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Tue, 16 December 2025

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ロンドン・パブリック・アート散策

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ロンドン・パブリック・アート散策

世界有数の物価高を誇る一方で、入場無料の美術館やギャラリーが多い街、ロンドン。アートが市民の日常生活の一部となっているこの街で、最も親しみやすいアートと言えば、パブリック・アート、すなわち、誰もが集う公共空間に設置されている芸術作品ではないだろうか。日光が燦燦と降り注ぐ、散歩日和な今日この頃。ぶらり街を散策しながら、太陽の下輝くアートを堪能してみては!?
(本紙編集部: 村上祥子)

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パブリック・アートってなに?

パブリック・アートとは、美術館やギャラリーに展示されるのではなく、公共の空間に置かれるアート作品のこと。銅像や記念碑はもちろんのこと、公園内に設置される噴水やインスタレーション、パフォーミング・アートに至るまで、公共のスペースで展開されるありとあらゆるアート形態がこれに当てはまる。

誰もが気軽に鑑賞することのできるスペースに作品を置くことで、アートを人々の日常生活に近しい存在とする、公園や道路、企業スペースの美的景観を演出し、都市全体のイメージ向上を図る、などの目的を持つパブリック・アートは、自治体や企業との結び付きも強い。フランスや米国など、公共の新築建造物の建設予算から一定金額をアートに割り当てる「パーセント・プログラム」を実施している国もある。

落書きとバンクシー
(左写真)テムズ河沿い、スケーターたちの溜まり場となっている一角の落書き。これもアート!?(右写真)「落書き」も立派なアート。グラフィティ・アーティスト、バンクシーの作品は、時に何千万円もの値が付く

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Jubilee Fountain(2005)
Zemran(1972)
Aquabar(2003)
William Pye

「もう一つの自然界をつくり出すアーティスト」。ウィリアム・パイを一言で表わすならば、こうなるだろうか。ロンドン出身ながら、家族の別宅のある自然豊かなロンドン近郊サリー州で過ごすことの多かったパイは、幼い頃から「水」に対する並々ならぬ関心を持つようになる。静かな水面に力を加えることで波紋が広がる様や、水の流れをせき止めることで生まれる新しい動きをカメラに収め、自らの作品づくりに生かす彼のインスピレーションの源は、常に自然界、ひいては「水」なのである。

人口滝から抽象的なステンレス彫刻にいたるまで、国内外で多くの「水」作品を生み出しているパイ。ここロンドンでもいくつかの作品を鑑賞することができる。ビジネス街、ホルボーンのリンカーンズ・インにある人口噴水、「Jubilee Fountain」。ここでは「ラミナー・フロー」と呼ばれる、高低さまざまな線状の水が、ぶつかり合ったり途切れることなく美しい放物線を描く様を堪能できる。

また、テムズ河沿いのロイヤル・フェスティバル・ホール前には、水の流れを抽象化し、ミニマルな形で表わしたステンレス作品、「Zemran」が展示されている。そのほか、ガトウィック空港の北ターミナルには「Aquabar」が。これは、水がお風呂などの排水溝から流れ出る際には渦を巻くという現象に着目した「Vortex」シリーズの一作品である。

自然界のありのままを写し取るのではなく、ほんの少し、力を加えた際に生まれるもう一つの自然。パイのつくり出す水の世界は、アート化することによって生まれる独特の魅力に満ちている。

AquabarとZemran
左写真)渦をダイナミックに表現した「Aquabar」
右写真)コミカルさも漂うミニマムなステンレス作品「Zemran」

Jubilee Fountain
派手さはないが、水の繊細な美しさを楽しめる「Jubilee Fountain」


Boiler Suit (2007)
Thomas Heatherwick

「アートと科学、そしてエンジニアリングは、もっと関わり合いを持たなければならない……そう、結婚するようにね」。こう語る英国人アーティスト、トーマス・ヘザウィックの作品に共通するもの、それは発想の斬新さとスケールの大きさだ。しかし、彼の創作者としての偉大さは、それだけに留まらない。彼の手掛けたさまざまな作品は、素材や細部に至る細やかなこだわりと、アートをアートとして終わらせない実用性をも兼ね備えている。

ロンドン東部、パディントンの再開発地域にある可動式の橋「Rolling Bridge」や、金融街シティの一角にある、排気ダクトを兼ねたステンレス作品「Vents」。そして何より道行く人の度肝を抜く作品が、ロンドン・ブリッジ近くに位置する老舗病院、ガイズ病院の外壁「Boiler Suit」だ。

同病院を訪れる人の誰もが、その正面玄関を見たときに、その「異形」とも言える外観に息を飲むだろう。まるで病院が摩訶不思議な生物に寄生されてしまったかのように、波型のパネルで覆われている。ステンレス製のワイヤーが 編み込まれたパネルが108枚。これは病院を訪れる人々の目からボイラー設備を隠す役割も果たしている。夜にはライトアップもされ、そのうねるように起伏する曲面が、さらに豊かな表情を帯びる。

実用性と発想力、そして芸術性。そのすべてを網羅することが可能なのだと思わせてくれるのが、ヘザウィックの作品なのだ。

Boiler Suit
左写真)波上のパネルが外壁を覆う様は圧巻だ
右写真)パネルを開けると、中にはボイラー設備が


Poured Lines Southwark Street (2006)
Ian Davenport

テート・モダンやシェークスピア・グローブ座が連なる、テムズ河沿いのサザーク地区。河岸から歩いて数分の薄暗い地下道の片側に広がるのは、目にも鮮やかな色とりどりの直線が連なる絵画だ。液体エナメルをスチール・パネルに垂らし、その後、高温で乾燥させたという絵柄には、エナメルならではの艶やかな美しさがある。

英南東部ケントに生まれたイアン・ダベンポートは、本作品以外にも数多くの「Poured」シリーズを生み出している。大きな注射器のような器具を使い、一色一色をキャンバスに流し込む作業を経て完成する本シリーズは、直線のみという究極の構図が視覚に与える明快なインパクトが魅力な作品群だ。

Poured Lines
まるで薄暗い地下道に、色鮮やかな雨が降っているかのよう


Traffic Light Tree (1998)
Pierre Vivant

Traffic Light Tree一見、ゴツゴツとしたクリスマス・ツリーとも見紛う、信号機が連なる木。これもフランス生まれのアーティスト、ピエール・ヴァイヴァントがつくり出した、立派なアート作品だ。ヴァイヴァントの作品づくりのコンセプトは、「公園や道端など、どこででも簡単に入手できる材料を利用する」こと。作品の置かれる場所を意識し、その意味を問うアーティストとしても知られる。

近代的なオフィス・ビルが立ち並ぶロンドン東部の再開発地域、カナリー・ワーフのランダバウトに位置するこの作品は、75個の信号機から成り、ランダムにその色を変える。色の変化は、慌しいビジネス街の生活テンポを反映させているのだとか。
写真)カチカチ色を変える信号に、自分の多忙な生活を顧みる


Acrobat (1993)
Allen Jones

Acrobat (1993)病院の吹き抜けに、抜群の存在感を持って佇む巨大な抽象アート。チェルシー・アンド・ウェストミンスター病院に置かれている「Acrobat」は、高さ約18.3メートル、世界最大の屋内彫刻としてその名を馳せる。作者のアレン・ジョーンズは、1960年代の英国ポップ・アート・ムーブメントを牽引した一人。女性の体の持つ曲線美を強調するなど、エロティックな表現を得意とする。

ポップ・アーティストと病院という組み合わせは何とも斬新だが、この作品を委託したチェルシー・アンド・ウェストミンスター・ホスピタル・アートは、病院とは独立した機関。アートの持つ力が医療に及ぼす重要性に着目し、病室や廊下などに、数多くのアート作品を展示 している。
写真)女性の体の持つ柔らかさを、シンプルなラインで表現


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ロンドン東部、ブロードゲート散歩

ロンドン東部、リバプール・ストリート駅のすぐ側に位置するブロードゲート地域。現代的なオフィス・ビルが立ち並ぶこの地域は、実はパブリック・アートの宝庫でもある。コンクリートに囲まれたオフィス街に点在するアート作品。この一見ミスマッチに思える組み合わせこそが、ロンドンという街の懐の深さを体現しているとも言えよう。

ブロードゲート地図


Fulcrum (1987)
Richard Serra

リバプール・ストリート駅構内から、ブロードゲート方面の出口に近付くにつれ徐々にその全貌を見せる、無機的で雄大な彫刻、「Fulcrum」。巨大な鉄板から成るそのミニマムな姿は、見る者に有無を言わさぬ威圧感を与える。中に入れば、板の合間から差し込む光。木漏れ日のような明るさが、鉄の塊に別の表情を与えている。

米サン・フランシスコ生まれのリチャード・セラは、鉄鋼工場で働いていた経験を生かし、産業鉄を使ってアートを生み出す手法を編み出した。「Fulcrum」では、溶接されているかのように見える鉄板の一枚一枚が実は独立しているなど、シンプルなデザインの中にキラリと光る工夫が、無機質で味気ない鉄をアートへと変貌させている。

Fulcrum
左写真)駅の目の前に威風堂々とそびえるFulcrum
右写真)天から差し込む光が眩い内部


Leaping Hare on Crescent & Bell (1988)
Barry Flanagan

Leaping Hare on Crescent & Bellブロードゲート・エステイトの一角。何もない、まっ平らなコンクリートの地面から飛び出してきたかのような、躍動感溢れるウサギの姿が見える。

「Leaping Hare on Crescent & Bell」は、鐘と三日月、そしてウサギを組み合わせた銅像だ。鐘と三日月の織り成す流線型のフォルムと、生き生きとしたウサギの有機的な姿が、均整の取れた美しさと微笑ましさを感じさせる。

北ウェールズ出身のバリー・フラナガンは、さまざまなマテリアルを使った有機的な表現方法を見出した。本作品以外にも、異なるポーズのウサギをモチーフにした作品を数多くつくっている。
写真)妙に手足の長いウサギが何ともユーモラス


Ganapathi & Devi (1988)
Stephen Cox

Ganapathi & Deviブロードゲート・エステイトを出てすぐ、サン・ストリートのランダバウトに位置する二対の像、「Ganapathi & Devi」。インド南部で、古代の彫刻技術を学んだスティーブン・コックスがつくり出したこのアートは、見た瞬間に強い衝撃を受ける、センセーショナルな作品だ。

聞き慣れない作品名は、ともにインドの古代神話に登場する神の名前から来ている。ゾウの顔を持つ神、ガナパチ(ガネーシャ)と、母、女神を意味するデヴィ。この二対の像を置くことでコックスは、男性と女性、陰と陽、生と死など、二つの対照的な概念を表したかったのだという。
写真)男性器を思わせるデザインに道行く人も歩を止める


Bellerophon Taming Pegasus (1966)
Jacques Lipchitz

Bellerophon Taming Pegasusデフォルメされた形態、醜悪とも言える豊かな表情が特徴のペガサス像、「Bellerophon Taming Pegasus」。これらの特徴が示す通り、作者のジャック・リプシッツは、立体的な物質を平面的に表現するキュビズムの彫刻家として名を馳せた、リトアニア出身のアーティストである。

10代でフランスに移住したリプシッツは、当時ピカソやモディリアニといった美の巨匠が出入りしていた、モンマルトルやモンパルナスの芸術家コミュニティに顔を出すようになる。そんな環境下、リプシッツはキュビズムに傾倒。数々の印象的な作品を残した。
写真)まるで絵画を見ているかのようなキュビズム彫刻


Rush Hour (1983)
George Segal

Ganapathi & Deviブロードゲート・エステイト内、まるで仕事を終え、ビルから出てきた人々がそのまま固められたかのような彫刻が「Rush Hour」だ。少し俯き加減に、同じ方向を向いて黙々と歩みを進める人々からは、変わることのない日常生活に対する倦怠感と侘びしさが漂ってくる。オフィス街ならではのアートと言えよう。

作者のジョージ・シーガルは、1924年、米ニューヨーク生まれの彫刻家。 自分自身の石膏模型像「Man at a Table」(1961)を始め、家族や友人をモデルにした石膏像で知られた。デフォルメのない等身大の作品の数々は、モデルとなった人物の内面すらも写し取ったようなリアリティを内包している。
写真)リアルな姿につい自分の姿を重ね合わせる


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地方に

Angel of the North (1998)
Antony Gormley

英国の現代アート界を代表する彫刻家、アントニー・ゴームリー。インドで仏教を学んだことのあるゴームリーの作品づくりの核となるのは「人体」。人体と空間・社会の関係性を模索する彼は、自らの体の型を取った人体像を、しばしばその作品に登場させている。

そんな彼の代表作とも言えるのが、英北東部のゲーツヘッドにそびえる 巨大な彫刻、「Angel of the North」。炭鉱跡地に位置する、高さ20メートル、幅54メートルのこの鋼鉄製の「天使」は、暗闇のなか作業を続けた炭鉱夫らの活動を、後世に語り継ぐためにつくられたという。まっすぐに立つ人物が翼を水平に伸ばすという、飾り気のない構図ながら、雨の日も風の日も、静かに眼下を見下ろし続けるその姿に、威圧感だけでなく、人々の営みを見守る包容力をも感じるのは、決して気のせいではないだろう。

Angel of the North
大空を抱擁するかのごとく翼を広げる「Angel of the North」


Murals
The Bogside Artists

アートは時に、政治的意味合いを帯びる。声高に政策を叫ぶより、アートが語りかける無言の訴えが、何より人々の心に強く響くことがあると思わせるのが、北アイルランドのロンドンデリーやベルファストにある「murals」と呼ばれる壁画群だ。

独立を目指すカトリック派と、英国との連合維持を支持するプロテスタント派が長年争いを続ける北アイルランド。同地方第2の都市であるロンドンデリーのボグサイド地区は、1972年、市民14人が英軍に射殺された「血の日曜日事件」が発生した場所だ。この地区の建物の壁には、至るところに風刺画やプロパガンダ絵画が描かれている。精緻とはいえない筆致、時に薄暗く時に毒々しい色彩。しかしこれらの絵画は、美的価値を超え、この地区に歴史を刻む役割を担っている。

美とは異なる、アートの持つもう一つの力を感じずにはいられないパブリック・アートである。

Murals
左写真)「血の日曜日事件」の被害者たち
右写真)暗青の色調が不気味さを醸し出す www.bogsideartists.com


 

映画、バイク、猫、節税、鉄道……知られざるマン島

知られざるマン島
島の名前を耳にしたことはあるが、メジャーな観光地というわけでもなく、実際にどんな場所なのかはよく分からない。大半の在英邦人にとって、マン島の存在とは、「知っているようで知らない場所」といったところではないだろうか。今回の特集では、英国とは実はかなり縁の深い、マン島の隠された魅力に迫ってみよう。 (取材・執筆: 三上義一)
地図

秘境知られざる秘境

マン島(Isle of Man)は、ロンドンの三分の一ほどの小さな島で、首都はダグラス。英国は日本と同じく島国だが、日本同様、本土の周辺にはいくつかの島があり、夏の旅行地としては最適である。中でもマン島は単なる海と山の避暑地ではなく、映画、バイク、鉄道、マンクス猫、そして税金を軽減できるオフショアとしてなど、魅力は尽きない。またあまり知られていないことだが、この島は英国よりも長きにわたって景気拡大を続けていて、今、金融関係者以外からも注目を集めつつある。実際、この島はいかなる旅人にも、楽しさと驚きを提供できる、英国本土とは一味違った別天地なのである。

一方で、日本人にとっては馴染みが薄い場所であることも確かだ。名は聞いたことはあるが、訪れたことはない・・・・・・ほとんどの日本人にとってマン島とは、そんな知られざる秘境といってもいいだろう。

交通ロンドンから1時間半

さて、そのマン島はいったいどこにあるのかというと、英国本土とアイルランドを隔てるアイリッシュ海のちょうど真ん中に位置している。人口約8万人で、淡路島ほどの小さな島。マン島へは、ロンドン中心に近いシティー空港から飛行機を利用するのが一番便利であろう。約1時間半でマン島に着くはずだ。

ロンドン以外からも飛行機が出ているし、フェリーで行くことも可能である。もし自転車・バイク・自家用車などでのツーリングを計画されているなら、フェリーが便利だろう。

英国?英国のようで英国でない

この島はいわば英国であって、英国ではない。つまり、英国の一部ではないが、自治権を持った英国の属国であり、外交・軍事は英国政府に委任している。ちなみに、欧州連合(EU)には加盟していない。またマンクス・ポンドと呼ばれる独自の通貨があるが、英国ポンドも問題なく利用できる。英語以外にも、マンクスという独自の言語が話されている。

とりあえず、ここまでくればマン島に関する基礎的な知識は得たといっていいだろう。それではさっそく、現地の見所を探ってみよう。

マン島関連の便利なウェブサイト

● マン島観光局
www.gov.im/tourism/guide
オフィシャル・ガイドブック閲覧も可能。メールでの問合せも受け付けている。
● マン島に関する日本語の便利なサイト
www.visitbritain.jp/destinations/Isle-of-Man
● レストラン検索
www.isleofmanrestaurants.com
● フェリー情報
www.steam-packet.com/SteamPacket/search

レストラン旅する前にまずは腹ごしらえ
現地のおすすめレストラン

 
Millennium Saager東西の味を融合させた
Millennium Saagar

本場のスパイスと地元の食材を融合させたオリジナル料理が自慢のインド料理レストラン。
Broadway House, Sherwood Terrace, Douglas
TEL: 01624 679871 www.millenniumsaagar.co.uk
 
Ciappelli's現地のビジネスマン御用達
Ciappelli's

良質のモダン・ヨーロピアンを提供するレストラン。地元のビジネスマンで賑わっている。
12 Loch Promenade Douglas, Isle of Man IM1 2LX
TEL: 01624 677442 www.aperitivo.co.uk
 
La Cucina見ても食べても美味しい
La Cucina

ダグラス市内中心に位置する、イタリアン・シーフード店。料理のプレゼンテーションが見事。
54 Bucks Road, Douglas, Isle of Man IM1 3AD
TEL: 01624 623959 www.lacucina-iom.com
 

Peel Castle
マン島の西側に位置するピール地区にある古城Peel Castleは、11世紀に建てられた


映画ジョニー・デップも好きな島

マン島と言ってもなかなかイメージしにくいだろうが、実はここ10年ほど、その美しい景色を映画で目にする機会が増えてきている。例えば、「ミス・ポター」だ。世界で一番愛されているうさぎ「ピーターラビット」の女性作家、ビアトリクス・ポターの恋と半生を描いた映画だが、その中に登場する美しい田園風景の一部がこのマン島で撮影されている。レニー・ゼルウィガーやユアン・マクレガーといったスターが主演し、日本でもヒットしたので、観た方も多いのではないだろうか。

また、ハリウッドの大スター、ジョニー・デップが主演した映画「リバティーン」は中世に実在した放蕩の詩人ジョン・ウィルモットの波乱の生涯を扱ったものだが、このロケ地もマン島。そして昨年ヒットした14歳の少年スパイ、アレックスを主人公にした痛快アクション映画、「ストームブレイカー」もこの島で大々的にロケを行った作品である。

また1995年以降、80作以上の映画やテレビ・ドラマが、この島で撮影されている。というのも、マン島政府が産業として映画事業の育成に力を入れ、積極的に共同製作・出資してきたからである。この島はそれだけ風光明媚で、観光資源が豊富だということでもあろう。映画ファンがこの島を訪れたなら、どこかで観たことがある景色に出会い、嬉しい既視感を覚えるかもしれない。あのジョニー・デップも、すっかりこの島が気に入っていたという。

マンクス・コテージ
マンクス・コテージと呼ばれる伝統的な一戸建て小家屋

プロムナード
海に面したプロムナード。ダグラス地区近郊は現在、「化粧直し」の最中だが、
このプロムナードは散歩に最適。是非歩いてみたい。


バイクバイク・レースの聖地

多くの人がマン島と聞いて、まずピンとくるのが、5月末から6月上旬にかけて行われるバイク・レース(TTレース)ではないだろうか。事実、このマン島は、バイク・レースのファンにとっては「聖地」とまで呼ばれている。

同レースは世界で最も歴史が長いレースであり、今年で101回目を迎える。期間中の約2週間は、花火や野外コンサートなどのイベントが目白押しで、島中がお祭り騒ぎになる。第1週が練習で、第2週が本戦となり、その中にはバイクにサイド・カーを付けた一風変わったレースなどもある。また公道を使って行われるため、パブでビールを一杯やりながら観戦することもできて、たっぷりと臨場感を楽しめるはずだ。

レース開催中にマン島を訪れたい方は、早目にホテル や交通機関を予約することが必須となる。何しろ世界中からレース関係者や観光客が訪れるだけあって、1年前からの予約もザラだという。またホンダの創設者、本田宗一郎氏もこのレースで優勝することを夢見ていたと伝えられており、毎年日本のファンも多く詰めかけている。

TTレース公式サイト: www.iomtt.com

バイクレース 世界的に有名なTTレース

 


鉄道鉄道ファンが泣いて喜ぶ

バイク・ファンではない方のためには、鉄道の旅はいかがだろうか。現在でもマン島では保存鉄道が走っていて、鉄道ファンでなくとも必見。まず乗りたいのが、Isle of Man Steam Railway と呼ばれる蒸気機関車だ。1874年に開通し、今日でも首都ダグラスからポート・エリン(Port Erin)を結ぶ15.5マイル(約25キロ)を走っている。その間、美しい田園と海辺の風景を満喫でき、蒸気機関車の旅が楽しめる。冬は運行していないので要注意。

また、かわいい路面電車、Manx Electric Railwayも見逃せない。1893年に開通、ダグラスからラムジー(Ramsey)までを1時間15分程で走る。

それに1895年から走っている登山鉄道、Snaefell Mountain Railway にも是非乗ってみたい。ラクシーから標高2036フィート(約621メートル)のスネーフェル山へと登り、30分程で山頂に着く。晴天の日、ここからは7つの王国──つまり、イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、マン島、そして天空と大海を見渡すことができるという。

Isle of Man Steam Railway 公式サイト www.iombusandrail.info

左写真)世界最大の木製水車、レディ・イサベラ。ダグラスからManx Electric Railwayに乗り、ラクシー駅から徒歩で行ける。
上写真)1893年に開通したManx Electric Railway

The Gaiety Theatre
ダグラスにあるThe Gaiety Theatre。こけら落としは1900年というから、すでに1世紀以上の歴史を持つ


猫ノアの箱舟でしっぽを失った猫

マン島といえば、日本の猫愛好家の間でもよく知られているマンクス猫が有名だ。マン島固有の猫で、しっぽのない、うさぎのような歩き方をする猫である。

ある伝説によると、マンクス猫はノアの箱舟に乗ろうとした最後の動物であったが、慌てて箱舟に駆け込もうとすると、ドアが閉まり、しっぽがちぎれしまったのだという。また、箱舟の中で犬がマンクス猫のしっぽを噛み切ったので、マンクス猫は箱舟の窓から逃げ出し、海を泳いでマン島にたどり着いたという神話もある。

他にもマンクス猫は猫とうさぎのあいだにできた子で、その結果、しっぽがなくなり、後ろ足が長くうさぎのような歩き方をするようになったという、もっともらしい説明もある。これほど伝説が多い猫も少ないのではないかと思えるほど、他にも諸説紛々。ちなみに実際のマンクスは人なつっこい性格の、かわいい猫である。

マンクス猫
マンクス猫。しっぽのない、うさぎのような歩き方するこの島原産の猫。
なぜ、しっぽのない猫がこの島にいるのかは謎であり、数々の伝説を生んできた。


タックスヘイブン税率0%の島

マン島は英国であって英国ではないという、まさにオフショア=沖合いの利点を生かし、英国本土よりも税率を低く設定している。つまりマン島に資金を移せば、資産や投資にかかる税金が節約できるのだ。巨額な資産を持つ投資家や、財テクをしたい企業などは、こういうオフショアのタックス・ヘイブン(税金回避地)を利用することで節税できるというわけである。今日、本社はロンドンにあるが、節税目的で子会社をマン島に置き、工場はベトナムにあるというような経営体制は決して珍しくない。

具体的には、マン島では相続税(遺産税)はなく、キャピタル・ゲイン税もない。法人税も0%か10%という2段階区分しかなく、個人の所得に対する税も0%、10%、18%と3段階に分けられているが、最高税率が18%というのは英国よりもはるかに低く、あらゆる面において税制優遇措置が設けられている。

マン島風景
左写真)船が転覆した際の避難所として建てられたという「refugehills」。
右写真)マン島の最南端に位置する「The Sound Visitor Centre and Restaurant」。
ガラス張りのレストランからは、小島が見渡せる。


成功物語「隠された成功物語」

マン島最大の産業はやはり金融業であり、銀行や保険などの金融サービス業が経済の柱となっている。しかし、最近では経済の多角化を積極的に進めていて、eビジネス・映画・ハイテク産業の育成などにも力を入れている。その努力は報われているようで、なんと景気は、過去25年間連続して拡大。好景気を誇っているアイルランドの影に甘んじてきたため、「フィナンシャル・タイムズ」紙はマン島を「隠された成功物語」と呼んだほどだ。

いずれにしろ、英国に住んでいる日本人にとってすら、マン島はまだまだ馴染みが薄い、知られざる秘境であることは確かであろう。もちろん、既にマン島の金融機能を利用している日本企業もあり、当政府としてはさらに日本からの客──観光客はもちろんのこと、企業、投資家、そしてスーパーリッチな日本の方々の訪問を待ち焦がれているのである。

マン島風景
左写真)マン島の北部に位置する古都、キャッスル・タウンの風景。
右写真)マン島の浜辺と小さな灯台。マン島ではシーカヤックや、ヨット・セイリングなどの
マリーン・スポーツも盛んである。


英国周辺にあるその他の島々

ワイト島  Isle of Wight

英国本土の南岸に浮かぶ小島。夏のロック・フェスティバル、「ワイト島ロック・フェスティバル」で世界的に有名な島。1970年、ジミ・ヘンドリックスがこの島のロック・フェスティバルに出演したのはもはや伝説、というよりは神話か。この島が世界的に知られるようになった一因は、このときのジミヘンの名演が余りにも凄まじく、またこのコンサートの3週間後に彼がこの世を去ったからでもある。

この年のコンサートの衝撃が余りにも強烈だったのか、次にロック・コンサートが開かれたのは32年後の2002年。実際には70年のコンサートが膨大な赤字を出したことが主因だとも言われている。

ロック・フェスティバル以外にも、この島は変化に富んだ海岸線や海水浴に適した砂浜がある。また内陸には緑が多い森やなだらかな丘陵地帯が広がり、夏のプチ旅行には最適。さらにワイト島は、世界的なヨット・レース「アメリカス・カップ」の発祥の地としても知られており、ヨット遊びが盛んな島でもある。

ワイト島に行くには、フェリーが便利。いくつかの港からフェリーが出ているが、ポーツマスからフェリーで30分ほどで行くことができる。

ワイト島観光局サイト   www.iwight.com
ワイト島ロック・フェスティバル公式サイト   www.isleofwightfestival.com

チャネル諸島  Channel Islands

Channel Islands英国とフランス間の英仏海峡にあるチャネル諸島。英国でありながら、距離的にはフランスに近く、フランス的な雰囲気が漂っている。その中でも代表的なのが、ジャージー島とガーンジー島。両島ともマン島と同じく、オフショアのタックス・ヘイブンで、税金の優遇処置を提供している地としても知られている。

同諸島で最大の島がジャージー島。冬は温暖、夏は涼しく、ビーチも豊富で、サイクリングやウォーキングには最適。ショッピングも、VAT(付加価値税)がないためロンドンなどよりも割安。レストランも多く、金融関係者やリッチな人々が多いせいか、世界からトップ・クラスのシェフが集まり、グルメも充実している。

ガーンジー島はジャージー島の北にあり、ハーム島、サーク島、アルダーニー島の小島からなっていて、英国とフランスの双方の影響を受けているが、第二次大戦中はナチス・ドイツが島を占領していた。その後はヨーロッパのリゾート地として発展し、ジャージー島同様、英国本土のVATが適用されないため、ショッピングを楽しめる。また、小さな島なので自転車で島をのんびりと散策するのも妙案であろう。

チャネル諸島観光局サイト   www.visitchannelislands.com

 

英国人はなぜ結婚しないのか

英国人はなぜ結婚しないのか

暦はついに6月。英国を始めとする欧州では、「ジューン・ブライド」の伝承にちなんだ結婚シーズンに入った……が、近年の英国における結婚件数は過去最低。その一方で、結婚せずとも、子供を育てながら同棲生活を営む人々が増え続けているという。事実婚カップルと呼ばれる彼らはなぜ、結婚することを拒むのだろうか。

(本誌編集部: 長野雅俊)

結婚しない英国人

結婚皆さんの周りにいる若い世代の英国人で現在、結婚生活を営んでいる人は果たして何人いるだろうか。きっと、思いのほか少ないことに気付くはずだ。英国統計局が今年発表したデータによると、国内における2006年度の結婚件数は約23万7000件。この結果、結婚率は16歳以上の男性1000人に対して22.8人、同じく女性は20.5人と、調査が始まって以来、過去最低の数字となった。

一方で、離婚件数は増加中。同じく英国統計局の調べによると、10年以上にわたって結婚生活を続ける夫婦は全体の約半数。残りの半数にあたる夫婦は、その10年を待たずに関係を破綻させ、離婚に至るという。つまりその確率、5割。英国における結婚は、まさにイチかバチかの賭け事になりつつある。

そしてさらにもう一つ、結婚率の低下に拍車をかけている、重大な事実がある。それが、結婚の申請を行わずとも長きにわたって共同生活を営む、いわゆる「事実婚(Cohabiting)」だ。この事実婚カップルが近年になって急激に増えてきており、現在では全国で約230万組も存在すると推定されている。

英国で減少する結婚件数

子供ができても結婚せず

最近では日本でも、結婚前の男女が同棲生活を送ることは珍しくなくなった。ただこの日本における同棲生活と英国人たちによる事実婚は、どうも意味合いが違うようだ。というのも日本のそれは、結婚前の準備段階か、または「内縁の夫・妻」と言う言葉の響きが連想させるように、既存社会の仕組みからは少し外れた関係と見なされがち。これに対して英国の未婚カップルは、既に公的な夫婦と同じように機能している場合が少なくない。

その最たる例が、子供の存在だろう。英国では、何十年にもわたって共同生活を営み、さらにはその過程で子供を生んで育てながらも、結婚していない人たちが大勢いる。これは「できちゃった結婚」という言葉に象徴されるように、いまだ子供=結婚が当然視されがちな日本においては、なかなか受け入れられにくい現象のように思える。

統計局の調べによると、英国内においてこの事実婚カップルに育てられている子供の数は約141万人。この数字にシングル・ペアレンツも含めれば、実に全体の4割が結婚外で生まれた子供ということになる。事実婚カップルは、もはや新しい家族の形態の一つとして認められつつあるといっても良いだろう。

変化する英国の家族形態

彼らはなぜ結婚しないのか

ではなぜ、彼ら事実婚カップルは結婚しないのだろう。その理由としては「お互いの自由を尊重するため」「結婚は制度ではなく気持ちの問題だから」「面倒くさい」など様々な意見が聞かれるが、その中でちょっと気になるのが、「結婚するだけの法律的・経済的なメリットがほとんどない」との理由だ。

まず子供の養育に関する権利や責任についていえば、下記の表にある通り、両親のどちらかが死亡しない限り、結婚と事実婚の間にはさして大きな法的な違いはない。むしろ結婚した夫婦の約半数が10年以内に離婚する中で、若くして子供を設けたカップルが、お互いの死後まで思いを馳せることの方が難しいかもしれない。また日本と最も大きく異なるのが、子供に対する法的な扱い。日本であれば、未婚の親の間に生まれた子供は「婚外子」として親の死に際しての相続において制限がつくなどの区別が生まれるが、英国では摘出・非摘出という法的概念そのものがないため、子供にとっての不都合も起きない。

また近年になって、結婚した夫婦に対する手当が削減された結果、シングル・ペアレンツの方が手当を多くもらえる例も出てくるようになった。つまり場合によっては、結婚した方が経済的に損をする、ということにもなりかねないというのだ。

英国における子供の養育に関しての法的な結婚と事実婚の違い

結婚した夫婦
権利の種類
事実婚カップル
両親ともに保有 離別後の親権 登録を行なっていない場合、父親が保有できないことがある
同じ 離別後に子供を養育する権利 同じ
同じ 離別後に子供と面会できる権利 同じ
同じ 養育費を離別した相手もしくは福祉機関からもらえる権利 同じ
相手と子供が分割して相続 遺言なしで片方が死亡したときの遺産 子供がすべて相続し、相手にはなし
相手が自動的に得る 片方が死亡した際の子供の保護者としての権利 相手が既に親権を保有しているという条件の下に得る

結婚するのもお金次第?

結婚しない理由がお金や諸々の権利をめぐるものであれば、結婚する理由もまた然り。実は英国には、事実婚として数十年も同棲生活を送り子供を育て上げた後に、結婚を果たすカップルが少なからず存在する。彼らは熟年期を迎え、お互いの死後のことを考慮した際に、結婚した夫婦でなければ得られない遺産相続や相手方の年金を授与する権利を念頭に置いて、結婚に踏み切るに至ることが多いのだという。

また事実上の「同性婚」として話題をさらった市民パートナーシップ制度の設立にあたっても、法的には同性カップル同士の遺産の配分などを認めることに焦点が置かれていた。このパートナーシップ制度もまた、結婚という従来の枠組みとはまた違った形で長期的な家族関係を営む試みの一つである。

「ジューン・ブライド」という言葉が持つロマンティックな響きとは裏腹に、「英国人はなぜ結婚しないのか」という疑問を見た際に見えてきた、「法律的・経済的メリット」というシビアな現実。結婚に関する社会のしがらみや宗教的な要素が薄れてきた現代では、結婚とは結局、お金や権利の譲渡関係を確保するためだけの手段に成り下がってしまったということであろうか。

 

家族について - 結婚って、一体なんのためにするのでしょうか?

事実婚やシングル・ペアレンツなど、新しい家族の形態が社会に認められるにつれて、結婚に対する考え方にも各個人によってかなり差が出てきたのではないだろうか。そこで実際に事実婚を営んでいる人、家族問題のカウンセラー、同性愛者の権利保護団体、そして教会の牧師さんと、異なる背景を持つ4人の方々から結婚に関して意見を聞いてみました。

サム・ロビンソンさん「逆に結婚しない理由が、もうなくなったんです」

4年の「事実婚」を経て、近日中に子供が誕生する

サム・ロビンソンさん
語学教師、29歳

パートナーの方と、これまで結婚しなかったのはなぜですか。

頭の片隅で「もしかしたらいつか彼女と別れることがあるかも」という極々小さな可能性がポツンと浮かぶことがあったからでしょうね。あと私たちがお互いにまだ結婚するには若過ぎる、と思っていたということもあります。

そのパートナーの方が現在妊娠しているとうかがいましたが、それでもまだ結婚しない理由は何でしょうか。

そもそもパートナーの妊娠が、予定外の出来事だったんです。だから私たちは何も結婚を断固として拒否しているわけではなくて、「きちんと結婚してから子供を作る」という順序を守れなかっただけなんですよ。結婚した夫婦と事実婚カップルの手当の違いといった込み入った事情については、正直考えが及びませんでした。

日本では「できちゃった結婚」といって、恋人が妊娠した直後に結婚する人も多いのですが。

彼女のお腹が大きいままでウェディング・ドレスを着せることはできないので、結婚するなら今すぐか、出産を無事終えてからという選択肢しかありませんでした。でも大急ぎで結婚するのは、嫌だったんです。結婚とは、一生のうちでそう何度も訪れるイベントではありません。だから、きちんとお互いの両親や親友の予定も合わせられるように、1年位かけてしっかりと準備を整えた上で結婚式を挙げたかった。つまり結婚しないというよりも、しそびれてしまったのでちょっと延期した、というような感覚です。

逆に子供が生まれてもそのまま結婚せずに暮らす英国人たちも多くいる中で、準備さえ整えば結婚したいと思うのはなぜですか。

やっぱり、ちゃんとした形でお祝いしたいんでしょうね。ありふれたパーティーじゃなくて、きちんとした結婚式という形で。特にパートナーの方は、結婚式を挙げることで幼い頃から抱いていたロマンティックな願望を叶えたいという気持ちもきっと持っているはずです。そういった意味では、僕よりも、彼女の方が結婚を楽しみにしているんじゃないかな。また子供ができたことで、パートナーと残りの人生を一緒に過ごす、ということが確定したようなものなので。逆に結婚しない理由が、もうなくなったんです。

家族にとって、子供は大切な要素だと思いますか。

サムさんもちろん、「子供がいない家族」というのもたくさん存在すると思います。でも、誰かと家族を構成するようになれば、少なくとも子供を欲しいと思ってしまう人が大多数なのではないでしょうか。自分の人生だけに留まらず、自分の両親の人生までを振り返って、「僕は自分の子供に一体何を伝えればいいのだろう」と考えることは、とても貴重で幸福な体験なのではないかと思います。(写真:現在は妊娠中のパートナーの女性と旅行に出掛けた際の記念写真)

 

キャサリン・アレンさん「結婚はいまや余生の嗜好品となりました」

家族問題を始めとするカウンセリングを行うチャリティ団体

キャサリン・アレンさん
「リレイト」PRマネージャー

英国人はなぜ結婚しなくなったのでしょうか。

最近では結婚率の低下だけでなく、晩婚化も著しいです。これは結婚が、あたかも余生で楽しむ嗜好品のような社会的意味を帯びるようになってきたことの表れだと思います。つまり今でも一定の需要はあるのですが、人生の後半までその楽しみを享受するのを待って、お金が貯まってから手を延ばすというスタンスを取る人が多くなってきたということです。まずは自分の持ち家を購入し、仕事でも一定のキャリアを残した後で、ようやく結婚生活を楽しもうという人生設計を描く人は、実際に多く存在します。

結婚生活を敬遠する一方で、事実婚カップルは増えてきているようです。なぜだと思いますか。

もちろん様々な理由があるでしょうが、コミットメントすることに対する躊躇というのがあるのかもしれません。また私たちの調べによると、多くの人たちが親の離婚を通して経験した辛い思いから、自身の結婚にまで抵抗感を持つ人が多いようですね。

それでは、離婚はなぜ増えたのだと思いますか。

英国社会が離婚を一つの現実として受け入れて、離婚者に対しての偏見を持たなくなったからだと思います。離婚は確かに当事者にとっても、また子供にとっても精神的に非常に辛い経験となりますが、それで人生の終わりというわけでもありません。いずれその辛さを克服し、次の人生へと歩み出す人も多いのは事実ですから。

そのような環境の中で、あえて結婚する人たちの理由とは何だと思いますか。

いわゆるごく一般的な英国人にとっては、確かに結婚と事実婚の意味合いの違いはあまりなくなってきているのだと思います。一方で、移民を中心とした異なる人種または宗教的な背景を持つ人たちにとっては、結婚は今でも非常に大切な制度として機能しているのではないでしょうか。

「家族」「夫婦」「パートナー」「恋人」と様々な関係がありますが、それぞれの違いは何だと思いますか。

それぞれ個人によって意味合いが違うので、社会的な定義を出すのは難しいです。むしろそういった定義よりも、結局はお互いにコミットメントし、信頼し合える平等な関係を構築できるかどうか、ということの方が大切でしょう。ただ一つ言えるとすれば、多くの人々にとって、親になるということ、つまり子供ができた瞬間にこれまでの関係性を見直す結果、2人の関係に変化が訪れたと感じる人は多いようです。また生まれた子供のために、できるだけ良好な関係を維持しようと努力する親が多く存在するのも事実です。

Relate
英国で、家族関係を主とする悩みに関するカウンセリングを提供するチャリティ団体。年間15万人に対して無料でサービスを提供している。Tel: 0300 100 1234 www.relate.org.uk

カルム・ハワード・ロイドさん「結婚にはそれに伴う特有の権利と責任があります」

同性愛者のための権利団体

カルム・ハワード・ロイドさん
「プライド・ロンドン」ダイレクター

同性愛者にも異性間夫婦に準じる権利を与える「市民パートナーシップ制度」が施行されてから2年以上経ちましたね。

同制度が施行される前までは、納税の手続き、さらには保険金や遺産の受け取りに苦労する同性愛者カップルがたくさん存在しました。パートナーが死亡した途端に、それまで一緒に暮らしていた家に住む権利を奪われるといった事例もあったほどです。

だからこのような問題の解決を目指した同制度を高く評価すると同時に、結婚とは違う真新しい仕組みを作ることで誤魔化した事実に対しては困惑しています。例えばある特定の人種が、英国では結婚の真似事はできるけれども結婚そのものはできない、ということになったらきっと大きな反発が起こるでしょう。同性愛者にも、彼らが望んで築いた特別な関係を法的に認知してもらい、さらには相応の権利と義務を担うことが許されるべきではないでしょうか。

なぜ、同性愛者の結婚に対する抵抗が生まれるのだと思いますか。

主に宗教的な理由からでしょう。英国では、宗教指導者が立法過程に関わることが多く、彼らの反対に政府が屈したというのが私の理解です。現に2003年に英国のキリスト教研究所が「市民パートナーシップ制度は従来の結婚制度に害を及ぼす」との意見書を政府に提出しています。ただ私は一部の人たちの占有物にしてしまうことの方が、結婚制度を侮辱することになると思います。

同性愛者同士が子供を育てることに反対する人もいますが、これについてはどのようにお考えですか。

養子に関する法律は英国内の地域によって多少異なりますが、概して地方政府が個々のケースを調べて認可するかどうかの判断を行っているようです。現代においては、家族の形態も様々です。シングル・ペアレンツがいれば、継母や祖父母、そして同性愛者に育てられる子供というのもいるでしょう。子供の養育にとって最も大切なのは、この中でどのタイプが好ましいかというよりも、彼らが安定し、かつ愛に溢れた家庭を築けるのかどうかということではないでしょうか。そして大部分の同性愛者たちには、その他の人々と同様に、そういった家庭を築く能力があると私は信じています。

事実婚カップルのように、結婚を重要視しない人も増えているようですが。

結婚しないという選択肢を取る人が多くなっていることを鑑みると、結婚の意味合いは確かにかつてと比べて薄れてきているのでしょう。ただそれでもいまだ結婚には、それに伴う特有の権利と責任が付随していることも事実です。もしその恩恵を受けたいという人がいるのであれば、法律によってその願いを禁止するべきではないと思います。

プライド・ロンドン
同性愛者の権利を訴える団体。年に1回行われる、団体名が冠されたイベントは毎年50万人を集めている。今年度における同イベントは、7月5日に開催予定。www.pridelondon.org

チャールズ・へドリーさん「結婚の本質は、内面の決意を公的な場で誓うこと」

聖職者として結婚式を執り行う

チャールズ・へドリーさん
セント・ジェームズ教会 牧師

英国人の結婚件数が減少しているのはなぜだと思いますか。

やはり結婚した夫婦に対する税の優遇措置がなくなったことが大きな影響を及ぼしていると思います。あとは一般的に他者との関係の捉え方に変化が訪れたのでしょう。地元の会合や、さらには教会に行く人も減ってきていますから。

教会では結婚をどのようにお祝いしていますか。

英国国教会の牧師は、これから夫婦になる2人が神の前で誓いを行う際の証人となります。そして2人の幸せを称えながら、婚姻関係を結ぶことの意味について語るのです。「コレリ大尉のマンダリン」という文学作品を読んだことはありますか。その中で「恋が焼け尽くした後に、本当の愛が残る」という表現が出てくるのです。この言葉が意味するように、人間の関係というのは常に変化そして進化し、さらにより深まる可能性を持っている。そういったようなことを伝えることが多いです。

結婚について、聖書はどんな教えを示しているのでしょう。

聖書には、結婚に関する様々な記述が見受けられます。例えば旧約聖書においては、司教は複数の妻を娶(めと)っていました。イエス・キリストは結婚そのものについてはあまり言及していませんが、当時の時代背景から、離婚には反対を唱えています。世界の終末が近付いていることに危機感を覚えていたパウロは、人間には結婚よりももっと重要な なすべきことがあると考えていました。

事実婚カップルと結婚した夫婦を隔てるものは、法律以外にあるのでしょうか。

「同棲」や「事実婚」は、意味する範囲が非常に広い言葉だと思います。結婚した夫婦と同じくらいコミットメントして、協力し合える関係を築く事実婚カップルというのは存在します。一方でただ一緒に住むだけなら、結婚の本質である「内面の決意を公的な場で誓う」という過程を経た夫婦とは大きな隔たりが生まれることになります。

良き恋人は、必ずしも良き伴侶になるわけではないということなのでしょうか。

非常に難しい質問ですね。ただ何となく同棲生活を送っているだけなら全く問題ないのに、結婚した途端に関係が不安定になるカップルというのは驚くほど多いという印象を持っています。結婚相手に何を求めるか、そしてその願いがどのように達成されるか、ということをはっきりさせていないケースが多いようです。

セント・ジェームズ教会
ロンドン中心部ピカデリー・サーカス駅付近に位置する教会。英国国教会に属している。異なる宗教を信仰する人や同性愛者も積極的に受け入れるなど、リベラルな信仰を持つ人々が集まる教会として知られている。
St James's Church
197 Piccadilly London W1J 9LL
Tel: 020 7734 4511
www.st-james-piccadilly.org

 

 

英国一周、野外フェスの旅

英国一周、野外フェスの旅 拡大地図

「英国の夏=野外フェス」といっても過言ではないほど、ありとあらゆる種類の野外音楽フェスティバルが開催されるここ英国。とはいえ、逆にどこへ行ってよいのか分からない人や、名前も知らないような街が開催地であるため諦める人も多いのでは?そこで用意したのが、このおすすめフェス満載のマップ。これを使って英国の夏を満喫しよう!

(本誌編集部: 國近絵美)

★チケットは見つけたら即買いが◎
日本でも名が知られるほどの大型フェスは、チケット販売開始後に数時間で完売してしまうことも珍しくない。とはいえ、まだ認知度の低い新しいフェスは、質が高いわりにチケットが残っているものが多い。通常は割安の通し券から売れていくので、1日券を探してみよう。また、参加アーティストのフル・ラインナップが決定していないフェスも多いので、気になるアーティストがいる人はこまめにチェックを。

★駅から遠くても大丈夫!
地方で行われるフェスは、最寄り駅から遠かったり行きづらかったりするのが難点。とはいえ、たいていは駅からシャトルバスが運行されているし、主要都市から直行の特別コーチが用意されるので安心だ。一方、どのフェスも近年は環境問題に気を使っていて、車の利用者を減らすために駐車場の値段が高く設定されていることが多い。最近ではコーチ・長距離電車の往復券と組み合わせたお得なチケットも販売されているので、フェス参加者で溢れるバスや電車を利用して、開催前から気分を盛り上げよう!

AColoursfest
6月7日(土)

スコットランドで最大のダンス・ミュージック・フェス。6つあるベニューは、それぞれテイストごとに分かれている。スコットランドで初夏を熱く迎えるなら、ここ!

Web
http://www.colours.co.uk
出演
Paul Van Dyk、Marcel Woods、Woody van Eyden、Alex Morph、Dave Seamanなど
チケット
£42.50
最寄り駅
Glasgow駅 
*18歳以下は入場禁止

T in the ParkT in the Park
7月12日(土)~13日(日)

こっちは毎年180人近くのアーティストが参加する、スコットラ ンド最大のロック・フェス。参加型のイベントも多数あり。

Web
http://www.tinthepark.com
出演
The Verve、Rage Against The Machine、The Fratellis、Kaiser Chiefs、Kings of Leonなど
チケット
すでに完売。
キャンプ付き通し券£160、通し券 £137、1日券£68.50
最寄り駅
Perth/Edinburgh/Glasgow駅
* 主要駅から出発するシャトルバスは要予約。チケット保有者のみ乗車可
* 一眼レフや録音機能を搭載した音楽プレーヤーは持ち込み禁止

CCreamfields
8月23日(土)、24日(日)

世界13カ国でも開催されている、ダンス・ミュージックの祭典。旬のDJやアーティストたちが集まり、約4万人もの観客を日夜踊らせる。今後の活躍が期待される英国人アーティストによるイベントなども開催。

Web
http://www.creamfields.com
出演
Kasabian、Underworld、Fatboy Slim、Ian Brown、 Pendulum、Gossip など
チケット
キャンプ付通し券£115、通し券£105、
1日券土曜日 £57.50、日曜日£53.50
最寄り駅
Lime Street駅

DReading & Leeds Festival
8月22日(金)~24日(日)

「グラストンベリーが人を楽しむお祭りなら、こっちは音楽を楽しむフェスだ」。ロック好きの英国人がそう口を揃えていうほど、旬で質の高い「ロック」にこだわったアクトが150以上並ぶ。レディングとリーズの2都市で3日間同時開催されるため、同じ出演者が日にちをずらしてパフォーマンスを行う。

Web
www.readingfestival.com  www.leedsfestival.com
出演
Rage Against The Machine、The Killers、Metallica、The Fratellis、The Cribsなど
チケット
すでに完売。毎年4月上旬にチケットが発売開始される。
3日間通し券(キャンプ付き)£155
1日券£65(12歳以下は無料)
最寄り駅
レディング: Reading駅 リーズ: Leeds City駅

EPorthcawl Elvis Festival
9月26日(金)~28日(日)

「キング・オブ・ロック」ことエルビス・プレスリーにぞっこんな人々が集まる欧州最大のフェス。見渡す限りエルビスになりきった人たちが集まるコアな光景を、ぜひ一度生で見てみよう。

Web
http://www.elvies.co.uk
チケット
値段は上記ウェブサイトを参照
最寄り駅
Pyle駅、Bridgend駅

FThe Big Chill
8月1日(金)~3日(日)

大自然に囲まれたお城で開催されるこのフェスは、人々をリラックスさせることに専念した、いわば「デトックス・フェス」。バンドやDJはもちろん、マイティー・ブーシュなど人気コメディアンも登場し、キッズ用のイベントも多彩だ。

Web
http://www.bigchill.net
出演
Leonard Cohen、Fujiya & Miyagi、Roisin Murphy、Buzzcocksなど
チケット
£129、学生£110、13~19歳£60、12歳以下無料
最寄り駅
Great Malvern駅

GV Festival
8月16日(土)、17日(日)

チェルムスフォードとスタッフォードシャーの2都市にて同時開催される、大人気のフェス。

Web
http://www.vfestival.com
出演
Muse、The Verve、Kings Of Leon、Amy Winehouse、The Kooks、Maximo Parkなど
チケット
すでに完売。
通し券(キャンプ付き)£145、通し券£125、1日券£70
最寄り駅
スタッフォードシャー: Stafford and Wolverhampton駅、Telford駅 チェルムスフォード: Chelmsford駅

HDownload Festival
6月13日(金)~15日(日)

ハード・コア、メタル、エモなど、他のロック・フェスの中でも一番ダークでゴリゴリした音が楽しめる。8歳以下の子どもは入場禁止。

Web
http://www.downloadfestival.co.uk
出演
Kiss、The Offspring、Lostprophets、Jimmy Eat World、Pendulum, Incubusなど
チケット
通し券£130(キャンプは+£20)、1日券£60
金曜日のみ£65
最寄り駅
Loughborough駅、Derby駅
*一眼レフは持ち込み禁止

IThe Secret Garden Party
7月24日(木)~27日(日)

川と湖に挟まれた敷地にツリー・ハウスや巨大ハンモックが出現。生演奏やアートが楽しめる。

Web
http://www.secretgardenparty.com
出演
Grace Jones、Sons & Daughters、Glasvegas、Envy & Other Sinsなど
チケット
キャンプ付通し券£125、14~17歳£100、13歳以下は無料
最寄り駅
ケンブリッジシャー州。詳細はチケット購入者にのみ公開

JLatitude
7月17日(木)~20日(日)

ライブ以外のエンタメも大充実で、アートに映画、キャバレーやコメディーなどが楽しめる。

Web
http://www.latitudefestival.co.uk
出演
Franz Ferdinand、Sigur Ros、Death Cab For Cutie、Mars Voltaなど
チケット
キャンプ付き通し券£130、1日券£55、13歳以下は無料

K46664 2008
6月27日(金)

ネルソン・マンデラ元大統領の90歳の誕生日を祝い、またエイズ予防を呼びかけるためのチャリティー・フェス。

Web
http://www.46664.com
出演
Queen + Paul Rodgers、Leona Lewis、Razorlight、Jameliaなど
チケット
£65 *チケット購入時にレジスターが必要
最寄り駅
Hyde Park Corner駅

LSt Ives Festival
9月6日(土)~20日(土)

芸術家が集まる海辺の街一帯が会場となって開催される、音楽とアートのフェス。

Web
http://www.stivesseptemberfestival.co.uk
チケット
£12~24
最寄り駅
St Ives駅

MGlastonbury Festival
6月27日(金)~29日(日)

毎年20万人近くもの人が押し寄せる、世界最大のロック・フェス。ライブ以外にもキャバレー、劇、サーカスなど2000以上ものパフォーマンスやイベントが行われ、キッズ・エリアもかなり充実。

Web
http://www.glastonburyfestivals.co.uk
出演
Kings of Leon、The Fratellis、Jay-Z、Amy Winehouse、The Verveなど
チケット キャンプ付き通し券£155、12歳以下の子どもは無料
最寄り駅
Castle Cary 駅、Bristol Templemeas駅
*チケット購入にはレジスターが必要

NBestival
9月5日(金)~7日(日)

小規模ならではの親しみ易さと一体感が持ち味で、ありとあらゆるジャンルの音楽やDJが楽しめる。

Web
http://www.bestival.net
出演
My Bloody Valentine、Amy Winehouse、Underworld、Aphex Twin、CSS、Pendulumなど 
チケット £130、13~15歳£65、12歳以下無料(チケットは必要)
最寄り駅
フェリー乗り場から先はシャトルバスが運行

アーティスト
アーティスト
アーティスト
アーティスト

サイン会アーティストと夢の対面!

サイン会大型フェスでは、大物アーティストたちのサイン会が行われることも少なくない。日本では規制が厳しくめったに写真撮影させてくれないが、ここ英国では肩を組んで写真を撮ることも、好きなものにサインを頼むことも可能だ。参加するアーティストと時間は当日サイン会場に張り出されるので、お目当てのアーティストに会うチャンスを見逃さないためにも、早めにチェックすることがおすすめ。人数制限があり1時間ほど前から列ができ始めるので、気長に並ぼう。

(写真上)2時間前から長蛇の列が できた「ロストプロフェッツ」(写真中)「ハイブス」のペレ・アームク ヴィスト(写真下)ファン・サービ スに努める「レイザーライト」のフロ ントマン、ジョニー・ボレル

フェス・トイレ事情今から心の準備を

熱気ムンムンのテントや長時間にわたる日差しの下でのフェス鑑賞では、水分補給が何よりも大事。いつも以上にビールも進んで、いい気分でライブを楽しむ……まではいいが、ここで頭をよぎるのが、フェス名物ともいえる「汚いトイレ」の恐怖。便座に触れなくても小用を足せる男性諸君には我慢してもらうとして、英国フェスならではのトイレを紹介するので、大和撫子の皆さま、ぜひ心の準備を!

簡易トイレ運に身を任せる「簡易トイレ」
工事現場でよく見かける洋式の簡易型トイレ。ここで挙げるなかで唯一手洗い場とトイレットペーパーが用意されている。しかし列は長く、汚さ加減は運によるとしかいいようがない。人気のあるバンドやトリのプレー中は待ち時間も少ないのでねらい目。

野放し系「紙コップ」
紙コップ柵で仕切られた一角に通されると、そこがトイレのスペー スになっている。しかし外からの視線は遮断されていても中はただの広場であることが多く、みんな思い思いにしゃがみ込んで、入り口で手渡された紙コップに用を足す。スカートの方が抵抗感はないだろうが、人目が気になる人や「こんなコップで足りるのか」と心配な人は、普通のトイレに並ぶのがベター。手を消毒するためのジェルが置いてあることもある。

みんなですれば怖くない「シンク型」
シンク型収容人数40人ほどのプレハブ小屋の両壁に沿って、小学校にあるトイレの手洗い場のような長い「シンク」が設置されている。たいていの人は壁に背を向けてシンクの上で「空気イス」の体勢で用を足す。また、スカート着用の人のなかには、壁に向かって「立ちション」するつわものもいる。足の筋肉に自信が無い人や、知らない人と隣同士で用を足す自信のない人は避けたほうが無難かもしれない。疑問が沸くほど無臭。

フェス体験談気になるホントを聞きました

なんといっても、やっぱり経験者に話を聞くのが一番!というわけで、人気フェスの洗礼を受けた彼女たちの体験談、お祭り騒ぎを最大限に楽しむ参考にしてみよう。

古谷さん名前:古谷知子
好きなジャンル:ファンク、ソウル、ジャズ
日本でよく行くフェス:ライジング・サンなど

去年と一昨年、ロンドンのフィンズベリー・パークで開催されたライズ・フェスティバルに行ってきました。このフェスは人種差別反対運動の一環で開催されているのですが、全部で7ステージ、それに移動遊園地などが揃っているのに無料!英国、特にロンドンでは、日本と違って無料ライブが多いのが嬉しいですね。
わたしは敷物を敷いて、お酒を飲みながらのんびり鑑賞するのが好きなのですが、好きなジャンルの時はステージ近くに移動したりと、やはり自分のペースでのんびり参加できるのがフェスの醍醐味。ゴロゴロ寝っ転がって鑑賞するも良し、ステージ前に行ってダイブするも良し。あのユルい感じが気に入っています。
あと、どのフェスもそうですが、日本に比べて年齢層がとても幅広いですね。家族連れも多いですし、日本よりもリラックスした雰囲気が漂っていると思います。いろんなジャンルのアーティストが一度に集まるからこそ老若男女を惹きつけるのだと思いますが、今まで知らなかった音楽に出会えるのでお得感もたっぷり。
世界各国の料理に音楽、酒、友だちとの時間、そんな全てがうまく融合されるのが英国のフェス。敷物、雨具、そして仲間がいれば、最高に楽しいひとときが過ごせますよ!

Rise Festival
7月13日(日) 無料 Finsbury Park駅
www.risefestival.org
林さん名前:林佳世
好きなジャンル:パンク、ロック
日本でよく行くフェス:サマー・ソニック

レディング・フェスティバルは前売り券が数カ月前に完売していたけど、運良く当日券がありました。念のためにニット帽とマフラーを持って行ったのですが、これが大正解。8月末でもやはり朝晩は冷え込むので、英国のフェスに防寒具は必需品です。
あと、英国のフェスはとにかくラインナップが多くて豪華。見たいアーティストたちが多すぎて移動に大変、という嬉しい悩みがよくあります。ま、そのわりに「音楽聴きに来てる?」と疑問に思うほど、まったりとビールを飲んで寝転がっている人が多いですけど。出演アーティストたちも、同じようにリラックスして会場をふらついているのも、日本のフェスとは大違いですね。
田中さん名前:田中智美
好きなジャンル:ロック
日本でよく行くフェス:サマー・ソニック

グラストンベリーに行ったのですが、まず感動したのは、赤ちゃんからおじさんまで、みんな思い思いに楽しんでいること。さすがヒッピーの聖地(?)というだけあって、日本のフェスとは違ってガッついた雰囲気もなし。見たいバンドを見た後は、マッサージを受けたり、開催地のご当地名物「スパイシー・ホット・サイダー」を飲んだりして、かなりリラックスして過ごしました。「これぞ英国フェス!」と思った体験は、キャンプを張ったフィールドの隣に、なんと「レディオヘッド」のトム・ヨークのティピ(インディアン式のテント)があったこと。挨拶する練習までしたのに、結局会えなかったことが唯一の心残りかな。
 

サー・テレンス・コンラン

ライフスタイルをデザインする男の哲学とは?
サー・テレンス・コンラン

「ライフスタイルをデザインする」。これがいまや世界を代表するデザイナーとして名を轟かす、サー・テレンス・コンランの人生スタイルだ。家具・キッチン用品・インテリアのデザイン、建築にレストラン事業……。ともすれば節操がないとも思われがちな彼の広義な活動の根底にはしかし、常にこのスタイルを支える独自のデザイン哲学が生きている。今回は、テレンス・コンランの各分野における活躍を、その底流にある哲学を通して追ってみたい。

(本誌編集部: 村上祥子)

デザインに必要なのは「常識」!?
サー・テレンス・コンランの哲学

サー・テレンス・コンラン。日本でも人気のインテリア・ショップ、「The Conran Shop」の創業者にして、モダン・ブリティッシュ料理の流れを生み出した先駆者の一人。彼は数年前、日本のとあるメディアに、こう語ったという。「デザインとは98%が常識、2%が審美的な要素」。唯一無二の芸術作品をつくり出す、そんなアート性とは対極の位置にいるデザイナー、それがコンランだ。デザイン、建築、レストラン事業など、さまざまな分野に進出し、鮮やかなイメージ戦略で話題を呼ぶ事業家としての彼と、頑ななまでにベーシックを守り続けるデザイナーとしての彼。そのすべてを支えるのは、「ライフスタイルのデザイン」というスタイルであり、「常識」を大切にする心である。衣食住という、日常生活すべての質の向上を目指す彼にとって、あらゆる分野に進出する心は、デザインとはあらゆる分野に介在すべき存在だと信じているから故であり、ベーシックを貫くその心とは、日常生活を快適に過ごす上で何より必要なのは、装飾的な美しさよりも、時代を超えて万民に受け入れられるシンプルさであると考えたからではないだろうか。

コンランは1964年、インテリア・ショップ「Habitat」をオープンさせた時にこう言った。「(Habitatは)新しい外見、新しいアイデアで常に変わり続けるためにデザインされた。しかしすべての核となるのは、クラシックなキッチン用品と家具なのだ」。そして、現在。「コンラン・スタイル」とも呼ばれる彼のコンセプトは、「モダン・クラシックと、世界中から着想を得た、新しく、興味深いプロダクトの融合」である。「常識」に、ほんの少しプラスされた個性がつくり出す、最大公約数の上質デザイン。これこそ、コンランを50年もの長きにわたり、英国デザイン界の第一人者足らしめる秘訣なのだろう。

サー・テレンス・コンランの歩み

1931年 イングランド南東部、サリー州イーシャーに生まれる
1952年 「Conran & Company」設立。家具製作や照明デザインなどを手掛ける
1956年 「Conran Design Group」設立。事業規模を拡大
1964年 インテリア・ショップ「Habitat」をオープン。数年のうちに5店舗まで拡張(1990年に売却)
1973年 セレクト・ショップ「The Conran Shop」をオープン
1983年 デザイン産業における啓蒙活動を目的とした「The Conran Foundation」を設立
1990年 The Conran Foundationが「Design Museum」をオープン
1990年 「Mothercare」「BhS」(現Bhs)、Habitatなどを束ねる「Storehouse」グループの会長職を辞任
2000年 ロンドン東部に「Great Eastern Hotel」を開業

現在のコンラン・グループ www.conran.com

Conran Holdings
コンラン・グループの親会社。Conran Limited、Conran & Partners、The Conran Shop、D & D Londonから成る
The Conran Shop
コンラン・デザインの商品と、世界中からセレクトした家具や家庭用 品を扱うショップ。1973年、ロンドン西部フラム・ロードにオープン。その後87年に現在のミシュラン・ハウスに移転する。現在ではロンドン、パリ、ニューヨーク、東京、福岡、名古屋に店舗を持つ 
Conran & Partners
建築や、インテリア/グラフィック/プロダクト・デザインを手掛ける
Conran Limited
家具や本、家庭用品などのコンラン・コレクションのライセンス関係を扱う
D & D London
世界5カ国に点在するコンラン系レストランをまとめる

2008年5月14日時点

コンランと日本の密接な関係

六本木ヒルズ(クラブ)六本木ヒルズ(クラブ)
六本木ヒルズ(レジデンス)
六本木ヒルズ(レジデンス)
The Conran Shop名古屋店
The Conran Shop名古屋店
The Conran Shopと言えば、日本でも誰もが知っている人気ショップ。近年では銀座や六本木にレストランをオープンするなど、日本におけるコンラン人気はとどまるところを知らない。そんなコンランと日本の関係が、ショップやレストラン以外にもあることは、あまり知られていないのではないだろうか。

六本木ヒルズ。2003年に開業したこの複合施設の一部の建築・デザインを、「Conran & Partners」が請け負った。担当したのは住居部分や会員制クラブ。くつろぎが何よりも大切とされる空間のデザインだ。

そして昨年、ロンドンのオックスフォード・ストリートに旗艦店をオープンさせ、注目を集めた「UNIQLO」。本ブランドの2001年英国進出第一号となったショップ数店のデザインを手掛けたのも、実はコンランだったのだ。壁一面にクロム・ワイヤーを張り巡らせ、商品を自在にディスプレイできるようにするなど、余分なデザインを排除した中にも独自の工夫が光る内装は、コンランのデザイン哲学とともに、「シンプル」「高品質」「低価格」というUNIQLOのブランド・イメージをも体現し ていると言えよう。

食の総合空間を演出
Restaurant レストラン

クアグリーノス

Qの文字をモチーフにした階段を下りると、目の前に広がるシックな大空間。新鮮な魚介類をふんだんに 使った料理とともにインテリアも人気の「Quaglino’s」

デザイン・ミュージアム

The Conran Foundationにより設 立されたデザイン・ミュージアム内部には、やはりコンランの手による「Blueprint Café」が併設。見た目も美しいモダン・ブリティッシュ料理を楽しめる(©visitlondonimages/ britainonview)

「高くてまずい」。そんな英国料理の概念を覆したのがモダン・ブリティッシュ料理だ。伝統的な英国料理のレシピに、フレンチや地中海など、世界各国の料理のエッセンスを取り入れ、新鮮な旬の食材を使うという斬新なアイデア。この概念を広く英国に浸透させた先駆者の一人が、テレンス・コンランである。そしてもう一点、レストラン業界における彼の足跡を見て感じるのが、味の追求だけでなく、食を楽しむ人々が心地良く時を過ごせるための、総合空間の演出の上手さ。デザイナーとしての本領が、ここでも発揮されている。

コンランが料理に魅せられたのは1953年、初めてパリを訪れた時のこと。そこで彼は、優れた料理や日常生活品が、いわゆる「普通の人たち」の手に届く存在であることに感動する。そしてもう一つ、彼の心を掴んだのが、ディスプレイの素晴らしさだった。パリで食事とデザインの融合という、その後のレストラン哲学のベースとなる概念を身に付けたコンランは、帰国後、ロンドン中心部に 「Soup Kitchen」というスープ専門店をオープン、話題を呼んだ。

その後、順調にデザイン業界で成功を収めていったコンランは、1990年代に入り、再びレストランに力を入れる。レストランやバー、食料品店など、食品関連のショップを融合させた「ガストロドローム」の概念を提唱。1991年には食の総合空間、「Le Pont de la Tour」を、自身が再開発を手掛けたロンドン東部の元倉庫群、バトラーズ・ワーフにオープンさせる。

この時期、コンランは「Mezzo」や「Quaglino’s」など、ロンドン中に次々とレストランを開店。レストランになる建物と地域色を考慮し、それぞれの店舗のカラーを変えるなど、デザイナーらしさを生かしつつ、現在ではパリ、東京、ニューヨークなど世界各地に事業を拡大している。

歴史的な街、ロンドンに映えるデザイン
Architecture & Interior Design 建築 / インテリア・デザイン

ミシュラン・ハウス

ロンドン西部にあるミシュラン・ハウス。1911年に建てられた歴史的建造物の一角には、現代的なガラス張りの「The Conran Shop」が。2階にはコンラン系レストランのランドマーク的存在である 「Bibendum」もある

Great Eastern Hotel

100年以上もの歴史を持つ、古い駅ホテルを改装した「Great Eastern Hotel」。建物内部を彩るのは、外観からは想像もつかないシンプルモダンな内装

無駄を省いたシャープでモダンなデザインに、色と素材の質を追求したインテリア。人々の生活のベースとなる建築/インテリア・デザイン分野では、コンランのデザイン哲学における「ベーシック」な部分が特に強調されている。そんな「ベーシック」な部分が、逆に独特の趣を醸し出しているのが、昔ながらの建築物が大切に維持されているロンドンにおけるコンラン作品の数々だ。

歴史的建造物の保存に熱心なロンドン。この地では、建築家にとっては枷とも言える、さまざまな景観基準が設けられている。しかしコンランは古い街並みや建築物を生かし、その上で迎合することなく独自のモダン・クラシック様式を取り入れることで、新しい空間を創造。それは新旧の融合、というよりはむしろ、新旧のそれぞれが主張し、その対比が一つの世界をつくり出しているかのようだ。

日の光の当たらない倉庫群だった、ロンドン東部のテムズ河沿いにある地域、シャッド・テムズ。その一角に位置するバトラーズ・ワーフに、コンランは前述の「Le Pont de la Tour」や「Butler's Wharf Chop House」など、数々のレストランを入れた。古いレンガ造りの建物の内部には、河に向かって開放された、広々とした現代的なレストラン。独特の空間が、この古びた地域を明るく、刺激的なエリアへと変貌させた。

そのほか、彼が改装を手掛けたロンドン東部、リバプール・ストリート駅に隣接するデザイナーズ・ホテル「Great Eastern Hotel」(2007年よりThe Hyatt Groupが所有。現ANdAZホテル)は、100年以上もの歴史を持つビクトリア朝時代の建物の外観と一部の内装をそのままに、ミニマリズムが貫かれたシンプルなプロダクトを配置するという、コンラン・デザインの真骨頂とも言える建築物となっている。

生活空間へのこだわりをディテールに
Product Design プロダクト・デザイン

YOTEL とフルーツスタンド

左写真)カラフルな色彩と、シンプルながらユニークなフォルムがかわいらしいフルーツ・スタンド(17.50ポンド)
右写真)狭さを感じさせない、すっきりとした内装のYOTEL

日産とコンランのコラボ

日産とコンランのコラボレーション「+CONRAN」。「MARCH+CONRAN」では、細部のデザインがキュートな、上質な革張りのソファが話題を呼んだ(©NMGB)

The Conran Shopで販売される、機能性とデザイン性が同居した家具やキッチン用品、シンプルながら、色彩やディテールに遊び心のあるギフト用品はもちろんのこと、クライアントから委託されたプロジェクトの数々にも、コンラン哲学は生きている。

Conran & Partnersは2003~6年にかけて、日本を代表する自動車メーカー、日産と「+CONRAN」プロジェクトを企画。日産の人気車、キューブ、マーチ、ラフェスタ各種のインテリア・デザインをコンラン側が担当し、期間限定車を販売した。外観とソファのコントラストを際立たせた色味、重厚な質感を感じさせる本皮ソファなど、コンランならではの生活空間へのこだわりが生かされたデザインが大人気となった。

そしてもう一つ、興味深いのが「YO! Company」との密接な関係。ロンドン中に店舗を持つ回転寿司チェーン「YO! Sushi」、そして2007年、日本のカプセル・ホテルから着想を得た格安ホテルをオープンさせ注目された「YOTEL」、高級感漂うコンランのイメージとは少し異なるようにも思えるが、彼はこのどちらのプロダクト・デザインにも関わっている。

日本の伝統的な寿司、という概念からは外れた、無国籍な雰囲気の漂うYO! Sushiの店内。その中で一際目立つ、色とりどりな食器とカバー、これこそがコンランのデザインによるもの。何でも色だけでなく、料理の温度を保てるよう、工夫されているのだとか。そしてスペースの小さい格安ホテルながら、飛行機のビジネス・クラスをイメージしたというYOTELのコンセプトを実現させたプロダクト・デザインでは、小さな空間の活用法に関する本も出版しているコンランならではのセンスが光っている。

デザイナーならではのビジネス戦略とは
Business ビジネス

NEXTとHabitat

左写真)ロンドン中、至るところにある「NEXT」ショップ。このブランドを立ち上げたのもコンランだ
右写真)「Habitat」ではいまもなお、「シンプル」「機能的」「手頃価格」という、コンランのコンセプトが生きている

デザイナーとしてだけでなく、一流の実業家としても成功しているコンラン。ここでは、彼のビジネスに焦点を当ててみよう。

ロンドンのみならず、世界に点在するインテリア・ショップ「Habitat」。1964年、ロンドンのフラム・ロードに1号店を立ち上げたコンランは、スタッフのユニフォーム・デザインをマリー・クワントに、ヘア・カットをヴィダル・サスーンに依頼するというトータルのブランドづくりで成功を収める。

コンランにとって80年代は、買収・合併による小売事業拡大の時代となった。81年にはコンランが会長を務めていた紳士服メーカー、「J Hepworth & Son」が婦人服チェーンの「Kendall & Sons」を買収、総合服飾メーカーの「NEXT」をつくり上げる。82年には子供用品大手、「Mothercare」を買収、続く86年には「British Homes Stores」デパートを吸収し、そのすべてを束ねた「Storehouse」グループを立ち上げ、会長職に就いた(90年、辞任)。

コンランはこの拡張ラッシュの最中、Mothercareのパッケージ・デザインやタイポグラフィを刷新、まずはイメージ先行の改革を行った後に、赤ちゃんが親の方を向くよう工夫されたベビーカーをつくるなど、プロダクト・デザイン部分の改善に着手するという、デザイナーならではのビジネス戦略を編み出した。

歩みを止めることなく快進撃を続けるコンラン・グループ。そんな彼らが今月15日、グループ内の再編成プランを発表した。プロダクト・グラフィックス・ブランディング部門を統括する「Studio Conran」を設立。The Conran Shopやレストラン、カフェなどが集まった総合施設をロンドン東部のショーディッチに建設予定だという。50年間にわたり、デザイン業界を賑わし続けたコンラン。これからの彼の歩みにも、目が離せない。

 

欧州進出のノウハウ UNIQLO & MUJI 対談

欧州進出のノウハウ UNIQLO & MUJI 対談

近年になって欧州、米国、そしてアジア大陸にまで進出を果たした日本の大手服飾ブランド、UNIQLOとMUJI(無印良品)。そうした世界戦略のなかでもエルメス、シャネル、 そしてルイ・ヴィトンなどの一流ブランドを生み出してきたパリでの事業は、特別な意味を持っているという。そこで同地で良きライバルとして共に活動するUNIQLOフランスのマネージング・ディレクター、ポール・マイルズさんと、MUJIフランスの社長、大槻雅人さんの対談を実施。花の都パリならではの苦労話や、ロンドンとのトレンド戦略の違いなどについて聞いた。

(聞き手:本誌編集部 柳澤創)


MUJIの大槻雅人さん(左)とユニクロのポール・マイルズさん(右)

UNIQLOもMUJIもロンドンに欧州最初の店舗を開きましたが、ロンドン市場に対してはどのような印象を持っていますか。

大槻:ロンドン子ってトレンドに敏感なんですよ。ちょっと店舗が古くなるともう来なくなる。だから、常に商品も回転させないといけません。あと、値段の違いはそれほど影響しないのと、人が入っていない店には入りませんね。

マイルズ:価格はそんなに響かないものですか?

大槻:ある程度は価格も関係します。そういった意味では、トップショップはメチャクチャ上手ですね。

マイルズ:オックスフォード・ストリートのトップショップには、どの国の、どの業界の、どんな人でも行きますね。

大槻:プレゼンがうまいんです。あのうまさがトップショップをオックスフォード・ストリートに存続させているんです。価格も幅が広いので特別安いわけではありませんが、ちゃんと分けていますよ「見せどころ」と「売りどころ」を。

マイルズ:行くと何か「お得感」のようなものを感じます。

大槻:フランスで企画モノといえば、H&Mがうまいですね。

マイルズ:例えばラガーフェルドやカヴァリなどの限定デザイン。特にカヴァリの時はお客さんが並びましたね。米国では、数分で売り切れてしまったそうです。「え~数分で売り切れるんだ、うらやましい」って思いましたよ。

大槻:米国ではアバクロ(Abercrombie&Fitch)も人気がありますね。今やギャップ(GAP)を抜く勢いのブランドで、今度フランスにも進出するみたいですよ。

マイルズ:アバクロの商品はもともと狩猟関連のアウトドア中心で、エディバウアーに似てました。それが、今や方針をガラッと変えて、セクシャル路線の完全なリブランディングです。PRの仕方も独特です。男性モデルは上半身裸でムキムキ。女性は美人をそろえてますし、店内のプレゼンも面白いですよ。真っ暗なんです。

大槻:そうそう、スポットライトがポッと当たっているだけ。あまりにも暗いから、手に取っても品質の良さとかはよく分からないんだけど、でも、あのカッコ良さでついつい買っちゃうんだよね。

ユニクロ
ユニクロのフランス進出1号店、パリ西部ラデフォンス店
UNIQLO France

日本、欧州それぞれの地域の特徴とはどのようなものでしょうか。

大槻:サービスに関して言えば、やはり世界一は日本です。「いらっしゃいませ」から始まって、すべてのサービスがそろっている。一番ダメなのがフランス。でも、逆にいえばチャンスですよ。カスタマー・サービスを良くすれば、お客さんはすぐに喜んでくれますから。

マイルズ:全く同感です。

大槻:フランスの店舗は設立してからもう10年になるので、ある程度慣れてきましたが、最初の頃は社員教育でも「なんだこの国は?!」みたいな感じがありましたね。

マイルズ:僕も、フランスで初めて店員を見たときはびっくりしました。「これは違うだろ」って。日本では、商品が無くなる前に在庫を出して陳列させる、商品は気が付いたらすぐに畳み直すのが当たり前。けれど、それがこの国には全くない。決してフランスの店員が劣っているわけではないんです。「気付き」なんですよ。日本では、当たり前に行われているようなサービスに気が付いてくれれば、フランスのスタッフも伸びると思います。

大槻:MUJIも最初は大変でした。僕は商品を畳ませるところから教えたのですが、「タタメ!」って言っても畳まないんですよ。「俺はこの会社の社長だぞ」と言っても「私はあなたと面識がない」って。今でこそ笑い話ですが、最初は相当苦労しました。今、僕が社員教育で必ず行うのは、商品知識を教えることです。普段の会話は雑談が多いのですが、新商品などを入荷すると、まず商品知識をしっかり覚えてもらう。日本のサービスを無理に教えるのではなく、商品を覚えてくれると自然と社員たちもしっかりと成長してくれるんですよ。

マイルズ:まさにその通り!フランス人は興味のあることは一生懸命にやってくれます。ですから、教える時に興味を持ってくれるように教えようと努力しています。フランス人も、好きなことをやるときは残業するんですよ。

MUJI
パリのシャンゼリゼ通り近く、テルン大通りにあるMUJIテルン店
Muji France / Hajime YANAGISAWA

どのようなところに日本人と欧米人の違いを一番感じますか。

マイルズ:日本と米国の都会ではトレンドに興味を持っている人が多い。例えば、日本人がニューヨークに旅行したときに「アバクロ~」って買い求める人がたくさんいます。でも、フランスは特殊です。彼らは自分の消費バスケットを認識しているんです。靴にこれだけお金を掛けられる、カバンにはこれだけという具合に、いろんなブランドを持っています。しかも、この考え方は若い人だけでなくすべての層に当てはまります。

大槻:ロンドンも似たような面がありますね、パーツ、パーツで買うというか。でも米国で一番特徴的なのがメディアとのコミュニケーションのうまさ。店舗での演出、メディアでのPR、我々が考えつかないようなことをやってきますから。テレビを見てても「ウワァ~やられた」という感じ。消費意欲を刺激するうまさは断然米国です。

マイルズ:けれど日本進出を考えている企業があるなら、PRのうまさだけではだめです。瞬間風速はすごいかもしれませんが、日本だとそれだけではやっていけない。やはり日本では「信頼感」が一番。顧客サービスでどれだけ信用を得られるかということに尽きますね。

大槻さん大槻:僕が面白いなと思うブランドはZARAです。あそこは宣伝を一切しないんです。彼らが何に集中しているかというと「商品の回転」。10日に1回は、店の内容が全く変わりますから。お客さんにしてみれば「あ、いいな」と思っても次に来たときにはその商品は無いんです。するとどうなるかというと「う~ん、買っちゃえ」てな具合になるんですよ。僕なんか、普段あまり物を買う方ではないのですが、ZARAでは次に来たときには無いのが分かってるから買っちゃうんです。でも、家に帰って冷静に見てみたら「う~ん、イマイチ」なんてこともあるんですけどね。あの、価格戦略と商品の回転率、「もう無くなる」という恐怖感。うまい戦略です。

マイルズ:確かにZARAさんの「売り切れ御免」も戦略としてすごいと思いますが、弊社などは、お客さんがいらした時に商品がもう無いという状態は逆に恥ずかしい。常にお客さんのニーズに応えていくというのが弊社の考え方ですから。そういうことを考えると、やっぱりカルチャーの違いを感じますね。

大槻:MUJIはまさにZARAの対極ですから、ベーシックな部分をいかに維持していくかです。良質な商品とサービスを提供してお客さんの信頼を得て、固定客を少しずつ増やしていく。非常に日本的な考えなので、気の長い地道な作業ですが、それが実を結ぶと強みになっていくのです。MUJIフランスは、現在11万人以上の顧客リストを持っています。これはどういうことかというと、売り上げが落ちないんです。

マイルズさんマイルズ:他にフランスでびっくりしたのは、日本で一般的にオープン後、新規のお客さんに割引クーポン券などを配ってもリターン率は1~2%程でとても低いのですが、フランスでは、そのブランドに対しての信頼と理解があればリターン率がすごいんです。

大槻:確かに欧州ではこのリターン率が高い。特にフランスとイタリアですね。ドイツはというと、けっこう特殊で「へらぶな釣り」に似てます。ずうっと待ってから、ようやく釣り上げる感じです。その代わり一度釣ったらもう大丈夫という、ひとつの必勝パターンみたいなものがあるんですけどね。だから、ZARAのようなトレンドを追いかけて回転率の速い店舗はドイツでは今ひとつうまくいきません。逆にH&Mは売れているんです。もともと北欧系のブランドですから大きいサイズの商品がたくさんあるので、国民の体格が大きなドイツでもヒットしたのです。

マイルズ:今回UNIQLOがフランスに進出してからの課題のひとつに「サイジング」がありました。フランス国内だけでも北と南で体型が違うのに、観光地パリにはドイツやスペイン、北欧、東欧といろんな所から人が集まるじゃないですか。

大槻:以前一度だけ、うちの店舗全体でお客さんの比率調査を行いました。一番観光客が多かったのはパリ中心部マレ店です。リストを見てびっくり、ほぼ世界中の国籍がありましたね。そのリストでどの国の人がどのサイズのものを購入したかを見てみると、フランス国外から来た人の方が大き目のサイズを買うことが多かった。これは我々の勝手な解釈ですが、フランスに遊びに来られるだけの余裕がある人なので、それなりの財力がある。つまりあまりスリムな人がいないのかなという結論です。サイズとしてM(日本のL)以上。逆にフランス人はS(日本のM)サイズが圧倒的に多いです。

マイルズ:特にパンツだと違いがあからさまに出ますね。股下の長さ、ウェスト、ヒップの大きさなど。弊社では、アジア型と欧米型の2種類の他、少し価格の高い商品ではさらに細かくサイズを設定しますが、「どのように生産コストを抑えつつ良質の商品を提供できるのか」という部分が難しいところです。

大槻:今から13年前、ロンドンに最初のMUJIを立ち上げた時、我々はジョイント・ベンチャーでしたので商品はすべて日本からの輸入でスタートしました。でも、お客さんがフィッティング・ルームから出てくると、シャツは胸元が窮屈そうでしかも丈が短い、パンツはもうパツンパツン。日本サイズが欧州人に全く合っていないということを痛感しましたね。いったん日本からの輸入をストップし、東欧などを飛びまわりながら日本から持ってきたパターンを基にサイズ直しの日々が続きました。そして1997年、商品の30%分だけ欧州サイズのものを作って販売したところ、あっという間に売れたんです。その時の教訓から現在MUJIで販売しているものは、すべて欧州で制作した欧州サイズのものです。現在は次のステップとして、日本のデザイナーに欧州サイズのものをデザインしてもらい、日本、欧州共通のMUJIブランドの販売を考えています。

マイルズ:アパレル業界で、最終的に皆一体どこに持っていきたいのかと考えると「世界規格」なんですよね。そこに到達すれば、まさに金山を見つけたみたいな感じです。UNIQLOも日本のデザイン・スタジオをニューヨークに移して、デザインを変えてみたり試行錯誤しています。 ZARA、H&Mなどは、回転が速いので対応も速い。アパレル業界の2強です。

大槻:あの2社は、もう既に「世界規格」に近い部分まで来ていますね。この先の彼らの視野はおそらく、現在の客層の上下の層をターゲットに入れることです。その他にも生活雑貨の販売を始めたりと、戦略や動きは異常に速いですよ。ですから、今後我々は世界規格、世界標準という部分に速く到達して彼らの動きについて行かなければ負けてしまいます。宅配便並のスピードで製造してるんですよ。いかに相手が巨大になって力をつけてきたかというのが分かります。

Uniqlo   MUJI
Zara
オックスフォード・ストリート界隈にある(左上から時計回り)
ユニクロ、MUJI、そしてZARAの店舗

流行や限定品が好きな日本の客層に、逆輸入のような形でフランスや英国のMUJIやUNIQLOの商品を販売することは考えられますか。

マイルズ:実はUNIQLOでは既にそういった動きは始まっています。欧米のデザイナーとのタイアップで特別なラインを販売しているんです。しかし、日本では都会と地方では人気商品も違いますし、そこをどのように調整していくかというのが難しい。

大槻:都会と地方の違いという点では、フランスも一緒です。ZARAはパリだけでなく、パリ郊外から地方までたくさんの店舗を持っていますが、地方のZARAはパリの店舗とは商品の種類が違うんですよ。トレンドを追うパリとは違って、商品の回転はそれほどさせないんです。

フランスでの宣伝戦略についてお聞かせください。

大槻:欧州店舗設立後あらゆる媒体に宣伝を打ちましたが、すべてだめでした。他のブランドは、どうやってブランディングを行っているのかというのが僕の最初の疑問でした。答えは「店舗」です。どこに店舗を出すかが、ブランディングの要なんです。ここの住人がどこで、どのような消費行動を取っているのかを調べる。そして良い場所を見つけたら、そこに店舗を開店させるということです。

マイルズ:ブランドの知名度が無いと、100人が広告を見ても、5人しかその広告に気付かない。そのうち来店してくださるお客様は1~2人ぐらい。非常に打率が低いのです。ブランディングができていない間に、宣伝をいくら打っても効果は全く期待できません。

日本では当たり前のように存在している2000~3000平方メートル級の大型店舗を、将来フランスでも開店することができると思いますか。

大槻:もちろん可能ですし、是非将来は大型店舗をオープンしたいと思っています。けれど、大きな問題が1つあります。どういった商品を売っていくかということです。電化製品ひとつを取ってみても、日本とフランスでは規格も安全基準も全く違うんですよ。ですから、一つひとつ許可を取っていかなければなりません。また、仮に商品基準が承諾されたとしても、それらの商品にニーズがあるかはまた別問題です。単に日本から商品を持ってくるだけでは、大型店舗を構えてもただの器になってしまうのです。そのためには、日本からのバックアップが必要不可欠です。商品開発も欧州のニーズに合ったものが必要ですし、何よりもマンパワーですね。とても、僕ひとりではできません。

マイルズ:あとフランスで大型店舗を出すときに一番難しいのが営業許可です。この許可が非常に難しく時間も掛かる問題なのです。例えば大きな店舗をオープンさせれば目立つしインパクトもあります。でも市や区によっては「インパクトのあるものはダメ」と言われる。これは、「街の景観に合わないから」という理由のときもありますし、既存の小さな商店を守るということで大型店舗進出が無理な場合もあります。パリでの身近な例ですと、H&Mのシャンゼリゼ進出です。フランス国はH&Mのシャンゼリゼ進出を許可したのに、パリ市の回答は「ノン」。シャンゼリゼはパリの顔でもあるので、シャンゼリゼ通り組合の力は強いんですよ。この場合、大変なのは店舗を構える場所は既に確保しているのに、オープン許可が下りないので家賃だけ毎月発生している。出費だけがかさんでしまうのです。

大槻:でもシャンゼリゼに関して言えば、あの場所はひとつのマーケティング・ツールですよ。儲けよりも、ネームバリューが大事な場所ですから。一番良い広告は「シャンゼリゼ店」ということになります。どんなに広告を打つよりも、あそこにポコッと店舗を押し込むだけで、誰でもそのブランドを知っているというような錯覚が生まれますからね。ZARAはその良い例です。初めてのパリ出店が、シャンゼリゼだったんです。もちろん、ZARA自身にも出店には大きな障害もあったと思うのですが、世界進出で力を付けてきたブランドだけあって、弁護士や相談役などそうそうたるメンバーをそろえていますから違いますよ。

ユーロが高騰した結果、商品の価格を調整する必要に迫られることはありませんでしたか。

マイルズ:価格設定は、その国の市場に合わせた設定なのでユーロが高いから商品が売れないということにはなりませんね。確かに日本から来たお客様は、円換算すると高く感じてしまうかもしれませんが、ターゲットはあくまでローカル・マーケットなので障害にはなっていません。欧州ローカル市場の他社の価格設定よりもお手頃感があることが設定基準になっています。ですから、パリジェンヌから見れば弊社の価格帯は標準的、もしくは他社よりもお手頃といったところだと思います。

大槻:フランスの消費税は19.6%ですし、関税も日本よりも高い。人件費も高い。日本と同じ商品でも、日本人から見れば高いとなってしまうのはしょうがないことです。

マイルズ:分かりやすい例で言うと、ワイン付きのディナーを食べて50ユーロぐらい。これはフランスで標準的な値段です。でもこれを円換算にすると「8000円!こんな料理が」となります。ユーロが高いので円換算にすると高く感じますけど、もし1ユーロ=100円換算で計算すれば納得価格ですよね。だから、フランスでは円換算しないで現地の価格帯で判断するのが一番です。

大槻:給料もそうですよ。現在のレートで換算すると高いように思われがちですが、こちらの人に自分の給料金額を言うと「それしかもらっていないのですか?」と疑われます。

マイルズ:セールの時に、日本からお客さんが来たので案内したのですが「なんか日本とあんまり値段が変わらない」とガッカリされましたね。もちろん、セール終了間際の格安の時期に来れば、割安感を感じてもらえたかもしれません。時期によっては、日本の方が安かったりしますからね。

フランスで事業を成功させることに、特別な意味合いを感じていますか。

マイルズ:アパレルやファッション業界では、パリでの成功は重要です。日本市場にも米国市場にも影響しますし、欧州内でもモスクワや東欧、中東など、グローバルな意味で見ればパリでの成功は非常に重要です。

大槻:フランスでの成功の意味合いは、やはりZARAの成功が物語っています。92年にパリ・シャンゼリゼ通りに海外初の直営1号店(ポルトガルを除く)を出店してからは、連日大行列ができるほどの成功を収めました。それを機に一気呵成に海外出店し、そのユニークな商品戦略と出店スピードは世界を席捲、それから15年後に世界一のアパレル企業となっていきました。かつてはH&Mと同じような位置付けだったことを鑑みると、フランス、殊にパリでの成功の意味合いが理解して頂けるのではないで しょうか。

 

「英国の女たち」シリーズ 第3回 UK音楽業界の女たち

容姿、実力、キャラ、すべてが濃い!UK音楽業界の女たち

英国が世界に発信する音楽といえば、すぐに思い浮かぶのがインディーズ系のロック・バンド。でも最近それに負けじとチャートに色を添え、記録破りのヒットを飛ばしているのが女性ソロ・アーティストたちだ。アイドル・グループの一員じゃないと売れなかった時代は終わり、ようやく日の目を見ている英国の歌姫たち。英国を語る上では外せない、そして今年大注目のアーティストたちをご紹介しよう。

(本誌編集部: 國近絵美)

不幸が最高のスパイス人生も「ジャズ」な姐御肌
エイミー・ワインハウス   Amy Winehouse

1983年9月14日生まれ ロンドン出身

本名:Amy Jade Winehouse
ジャンル:ソウル、ジャズ、R&B
担当:作詞・作曲も手掛ける
Amy Winehouse

血だらけのバレエ・シューズ、剃刀の切り傷だらけの腕、マスカラが流れ落ちた頬。自傷行為にドラッグ中毒、そして投獄中の夫。もしエイミー・ワインハウスに歌がなかったら、彼女は一体どうやって生きていたのだろう。そしてもし彼女がいなかったら、英国のタブロイド紙は毎日どうやって紙面を埋めるのだろう──そんな心配をしてしまうほど、あらゆる種類の不幸を煮詰めたような濃く重い問題を抱え、そしてそのほとんどが現在進行形で大々的に報じられている彼女。それでもエイミーのCDが売れ、世界各国で賞を受賞し続ける理由は、まさに「才能」という一言につきるだろう。

03年にアルバム「Franc」でデビューし英国だけで67万枚のセールスを記録、ブリット・アワードやマーキュリー・プライズの候補入りを果たす。そして06年に発表したセカンド・アルバム「Back to Black」ではグラミー賞5冠を始めとする、ありとあらゆる賞を総なめに。先日発表された英国の30歳以下の音楽業界長者番付では資産2000万ポンド(約44億円)で堂々の10位に輝いた。トレード・マークであり「ハチの巣」と呼ばれる後頭部もっこりヘア・スタイルは知名度と共に人気を集め、あのシャネルのデザイナー、カール・ラガーフェルドをも魅了し「彼女こそミューズだ」といわしめるほど。最近ではギャラが1億円を超えるライブの依頼も続いているようで、まさに英国が世界に誇る「歌姫」に成長した。

とはいえ、エイミーには凡人離れした不幸がよく似合う。名字をもじった「Wino(安酒飲みのアル中)」という愛称そのままに、酒もドラッグも倒れるまでとことん楽しみ、去年11月から収監中の夫とは「21世紀のシドとナンシー」 ともいうべく激しい愛憎劇を繰り広げる。頬っぺたに根性焼きを入れようと、オーバードーズで入院しようと、ライブをどたキャンしようと天下御免。でも、「天城越え」をカバーさせたら天下一品、そして極妻が誰よりも似合うに違いないエイミー姐さんの激しさ、これからは音楽活動一 本に絞って欲しいところだ。


UK音楽業界を進化させた悪ガキ娘
リリー・アレン   Lily Allen

1985年5月2日生まれ ロンドン出身

本名:Lilly Rose Beatrice Allen
ジャンル:ポップ
担当:作詞・作曲、ギター
Lily Allen

ひらひらのドレスにスニーカーという出で立ちで颯爽とUK音楽業界に登場したリリー・アレン。オンラインのコミュニティ・サイト「MySpace」でデモ音源を公開しデビュー前からファン獲得に成功した、その後に続く「ネット出世型アーティスト」の先駆けだ。小鳥さんのような可憐な声とは裏腹に、日常生活を毒舌たっぷり、コックニー訛りもろ出しで唄うその姿はまさに「近所のネエちゃん」。男勝りで飾り気のないイメージと、アイドル系セレブとの口喧嘩やサイズ・ゼロ批判も手伝って、一躍全国に浸透した。

個人的な好き嫌いはともかく、リリーの英音楽業界への一番の貢献は「べったり濃厚、どこまでも追いかけます失恋女」系、あるいは「私って超セクシーでしょ」アイドル・グループ系といった、それまでメジャー受けしていた女性アーティストの枠をぶち壊したことだ。バンドが主流の英音楽界に、ポスト・リリーとして口達者な女性歌手が多く登場したのもまさに彼女が切り開いた道のおかげ。音楽もキャラも好き嫌いがはっきり別れるのはこの際ご愛嬌といったところだ。

コメディー俳優のキース・アレンを父に持ち、映画プロデューサーの母親に、弟も最近注目株の俳優という芸能一家出身のリリー。とはいえ、酒やドラッグの使用が見つかって13校もの学校を転々とし15歳でドロップアウトしたお転婆娘でもある。その同じ年には、母親に友人宅に泊まると嘘をついてイビサ島でドラッグを売って生活したり、恋人との別れを苦に自殺未遂を図り、監視つきの施設に4週間入院したりしたという、エイミー・ワインハウスもびっくりのエピソードも隠し持つ。今年初めに当時恋人であったエド・シモンズ(ケミカル・ブラザーズ)との子どもを流産してから元気が無いとはいえ、現在2枚目のアルバムを製作中。BBCにトーク・ショー「Lily Allen and Friends」を持ち、演技の世界にもかなり興味を示しているといわれる彼女、しばらくはリリー節でお茶の間を賑わしてくれることだろう。


削って磨いて商品化  人生もダイヤモンドの原石
ダフィ   Duffy

1984年6月23日生まれ ウェールズ出身

本名:Aimee Anne Duffy
ジャンル:ソウル、ポップ
担当:作詞・作曲
Duffy

モータウン風な60’sサウンド、スモーキーな声に拳を利かせた独特の歌い方、小柄ながらプリプリしたセクシーさ ──古いアルバムから取り出したような、洗練されつつも肌なじみの良い「ヴィンテージ」な雰囲気をかもし出すダフィ。そしてそれらのイメージと、ウェールズの村出身という「田舎者=素朴」なギャップが彼女の売りだ。

人口約2500人という村で10歳の頃までウェールズ語を母国語として育ったダフィは、歌手を夢見ていたものの全く手ごたえがなく、夢を諦めかけていた。だが手当たり次第に送ったデモ・テープが名インディーズ・レーベル「ラフ・トレード」の創立者に気に入られ、ロンドンに移動。元「スウェード」のバーナード・バトラーをプロデューサーに迎え、デビューするや否や大ヒット、英国ではすでにレオナ・ルイスのチャート記録を更新する勢いだ……。

こう聞くとまるで英国版シンデレラ・ストーリーだが、 ダフィの事務所が打ち出すイメージは、マドンナも所属する広報事務所という「プロ中のプロ」によって、盆栽のようにきれいに剪定されている。例えば13歳の頃に母親が再婚した際、元妻が3000ポンドで義父の暗殺者を雇っていたとか、19歳の時にオーディション番組「Wawffactor」(ウェールズ版「Xファクター」)に出場して準優勝していたとかいう話は、全く聞こえてこないのだ。そのうちダフィのソウルフルな歌声と共に、レーベル契約からデビューまでの謎の準備期間4年間の話も、聞こえてくるかも……?


ただ抱きしめて欲しい 毛布のような歌声
アデル   Adele

1988年5月5日生まれ ロンドン出身

本名:Adele Laurie Blue Adkins
ジャンル:ソウル、ジャズ
担当:作詞・作曲、ギター
Adele

「男に不自由しない限り痩せようと思わない。で、不自由してないから痩せない」。そう豪語する、日本では滅多にお目にかかれないタイプの、しかしとっても英国人らしい歌手、アデル。先月恋人がバーバリーのモデルに乗り換えた時も「絶対に痩せない」と言い切った彼女は、現在、英国音楽業界が最も注目している新人の1人だ。

「第2のエイミー・ワインハウス」として売り出されたアデルの魅力は、なんといっても圧倒的な包容力を持ち「トラフィック・ストッパー(思わず立ち止まってしまう声)」と称される声音。「お母ちゃん」と呼びかけたくなるオバタリアン・キャラも、歌い出すと一転、19歳(5月5日で20歳)とはとても思えない、酸いも甘いも知りつくした憂い漂う歌姫に激変する。シングル・デビューする前に老舗音楽番組「レイター・ウィズ・ジュールズ・ホランド」でTVデビュー、そしてアルバム発表もしていないうちから08年度のブリット・アワードで、批評家たちが最も有力な新人に贈る「Critics Choice」賞を受賞するなど、異例のラブコールを受けているのも頷ける。

一方で、タバコと下ネタとゴシップ雑誌が大好きというアデル。業界には珍しく、スパイス・ガールズやガールズ・アラウドといったバリバリのガールズ・ポップも大好きと認める正直者でもある。「将来はポップ歌手に曲を書いて、印税で暮らしていきたい」というから、意外な場所で彼女の名前を目にする日も近いかもしれない。


英国初の 「いい子」歌姫誕生
レオナ・ルイス   Leona Lewis

1985年4月3日生まれ ロンドン出身

本名:Leona Louise Lewis
ジャンル:ポップ、R&B
担当:作詞・作曲
Leona Lewis

オーディション番組「Xファクター」に出場し、審査員から「スターとしての素質がない」など厳しい意見を言われながらも見事勝者となったレオナ。「英国版『ASAYAN』出身ということは、英国版『モーニング娘。』ってこと?」という疑問は全くの杞憂で、「第2のマライア・キャリー」 と称される、歌唱力が売りの正統派ディーバなのだ。

06年に発表したデビュー・シングルが30分で5万人にダウンロードされ世界記録を樹立して以来、英国、米国のみならず全世界で様々な記録を打ち立てている、「英国の星」となったレオナ。これまで米国からの輸入に頼っていたR&Bやポップのジャンルで、米国チャートを駆け上ってぎゃふんと言わせてほしいところだ。ただ問題は、家族受けの良い「いい子ちゃん」イメージがこれから吉と出るか凶と出るか。9歳の頃から仲が良い彼氏と同棲中というのも、今の英国音楽業界では逆にちょっと浮きすぎな気も……。


リリーも絶賛のミニ・アレン
ケイト・ナッシュ   Kate Nash

1987年7月6日生まれ ロンドン出身

本名:Kate Marie Nash
ジャンル:ポップ、ロック
担当:作詞・作曲、ギター、キーボード、ベース
Kate Nash

13歳のころから作曲を始め「歌う物語作家」と呼ばれるケイトは、落語家のような機転やトンチの利いた歌詞が人気。類稀なる人間観察力と、それを歌詞に置き換えキャッチーな曲をつける才能は、まさに「第2のリリー・アレン」の謳い文句がぴったりだ。

でも実はケイトが夢見ていたキャリアは女優で、高校は演劇学科だったという。卒業後に演劇学校のオーディションに行き失敗し、失意を紛らわそうと映画を観に行ったら階段から転がり落ちて足を骨折。3週間寝たきり状態になった時に両親からエレキ・ギターをプレゼントされ、足を動かせるようになるとライブを決行した。MySpaceで発表した音源をリリー・アレンが褒めちぎったことから爆発的に人気が出て、あれよあれよという間にレーベルと契約へ。才能さえあれば「棚からぼた餅」もこんなに上手くいくものか……とため息ものだ。


逆輸入ヒットで吼える孤高の獅子
エステル   Estelle

1980年1月18日生まれ ロンドン出身

本名:Fanta Estelle Swaray
ジャンル:ヒップホップ、R&B、ラップ、ソウル
担当:作詞・作曲、プロデューサー
Estelle

04年にデビューしながらもひっそりと消え去り、今年3月にシングル「アメリカン・ボーイ」のヒットで堂々のカムバックを果たしたエステル。自身のレコード・レーベル「Stellar Ents」を持ち、20代とはとても思えない貫禄に溢れる彼女は、現代のUK音楽業界に1人立ち向かう獅子のような存在だ。「黒人女性アーティストよりも白人女性アーティストが優先されている」とか、「英国人ヒップホップ・アーティストの市場がない」とか至極まともなことを言うかと思えば、大きく的外れするのが玉にきずでもある。

アデルとダフィを名指しで「彼女たちは『黒人音楽』を歌っているっていうけど、彼女たちの音楽なんて私には何の意味もない」と罵倒。ダフィに「才能と願望さえあれば、肌の色なんて関係ない」とまっとうな反論をされている。英国に見切りをつけて米国に移動し、今回逆輸入という形でようやくヒットしたのだから、鼻息荒くなる気も分かるけれど。

ディーバたちの関係図

「世界は狭い」というけれど、UK音楽業界は本当に狭い!というわけで、今回紹介した歌姫たちの人間関係やつながりを覗いてみよう。

関係図


ブリット・スクールとは

「The BRIT School for Performing Arts & Technology」、通称「ブリット・スクール」。BRITとは「The British Record Industry Trust」の略で、所在地はロンドン南部のクロイドン。助成金を得ているが政府からは独立した機関で、パフォーマンス・アートとメディアの教育のみに焦点を絞った英国唯一の無料学校である。

英国のグラミー賞と称される「ブリット・アワード」は、学校の資金集めとして開催されていることで有名だ。ヒット・チャートを同卒業生が独占してしまいそうな、今最も勢いのある英国の「タレント養成学校」で、インディーズ系バンド「フィーリング」やグラミー賞候補入りも果たしたイモジェン・ヒープも同校の卒業生。


なぜ「第2の○○」が多いのか

ドイツ生まれのふわふわの天使、北極グマのクヌートが世界中で熱狂的な人気を集めると、その後別の北極グマが生まれる度に「新生クヌート」として大々的に紹介される今日この頃。そう、これこそが音楽業界でも顕著に見られる「便乗してしまえ現象」なのである。

例えば、エイミー・ワインハウスが爆発的に人気となると、彼女のファンたちは「同じジャンルの音楽をもっと聴きたい」という欲求を持つようになる。するとレコード会社はここぞとばかりに同類の新人を売り出しにかかり、彼女たちが好もうと好まざろうと、同じジャンルのアーティストだと分かり易いよう「第2のエイミー」と呼び大々的に宣伝するのだ。


MySpaceヒット・チャート

アーティストたちの生の声を聞くことはもちろん、今やセールスにも影響を及ぼす業界の「広告ツール」となったMySpace。今回登場したアーティストたちのヒット数で、ファンの注目度を見てみよう

1位 リリー・アレン
1570万ヒット
2位 レオナ・ルイス
1381万ヒット
3位 エイミー・ワインハウス
1250万ヒット
4位 ケイト・ナッシュ
888万ヒット
5位 アデル
295万ヒット
6位 ダフィ
225万ヒット
7位 エステル
171万ヒット

*数字は全て4月29日現在。万単位以下は省略

 

「英国の女たち」シリーズ 第2回 政界の女たち

裏で表で、英国政治を左右する政界の女たち

女は三歩下がって夫を立てる……、そんなイメージの強い日本の政治家の妻たち。しかし、ここ英国は彼女たちの存在こそが、どんな優れた政策よりも世にアピールすることがある。「英国の女たち」シリーズ第2回となる今回は、時にその美貌で、時にその聡明さで、政界の一翼を担う個性的な「政治家の妻たち」をピックアップ。自らが表舞台に立つ女性政治家たちも合わせてご紹介します。

(本誌編集部: 村上祥子)

政治家の妻たち

「カーラ・ブルーニ、ファッション外交で英国を魅了」……。今年3月、サルコジ仏大統領が英国を訪問した際、世間の注目を集めたのはブラウン首相でもサルコジ大統領でも、はたまた外交政策でもなく、有名ブランドに身を固めたカーラ・ブルーニ新仏大統領夫人の華麗な姿だった。いまや妻によって夫の政治家生命が左右される時代になったのかもしれない!?


逆境を経て強さを増す「待ちの女」
サラ・ブラウン   Sarah Brown

1963年生まれ バッキンガムシャー出身

ゴードン・ブラウン夫: ゴードン・ブラウン (英国首相)
Sarah Brown

よく見るとなかなか整った顔なのに、旦那さま同様、イマイチ「地味」なイメージが抜けきれないサラ・ブラウンさん。しかし、サラさんの「政治家の妻」としての強みは、外見以外のところにある。

結婚と同時に経営していたPR会社を辞め、夫のサポートに専念。チャリティー活動に熱心なところといい、おしとやかなイメージが強いサラさんだが、ブリストル大学在籍中には、「ザ・トレンディーズ」という「過激派」集団の中心人物として活躍。パーティーでは自身の体を金色に塗りたくったというから、そのおとなしい外見の内には燃えたぎる情熱が隠されているに違いない。

結婚に至るまでの道程は一筋縄ではいかなかった。30歳を過ぎてから仕事を介してブラウン首相と知り合い、お付き合いをすることになったサラさん。しかし何事にも慎重なブラウン首相は、付き合いは極秘、結婚を決意するまでにも数年を要したという。

結婚した後も苦難の道は続く。念願かなって生まれた女児、ジェニファー・ジェーンちゃんは生後わずか10日で早世。2003年には長男のジョン君、06年には次男のジェームズ・フレイザー君が誕生するが、次男は遺伝性疾患の嚢胞性線維症(のうほうせいせんいしょう)であることが判明。サラさんは喜びと悲しみを行ったり来たりの人生を送ることになる。

しかし、ここでめげないのがサラさんの強いところ。耐えの人生で培った根性で、夫が首相の座に付くまでの10年間を静かに乗り切り、いまや首相夫人の座に収まった。

外見の美しさだけでは、飽きられるのも早いもの。数年後、誰より強く、したたかに政界を生き抜いているのは、ひょっとしたらサラさんのような女性なのかもしれない。


好感度の秘訣は「バランス」
サマンサ・キャメロン   Samantha Cameron

1971年生まれ ノース・リンカーンシャー出身

デービッド・キャメロン夫:デービッド・キャメロン(保守党党首)
Samantha Cameron

エレガントながらカジュアルさを忘れないファッションに身を包み、高級文具店スマイソン、ボンド・ストリート店のクリエイティブ・ディレクターでありながら良妻賢母の雰囲気を程よく漂わせている、バランス感覚に優れたサマンサさん。2007年10月に行われた保守党の年次党大会では、夫の姿をつぶらな瞳で見つめる、少女マンガの主人公のような姿がメディアに注目された。

夫同様、良いところ出のお嬢さまで、父は大地主のレジナルド・シェフィールド卿。英北東部のリンカーンシャーに位置する約120万平方メートルもの広大な屋敷で育った。キャメロン氏と出会ったのは、10代のとき。キャメロン氏の妹が親友なのがきっかけだったとか。良家同士が脈々とつながっていく典型的パターンである。

その一方で、ブリストル・ポリテクニック在学中にはヒップ・ホップ・シンガーのTrickyとビリヤードに興じ、足首にはイルカの刺青を施すというワイルドな一面も。夜な夜なナイトクラブに通いまくっている割りには清潔なイメージのあるウィリアム王子のガールフレンド、ケイト・ミドルトンさんに通じるものがあると言えなくもないかも。

以前、「私はデイヴ(デービッド)に『何をどう言え』とは言わないわ。ただ彼のためにここにいたい、それだけなの」などと殊勝なことを言ったことがあるが、ある意味、夫のやることに積極的に口を出していたブレア元首相夫人、シェリーさんに対する強烈な嫌味ととれないこともない。あまり敵には回したくないタイプだ。

ちなみに彼女の曾曾曾曾曾曾曾曾祖母はスチュアート朝時代の英国国王、チャールズ2世を魅了した寵姫、ネル・グウィンとも言われている。やっぱり手強そう……。


第2のシェリー夫人なるか!?
ミリアム・ゴンザレス・デュランテス
Miriam Gonzalez Durantez

生年月日不明(39歳)スペイン出身

 ニック・クレッグ夫: ニック・クレッグ (自由民主党党首)
ミリアム・ゴンザレス<br /> ・デュランテス

昨年12月、40歳という史上最年少で政党党首となったニック・クレッグ自由民主党党首。キャメロン保守党党首とヒュー・グラントを足して2で割ったような爽やかな風貌のクレッグ氏の妻、ミリアム・ゴンザレス・デュランテスさんは、これまた漆黒の髪にエキゾチックな雰囲気が魅力的なスペイン出身の国際弁護士だ。

外務省で中東和平問題の専門家として活躍、現在は多国籍法律事務所ディーエルエー・パイパーで国際貿易部門の責任者として活躍している才媛。第一子をもうけた際には、長めの育児休暇を取ったクレッグ氏よりも早く職場に復帰したとかしないとか。弁護士という職業、夫婦別姓で通す姿勢、どことなくトニー・ブレア元首相の妻、シェリーさんを彷彿とさせるバイタリティ溢れる女性だ。

一流のキャリアウーマンにして2人の子持ち、しかも美人。すべてを兼ね備えているように思えるミリアムさん。唯一の心配事は、クレッグ氏が3月、「GQ」誌のインタビューに語った「これまでに寝たことのある女性の数は、たったの30人」発言か。浮気をしたことはあるかと聞かれ、「もちろん、そうでないことを願っているよ」とヌケヌケと答えたクレッグ氏。どんな才媛でも、夫の浮気ばかりはどうにもならない!?


閣僚にして政治家の妻
イベット・クーパー   Yvette Cooper

1969年生まれ スコットランド出身

エド・ボールズ 夫: エド・ボールズ(児童・学校・家庭相)
役職: 財務相主席担当官
Yvette Cooper

美人とは言えないかもしれないが、真ん丸の顔に愛嬌のある笑顔がキュートなイベット・クーパー。しかしその外見にだまされてはいけない。彼女こそ女性初の財務省主席担当官にして、ブラウン首相の右腕であるエド・ボールズ児童・学校・家庭相の妻という、「政治家の妻」兼「女性政治家」、いわばバリバリの「政界の女」なのである。

名門オックスフォード大学でPPE(哲学・政治学、経済学)を学んだイベットさん。学位取得後は、ケネディ奨学金を得て米ハーバード大学へ。最終的にはロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で経済学の修士号(MSc)を取得したという、まさに「一つくらい分けてくれ」と言いたくなるようなご立派な学歴の持ち主である。

「ウェストミンスターのゴールデン・カップル」とも言われるボールズ・クーパー夫妻。結婚は1998年、現在は1男2女のお母さんでもある。出身大学、専攻、留学先が一緒、ともにジャーナリスト出身(イベットさんは「インディペンデント」紙、エド氏は「フィナンシャル・タイムズ」紙)、そして選挙区はウェスト・ヨークシャー州内のお隣同士。ソックリな経歴に加えて、これまた夫婦揃っていつでも楽しそうなえびす顔。似たもの同士のエリート・カップル、このままどこまでも仲良く政界を突っ走っていってもらいたいものである。


オトボケ加減が憎めないエリート妻
シェリー・ブレア   Cherie Blair

1954年生まれ グレート・マンチェスター出身
(仕事時には旧姓シェリー・ブースを使用)

トニー・ブレア夫: トニー・ブレア(元英国首相)
Cherie Blair

勅撰弁護士にして、政治にも積極的に口を出す、トニー・ブレア元首相夫人のシェリーさん。普通ならちょっと敬遠したくなるタイプだが、どうも憎めないのは、その天然ぶりゆえであろう。

シェリーさんのオトボケ列伝は、1997年、労働党が総選挙で勝利を収めた翌日から始まる。自宅に送られた花束を受け取りに、ボサボサ髪にパジャマ姿でご登場。張っていた報道陣を喜ばせた。その数年後には、ロンドン地下鉄で移動時にチケット不所持で御用。トドメは2006年9月、ブレア首相の進退問題が話題になっていた最中に、次期首相候補ブラウン財務相(当時)が行った首相称賛のスピーチを聞いて一言、「嘘つき」……。

長年、首相夫人の座にいたにもかかわらず、褪せることのなかったこの天真爛漫さ。「女は愛嬌」を体現している女性だ。


古き良き英国人女性の強さをここに見る
クレメンタイン・チャーチル
Clementine Churchill

1885~1977年 ロンドン出身

ウィンストン・チャーチル夫: ウィンストン・チャーチル(元英国首相)
Credit: IWM
Clementine Churchill

強烈な個性と圧倒的な指導力で、戦時中の英国を率いた名首相、ウィンストン・チャーチル。そんな夫を影で支え続けた妻、クレメンタインさんには、古き良き英国人女性のしなやかな強さがあった。

伯爵家ゆかりのお嬢様と、名門宰相のカップル。順調満帆の人生のようにも思えるが、毒舌家で躁うつ病の気があったチャーチル、そんな夫とともにあった彼女の日々は、時に波乱に満ちたものであったろう。しかし彼女の人生が幸せなものであったことは、結婚30周年目にチャーチルが語った言葉から覗える。いわく、妻には2つの欠点がある。「プロポーズをすぐに了承した軽率さ」と「30年間、こんな私に黙ってついてきた愚かさ」だ、と。ひねくれものの英国人らしい、妻への感謝と愛情に満ちた言葉から、彼がいかにクレメンタインの変わらぬ献身に救われていたかがよく分かる。


「鉄の女」を支えた糟糠の夫
デニス・サッチャー   Denis Thatcher

1915~2003年 ロンドン出身

マーガレット・サッチャー妻: マーガレット・サッチャー (元英国首相)
Denis Thatcher

どんな妻よりも妻らしく、英国初の女性首相を温かく包み込んだ「ファースト・ジェントルマン」。

ジン・トニックをこよなく愛し、メディアの前では妻を「ボス」と呼ぶ。サッチャー家では誰がズボンを履くのかと聞かれた時には「僕さ。そして僕が洗って僕がアイロンをかける」と答えた、英国的ユーモアに溢れた人柄は人々に愛され、サッチャー元首相のイメージアップにもつながった。

デニスさんが亡くなったとき、元首相はこう言ったという。「首相とは孤独なもの。でもデニスがいれば、私は決して一人ではなかった。なんという男性、なんという夫、なんという友だったのでしょう」。表舞台にはほとんど出ることのなかったデニスさん。しかし元首相にとって彼は、光に寄り添う影として、かけがえのない存在だったのだろう。

女性政治家編

「9対8」。この比率が何を示しているか、お分かりだろうか。実はこの数字、つい先日発表された、スペイン内閣における女男比の割合なのである。このほか、フィンランドが12対8、ノルウェーが10対8と、欧州における女性政治家の躍進には目覚ましいものがある。ここでは過去・現在・未来における英国政治の舞台で活躍する、女性政治家たちの姿を追ってみよう。


仕事にも恋愛にも全力投球の女闘士
クレア・ショート   Clare Short

1946年生まれ バーミンガム出身

役職: 下院議員。元国際開発相
Clare Short

英国のイラク戦争参戦に徹底反対、政府が国連で盗聴している事実を暴露して話題になった「情熱の女闘士」。真一文字に結ばれた唇からも、その意志の強さがうかがえる。

なにしろこの人の信念の貫き方は半端じゃない。17歳のときに未婚の母となり、翌年に結婚するもすぐに離婚。生まれた子どもは養子に出した。1983年に労働党員として下院議員に当選以来、初代国際開発相に任命されるなど出世街道をひた走ったが、その間も2度、影の内閣時代に党の方針に反対して職を辞している。

2003年には、政府が国連決議を経ずにイラク戦争に参戦したことに対し、閣僚を辞任すると息巻くも、このときにはなぜか態度を保留。しかし、いつまでも煮え切らないブレア首相(当時)に業を煮やし、結局は内閣を去る。

そして極めつけがこれ。04年2月、クレアさんはBBCのラジオ番組内で、英国のスパイがコフィ・アナン国連事務総長(当時)の会話を盗聴していると暴露した。「売国奴」などと批判する声が各方面から聞かれたが、当の彼女はどこ吹く風。どこまでも肝の据わった女性である。

そんな女闘士も06年には次期選挙への不出馬を表明。これで静かな余生を……と思ったら大間違い。何と元同僚、故モー・モーラム議員の夫、ジョン・ノートン氏との交際が発覚したのだ。某雑誌のインタビューで「恋に落ちた」事実を認め、「人生って美しい」とその喜びを語ったクレアさん。生涯現役、仕事にも恋にも全力投球。これぞ情熱の女闘士の生きる姿なのだ。


悪女か、それとも英雄か……
マーガレット・サッチャー   Margaret Thatcher

1925年生まれ リンカーンシャー出身

役職: 元英国首相
Margaret Thatcher

「鉄の女」「牛乳泥棒」「英国で最も不人気な女性」……。サッチャーほど、英国政治史においてその評価が分かれる人物もいない。一つ確かなことは、82歳を過ぎた今もなお、凛とした美しさを保つこの英国初の女性首相が、人並み外れた決断力と統率力で戦後英国をまとめあげたピカイチの「政界の女」であるということだろう。

1959年にフィンチリー区の下院議員に選出され、政界入り。そして79年総選挙で保守党を勝利に導き、女性初の英国首相の座に就く。後に「サッチャリズム」と呼ばれる新自由主義を掲げ、国有企業の民営化や、大規模な教育改革を断行。教育分野では、高等教育の大衆化に尽力し、自らの出身校、オックスフォード大学の特権意識をも打ち砕き、同校が歴代首相に贈る名誉博士号も、彼女にだけは授与されなかった。

そんな女傑サッチャーも、やはり人の子、完璧な人間ではなかった。国を厳しく育て上げた彼女も、自らの子どもには甘かったのだ。溺愛していた双子の長男マークが20代の頃、カーレースに出場中にサハラ砂漠で行方不明になった際には初めてメディアの前で涙し、2億円もの費用を投じて多国籍捜索部隊を結成、居場所を突き止めた。また彼が2004年、赤道ギニアのクーデター支援の容疑で南アフリカで逮捕された際には、約3400万円をさくっと支払って保釈手続き。翌年には同地の裁判所と司法取引をして執行猶予つきの判決をもぎとった。

英国政治史に燦然と輝く女性首相の親バカな一面。意外な人間らしさにホッとする一方で、どこまでも鉄の女であり続けて欲しいと思うのは、勝手な願いだろうか……。


土壇場で逆転ホームラン
ハリエット・ハーマン   Harriet Harman

1950年生まれ ロンドン出身

役職: 下院院内総務、女性・平等担当相
王璽尚書、労働党幹事長、労働党副党首
Harriet Harman

日本の大企業のサラリーマン並に肩書きがズラズラ長いハリエット・ハーマン。2007年6月、労働党副党首選で予想外の勝利を収めたはいいが、同年11月、同選がらみで不動産開発業者から他人名義で5000ポンドの献金を受け取ったことが発覚。また今年4月初旬には、ガッチガチの防弾チョッキを着て地元ペッカム地区を視察している姿を各紙が報道。「ウチの近辺はそんなに危険な場所なのかい」と地元民からの嘲笑を受け、一時はすわ、政治家生命の危機かと思われた。しかしここで彼女は起死回生の一打を放つ。

下院のクエスチョン・タイムでウィリアム・ハーグ保守党議員に「(視察に防弾チョッキなら)閣僚会議に行くときは道化師の格好をするのかな」と皮肉られた際に、以前、同議員が自身の名前を刺繍した野球帽を被っていたネタを引っ張り出し、「服装を相談するとしたら、野球帽を被った男にだけは勘弁だわ」と切り返し、一気に形勢逆転を成し遂げた。

生真面目なハーマンが、土壇場にきて芽生えさせた鋭いユーモアのセンス。これなら皮肉王国、英国の政界で、まだまだ生き残れるかもしれない。


最年少女性議員誕生なるか!?
エミリー・ベン   Emily Benn

1989年生まれ ロンドン出身

役職: 未定
Emily Benn

まだ「女性政治家」ではないが、将来有望な「女性政治家」の卵を一人。彼女の名はエミリー・ベン。そう、昨年秋に総選挙が囁かれていたときに17歳で労働党の下院選立候補者に選ばれ、世間の注目を集めた女子高生である。

エミリーは1989年、元下院議員トニー・ベンの長男、スティーブンの長女として生まれた。ちなみに叔父はヒラリー・ベン環境・食糧・農村問題相。過去4代にわたって政治家を輩出してきた、名門ベン家、期待のホープなのだ。

エミリーいわく、政治の世界に初めて足を踏み入れたのは2歳のとき。祖父の選挙運動に加わったのが最初だったとか。その後、14歳で労働党員に。昨年秋には結局、総選挙は行われなかったが、現在も2010年6月までに予定されている総選挙への参加の意志はマンマン。この選挙で当選を果たせば、最年少記録(21歳170日)を更新することになる。

ちなみに最近、オックスフォード大学への入学が決まった。専攻は歴史と政治。祖父や叔父の背中を幼い頃から見つめ続けてきた彼女の純粋な瞳は、どこまでもまっすぐ、女性政治家である将来の自分の姿を追っている。

 

「英国の女たち」シリーズ 第1回 バラエティ司会の女たち

英国人女性は仕切りが命 バラエティ司会の女たち

日本で放映されるテレビのバラエティ番組では、大物男性タレントが司会を務め、女子アナや若い女性タレントが進行を補佐するというのがいわば基本的な構図となっている。ところがどっこい、ここ英国では男性の力を借りずとも、女性1人で見事な仕切りを見せる司会者がゴロゴロいる。ということで、英国の各界で活躍する女性たちを特集する新企画「英国の女たち」シリーズ第1回のテーマでは、バラエ ティ司会者たちに焦点を当ててみました。

(本誌編集部: 長野雅俊)


内面は脆い冷血動物
アン・ロビンソン   Ann Robinson

63歳、リバプール出身
太縁の眼鏡、首回りの皺 、そして甲高い声。
まさに魔女として適役である

「The Weakest Link」BBC1 月~金 17:15‐18:00
Ann Robinson


BBCの人気クイズ番組「The Weakest Link」の司会者。無表情な顔と声で、クイズの回答者を次々と罵倒していくスタイルを確立して支持を集めた。言葉の暴力で弱い者を痛めつけていく様は、まさに冷血動物そのもの。ただイジメの対象となる回答者の中には、そんな彼女の言葉責めを恍惚の表情で受け入れている者もいる。サゾとマゾが快楽を貪り合う様子を、全国のお茶の間に余すことなく伝えるBBCの懐の深さには頭が下がる。

元々はタブロイド紙の記者として才能を発揮。ダイアナ妃(当時)が摂食障害に陥っていることを暴いた敏腕記者だったという。だが王室の圧力に遭い担当を外され、やがてテレビに活動の場を移すようになった。

バツイチで、2度目の結婚も既に破綻している。アルコール中毒に陥った時期も長くあったようで、割と内面は脆いのかも。そういえば、回答者を苛めているときも声が裏返りそうになっていることがある。アン、無理しなくていいんだぞ。


深刻な顔を作らせたら英国No.1
ケイト・ソーントン   Kate Thornton

35歳、グロスターシャー出身
2006年に「National Television Award」を
受賞したときにはさすがにニッコリ

「X Factor」 ITV 2008年8月頃に新シリーズが開始予定
Kate Thornton


つい最近までオーディション番組「X Factor(ITV)」の司会をやっていたのに、突然クビになった人。英国人の中には、2007年に行われたダイアナ元妃追悼コンサートでのテレビ放送の司会者として覚えている人も多い。

彼女の十八番は、不幸の種を撒き散らしそうなほどの深刻顔。「X Factor」では出場者の落選が告げられる段階になると、目いっぱい眉間に皺を寄せて唾を飲み込みながら判定の瞬間を待っていた。あまりに思い詰めた顔をするので、体のどこかが悪いのではないかと見ていて心配になったほどだ。

22歳でポップ音楽雑誌の編集長に就任した経歴を持つケイト。「X Factor」の司会をクビになり、随分と落ち込んでいるらしいとの噂がタブロイド紙から流れたが、私生活ではクラブ・ミュージックの大御所「Underworld」のメンバーとついに婚約を果たした。5月には出産を控え、今は休業中。どうか幸せになっておくれ。


聖火を奪われそうになりました
コニー・ハック   Konnie Huq

32歳、ロンドン出身
化粧も薄め、等身大の美しさで
子供たちに人気のコニー・ハック

「Blue Peter」 BBC1 月~金16:35‐17:00
Konnie Huq


今年1月まで約10年にわたってBBCの子供番組「Blue Peter」の司会を務め、その前はFIVEの子供番組である「Milkshake」にも出演していた典型的な「お姉さん」キャラ。だがバングラデシュ出身の両親を持ち、ケンブリッジ大学で経済学の学位を取得した彼女は、英国移民が鏡とする「成り上がり」でもある。容姿が美しいために何度も男性誌のヌード写真撮影の依頼があったようだが、なんぼ積まれても頑なに拒んだという。子供番組の司会を長年務めるには、それなりの純潔を維持することが求められるってことなんだろう。

彼女がさらなる注目を浴びたのが、ロンドンで行われた北京オリンピックの聖火リレー。乱入者に聖火を奪われそうになった、そうあの人である。オリンピックの理想を高らかに語り、中国の人権問題についても懸念を示すなど社会派な面もチラホラ。子供とも大人とも語り合える、なかなか奥深い人間のようだ。


夫婦司会でやっています
ジュディ・フィニガン   Judy Finnigan

59歳、マンチェスター生まれ
ジュディの方が8歳年上。典型的な姉さん女房である

「Richard & Judy」 Channel4 6月14日から月~金 17:00‐18:00
Judy Finnigan


夫婦司会で有名なリチャード&ジュディの妻の方。独自のスタイルを前面に出しながらテンポよく仕切っていくのが英国のバラエティ番組司会の主流になっている中、旦那でもある男性司会者のリチャードを立てながら、間合いを計って進めていくところが彼女のセールスポイントとなろう。

2001年までITVで放映された「This Morning」で、爽やかな朝の顔として定着。同番組の終了後も、放映時間と放送局を変更して「Richard & Judy(Channel4)」を開始した。同番組の中で彼らがお勧めの本を紹介する「Book Club」は、国民的な人気コー ナーとなっている。

「This Morning」から合わせたら既に20年も夫婦司会で売ってきたこの2人も、2008年の夏でとりあえず番組を打ち切るのだそう。そう聞くと、この普通のおばさんの声と顔が何とも愛しくなってくるのだから、不思議だ。


その笑顔の奥にあるものは?
ホリー・ウィラビー   Holly Willoughby

27歳、ブライトン出身
ITV系で不定期に放送されているバラエティ番組
「Feel the Fear」。男女対抗形式で過酷な課題に
挑戦するという番組内容は、まさに打ってつけ

「Dancing on Ice」 ITV 2009年1月頃に新シリーズが開始予定
Holly Willoughby


天真爛漫な笑顔と無防備とも言えるほどの人なつっこさで、老若男女から愛されるホリー。自立心旺盛で男勝りな女性が跋扈(ばっこ)するここ英国で、ここまで安心感を与えてくれる女性は貴重な存在だ。

彼女が現在の地位を確立したのは、2004年にITV系でスタートした土曜朝の子供番組「The Ministry of Mayhem」への出演あたりから。司会なのに自ら罰ゲームで頭からペンキを被ったり、泥まみれになったりして、共演する子供たち以上に無邪気にはしゃぐ様は清く美しかった。

街角で出会った素人の恋人探しを敢行する番組「Streetmate(ITV)」では、完璧なまでに優しいお世話役を務めた。その姿は親友のためなら自分の恋もあきらめる、そんなお人好しの女子学生さえ彷彿とさせたほど。

若い頃は「貧乳ウィラビー」と呼ばれて馬鹿にされ続けてきたという。ところが今年3月に最新シリーズが終了した、芸能人たちがフィギュア・スケートの演技を競い合う番組 「Dancing on Ice」では、胸のパックリ開いた衣装を着て登場し、「家族で見る番組としては刺激が強過ぎる」との苦情が発生。昔一緒に泥んこ遊びしていた幼馴染みが、久しぶりに会ったら急に大人びた女性に変貌していてびっくりした、そんなイメージだろうか。

実生活では、「The Ministry of Mayhem」の番組プロデューサーと昨年結婚している。こういうタイプって、意外と抜け目がない。


人生相談、仕切ります
トリーシャ・ゴダード   Trisha Goddard

50歳、ロンドン出身
彼女の仕切りによって、英国人家庭の道徳観が
形成されているといっても過言ではない

「Trisha Goddard」 Five 月~金 10:30‐11:30
Trisha Goddard


自身の名前がそのまま番組名となった人生相談企画「Trisha Goddard(Five)」は、彼女の仕切りなくしては成り立たない。平日の朝っぱらから不倫、家庭内暴力、借金地獄と、世の中で思いつく限りの不幸を一般人がさらけ出していくこの番組。非常識な生活に感覚が麻痺し切っているゲストに対してギョロっと目をむいて詰問し、会場とお茶の間の「あんたらおかしいんじゃないの」という雰囲気作りをしていく手腕は見事だ。彼女に同調して溜め息をつく英国人を、これまで何度見たことか。

トリーシャの尋問に加えてDNA検査なりウソ発見器なりが気安く登場してくるので、警察の取り調べと比べても遜色ない。時たま泣き出す出演者に対して彼女が温かい言葉をかけているが、これなぞベテラン刑事が出す温かなカツどんを思わせる。

ロンドン東部ハックニー生まれのタンザニア育ち、若かりし頃はスチュワーデスとして働いていたというトリーシャ。司会業に転じた後に始めた、現在の番組の前身である「Trisha(ITV)」が大ヒットするも、契約をめぐって経営陣とトラブルが生じたためにこの番組から身を引いた。そして心理カウンセラーなどの共演者を何人か引き連れて、別局で「Trisha Goddard」を開始したのだ。ほぼ同じ番組形式で、しかも番組名をなぜかフルネームに格上げしている。

結婚は過去に3度経験。最初の夫は実は同性愛者だったことが後に判明し、2人目の夫には産後直後に浮気され離婚した。いや、あんたの人生もすごい。


古傷抱えたスナックのママ
デビーナ・マコール   Davina McCall

40歳、ロンドン出身
3月中旬に放映されたBBCのチャリティ番組 「Sport Relief」
でも、ラジオ司会者のクリス・モイルス(写真左)への
熱烈な応援などで番組を盛り上げた

「Big Brother」 Channel 4 2008年夏頃に新シリーズが開始予定
Davina McCall


世界中の教育関係者から「低俗番組」との烙印を押される実験ドキュメンタリー 「Big Brother(Channel4)」の司会者。ただでさえ批判が絶えないこの番組にして、この人あり。サービス精神が旺盛なのだが、どうも頑張ろうとする気持ちが裏目に出てしまうことが多いようだ。

例えば番組観覧者からの暴言を煽ったとして、放送監視機関の調査対象になったことがある。水着が似合う出演者をインタビューする際に、なぜか自身も水着になっておばさんの肢体を見せつけた結果、視聴者から「醜い」と苦情が殺到した事件もあった。水着姿を披露してこの種の苦情を受ける女性司会者って、広い世界を見渡してもそんなに多くいないだろう。つまりは司会者としての行動をいつも逸脱しているのだ。日本で中年の女子アナが同じことをしたら、袋叩きにされるに違いない。

それでもめげずに己の司会業を貫き通す強い意志は、波乱万丈の人生によって培われてきた。若き頃は歌手を目指すもすぐに挫折し、パリの有名なキャバレーである「ムーラン・ルージュ」のオーディションに落ちたことも。ロンドンのクラブでホステスとして働き出したら、薬物中毒に陥り人生の階段を大転落。実は元彼の、英国が誇るギタリストであるエリック・クラプトンが彼女を懸命に支え、やがては現在手掛けるテレビ司会業に落ち着いたという。

「あなたは生き方が不器用なんだ」ってお客に言われていた、スナックのママを思い出す。


スケバン司会者
ファーン・コットン   Fearne Cotton

26歳、ロンドン出身
ライブの仕切りでも、座りながらの対談でも、
なんでもこなす万能型の司会者だ

「Fearne and Reggie’s Request Show」BBC Radio1
毎週土曜日 16:00‐19:00
Fearne Cotton


威圧感さえ覚えるカミソリのような鋭い目。どんな大物に対しても決して媚びない堂々とした態度。きっと、彼女にはスケバン刑事のような長いスカートとヨーヨーがよく似合う。

BBCで2005年まで放映されていた人気音楽番組「Top of the Pops」や、ラジオ番組「Fearne and Reggie’s Request Show(BBC Radio1)」での司会を始めとして、音楽系の番組への出演が印象強い。それはきっと、バンドマンたちを仕切るのが上手いからだろう。派手な衣装と突飛なメイクで着飾った複数の男たちに取り囲まれても、彼女は絶対に萎縮しない。それどころか、必ずしもおしゃべりが上手くない彼らロッカーたちと波長を合わせながらも、肝心なところはスパスパっと仕切っていく光景はあっぱれの一言。こういう風に男付き合いができる女性って、どんな場所でも重宝されるんだな。現在、テレビ番組のレギュラーは持っていないようだが、すぐに大役を任されることであろう。だって使い勝手がいいんだもの。

実生活においては、やっぱりロックないしポップ系の男性ミュージシャンとの交際歴が豊富。そういえば、ロックの祭典「ライブ8」のときには、オンエア中にロビー・ウィリアムズにも口説かれていた。ちなみに現在の彼氏は米国人のスケートボーダーだという。どうやらストリート系にも強いようだ。彼女の体全体に11個あるといわれるタトゥーが今、疼(うず)いている。

 

ブライトン・フェスティバルおすすめガイド

ブライトン・フェスティバルおすすめガイド

近ごろ何だか物足りなくて……と日常生活に漠然とした不満を抱いているあなた、最近ちょっぴり泣きたい気分……とカタルシスを求めているあなた、声がかれるぐらい爆笑したい……と笑いに貪欲なあなた。そんな皆さまの欲求不満を力技で解消してくれること間違いなしの「人生のクスリ」が、このブライトン・フェスティバルに凝縮されている。来るか来ないか分からない英国の夏を乗り切るのに必要なのは、ずばり、これだ!

(本誌編集部: 國近絵美)

パフォーマンス
探偵気分で後をつければ、男女のホンネが見えてくる

HAPPY TOGETHER

Happy Together開放的な土地柄から、乱痴気パーティーのメッカと称されるブライトン。その雰囲気と特徴を活かしたこの劇は、独身最後の自由を謳歌しようと街を徘徊する男女のグループを追ったものだ。しかも、観客が文字通り登場人物たちを「追う」という驚きの参加型パフォーマンスとなっている。

何が起こるか分からないスリルと緊張感のなか、別行動する男女の跡をそっとつけながらの鑑賞は、まさに禁断ののぞき見気分。しかも物語が進むにつれ、パフォーマーたちが街角から現れ加わっていくというから、気を抜く暇もない。ジェットコースター並みのドキドキ感を味わいたい人に。

日時 5月15日(木)~17日(土) 19:30
料金 £18 (14歳以上)
スタート map1JUBILEE SQUARE Jubilee Street, BN1 1GE

ファミリー・シアター
柔らかい光に包まれて、いざ幻想の世界へ

BRILLIANT

Brilliant視覚に訴えるものは、心にも訴える──ビジュアルを重視した舞台デザインに定評のあるシアター・カンパニー「Fevered Sleep」による、「光」に焦点を当てた3、4歳向けの劇。この作品は、いうなればこれまでの作品群の「いいとこ取り」だ。生演奏の音楽に合わせて、美しい照明やちびっ子たちの想像をかきたてる舞台装置や演出が惜しみなく披露される。さあ、柔らかくって温かい、光で作られた空間に飛びこんでみよう。

日時 5月11日(日) 13:30、15:30
料金 £4 (3、4歳向け)
場所 map2University of Brighton,
58-67 Grand Parade, BN2 0JY

シアター
時代や世代と共に移りゆく親子の姿とは

SO CLOSE TO HOME

SO CLOSE TO HOME1軒のレストランを舞台に、父親、息子、孫という親子3代にわたる男たちの物語を描いたダーク・コメディー。そしてこの物語が演じられるのは元ピザ屋という、なんともストーリーにぴったりの空間だ。自分のルーツは何なのか。自分は今、住んでいる場所に馴染んでいるのか。なぜ皆そんなに不安そうに生きているのか。なぜ、皆はじっとしていられずに移動し続けるのか……。笑いの裏に潜む、現代社会に生きる男たちの生の声と疑問に耳を傾けよう。

主人公のロバートは、苦労のすえ商売を営みレストランを立ち上げたシェフだ。移民として来英し成功したものの、うまく環境に順応することができないため一匹狼の彼は、ひたすらキッチンにこもっている。しかし最近、仕事のパートナーがロバートに冷たく、息子はなんとか店の後継ぎから逃れようと反抗してくる。そんな時、25年間一度も会っていない父親が、レストランをふらりと訪ねて来た……。他人のような親子3人は、果たして理解し合えるのか?

日時 5月13日(火)~25日(日) 19日は休
時間はウェブサイトを参照
料金 £15(12歳以上)
場所 mapNO.10 CIRCUS PARADE
New England Road, BN1 4GW

ダンス
体が音と光に変わる瞬間を見届けよう

GLOW

GLOWデジタル映像が織り成すバーチャル世界で、官能的に、グロテスクに、非現実的な突然変異を繰り返す1人の人間。ダンスとインスタレーションが見事に溶け合ったこの作品は、ダンス・カンパニー「Chunky Monkey」と、ビデオ・トラッキング・システムの開発者とのコラボレーションによって実現した。体の動きを光や模様に変えるシステムの手にかかれば、ダンサーは瞬く間に異生物に変身。幻覚を見ているような錯覚さえ起こすこの視覚効果に備わった、現実世界からの束縛を解く力を体験しよう。

フロア全体をスクリーンとして使用するため、ダンスは全て寝転がった状態で行われる。観客は幾何学的な映像美を上から眺める仕掛けだ。出演するダンサーは1人のみで、彼女の動きが音楽と照明、そしてデジタル・アニメーションを生み出す引き金となる。やがてすべての要素が溶け合って1つの有機体となる、万華鏡のようなビジュアルを堪能しよう。

日時 5月23日(金)~25日(日)時間はウェブサイトを参照
料金 £14
場所 mapFABRICA 40 Duke Street BN1 1AG

クラシック
重厚な音が奏でる「人間性」というテーマ

PHILHARMONIA ORCHESTRA

アンドリュー・デイビスアンドリュー・デイビス(写真)による指揮のもと、フィルハーモニア管弦楽団が死、誕生、愛、そして救いという普遍のテーマを音に託し、人間であるがゆえの疑問を考察する。演目はエレクトロ・アコースティックな作品を多く発表する前衛的な作曲家、ジョナサン・ハーヴィーの「Tranquil Abiding」と、死者へ向けた哀歌と復活をテーマにしたマーラーの交響曲第2番 「Resurrection Symphony」。

マーラーの交響曲では、第4楽章と第5楽章で声楽が導入され、第4楽章ではマーラー自身が1892年に完成させた歌曲集「子どもの不思議な角笛」の歌詞を採用、第5章ではフリードリヒ・クロプシュトックによる歌詞「復活」が歌われる。「ブライトン・フェスティバル合唱団」から約200人にも及ぶ大合唱隊も参加し、壮大なスケールの人生劇を奏でる。スーザン・グリットンがソプラノを務める。

日時 5月25日(日) 19:30
料金 £10~30
場所 mapCONCERT HALL, BRIGHTON DOME
Church Street, BN1 1UE

ミュージック
パイプオルガンでビバ・レイブ再来?!

MANIC ORGANIC

Manic Organic約70年前ブライトン・ドームでは、1936にも及ぶ手作りのパイプから成るパイプオルガンが目玉であった。そしてそれを再現しようと考えたのが、ベルリン出身のロバート・リポックだ。エレクトロニカの第一人者として活躍する彼は、なんと3000ものパイプを使用したオルガンに挑戦。さらに、 オーストラリアで前衛的な音楽を発信するトリオ「The Necks」も参加、リポックと共にオルガンで「まさか」の冒険に出る。

パイプオルガンが主役と聞いて、大抵の人はクラシックを思い浮かべるだろう。だが、そこで一筋縄ではいかないのが「パーティーなら何でもこい」ムード漂う快楽の街、ブライトン。伝統的な楽器を使って若者たちを躍らせたいと考えた彼らが演奏するのは、テクノの一種である「ハッピーハードコア」や「フリーフォーム」だ。ハープやチェロ奏者も加わるとあっては、聴きに行くしかないでしょう。

日時 5月15日(木) 20:00
料金 £10~15
場所 mapCONCERT HALL, BRIGHTON DOME
Church Street, BN1 1UE

オペラ
クラシック作品に「笑い」で挑戦状

MARRIAGE OF FIGARO

MARRIAGE OF FIGAROフランス人劇作家のカロン・ド・ボーマルシェによる風刺的な戯曲にモーツァルトが作曲したオペラ「フィガロの結婚」を、クラシカルな作品を大胆に改作することで有名な「アルモニコ・コンソート」が上演する。封建貴族に仕える家臣フィガロの結婚式をめぐる事件を描く、というのがオリジナルのストーリー。貴族を痛烈に批判したスキャンダラスな内容のため、当時は上演禁止になることも度々あったというこの物語が、今回は舞台が18世紀から1950年代に移されて展開するという。

英国を代表する喜劇役者・脚本家のキット・ヘスケス=ハーヴィーの手に掛かれば、定番オペラも渦巻く陰謀と先の読めない展開が散りばめられた、衝撃のコメディーへと変身してしまう。意表をついたヒネリやオチが満載なので、オペラ初心者でも楽しめるに違いない。

日時 5月14日(水)、15日(木)19:30
料金 £7.50~26
場所 mapTHEATRE ROYAL BRIGHTON
New Road, BN1 1SD

ファミリー・アウトドア
小さな主役たちに盛大な拍手を!

CHILDREN’S PARADE

Children's Paradeフェスティバルの初日を飾るのは、英国の小学校70校と地域コミュニティーたちがそれぞれ1年間かけて計画したという、キッズが主役のパレード。今年で開催18年目を迎えるこの行進では、毎年4000人もの子どもや保護者たちが参加し、思い思いのクリエイティビティーを発揮している。

今年のテーマはずばり、「ゲーム」。でも、石蹴りゲームや馬跳びを取り入れたパレードって、一体どんなもの……?皆どのチームよりも目立とうと腕を奮うから、奇想天外であっと驚くアイデア溢れるパレードになることは間違いない。陽気なサンバに乗せて凝った衣装で街を練り歩くキッズたちに、ぜひ温かい声援を!

日時 5月3日(土) 10:30スタート
料金 無料
場所 map出発地点: SYDNEY STREET
最終地点: MADEIRA DRIVE

アウトドア
バーチャル世界と現実の境界線を突っ走れ!

RIDER SPOKE

Rider Spoke英国のデジタルアート・グループ「ブラスト・セオリー」による、観客に現実とバーチャル世界で同時進行するゲームに参加してもらうという、一風変わったパフォーマンス。モバイル機能を使用したハイテクなワイヤレス・ゲームを、なんと自転車で町を走りながら体験できるという。自慢の愛チャリを持参するも良し、会場で借りるも良し、ゲーム機とヘッドセットを着用したら、それが物語の幕開けだ。

劇、告白、インスタレーションが1つになったこのゲームでは、参加者も立派な登場人物。1人でプレーすることも出来るが、グループで問題を解いたり別のプレーヤーたちの話を盗み聞きすることもできるなど、遊び方の可能性は無限大で、物語も1人1人の経験によって微妙に異なるというのも魅力的だ。

日時 5月8日(木)~11日(日)18:00~ 22:00
15分おきに出発 9日は20:00~ 2:00
料金 無料・要予約(16歳以上)
※チケットは電話のみ予約可。自転車を借りる旨を予約時に申し込むこと。
TEL 01273 709 709
集合場所 mapMYHOTEL, JUBILEE SQUARE

サブ・フェス・ガイド サブ・フェス・ガイド
3週間にわたるフェスティバルの他にも、さらに濃くてア ツいイベントが同時進行中。「でも、フェスティバルだけ で予算ぎりぎり……」なんて悲しいため息は心配ご無用。 ほとんどが無料か10ポンド以下というから、最先端の文 化をお腹いっぱい詰めこもう!

突撃!アーティストのお宅拝見
ARTIST OPEN HOUSE

アトリエやアーティストの自宅が多く集まる地域を14のエリアに分け、一度に何件もはしごしてアート鑑賞できるようにしたのが、この「アーティスト・オープン・ハウス」。アーティストたちと直接話をしたり交渉したりしながら作品を購入することはもちろん、その名の通り、彼らの自宅や庭を覗き見することもできるのが大きな魅力だ。エリアはすべてブライトン市内かその近郊に位置しており、会場となる家は約200件、参加するアーティストは1000人を超えるという。アートにどっぷり浸かることができるイベントだ。

5月3日(土)、4日(日)、10日(土)、11日(日)、17日(土)、
18日(日)、24日(木)、25日(金)
入場は全て無料 
場所・時間はウェブサイトを参照
www.aoh.org.uk

ピリリとスパイスの効いたイベントがずらり
Brighton Festival Fringe

ブライトン・フェスティバルよりも、小規模で個性の強いイベントが揃うフェスティバル・フリンジ。フェスティバルとの違いは、開催される約600ものイベント全てが「立候補」による参加だということ。主催者側の意気込みやファン獲得への熱気がムンムン伝わってくる、小規模だからこそ味わえる雰囲気に呑まれてしまおう。それにベニューが小さいということは、メジャー狙いではない前衛的なものが多いということ。メインストリームじゃ物足りない!という人にはぜひ参加してみてほしい。

5月3日(土)~26日(月)
イベント各種詳細はウェブサイトを参照
www.brightonfestivalfringe.org.uk

CARAVAN
ブライトン近郊を拠点に活躍するシアター・カンパニーやダンス・グループ20団が、自慢の新作を披露する
5月11日(日)~13日(火)
www.farnhammaltingscaravan.com

CHRALESTON FESTIVAL
ブライトン近郊の街、チャールトンで行われる文学・政治・芸術界などから著名人を招いたフェスティバル
5月16日(金)~25日(日)
www.charleston.org.uk

THE GREAT ESCAPE
これからビッグになること確実の、大型新人バンドを世界に発信する音楽フェスティバル
5月15日(木)~17日(土)
www.escapegreat.com

★チケット予約方法

オンライン
ウェブサイトwww.brightonfestival.orgから

電話
01273 709 709 (5月2日まで)月~土 10:00-18:00
(2日以降)月~土 10:00-19:00
予約時に使用したクレジット・カードかデビット・カードを当日持参すること

フェスティバル・ボックス・オフィス
29 New Road, Brighton, BN1 1UG
(5月2日まで)月~土 10:00-18:00
(2日以降)月~土 10:00-19:00

★ブライトンへの行き方

ロンドンからのアクセス
ビクトリア駅から1時間弱でブライトン駅に到着。1時間に約4本の電車がある。ロンドン・ブリッジ駅、キングス・クロス駅からも電車あり。4月30日から6月3日までは、最終電車が通常よりも遅い23:19まで運行。イースト・クロイドン、クラッパム・ジャンクションに停車し、終点のビクトリア駅には00:13に到着する。これで帰ってくれば地下鉄の最終便に乗ることができる、なんとも心強い味方だ。ブライトン駅から市内へは徒歩で約10分。

 
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