Hanacell

高齢化社会と認知症
認知症サポーターになりませんか?

柏原 誠

前回は、キャラバンメイトによる「認知症サポーター養成講座」がドイツで開催される予定であることをお話ししました。この講座は、厚生労働省の指導の下、高齢化問題の最大の課題である認知症を理解し、地域ぐるみで患者さんとその家族を支えることができる社会を創るためにスタートしました。現在、認知症サポーターは日本全国で合計420万人を超え、この啓蒙活動の輪は世界第2の高齢化社会を抱えるドイツ、そして世界中へと広がろうとしています。

さて、私たちが住むドイツでこのような取り組みをすることには、いったいどのような意味があるのでしょうか。

まず1つ目に、母語・日本語での情報共有があります。ドイツにおいて私たち日本人は少数派です。トルコ人のような多数派の外国人コミュニティーに対しては、その国の言葉で情報が提供される機会がありますが、ドイツにおいて日本語で入手できる情報は非常に限られており、まして認知症について日本語で知る機会はほとんどありません。早期発見・治療・予防が大切な認知症については、母国語での確かな情報が非常に役立ち、理解度がグンと増します。

老後

2つ目は、遠隔地での情報共有です。ドイツ在住の日本人は、フランスや英国などと違い、一都市集中型ではなく、各地に分散しているのが特徴です。私たち在独日本人は、マンパワーや情報ネットワークだけを考えると、過疎地域に住んでいるのと似た状態なのです。そのため、講座に参加することで、それまで繋がりのなかった人が一緒に地域で協力し合い、将来に備えていくきっかけを作ることが重要です。同じ情報を共有することで連帯し、各地に分散した日本人の力を十分に生かしていくことができるでしょう。

ところで、誤解がないように明記しておきたいのですが、キャラバンメイトによるサポーター講座は、認知症の医学的エキスパートを養成するためのものではありません。認知症とはどういうものなのかを知り、身近に感じることで、地域社会の中で(国籍に関係なく)認知症を差別視することなく、温かく見守ることができる人を養成するものです。また、認知症の人と接するときの心構えや、介護をしている人の気持ちについても学びます。家族、友人が認知症になった場合だけでなく、居住地域で認知症の方に接する際のヒントにもなるのです。また講座で知り合う人々とも、日本語話者として今後の連帯を目指すことができます。その他、ドイツの事情を考慮した説明書やチェックリストなどの現地用資料も手に入ります。

認知症は、地域ぐるみで見守ることで早期に発見し、適切に対応できれば、その進行速度を鈍化させたり、病状を和らげたりすることが可能な場合もあります。セーフティーネットを作っておくことは、「気が付いたら高齢という年齢に達していた!」という人だけでなく、高齢化社会に住むどの世代の人にとっても、安心で快適なドイツ生活を維持するために大切なことではないでしょうか。日本でも高齢化問題は認知症の問題と切り離すことができないものとして大きく取り扱われていますが、特に海外では、外国語が苦手になっていくと言われる認知症の特徴もあり、日本語を話す者同士の協力、援助が不可欠です。元気なうちから参加するこういった活動が、将来の自分たちを助けてくれるネットワークに繋がるでしょう。

皆さんも、私たちと一緒にドイツ初の認知症サポーターになって、視野を広げてみませんか。参加の条件はありません。小学生以上なら誰でも参加できますので、親子揃ってお気軽にご参加ください。小中学生のみを対象にしたコースも現在、準備中です。

 講演情報 

キャラバンメイトがやってくる!認知症サポーター養成講座

日時 2013年9月23日 15:00(14:30開場)~17:30
場所 日本クラブ(Oststr. 86, 40210 Düsseldorf)
主催 DeJak-友の会、日本クラブ、竹の会
講師 全国キャラバン・メイト連絡協議会認定
キャラバンメイト 柏原誠
費用 講座と教科書は本部提供、
ドイツ用資料は会員3ユーロ、
非会員5ユーロの予定
申込 9月10日まで ※日本クラブ 0211-1792060
問い合わせ先 このメールアドレスは、スパムロボットから保護されています。アドレスを確認するにはJavaScriptを有効にしてください
柏原 誠
シャリテ・ベルリン医科大学(旧フンボルト大学医学部)にて基礎医学を学び、現在は同大学院公衆衛生修士課程在籍(2013年6月末論文提出済)。日本の大学では社会福祉を専攻、精神科医院の社会福祉施設の立ち上げに携わり、ソーシャルワーカーとして勤務後1997年に渡欧。介護での文化の違いを配慮することを目指す DeJaK友の会会員(www.dejak-tomonokai.de)、渡航邦人の医療的支援に取り組む JAMSNET東京会員 (www.jamsnettokyo.org)
最終更新 Montag, 20 Mai 2019 17:19  
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