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高齢化社会と認知症
「キャラバンメイト」の認知症サポーター講座

柏原 誠

読者の皆様もご存知のように、日本は現在世界一の高齢社会です。今後も高齢化率は上昇を続けると予想されており、2010年の統計ですでに5人に1人が、2035年には3人に1人が65歳以上になると言われています。そして、続く世界第2位がドイツ。現在5人に1人が65歳以上で、日本に遅れること5年、2040年にはその割合が3人に1人になると予想されています。40代の私とて、他人事と考えているわけにはいきません。

老後

一方で日本人の平均寿命は延び続け、今も世界一を誇っています。豊かな生活と医療技術の発展を手にした私たちは、体に多少の不自由や病気を抱えていても、長生きできるようになりました。これから私たちは、世界最長寿国としてさまざまな問題に直面しながら、より良い人生を送る工夫をしていかなければなりません。

高齢社会における最も深刻な問題の1つに、認知症の増加があります。統計によると、65歳以上では年齢が5歳上がるごとに患者数は倍増しており、高齢化が進むにつれて認知症患者の数がますます増えていくことになります。これは日本だけでなく、国際的にも注目されている大きな問題です。

認知症は初期の発見が重要ですが、特に一人暮らしの場合は本人が気付かず、発見が遅れることもしばしばあります。認知症がほかの病気と決定的に違う点は、見極めの難しさにあると言えます。周囲の温かな目、丁寧な観察が必要なのです。加えて、発病後は周囲の理解と協力が欠かせません。

日本ではすでにこの問題に着眼し、2005年より「キャラバンメイト」による認知症サポーター養成キャンペーンが稼働しています。これは、厚生労働省主導による認知症の啓蒙活動で、具体的には都道府県、市区町村などの自治体と企業・団体が地域一丸となって協催し、一般市民に対して「認知症サポーター養成講座」を開いて、認知症への理解を深めてもらおうというのが狙いです。

認知症は個人や家族レベルだけでなく、生活圏内のすべて、つまり地域社会レベルで対処していかなければならない病気です。このキャラバンメイトの活動を通して1人でも多くの人が認知症を理解し、患者本人とその家族を地域社会全体で支え合っていく。この試みは、高齢社会のみならず、誰にとっても住み良い社会を創るために、非常に有意義な取り組みと言えるでしょう。

さて、私達ドイツに住む日本人にとっても、認知症について日本語で知る機会があれば良いと思いませんか? 「認知症サポーター養成講座」は、老若男女を問わず誰でも参加でき、イラストを中心としたわかりやすい教材を使って簡単に学ぶことができる内容となっています。キャンペーン開始時には、100万人のサポーターを養成することを目標としていましたが、開始から8年が経過した現在、すでに受講者数は420万人を超え、その意義、関心の高さがうかがい知れます。

実はこの認知症サポーター講座が、日本の本部の支援を得て、9月23日のデュッセルドルフの講座を皮切りに、ドイツ各地でも開催される予定です。次回は、ドイツで行われるこの講座について詳しくお話ししましょう。

※講座への参加申込は下記ウェブサイトからできます
www.dejak-tomonokai.de

関連ドイツ語
  • vergreisende Gesellschaft
    überalterte Gesellschaft (f)
    高齢社会
  • durchschnittliche
    Lebenserwartung (f)
    平均寿命
  • Demenz (f) 認知症
  • frühe Entdeckung(f) 早期発見
  • Langlebigkeit(f) 長寿
  • Aufklärungstätigkeit(f) 啓蒙活動

(m)男性名詞、(f)女性名詞、(pl)複数
柏原 誠
シャリテ・ベルリン医科大学(旧フンボルト大学医学部)にて基礎医学を学び、現在は同大学院公衆衛生修士課程在籍(2013年6月末論文提出済)。日本の大学では社会福祉を専攻、精神科医院の社会福祉施設の立ち上げに携わり、ソーシャルワーカーとして勤務後1997年に渡欧。介護での文化の違いを配慮することを目指す DeJaK友の会会員(www.dejak-tomonokai.de)、渡航邦人の医療的支援に取り組む JAMSNET東京会員 (www.jamsnettokyo.org)
最終更新 Montag, 20 Mai 2019 17:19  
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