Hanacell

Nr.21 ニッカイ/ニンニャ/カザイ

これらのタイトルが何だか分かりますか。年末年始に見たドイツのテレビで耳障りだったアナウンサーやナレーターの発音です。

最初の単語は、日経インデックスのことです。今の経済危機を反映して、日本経済の状況がメディアでしばしば取り上げられていました。古くは第2次世界大戦後の日独両国が連合軍に占領されていた時代、さらに日本でバブルがはじけ、ドイツでも「東西統一のツケ」で経済状態が厳しい現代など、問題が生じるたびに比較対象として日本が引き合いに出されます。「日本はもっと苦しい、ドイツはまだまし」というメッセージです。

あるいは、日本が急に経済大国となり日本製品がドイツに押し寄せた1980年代には、日本経済が強いのは「ズル」をしているからに違いないとばかりに、少ない休暇、女性勤労者への差別、家庭生活の欠如など「日本社会の歪み」が好んで取り上げられました。こうした過去のマスコミの対応を考えると、今後の両国の経済状況次第で、日本がドイツのメディアでどう扱われるかが決まりそうです。

次の単語「ニンニャ」とは忍者のことです。(ドイツ語でJは英語のYのように発音)これを取り上げた「WW」(=Welt der Wunder)というテレビシリーズは、一般視聴者向けの科学番組という真面目なコンセプトで作られています。しかし、遠い異国の文化の話となると、現実とのずれが目につきます。かつて流行した忍者映画のニンニャの技を検証するため、日本とは構造の違うヨーロッパの城壁を忍者が「手かぎ」を使ってよじ登ろうとして失敗したり、足軽が皆、大げさなカブトをかぶって戦ったりする奇妙な映像に笑ってしまいました。この番組に限らず、知的な雑誌SPIEGELなどでも、似たような傾向が見られます。

最後の「カザイ」は、スキージャンプの葛西選手のことです。南ドイツ・オーストリアを転戦する4大スキージャンプ大会はとても人気があります。昨年は大会最年長で最多出場の「カザイ」の活躍が目立ちました。もう1人、ヴァタベ(=渡部)という発音も耳障りでした。もっとも、固有名詞の発音が変なのはお互い様です。とりわけVW(Volkswagen)の日本語の発音は不思議で、前半のVolksは「フォルクス」とドイツ語式に発音し、後半のWagenは日本式(英語式)の「ワーゲン」です。作曲家のWagnerの名も同様です。なぜVは受け入れるのに、Wはだめなのでしょう。

とはいえ、ドイツ人の日本語の単語の発音は耳障りであっても、サ行が濁音になるとか、Jが英語のYと発音されるくらいで規則的ですから、ニッカイやニンニャと聞いても、何を意味するか、想像がつきやすいですよね。

©Sae Esashi

 
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Koji Ueda ケルン日本文化会館館長
早稲田大学、筑波大学でドイツ文化および異文化交流を担当。NHKのテレビ、ラジオ「ドイツ語講座」元講師。留学や客員教授などを合わせた在独歴は十数年。ベルリン日独センター副事務長(日本側代表)を経て、2007年3月より現職。
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