Hanacell

ドイツの街角から

岩本順子 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。
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ドイツの長い夜

Lange Nacht der ...

長い夜

5月早々、ハンブルクではもう恒例となった「博物館の長い夜(Lange Nacht der Museen)」というイべントが行われた。今年で7回目を迎え、現在では、ベルリンやミュンヘン、シュトゥットガルトなど他都市でも同様の催し物が行われている。

この日は、ハンブルクのミュージアム45館が午後6時から明け方の2時(!)まで開館し、ミュージアム間を最短距離でつなぐ臨時バスも走る。12ユーロのチケットを購入すれば、全てのミュージアムとバスを利用することができ、複数のミュージアムのはしごが可能だ。夜の闇に包まれたミュージアムは、ミステ リアスな趣きだ。

3年前の「博物館の長い夜」の折、ハンブルク郊外、ノイエンガメにある旧ナチス強制収容所記念館(KZ Gedenkstaette Neuengamme)を訪れた。不便な場所にある記念館だが、「博物館の長い夜」の日は、臨時バスを乗り継いで簡単にたどり着くことができる。暗闇に包まれた収容所は、60年以上経った今も、当時の非情さをありありと思い起こさせ、見学者たちの間には重い沈黙が支配していた。夜の闇にすっぽり包まれた収容所に佇み、ここで命を奪われた人たちに思いを馳せた。あの夜は、いまだ忘れ難い貴重な体験となっている。

さて、ドイツでは夏時間が始まる日を境に、生活のテンポが一挙に夏モードになる。夏至に向かって、どんどん日が長くなるので、仕事の後でも、ゆったりとした気持ちで、街に繰り出すことができる。そんな季節に合わせるかのように、この時期、「・・・の夜」と題するイベントが、各地でいろいろ開催されている。

中でも最も良く知られているのが、ハンブルクのハーゲンベック動物園を、夜18時から深夜まで開園する「ジャングル・ナイト」だろう(6月2、9、16日)。昼間とは全く異なる空気に満ちた、深夜の動物園開放は、最近急激に増えている夜のイヴェントの草分けだ。地下鉄ハーゲンベック動物園駅駅舎には、日本のアーティスト、小林俊哉氏の作品「マグノリア(木蓮)」 で彩られた美しいあかり取りもできあがっている。

他にもハンブルクには、他に「知識の夜(Nacht des Wissens)」という学術機関や研究所、テレビ局やラジオ局などを夜間見学できる夜や(今年は6月9日)、「教会の夜(Nacht der Kirchen)」と称し、ハンブルクの100以上の教会が19時から深夜まで、様々な催し物を行う日(今年は9月15日)、また、ハンブルクの複数の劇場で、小さな出し物をいくつもはしごできる「劇場の長い夜」(今年は9月下旬の予定)というイベントもある。今年も、ドイツの長い夜を楽しむ季節がやってきました。

 
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