
高い家賃、近所の騒音、プライバシーの欠如など、住むこと関する悩みにはこと欠かないロンドン。そんな「世界の大都市」ならではの住宅事情を嘆く姿を横目に見ながら、喧噪から離れた場所で静かに暮らしている人々がいる。彼らが住家として選んだのは、水の上に浮かぶボート。実は意外と簡単に実現できる、水上での一風変わった生活を覗いてみよう。(本誌編集部:長野雅俊)

高垣亜也子さん(29歳)
渡英歴約1年。ロンドン西部サウスホール地区を通るグランド・ユニオン・カナルの支流にあるメイポール・ドックに停泊するボートで生活している。
「住みたい家がたまたまカナルの上にあった」
今回の取材に協力してくれたのは、ボート生活歴約7カ月の亜也子さん。昼間は英語学校に通い、夜は日本食レストランでバイトするごく普通の日本人留学生である。ボート内で生活を営む人と聞いて、厭世的なタイプを期待していたので正直、拍子抜けしてしまった。「確かに『意外と普通の生活をしていますね』ってよく言われます(笑)。ボートに住むことを求めていたというより、自分の住みたい家がたまたまカナルの上にあったという感覚ですね」と言う。
亜也子さんいわく、昔は現在の住家からそう遠くない場所に位置するフラットに住んでいた。しかし物価の高いロンドンで学生生活を営むとなると、家を他人とシェアしなければならない。そこに不満を感じた亜也子さんは、かねてからの夢であった自分の持ち家が欲しいとの欲求に駆られるようになった。しかし語学学生の身分で、持ち家の購入などとはあまりにも贅沢な話。そんな時に目をつけたのが、カナルの上に浮かぶナロー・ボートだった。

左)亜也子さんの住家である「フリーダム号」
右)カナルの両岸を結ぶ橋。いたって簡素な作りになっており、
船が通過する時は手で取り外すことになる。
「他人とシェアしないで暮らしたい」
きっかけは、去年の夏。亜也子さんには当時たまたまボート上で生活を営んでいた友人がいたのだが、この友人がしばらく旅行に出ることになり、その間住み込みで犬の世話をすることを任された。ここで初めて水上での暮らしを1週間体験することになり、この際にボートの中でも「意外と普通の」生活を送れるということを知る。当時から付き合っていた彼と相談した結果、自分たちもカナルの上に浮かぶボートに住むことで、「持ち家」を手に入れられるのではないかとの結論に達した。「その頃は、本当に部屋を他人とシェアしないで暮らしたい、という気持ちを強く持っていたんです。ボートに住むっていうのは、悪くない選択肢だなと思いました」。彼女が日本に帰省している間に彼が面倒な手続きを整えてくれたので、今年3月に英国に帰国した際には既に「ボートのおうち」が彼女を待っていた。こうやって亜也子さんは念願の「持ち家」を手に入れることができたのだ。
「風が強い日は、家全体が揺れます」
水上に住むことになった経緯を一通り話してもらってから、今度はその「持ち家」の中を案内してもらう。かつて運河上のボートを引く馬が歩いた牽引路(Tow Path)と呼ばれる川沿いの道に横付けされたボートに潜入すると、まず気付くのがその狭さ。背中を丸めたり、横向きになって歩いたりしなければ船内を移動することはできず、ちょっとした圧迫感さえ感じる。さすがはナロー・ボートと呼ばれるゆえんである。
ただ辺りを見回すと、トイレ、キッチンといった基本的な家庭設備はもちろん、なんとテレビ、電話といった電気機器があるのに加えてインターネット回線まで引いてあり、大概の家庭にあるものはほぼ全て揃っているといっていいだろう。「家がカナルの上にあるということ以外は、いたって普通の生活です。ただ風が強い日には家全体が揺れます(笑)。あとボートの周りに時々クモの巣が張るのがちょっと嫌ですね」。話を伺いながら窓を覗けば、目線のすぐ先には水面がある。やはりここは水上なのだ。
「さすがに背広を着ている人はいないですね」
近所には合わせて15艘(そう)ぐらいのナロー・ボートが浮かび、それぞれのボート内では同様の生活が営まれている。「ご近所さん」たちは庭師、オペラ歌手など様々な職業に就いている人たちだが、亜也子さんによると、「さすがに背広を着て出社するような人はいないですね」とのこと。今年の夏はこれらのご近所さんが集まり、皆で一緒に川沿いでのバーベキューを楽しんだという。自分の持ち家があり、立派な庭まであり、ご近所付きあいも良好というのは、確かにロンドンにおいてはそうない居住環境かもしれない。そして何といっても、カナルの上という特別な空間に住んでいることに魅力があるのだろう。
左)ご近所に住むオペラ歌手のラッセルさん。「妻と離婚してしばらくしてから、このカナルの上で住むようになりました。歌の練習をしても、周りから文句を言われないのがいいですね」。
右)カナルには川底の掃除をする政府職員もいた。
日本にいる時も「チャレンジャー」として知られていた亜也子さんは、たくさんの友達からボート上での生活を応援されている。今週末は「怖いもの見たさ」で古くから付き合いのある知人が泊まりに来るという。そんな彼女の唯一の悩みが、両親からの理解。「友達は面白がってくれるんですけどね。親には『私たちの知り合いには船に住んでいるとか絶対教えないで』って言われています(笑)」。困ったような顔をしながらそう言ったが、実はそんな反応さえも楽しんでいるようだった。


1. 体をかがめてやっと入れるほど大きさの玄関口
2. 船内にある小さなベランダ
3. 極端に狭い通路を過ぎると寝室にたどり着く
4. 川岸には素敵な庭がある
5. 亜也子さんが所有するノート・パソコン。電話回線も引いているので、インターネットまで利用できる
6. テレビ。亜也子さんいわく、「船内のスペースが狭いので薄型しか入らないんです」
カナルとは、日本語でいう運河のこと。英国では紀元前55年に入植したローマ人が、教会建築用の石材を運搬するためのカナルをすでに建設していた。その後国内ではノルウェーなどから輸入した氷を運ぶために利用されるようになる。やがて産業革命の時代となると、石炭の運搬を目的として1761年に開通したブリッジウォーター運河を始めとする近代的なカナルの整備が進んだ。また陶器で有名なウェッジウッドは、馬車での運搬による商品の破損を防ぐために独自の運河を建設している。
ナロー・ボート
運河など狭い水路に適した小型船がカナル・ボート。そのうち、船幅が7フィート(約3.5メートル)未満のものをナロー・ボートと呼ぶ。通常、船内にはシャワーやベッドなどの宿泊施設が揃っている。
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1. ボートを動かすことはできるのか
亜也子さんが住んでいるボートは、基本的には住宅専用なのでほぼ常時停泊している。しかしエンジンさえかければ、水上を移動することはいつでも可能。
(写真)ボート入り口付近に取り付けられたエンジンのメーター
2. 水上であればどこにでも住めるのか
英国全域にわたって存在する河川のほぼすべてが、政府機関や地方自治体によって管理されている。つまり正式な手続きを踏んでこれら管理機関の許可を得なければ、どんな形であれ水上で暮らすことはできない。また亜也子さんのように一定の場所に長期間住むのか、それとも旅行の最中に一晩だけ停泊するかなどによって許可申請の手続きが異なる。
3. カウンシル・タックスの支払いは?
上述したように、国内の河川のほぼすべてが政府機関もしくは地方団体の管轄下にある。よって居住用の係留権を有し、一定の場所に停泊するボートを主な生活の拠点とする場合は、その地域で決められたカウンシル・タックスを支払わなければならない。ただしボートを別荘代わりに利用したり、水上を絶え間なく移動したりする長期旅行者には支払いの義務はない。
4. 郵便物はどうやって届くのか
それぞれのナロー・ボートにはしっかりと住所がある。その宛先に送れば、川岸に設置された郵便受けにちゃんと手紙が届くのだ。
(写真)川岸に設置された郵便受け
5. 下水はどう処理するのか
「下水」として処理するのはトイレの水のみ。まずはボート内の下水タンクに溜め込み、その後エンジンをかけてカナルの各地点に設置されている下水処理ポイントまで移動しこの下水を廃棄することになる。シャワーの水などその他の生活水は垂れ流しなので、例えばキッチンで洗い物をする際は植物性の洗剤のみ使用可などの決まりがある。
6. 飲み水はどうやって汲み込むのか
川岸に設置されたホースを通じて、水道の蛇口からナロー・ボートの船底にある貯水タンクに注入。船内では浄水システムも整っている。
(写真)水道水を入れる穴。ドライバーでこじ開ける。
7. ガスは使えるのか
キッチンでの料理には、川岸に常備しているガス・ボンベから定期的に吸入して利用。部屋の暖房は、昔ながらの石炭ストーブを利用する。
(写真)今時珍しい石炭の暖房。
8. 施錠はどうするのか
ボートの入り口に設置された扉には、頑丈な鍵をかけることができる。すぐ側に外界があるので、戸締りは重要。
(写真)鍵がかけられた状態のボート。まるで手品に登場する仕掛け箱のようだ。
9. でも船ごと持っていかれそう……
実はボートが停泊している川岸へ入るまでの道にも大きな扉があり、カナルの住人たちはこの扉にも鍵をかけている。
(写真)この扉を抜けるとボートが停泊するカナル岸に辿り着く。
10. ボート生活を送る人は英国にどれだけいるのか
公式機関から発表された統計デー タが存在しないためあくまで推測値に過ぎないが、「約1万5000人」 という数字が目安とされている。この数字には英国内にあるカナルなどの河川上だけでなく、国内周辺の海洋地域に停泊、または移動し続けるボートも含まれているという。しかしながら正式な手続きを踏まずにボート内での暮らしを送っているケースもかなり多いと見込まれているため、その実態を把握するのは大変難しい。
水上生活を営むまでの手続き
憧れの「水上生活」は誰でも営むことができる。ただ前述したように、国内にあるほぼすべての河ß川は政府機関の管理下にあるため、許可を得るための一定の手続きを踏むことが必要となる。以下に主な要項を並べたが、何よりも必要なのは入念な事前のリサーチ。興味のある方には、下のウェブサイトを参照することをお勧めする。 www.waterscape.com
■ ナロー・ボートの購入
ナロー・ボートの上で暮らすためには、必ずそのボートを自分で購入しなければならない(値段はピンキリだが、数千ポンドぐらいから売りに出ている)。物件情報誌の広告欄などに時折「空きナロー・ボート貸します」などといった告知が掲載されていることがあるが、これには要注意。現在の時点ではある程度は黙認されてはいるものの、厳密には居住用ナロー・ボートに関して賃貸契約を結ぶことは法律上認められていないという。
■ ライセンスの取得
政府によって決められている一定の料金を払えば、誰でもライセンスを取得することができる。
■ 係留権(Mooring)の取得
ライセンスに加えて、係留権の取得の際にも一定のコストが発生する。居住用、旅行用などそれぞれの目的に即した係留権が必要となり、また申請する地域によっても料金が大きく異なる。概して都市部で金額が高くなるのは、水上も同じ。
■ 保険への加入
ボートに対しての保険にも加入することになる。
■ 安全検査(Boat Safety Certificate)の通過
自動車でいうところの車検(MOT)に相当する。4年ごとに更新。
■ ナロー・ボート操作方法の取得
誰でもすぐに覚えられるものだということで、こちらはご安心を。
カナルの生活についてもっと知りたいのなら
ロンドン・カナル博物館 London Canal Museum
ロンドン中心を流れるリージェンツ・カナルに臨む博物館。ここでは、かつて英国経済の基盤となっていたカナルに関する歴史や文化を振り返る展示を見ることができる。
入館料:3ポンド
12-13 New Wharf Road, London N1 9RT MAP
Tel: 020 7713 0836
www.canalmuseum.org.uk

水上で暮らしを営むという目的に加えて、船やボートをまさに交通手段として利用しながら世界を旅し続ける冒険者たちも多くいる。いまや世界的な観光地と化したロンドン中心部を通るリージェンツ・カナルとテムズ河は、そういった水上の旅人たちにとっての観光名所。ここではこの2つの「水の名所」をつなぐポイントで働く、いわば水上の管理人とでも言うべきロック・キーパーたちの1日を追う。
ロック・キーパーの仕事
荷物運搬のルート整備を目的とした人工川であるカナルには、水位調節のためのロック(閘門)と呼ばれるポイントがいくつか設けられている。このロックの建設によって、段差のあるポイントにも水の通路を敷くことができるようになったのだ。ポイントを通過するにあたって通常は船やボートの乗組員が自分でロックを開閉するが、複雑な仕組みになっていたり、管理が必要なポイントではロック・キーパーが開閉を行う。また今回取材したライムハウス・マリーナでは、大型船を受け入れる係留所も兼務している。
ザ・リージェンツ・カナル
1820年に開通。当時のジョージ6世と親交のあった有名建築家のジョン・ナッシュが設計を手掛けた。リー ジェンツ・パークやマーブル・アーチも設計した実績を 持つ彼が描く設計図は完璧なまでに計算しつくされていたため、技師との間で誤解や間違いが生じる余地が全くなかったという。テムズ河と交わるライムハウス地区を始点として北上し、その後カムデン・タウンを通過しリトル・ベニス付近でグランド・ジャンクション・カナルと合流する。
通過予定の連絡を受けるロックを通過する予定になっている船やボートは、まずは事前に連絡を入れることになっている。ロック・キーパーはその予定をノートに記帳して管理を行う。この日はオランダから海を渡ってきた大型船がロックを通過し、さらには係留所で一晩停泊する予定とのこと。
船の到着時間10分前には「予定通り進行中」との連絡を無線で受け取る。
橋の近辺を安全点検いよいよ本格的に船の受け入れ準備開始。大型船のため、ロックの手前に設けられた橋を撤去する必要があるので、橋近辺の安全確認は入念に行う。
「橋の下には誰もいないか~!」と叫ぶロック・キーパーのジェレミーさん。双眼鏡で眺めて、テムズ河上を進行してくる大型船の位置も合わせて確認する。
テムズ河をまたいでいた橋はボタン1つで90度転回。

これで大型船も楽々通ることができる「水の道」を作った。
船が進行開いた水路を船が進行。船上の乗組員からの「サンキュー」が大きく響く。
ロックを開く橋の次に待ち構えるロックを開いて、水位を調整。水位の高低差がある場所でも船はなんなく進行することができた。
施設の確認ロックを通過すると基本的な宿泊施設が整っている係留所がある。船のバッテリー充電などに使う、電気スタンドの状態を確認するのもロック・キーパーの仕事。
温かくお出迎え水上の旅人を温かく受け入れ、周辺を簡単に案内する。長旅を終えた者を労わるかのような温かな対応が印象に残った。
ロックの仕組み
水位に高低差があるポイントは、ロックと呼ばれる2つの大きな扉で両側が挟まれている。この両側の扉の開閉により大量の水を短時間に移動させることで水位を調整し、船がスムーズに移動することを可能にしている。






パン柄トートバック販売中

世界最大のストリート・マーケット
Still Too Few
Lyn Munro
エンジェルにある隠れ家的マーケット

インテリア関係者御用達の常設マーケット
Beth
Dodo
左)店で最も人気があるという、ギネスの大判ポスター。650ポンド
20世紀を代表する女性陶器デザイナー

ロンドン北部イズリントンの「カムデン・パッセージ」 に、旦那様のマイクさんとお店を構える寿子・ウイードンさん。この道30年近くのキャリアをもつ寿子さんに、ロンドンのアンティークについて話を聞いた。
この時期のアンティークは優雅なデザインのものが多く、明るく華やかな雰囲気。加えてビクトリアンは過去の素晴らしいデザインをコピーしている時代で、デザイン的にも優れたものを輩出しています。例えば、クィーン・アン・スタイルを取り入れたカブリオレ・レッグ(猫足)の椅子などは女性的で繊細です。食器類なども、素朴で重厚なジョージアンに比べ、ビクトリアンには手が込んだ装飾が施されています。
「スージーのコンセプトは『日常使いの食器』。そこに彼女の魅力があると思う。同年代の人気作家クラリス・クリフの作品は、芸術的に素晴らしいとはいえ、色使いもビビッドでインパクトが強い。一方スージーの作品は、1930年代にデザインされたとはいえ、現代のライフ・スタイルにもしっくり溶け込む、タイムレスなフォルムを持っている。またティー・ポットなどは、紅茶が注ぎこぼれないように、独特のデザインが施されているんだ」。



ジョン・F・ケネディ米大統領の実弟、ロバート(ボビー)・F・ケネディの暗殺事件を題材にした人間ドラマ。 人気俳優のエミリオ・エステベスが監督業に初チャレンジした作品だ。アンソニー・ホプキンスやイライジャ・ウッド、ヘレン・ハントやデミ・ムーアなど、映画界を代表する俳優たちが堂々たる存在感を見せつけている。
トム・ペロッタの同名人気小説を映画化したサスペンス・ドラマ。ケイト・ウィンスレットとジェニファー・コネリーという英米を代表する実力派女優が競演しているのが見物。監督は「イン・ザ・ベッドルーム」で知られるトッド・フィールド。
「ノッティング・ヒルの恋人」の監督ロジャー・ミッシェルが、再びロンドンを舞台に手掛けたヒューマン・ドラマ。モーリスとイアンは、旧友であり、共にうだつのあがらない古参の俳優。平穏な2人の日常は、イアンの姪ジェシーの出現により一変する。イアンの世話をするため、イングランド北部から出てきたジェシーだが、家事がまるでできない。気の短いイアンは、そんな彼女に腹を立ててしまう。一方で温厚なモーリスは、共に芸術に触れることで、人生について何かを教えようとする。しかし晩年を迎え、まだ自身の人生の意味さえわかっていないことに気付き……。
「イングリッシュ・ペイシェント」でアカデミー賞監督賞を受賞、英国を代表する監督の1人であるアンソニー・ミンゲラの最新作は、ロンドンの街を舞台にしたスタイリッシュな犯罪ドラマとなった。元々は脚本家としてスタートしたミンゲラ監督が、久々に脚本を担当していることでも注目されている。主演は、英国の人気俳優、ジュード・ロウ。
ベストセラー作家、エリック・シュローサーの小説「ファストフードが世界を食いつくす」を、ベテラン監督、リチャード・リンクレイターが映画化したドラマ。原作のシュローサーは、リンクレイター監督とともに脚本も担当している。
本の世界と現実世界が入り混じる、ユニークなコメディー。優秀な税務署員のハロルドは、ある朝、自分の行動の一部始終を語っている女性の声を耳にする。同じ頃、小説家のカレンは執筆中の作品に頭を悩ませていた。「エンディングで主人公ハロルドをどう殺そうか?」。突然、自分が小説の中の登場人物だと理解したハロルドは、生き延びるため、カレンにエンディングを変えさせようと試みる。
孤独な男女が出会ったことから巻き起こる、ミステリアスなドラマ。警備会社で働くジャッキーの仕事は、ひたすらモニターを観察すること。人気のないグラスゴーの地所を毎日見守っているジャッキーにとって、そこに何かが映ることはありえないように思えた。そんなある日、モニターに1人の男が映り込む。その後もたびたび姿を現すこの男に、ジャッキーは次第に興味を持ち始めるが……。
「Uzak/ウザク」で03年カンヌ国際映画祭グランプリを獲得したトルコ人監督、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン最新作。自身が主演も務めた本作は、今年度のカンヌ国際映画祭では惜しくも受賞は逃したものの、批評家から絶賛を浴びた。
米国、メキシコ、モロッコ、そして日本を舞台に展開していくそれぞれのストーリーが、やがて1つの結末に向かって収束していく壮大な人間ドラマ。ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェットら世界的俳優らとともに、役所広司と菊地凛子が日本のシーンでの出演を果たしている。





















「ブレードランナー」や「アキラ」的世界と言えばわかる人も多いはず。鉄骨とガラスの外観は、パリのポンピドー・センター(総合文化センター)も手がけた建築家リチャード・ロジャーズのデザイン。 過剰とも言える配管が、見る者に畏怖感を与える。これが世界屈指の保険組合ロイズのオフィスなのだ。1901年に建設され、100年後の2000年に改修工事が始まり、現在の姿に再生された。その際、オリジナルの内装や構造はそのままに、最新の建築技術を加味することが試みられたと言う。RIBA*アワードを受賞。グランド・フロアと11階 のギャラリーを公開する。
こんな壮大な風景を毎日見ていたら、小さな悩みなんて吹き飛んでしまって、自由自在に生きていけるかも、と思わず想像してしまうのは、ここがロンドン市長舎だからかも。テムズのたもとにたたずむ巻貝みたいなフォームそのままに、中には螺旋らせん階段が最上階まで延びている。このユニークなデザインは、大英博物館のグレート・コートも手がけた現代建築の巨匠、ノーマン・フォスターならでは。2002年度フォスター・アンド・パートナー賞受賞。螺旋階段や会議場などが公開される。16日の10:30~13:00に子供向けイベントあり。
大学や大学院というと、長い歴史を彷彿とさせるいかめしい建物が多い中、ロンドン・メトロポリタン大学は、かなりいけてる。なにしろ、「オリオン座」というコンセプトのもと、ビクトリア&アルバート美術館の螺旋階段の設計やデザインを手がけたダニエル・リベスキンドの「作品」だから。外壁はステンレスのパネルで覆われ、幾何学的な窓は光が室内にたっぷり届くように設計されている。2004年度RIBAアワードほか、受賞多数。今回は講義室、バルコニー、共有フロア、グラウンド・フロアなどが公開される。
大家族のために、都会でどこまでプライバシーと開放的な空間を創造・維持できるかという課題に、極限まで挑戦した現代建築の「天才的回答」のひとつとも言える作品。四方を建物で囲まれ、細い路地を通らなければ玄関にたどり着けない構造は、東京の住宅事情を連想させるが、ここはお金持ちが多く暮らすノッティング・ヒルだ。随所に現代建築の粋とアイデアが盛り込まれたその造りは、いつの日か東京に家を建てる時の参考になるかも。2006年度RIBAアワード、2005年度ジャンニ・ボツフォード建築賞受賞。
建築は依頼主の趣味に左右されることが多いけれど、では建築家が自分自身のスタジオを作ったらどうなるのか。ホプキンスは、まずは1993年にオフィス・キャンパスを、ぺテラと呼ばれる壁の装飾を活かした第2ビルと共に拡張。さらに1995年にガラスのレセプション・ルームを追加して、現在のスタジオに作り上げた。パイプやガラスを多用したデザインは、光があふれる彼の作品の特徴でもある近代的なフォルムの代表作。それぞれの建物は渡り廊下でつながっているので、「拡張の過程」を自分の目で確認し発見できる。
公共の建物なら普通に入れるが、個人の家にお邪魔する機会はなかなかないだけに、ツリー・ハウスはぜひ訪れてみたい。敷地を占領する古木にインスピレーションを得て設計されたこの家は、結果的に光があふれる場所となり、自然との共存というコンセプトを家中の至るところで発見することができる。この気持ち良い共生を体感すれば、 従来の家中心の建築方法に疑問がわき、ちょっとは頭が柔らかくなり、もしかしたら環境問題や新しい生き方に、おのずと目が開かれるかもしれない。

会員制のヨット・クラブと聞くと、それだけで敷居が高い。いかにもお金持ちが集いそうな、いかめしくて立派な建物を連想しがちだけど、現代アートの粋を集めたようなアルミニウムと木材でできたこのクラブは、かなりアートしている。ここから眺めるテムズはまさに絶景。桟橋と河や河岸とのコントラストも斬新、きっと新しい発見があるはず。今回はメインのクラブ・ハウスへの入場が可能で、メンバーと話せるチャンスあり。それにしてもヨットのオーナー達って、甲板でもクラブでもこんな良い思いしているんですね。
ミレニアム記念としてテムズ河岸に登場したロンドン・アイ。すっかり新名所として定着したその「輪」は世界最大級で高さは135メートル。普通の観覧車と違って、1つのカプセルに数十人が乗れて天井も壁も透明。さらにはカプセル内を自由に歩けるのも楽しい。昼間も良いけど、煌めくロンドンの夜景はとってもロマンチック。カプセルを丸ごと借り切って、プロポーズするのが大人気というのも確かにうなづける。RIBAアワードはもとより、1999年度にはマークス・バーフィールド建築賞も受賞している。
ハイド・パークの一角にあるウェリントン・アーチは、バッキンガム宮殿の門であり、ロンドンのランドマークとしても親しまれている。つい先ごろ修復が終了したばかりでもあるこの文化遺産は、建築家デシマス・バートンによって1830年に制作され、1882年に現在の場所に移された。リフトでバルコニーに登ると、ハイド・パークや国会議事堂が一望でき、その素晴らしさは登った人にしかわからないと言われる。頂上の彫刻はヨーロッパで最大の大きさ。アーチ内部にあるかつてのロンドン最小の警察署が公開される。
ピクルスに似ているからと「ガーキン(ピクルス用の若いキュウリ)」の愛称で著名なこのビル。一度見たら忘れられない姿に、一度入ってみたいと思った人は多いはず。総ガラス張りで40階建ての「キュウリ」が世界屈指の金融街にそびえる姿は、やっぱり異様。今回公開されるのはロビーと最上階。ガラスのドーム天井からはまぶしいほどに太陽光線が差し込み、雲が真近に流れていく。そんな場所からガラス・フレーム越しに見下ろす360度の下界は、いったいどんな眺め?2004年度RIBAアワード、 2003年フォスター・アンド・パートナー賞を受賞。
テムズ河に沿って発展したロンドンは、水力発電が発達したため、電気には不自由してこなかったと言われる。長らく人々の文化生活を支えてきたのが、1869年に建設された8角形のタワーを持つ初期の水力発電所のひとつである、ライムハウス蓄電タワーだ。今回公開される螺旋階段を登ってたどり着くオープン・バルコニーからは、カナリー・ドックと後方に広がる壮大な風景が楽しめる。37年前のロンドンと、どこが変わらず、どこが新しいかを、パズルを解くように、風に吹かれながら考えつつ眺めるのも一興だ。
これがイングランドとウエールズの最高法廷?とため息をつくほど美しいビクトリア・ゴシック建築の傑作は、弁護士から建築家に転身したジョージ・エドモンド・ストリートの設計に基づき1882年に完成したが、彼自身は完成を見届ける前に他界した。総部屋数1000、回廊が全長5.6キロという壮大さは、ちょっと類がないほどのスケール。裁判所なんて一生ご縁がないほうがいい、なあんて思っている人でも、建築を見るという理由があれば、堂々と入れるかも。メイン・ホールと限定された法廷数室などが公開される。
英国の田舎を車で走っていて、ダーク・カラーの木材と白い漆喰が美しい幾何学模様を描く家を発見し、入ってみたいなあと思ったことありませんか。文化遺産でもあるこの家にはかつて劇作家ウィリアム・ギルバートが住んでいたことがあり、建築家リチャード・ノーマン・ショーの「古き良き英国スタイルの田舎の家」の代表作の一つとしても知られている。英国らしい美しい庭も文化財に指定されており、池に映る建物と花々は、まるで絵のような世界。あの長寿連続ドラマ、イーストエンダーズのロケ地でもあります。
クラシックの巨匠とロックの神様……、ちょっと奇妙なこの取り合わせを一挙に体験してみませんか。目の前に立つのはバロック音楽の巨匠ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルが1723~59年に没するまで住んだ家。そしてそのすぐそばには60年代後半、ギターに火をつけるなどの過激なパフォーマンスで一世を風靡し、「ギターの神様」と呼ばれたロック・ミュージシャン、ジミ・ヘンドリックスが1968年から1年間暮らしたフラットが立っている。両方の建物を訪れて、異なる2つの偉大な音楽の才能が、時空を超えて同じ場所に引き寄せられた空気を、肌で感じてみてほしい。
公共図書館での無料配布





学生時代は政治活動には無関心で、自治会にも政治グループにも加わらなかった模様。学生時代の彼はそれよりも音楽活動を熱心に行っていたことで知られている。長髪を振り乱し、自身のバンド「The Ugly Rumours(醜い噂)」で演奏していたというから驚きだ。
学部時代の化学とはまったく異なる文科系の修士号も持っているという勉強熱心な彼女。ブレアとは対照的に、学生時代からオックスフォード大学保守党協会の会長を務めるなど、政治活動に熱心だったという。
人を食ったようなとぼけた表情がトレードマークのコメディアン、ローワン・アトキンソンも実はオックスフォード出身のインテリ。日本でも大人気の「ミスター・ビーン」の構想は在学中、何とたったの48時間ほどでつくり上げられたものなのだとか。
ちなみに卒業時の成績はセカンド(正確には2.2)。皇太子の成績までオープンになってしまうのはさすが英国。在学時にはドラマ・ソサエティに参加し、レビューやソロでの演技をたびたび披露、実は演劇関係に興味があったらしい。
女優としてだけでなく、脚本でアカデミー賞を獲得するなど、才色兼備ぶりを発揮しているエマ・トンプソン。在学中にはフットライト・コメディ・クラブの副代表を務めていた。1980年には、ケンブリッジ大学初の女性のみの舞台に、(共同)制作・演出、そして役者として参加している。
ブラックホール研究の第一人者として知られるホーキング博士。実は彼、オックスフォード(ユニバーシティー・カレッジ)とケンブリッジ(トリニティ・ホール)の両大学で学んでいた。学部時代はオックスフォード、博士課程はケンブリッジ。現在はケンブリッジ大学でルーカス教授職(数学教授)に就いている。
Michael Jeffersonさん
Ashminder Kaurさん
Marie Taborさん
Dominic Youngさん
Kate Steadさん

寄宿制である、というのも典型的なパブリック・スクールの特徴の1つ。下級生はユース・ホステルのような6人部屋を共有し、学年が進むと2人部屋、上級生になると個室が与えられる、といったパターンが多い。このため朝昼夜の食事の時間、放課後の観劇やコンサート鑑賞まで、ともかくグループ活動三昧となる。寮内での喧嘩も日常茶飯事だそうで、生徒たちはこういった修羅場を経て自分の意見を主張することと共にチームワークの大切さを学んでいくという。








15世紀にヘンリー6世によって設立された超有名校。これまでに19名の英国首相を輩出している。貴族の子弟が多く通い、エリートの象徴として君臨している。
イートンのライバル校と目されるロンドン北西部の男子校。「ハロ ー・ハット」と呼ばれる水夫がかぶるような制服帽子が有名。北京やバンコクにも分校を持つ。
イングランド南部ハンプシャー州に位置する男子校。同地区の主教を務めていた「ワイカムのウィリアム」初代校長のモットー「礼儀作法が人間を造る」が校訓。
ウエストミンスター寺院の真横に位置する名門共学校。カソリック教会付属の教育機関として生まれ、宗教戦争を生き延びたという長い歴史を持つ。
スポーツの「ラグビー」発祥の地として知られる共学校。サッカーの試合中に思わずボールを手で持ちゴールに駆け込んだエリス少年の伝説は余りに有名。
チューダー朝のイングランド王、エドワード6世とエリザベス女王1世が設立に関わった歴史を持つイングランド中西部の男子校。数年後に共学化を予定している。
ロンドン南西部郊外バーンズにて、テムズ河を見晴らす校舎を持つ男子校。ロンドンの観光名所でもあるセント・ポール大聖堂付属の公立学校として生まれた。
ロンドン郊外サリー州に位置する。授業料と寮費合わせて年間2万3955ポンド(約479万円)という、英国で最も高価な学校。近代サッカー発祥の地との説もある。
ロンドン郊外ノースウッド地区の男子校。かつてはロンドンの金融街シティに位置していため、同地区で大流行したペストからの被害を乗り越えてきた歴史を持つ。

ウェールズの歴史は長い。ウェールズ人の祖先であるケルト人は、遥か紀元前5世紀頃に鉄器文化を伴ってブリテン島に渡ってきたという。自然を信仰の対象としたケルト人は、ブリテン島全域で暮らし、音楽・詩など芸術をこよなく愛したと言われている。



カーディフが名実共にウェールズの首都となったのは、ウェールズに独立した議会が設置された1998年のこと。「市」となってからもまだおよそ100年ほどという、ヨーロッパで最も若い首都だ。もともとは産業革命時に、石炭や鉄を集積する港として栄えた町だが、現在ではカーディフ湾に面したお洒落なウォーター・フロントが建設されたりと様々な変化の波に乗っている。EU諸国から毎年選ばれる「ヨーロッパ文化首都2008」候補地ともなり、これからの益々の発展が期待できる都市。
カーディフの真ん中にそびえる古城。ローマ人やノルマン人が要塞として使用したという歴史ある城だが、17世紀以降は廃墟と化していた。1766年に石炭の輸出で財を成したビュート公爵家が購入し、現在の形に復元された。建物内部は悪趣味なまでに豪華絢爛だが、庭にはクジャクやアヒルが戯れ、のどかな雰囲気を醸し出している。
海岸沿いに建ち並んだパステル・カラーのカラフルな家、「ピアッツァ」と呼ばれる村の広場、ウェールズに突如として現れたイタリアの町のようなポートメーリオンはユニークな趣向の村だ。
エドワード1世が1295年に着工したが、途中で資金が底をついて工事が中止されたという未完の城。しかしながら、完全な左右対称のバランスや城壁の中に城壁があるという珍しい構造上、建築の観点から言って「最も完全な城」と称されることもある。世界遺産指定。




スノードン山頂上までの約8キロを1時間かけて登る観光用の鉄道。登山はしたくないが、ウェールズの広大なパノラマを見てみたいという人にピッタリ。辛い登りは列車を使い、下りはウォ ーキングという楽しみ方も可能。
ウェールズでの移動に便利
英国に住んでいると、世界中の国の人々と共に生きていることを日々実感するのでは。その中でもインドでは1947年の独立まで約200年間、英国の支配が続いた関係で、多くのインド人たちが英国に移住して暮らしている。彼らの歴史は21世紀の今日に至るまで、社会のあらゆる面において見ることができる。この特集では現在の英国社会においてインド出身の人々がいかに活躍しているのか、探ってみたい。
英国で生活をする上で必需品が欲しくなった時便利なのが、ニュースエージェント。コーナーショップとも呼ばれるこの種の店では、なぜかインド系の人達が店番をしていることが多い。これは偶然なのだろうか? 昨年、全国小売ニュースエージェント協会の会長を初のインド出身者として務めたメハンドラ・ジャデージャ氏に話を伺った。



8月11日(金)から公開される「カビ・アルビダ・ナー・ケーナ(英語タイトル:ネバー・セイグッバイ)」。それぞれ倦怠期を迎えている2組の夫婦。互いに全く面識のなかった彼らが、ある時、運命の十字路に迷うことに……
左)ヘンナで施した繊細なデザインが花嫁の手を彩る
いい香り!料理で使用されるスパイス。 


英国人にとってウォーキングとは、なくてはならない生活の一部。都市部でのお手軽な散歩から、本格的なトレッキングまで、 さまざまなウォーキングを楽しむ英国人の支えとなっているのがフットパス(歩道)だ。英国中を縦横無尽に走るこのフットパス、実は法律によってその定義が明確に定められている。
無数の海鳥の生息地として名高いウエールズ、スコマー島。ウエールズ南西部野生トラストが管理しているこの島は、4月1日から10月31日までの期間(月曜日休)のみ一般開放されている。主な島のルートは十字型に広がっていて、短い距離の散策から島の沿岸部のほとんどを踏破する周回コースまで選択の幅は様々。ヨーロッパ北西部でも屈指の海鳥観察スポットなので、是非とも珍しい野生動物を見てみよう。
海鳥たちの宝庫として知られるスコマー島だが、見どころは鳥だけではない。アザラシを見たいのならば、9月は特にお勧めの季節。北端のGarland Stone(ガーランド・ストーン)では、白い毛皮に覆われたかわいらしい子アザラシの授乳シーンを観察できる。そして、島の中心にある農場は1800年代初頭に建てられたという歴史的なもの。情報集めのほか、宿泊施設としても利用できる。
ここの松林はすばしっこいマツテン(イタチ科の動物)の住処。マリー湖西部には他にもヤマネコやカワウソが生息している。また、湿地では多くのトンボが観察できる。その中には希少価値の高い種も。
大人気の映画、ハリー・ポッター・シリーズでホグワーツ魔法魔術学校として登場し、その悠々たる姿には覚えがある人もいるだろうアニック城。本コースでは、この中世の城から出発し、13世紀の姿を今に残す小さな修道院跡や公園の静寂の中をゆっくりとたどっていく。また、カントリー・ライフを特集する雑誌の調査で「英国で一番住みやすい場所」に選ばれたこともある美しい街も見どころの1つだ。
南ウエールズに広がるブレコン・ビーコンズ国立公園。1800メートルの山脈が悠々と連なり、数多くの滝や渓流、鍾乳洞が点在している夏場にもってこいのウォーキング・ポイントだ。心洗われるような水音を聞きながら歩けば、日頃のストレスもいつのまにか解消されているはず。





















