom zu kriegen und eine Frau zu finden: Teil 1
Sylvain Masas(著)
出版社:Förderverein Jugendkunst(2007)

なんとも長くてインパクトのあるタイトルと、手書きのテキストにイラスト図解入りというこの本は、ベルリン中の書店で入荷後すぐに完売してしまうほどの人気。バルト海沿岸のシュトラールズンドという小さな港町の工房で、1冊1冊すべて手作業で製本が行われていることでも話題をさらっている。フランス人作家ならではのユーモアと哲学で綴られた幸福論。本当にお勧めの1冊!

Maki Shimizu
ベルリン在住の芸術家・イラストレーター。ドイツでは作品集「Makis Haustierbuch」(Peperoni Book, 2006)などを出版。ドローイングを主体とした制作を展開し、イラストレーション、コミック、版画など様々な分野で活動中。http://makishimizu.de

「独断時評」 熊谷徹さん

Europa braucht den Euro nicht
Thilo Sarrazin(著)
出版社:Deutsche Verlags-Anstalt(2012)

ティロ・ザラツィンは、ドイツ連邦銀行の理事やベルリンの財政を担当した元財務官僚。トルコ人などの外国人を批判したベストセラー「Deutschland schafft sich ab」で、一躍有名になった。今度は、メルケル首相をはじめとするEU諸国のユーロ救済策を、ばっさり斬り捨てる。ザラツィンによると、政治同盟なしに誕生したユーロは、初めから構造的な欠陥を抱えていた。南欧諸国が要求するユーロ共同債などの対策は、ユーロ圏加盟国の債務を他国が肩代わりしてはならないという、リスボン条約の「救済禁止条項」に違反し、通貨同盟を「債務同盟」に変質させると主張。「ユーロが崩壊したら欧州が崩壊する」というメルケル首相のテーゼに真っ向から反対し、「ユーロ圏の規則を守ることができない国は、脱退するべきだ」と突き放している。なぜドイツの経済学者や財界が、ギリシャへの追加支援や、欧州中央銀行によるスペイン、イタリアの国債の買い取りについて否定的なのかを理解するには、絶好の書である。

Toru Kumagai
1959年東京生まれ、早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。神戸放送局、報道局国際部、ワシントン特派員を経て、1990年からフリージャーナリストとしてドイツ在住。主な著書に『ドイツ病に学べ』『ドイツは過去とどう向き合ってきたか』『観光コースでないベルリン―ヨーロッパ現代史の十字路』『あっぱれ技術大国ドイツ』『なぜメルケルは「転向」したのか―ドイツ原子力四〇年戦争』ほか多数。

「ドイツ子育て&教育相談所」 内田博美さん

Happy Aua. Ein Bilderbuch aus dem Irrgarten der deutschen Sprache
Bastian Sick(著)
出版社:Kiepenheuer & Witsch Verlag(第13刷、2007)

ドイツの街中をよ~く見ながら歩いてみると、実は間違えだらけのドイツ語表記に気付くはず!? これは“本”というより写真集に近い。スーパーの値札や店の看板などの写真は見慣れた日常的な光景。しかしよく読むとドイツ語が正しくない。単純な印刷ミスや誤字だろうが、そうやって起こる文字の乱れがときどきドイツ語表現の豊かさともなる。筆者のジョークを込めたコメントがさらに笑いを誘う。大爆笑しながらもしっかりとドイツ語が学べる優れモノです。

Oups vom Planet des Herzen
Kurt Hörtenhuber(著), Conny Wolf(著)
出版社:Oups(2002)

どこかでOupsが「サン=テグジュペリの続編のようだ」と書いてあるのを読みましたが、まさにドイツ版『星の王子さま』。遠い星に住んでいる主人公Oupsが宇宙から地球を見ると、そこで人間たちが不幸な顔をして生きているのを見て心を痛める。そこでOupsは、はるばる地球にやって来て、本当の幸せ、愛、友情の大切さを語る。このOupsシリーズはすでに10冊以上も刊行中。愛らしいイラストで宝物になるような絵本です。

Glücksregeln für die Liebe
Pierre Franckh(著)
出版社:Koha Verlag(第5刷、2004)

両親の離婚、ワンナイトラブ……満たされない筆者が“本物”のパートナーと出会い、充実した愛の生活を持続させる秘訣を綴る自叙伝。自分の過去と向き合うこと、自分を信じること、愛は自己成長と共にあるという筆者の語りは、なぜか心にやさしく響いてきます。本来、恋愛は若い人たちだけのものではない。ドイツではシニアだって堂々と恋愛をするお国柄。恋愛こそが究極の健康法かも! 魂が求め合う相手を見付けたいあなたにお勧めです。

Hiromi Uchida
東京都出身。国立音楽大学卒業後、横浜国立大学大学院で教育学を学ぶ。2000年に渡独。ミュンスター大学で音楽療法士の資格取得。現在、教育関連の仕事と思春期の子育てに奮闘中。

「ビール小話」 コウゴアヤコさん

Biere der Welt
Michael Jackson(著)
出版社:Dorling Kindersley(2008)

世界中のビールと醸造所、ビール文化を紹介したビールのガイドブック。もちろんドイツには多くのページが使われています。写真が多いので、眺めているだけでも「ビアライゼ(ビールの旅)」をしているような幸せ気分に。著者はビール評論界の第一人者マイケル・ジャクソン氏。ミュージシャンのマイケルが「King of Pop」(ポップの王様)と呼ばれるのに対し、こちらは「King of Hop」(ホップの王様)と呼ばれています。

ach so - Gebrauchsanweisung für Deutschland
邦題:「あっ、そう」ドイツ・暮らしの説明書
Mieko Fisch(著)
出版社:ach so Verlag(2004)

どんなにしっかりと事前準備をしていても、実際に海外で生活するとわからないことが多く、ストレスがかかるもの。ドイツの生活習慣、法律、書類の書き方、医学用語、住居の探し方、友達を作るためのアドバイスなど、膨大な情報が詰まっています。頭を抱えるしかなかった「ワカラナイ」を「あっ、そう」と合点させてくれることでしょう。ドイツ生活者、必携!
フィッシュ三枝子著:「あっ、そう」ドイツ・暮らしの説明書

モモ
―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語
ミヒャエル・エンデ(著 イラスト)
大島 かおり(翻訳)
出版社:岩波書店(1976)

灰色の男たちに時間を盗まれ、せっかちに働く人々。時間に追われて、大切な家族や友だち、1つひとつの出来事に心を寄せられなくなった街の人たちの姿は、まるで自分を見ているようで背筋がぞっとします。「人の話を黙って聞く」ことに優れた少女モモは、灰色の男たちから友だちを取り戻すとこができるのでしょうか? 時間に支配されないマイペースなドイツ人の根底にあるものを発見できます。

ドイツビール おいしさの原点
木村麻紀(著)
出版社:学芸出版社(2006)

ドイツでは街ごとに特徴のある地ビールが造られています。添加物を許さず、伝統の味を守るビール純粋令、水や原料の品質を守る有機農法、リサイクルよりもリユースを基本とした容器、そして輸送による環境への負担を軽くする地産地消、地域循環のハーモニーが、美味しいドイツビールを生み出しています。ビール造りの現場からドイツの環境保全について学び、これからの日本のコミュニティー・ビジネスについてのヒントを探ります。
ドイツビール おいしさの原点

シッダールタ
ヘルマン・ヘッセ(著), 高橋 健二(翻訳)
出版社:新潮社(改版、1971)

釈迦の伝記ではなく、古代インドのバラモン階級に生まれたシッダールタの物語です。シッダールタは家を捨てて苦行を積むが、対極の俗世で成功し、執着に囚われる。やがてそれをも捨て、物事をありのままに観て受け入れること、つまり愛することによって、心の平安を得るに至る。悟りに至るまでの心の道のりが、ヘッセならではの、詩のように美しい文章で描かれています。西洋の賢人から見た東洋思想の再構築。心が疲れたときにどうぞ。
シッダールタ (新潮文庫)

Ayako Kogo
日本地ビール協会ビアテイスター。看護師の傍ら世界中を飛び回り、ビールを通して町の歴史や風習を観察している。ブログでおいしい情報を発信中。
『ビアテイスターの世界ぐるっとビール旅』: http://gogorinreise.blog34.fc2.com

「あき子さんのうまうまRezepte」 舞楽あき子さん

ドイツ婦人の家庭学
八木あき子(著)
出版社:新潮社(2001)

「虫刺されには玉ねぎ」「銀器の手入れにはアルミ箔」など、長年ドイツに暮した筆者が、生活の中で、あるいは老人ホームでの取材を通して会得した生活の知恵456編が収められている。初版は30年前なので、埋もれてしまった内容もあるが、それでも古ぼけないのは、合理性に裏打ちされた「Gemütlichkeit(居心地の良さ)」というドイツ女性の哲学をきっちり押さえているからであろう。掃除、節約、接客、美容など多岐に渡り、日々の暮らしに役立つだけでなく、ドイツ的な考え方を知るのにも良い。

Akiko Buraku
中学時代をドイツで過ごし、結婚後、2000年より再びドイツ生活。補習校講師等をする傍ら「食」に関する寄稿を行っている。

編集部(Y)

Fettnäpchenführer Japan: Die Axt im Chrysanthemenwald
Kerstin Fels, Andreas Fels(著)
出版社:Conbook Verlag(第6刷、2010)

シュニッツェルとポメスが大好き、マヨルカ島とスイス、ロンドン、ニューヨークに行ったことがあるだけで「世界を見た」と豪語している北ドイツ人のホフマンさん(48)。その彼が突然、日本出張を命じられ……。ご飯に箸を立てるわ、人前で大きな音を立てて鼻をかむわ、これでもかと言うほどの赤っ恥をかきながら、ドイツ人が日本の文化・慣習を学んでいくシチュコメタッチの旅行ガイドブック。何がマナー違反なのか、どこがどう恥ずかしいのかを徹底的に掘り下げる解説を読んでいると、思わず「日本人って変なのかも!」と苦笑いしてしまうのだ。

編集部(高)

夜と霧 新版
ヴィクトール・E・フランクル(著), 池田香代子(翻訳)
出版社:みすず書房(2002)

8月に突然、新書でもないのにアマゾンランキングの1位に鎮座。いったいどういうことかと思えば、NHKの「100分de名著」という番組で取り上げられたことが理由らしい。アウシュヴィッツをはじめとした強制収容所での体験を経て、著者であるオーストリア人精神科医が見た人間の本質とは……。「… trotzdem Ja zum Leben sagen(それでも人生にイエスと言う)」というドイツ版のタイトルの意味が重く、そして温かく心に沁み入る本書。悲惨な体験の中から希望を見出したこの1冊が、現代を生きる日本人にも活力を与える。

「ニュースを追跡」藤田さおりさん

住まなきゃわからないドイツ
熊谷徹(著)
出版社:新潮社(1997)

ドイツの日常で起きる事柄が、数ページごとにイラスト付きでまとめられていて、エッセイ感覚で読めて非常に面白い。初めて読んだのは日本に居た時で「ドイツってこんな国なんだ」というぐらいの実感しかなかったが、ドイツに住み始めてから改めて読み直してみると、ドイツという国とドイツ人の特徴がよくまとめられていて、熊谷先生の観察眼の鋭さに驚かされる。楽しく読めて、ドイツのことがよくわかる、お勧めの1冊!

ドイツ人のこころ
高橋義人(著)
出版社:岩波書店(1993)

ドイツ人に顕著に見られる心性としてのメランコリーから、ゲーテのような「良きドイツ人」、ヒトラーのような「悪しきドイツ人」が生まれると著者は考える。日本人の心を表す「富士山、桜、中国文化、正月、海」と対比し、ドイツ人の「ライン川・ローレライ、菩提樹、南国イタリア、クリスマス、森」を通して、「ドイツ的なものとは何か」について考察する。日本人とドイツ人の心性の比較が分かりやすく、読みやすい。
ドイツ人のこころ (岩波新書)

Saori Fujita
法政大学経営学部経営学科卒業。ニュルンベルク在住。スイスの日本人向け会報誌にて、PCコラムを執筆中。日本とドイツの文化の橋渡し役を夢見て邁進中。

「シュトゥットガルトの地域レポーター」 郭映南さん

超訳 ニーチェの言葉
白取春彦(編訳)
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン(2010)

「己、喜、生、心、友、世、人、愛、知、美」の十章をかけて、短い詩的な言葉で人生のエッセンスが綴られています。難しい学術書ではなく、誰でも経験する当たり前の事柄に潜む哲学。今までのニーチェの著書の中からテーマに沿って抜粋された文章を原作の意を汲んだ鋭い翻訳で、繊細な美しい言葉で彼の哲学を紹介していきます。1ページ1つのストーリーで、ランダムに開いてみても、そこから学べる何かに出会うことができます。

Einan Kaku
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。写真ブログ「その時ひとコマ」http://wasistlos.exblog.jp

最終更新 Sonntag, 16 September 2012 17:01
 

オクトーバーフェスト2012

世界最大のビール祭り オクトーバーフェスト

オクトーバーフェストバイエルン州の州都ミュンヘンで9月22日、毎年恒例のオクトーバーフェストがいよいよ開幕する。東京ドーム約9個分に相当する広大な会場、テレージエンヴィーゼ(Theresienwiese)に世界中から600万人以上のビールファンがこぞって集まり、ジョッキを片手にあちらこちらで飲めや歌えの大騒ぎ。今回は、ドイツが誇るこの一大イベントを満喫するために抑えておくべきポイントをランキング形式でご紹介しよう。これを読めば、あなたもオクトーバーフェスト通になれるはず!(編集部:浅井 久美子)

見どころ&楽しみどころランキング!

1ミュンヘンの地ビール

地ビール会場内にある14カ所の大テントでは、ミュンヘン市内の6つの醸造所でこのビール祭りのためだけに造られたビールを堪能できる。中でも特にお勧めなのが、高い人気を誇るアウグスティーナー(Augustiner)や、「バイエルン国王のためのビール」として醸造されたという由来を持つホーフブロイ(Hofbräu)、毎年オクトーバーフェストの開会宣言が行われるテント、ショッテンハーメル(Schottenhamel)で飲めるシュパーテン・フランチスカーナー(Spaten-Franziskaner)。その他のビールも、ぜひ試してみて!

2祭りを華やかに彩るパレード

ビール樽を積んだ地元の醸造所の馬車初日を飾るのは、ゾンネン通り(Sonnenstraße)を出発点にビール樽を積んだ地元の醸造所の馬車や鼓笛隊などが連なる約1時間のパレード(9月22日11:00頃)。そしてハイライトは、1835年に開かれたバイエルン王ルートヴィヒ1世と妻テレーゼの銀婚式の祝いを起源とする2日目のパレード(9月23日10:00頃)。マキシミリアン通り(Maximillianstraße)からオクトーバーフェスト会場までを、華麗な民族衣装に身を包んだ大勢の人々と40以上の豪勢な山車、鼓笛隊が、約2時間掛けて練り歩く。

3場を盛り上げるライブ音楽

ミュンヒナー・ツヴィートラハト大テントの1つ、ブロイローズル(Bräurosl)のテントには、民族音楽を代表する5人組のバンド、ズードティロラー・シュピッツブアム(Südtiroler Spitzbuam)が登場。ユニークなデザインのテントが目を引くヒッポドローム(Hippodrom)では、オクトーバーフェストでお馴染みのバンド、ミュンヒナー・ツヴィートラハト(Münchner Zwietracht、右写真)らが伝統的な音楽でテント内を賑やかに演出する。9月30日11:00頃からは、女神バヴァリア像の下で複数のバンドによる盛大な民族音楽のコンサートが開かれる。

4ビールと共にいただく伝統料理

ヴァイスヴルストオクトーバーフェストを訪れる最大の目的は、もちろんビールを飲むこと。しかし、飲んでいるだけではお腹が空くし、せっかくミュンヘンに来たのなら、バイエルンならではの料理もビールと共に味わいたい。各テントは、当地特産の白ソーセージ(ヴァイスヴルスト、Weißwurst)や、ボリューム満点の豚のすね肉(シュヴァインスハクセ、Schweinshaxe)、そしてオクトーバーフェストには欠かせない名物料理である鶏の丸焼き(ヘンドル、Hendl)など、こてこてのバイエルン料理をたっぷり堪能できる食の宝庫だ。

5大はしゃぎできる乗り物・アトラクション

アトラクション老若男女がとことん楽しめるプログラムとして、オクトーバーフェストには遊園地の乗り物・アトラクションも欠かせない。祭り会場を一望できる大観覧車(Riesenrad)や、50年以上オクトーバーフェストで愛され続けているミュンヘン・ツークシュピッツ鉄道(Münchner Zugspitzbahn)のほか、8月に開催されたロンドン五輪の余韻に浸れそうなジェットコースター、その名も「オリンピア・ルーピング(Olympia Looping)」などの絶叫マシーンも充実。ただし、ビールで酔った勢いで乗り物に向かうことは避けて!

ミュンヘンっ子に混じって楽しもう!

オクトーバーフェストの真髄を味わいたいなら、 「通」になりきってみるのが一番。
そのために、何をすれば良いかと言うと……?

民族衣装民族衣装を着てみる

バイエルン州に古くから伝わる民族衣装が、お祭り気分をぐっと盛り上げてくれる。女性は、ドイツ南部の方言で“お嬢さん”を意味する、エプロンが印象的な衣装ディアンドル(Dirndl)、男性は伝統的な革製半ズボンのレーダーホーゼン(Lederhosen)や帽子を着用して!

公式ショップ
http://shop.oktoberfest.de
ミュンヘン市内の民族衣装取扱店
www.muenchen.de/shopping/trachten/muenchen.html

皆と一緒に乾杯の歌を歌ってみる

テント内の雰囲気を盛り上げるバンドたちが、日に何度も演奏するのが乾杯の歌「アイン プロージット(Ein Prosit)」。見知らぬ人同士でも、ジョッキ片手に肩を抱き合い、思わず陽気に大声で歌ってしまう。とても簡単な歌なので、これを覚えて会場の皆と一緒に弾けよう!

「乾杯の歌」歌詞

Ein Prosit, ein Prosit,
der Gemütlichkeit
Ein Prosit, ein Prosit,
der Gemütlichkeit
Eins zwei drei g‘suffa!
Prost!

(和訳)

さあ乾杯だ さあ乾杯だ
この心地良いひと時に
さあ乾杯だ さあ乾杯だ
この心地良いひと時に
1、2、3 それ、飲み干せ!
乾杯!

会期 2012年9月22日(土)~10月7日(日)
入場料 無料
テントの
営業時間
平日10:00~23:30 土日祝9:00~23:30
※Käfer's Wies'n-Schänkeと Weinzeltは深夜1:00まで営業
会場 Theresienwiese, 80336 München
テントの
予約
オクトーバーフェストのホームページ www.oktoberfest.de の“Zelte”から、希望のテントを探して問い合わせを。
公共交通
機関での
アクセス
● S-Bahn: S1/S8でHackerbrücke下車。
S7/S20/S27でHeimeranplatzまで行き、U4/U5に乗り換えてTheresienwiese
● またはSchwanthalerhöheで下車。U-Bahn: U3/U6でGoetheplatz
● またはPoccistraße下車。U4/U5でTheresienwiese
● またはSchwanthalerhöheで下車。


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最終更新 Dienstag, 16 Juli 2019 16:09
 

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