Hanacell

ドイツの街角から

岩本順子 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。
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アラビアン・カフェ増殖中

SHISHA / NAGILE

ヨーロッパ圏内では、ポーランドとならんで喫煙者天国だったドイツだが、欧州連合(EU)のプレッシャーもあり、ようやく本格的な禁煙法を制定しようとする動きが見られるようになった。こうしたアンチ喫煙ムードが優勢な中、それとは矛盾するかのように(いやそれだからこそ?)、静かなブームとなっているのが、アラビアンスタイルの水パイプ、シーシャ(Shisha)が楽しめるアラビアン・カフェだ。最近では、ごく普通のカフェでも、シーシャを置いている店を見かけようになった。シーシャは、トルコではナギーレ(Nagile)と呼ばれ、ナギーレ・カフェと称している店もある。

シーシャはもともとインドが起源だという。昔はココナッツの殻に竹筒を差し込んだだけのシンプルなものだったそうだ。16世紀になってオスマントルコで広まったほか、イラン経由でアラビア諸国にも広まった。アラビア文化圏では、シーシャで客をもてなすことがあるという。ヨーロッパにはトルコ経由で伝播し、ドイツでは 2001年頃から知られるようになった。

ノンスモーカーの私だが、嗜好品には興味があるので、先日、友人とシーシャ・カフェに出かけてみることにした。内部が暗い店が多く、ちょっと入りにくい感じがするが、店内はとても賑わっている。そして、そこはもうドイツではなかった。スタッフの話によると、利用者の9割が、トルコやイラン、北アフリカ、あるいはアラブ諸国の人たちだという。そういえばドイツ人はほとんど見当たらない。

シーシャ・カフェ

店内はさぞ煙っていることだろうと思ったが、空調が整っており、意外なことに、タバコよりも良い香りが漂っている。ゆったりした椅子席や、クッションいっぱいの床席で、賑やかな学生グループ、ビジネスマン、恋人たちがそれぞれに、シーシャを吸いながらくつろいで話をしている。私が入ったのは、ムスリム式にアルコールを一切置かないという店で、みなコーヒーやお茶、ミネラルウオーターなどを飲みながらパイプをくゆらせている。

シーシャはホースが1本のものと2本のものがあり、2本ついているものは、カップルや友人同士で一緒に吸うことができる。フレーバーもいろいろで、アップル、ピーチ、メロン、バナナ、ココナッツ、マンゴーなどのほか、カプチーノ、カラメル、といったものもある。1セッションは4ユーロほどで、30分ほど楽しめる。もちろん、ドイツの法律に従い、シーシャを楽しめるのは16歳から。24時以降は18歳以上となっている。

注文すると、店員がシーシャをセットしてくれる。フレーバーつきの湿り気の多い煙草は、直接燃やさず、アルミホイルで覆って木炭チップで加熱する。煙は長い管とボトムの底の水をくぐることで、ある程度不純物が取り除かれ、吸う時には、香りもよく、ひんやりとしている。

甘いフレーバーが心地よく、つい吸いすぎてしまいそうになるが、シーシャも、通常のタバコと同じように身体にはよくない。しかし、リラクゼーション効果は抜群で、人気の理由もうなずける。でも、空腹時に吸うのは避けた方がよいとのこと。食後に、お茶を飲みながら吸うのがいちばんだそうだ。

都市部には会員制の葉巻ラウンジなども登場しているが、将来、禁煙法がより厳しくなるにつれ、心おきなく手持ちのタバコも吸えるシーシャ・カフェは、ますます人気スポットになるかもしれない。

シーシャをセット ハンブルクのシーシャ・カフェ「KARATREN」で、スタッフのマル セルにシーシャをデモンストレーションしてもらった。
 
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