Hanacell

ドイツの街角から

岩本順子 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。
www.junkoiwamoto.com

メトロがジャズクラブになる日

ジャズトレインJAZZ TRAIN

ハンブルクの街なかでは、ジャズに触れる機会が多い。ジャズコンサートやジャズクラブだけでなく、住宅街にあるごく普通のクナイペでも、生演奏を楽しむことができるし、ショッピングセンターや小売店でのイべントに、バンドが駆り出されることもある。そして、ジャズの聴けるところには、実に多くの人が集まってくる。なかでも、ハンブルクのジャズファンが待ちに待っているのが、毎年秋に行われる「ジャズ・トレイン」(今年は9月23日開催)だ。今年で9回目を迎える「ジャズ・トレイン」は、ハンブルクの地下鉄車両が丸ごとジャズクラブになってしまうという異色のイべント。ハンブルクの青少年音楽学校とホッホバーン社の主催で、市の文化庁がサポートしている。初めてジャズトレインに乗り込んだ時は、実に感動した。これほど凝った、新鮮味のあるイベントはそう滅多にない。

この日は正午から夕方6時まで、4両それぞれに、異なるバンドが乗り込んだ特別車が1時間に1本、通常の地下鉄路線2号線(U2)と3号線(U3)にまたがる環状ルートを走る。停車駅は6カ所。ミュージシャンは1時間ごとに入れ替わり、プロ、アマ合わせ、28のバンドが乗り込んで演奏する。始発駅であるシュルンプ駅にはステージも設置され、そこでも11のバンドが演奏するというから、これはもう、立派なジャズフェスティバルだ。地下鉄乗車券だけで演奏を聞くことができるのも嬉しい。

ジャズトレイン

観客は、どこから乗り込んでも、どれだけ乗っていてもかまわない。また、停車するたびに、車両を変え、あらゆるスタイルのジャズのほか、ブルースやソウル、ラテン、ラウンジなど、さまざまなタイプの音楽を楽しむことができる。ハンブルクで、これほど数多くの多彩な顔ぶれのバンドが活躍していることも驚きだ。

狭い車両だから、ミュージシャンとも至近距離。ライブハウスで聞くよりも、ホットで、アットホームな雰囲気だ。車両には、笑顔が絶えず、老いも若きも、ドイツ人も異国人も、ジャズのサウンドにのって、身体を揺らしている。

ジャズトレインに揺られていると、ジャズを難しく考える必要はないんだ、と自然に思えてくる。車両を「はしご」しながら、色々なタイプの音楽を追いかけるのもいいし、好みの車両に腰を据え、車窓の風景を楽しみな がら、じっくり聞くのもいい。これからジャズを聞いてみたいという人たちにとっても、この日は理想的な体験デーとなることだろう。

www.jazztrain-hamburg.de

 
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