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ジャパンダイジェスト
Sa. 29. Feb. 2020

ドイツで迎える老後のお話 - 医学博士 篠田郁弥

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高齢者のための臨床哲学
生きるということ

浜渦辰二

臨床哲学って何ですか? とドイツでもよく聞かれます。私は、病気などで苦しむ人々と共に哲学すること、と答えています。「生老病死」という言葉がありますが、これは、もともと仏教の「四苦」という思想から来ており、人間が生きるというプロセスの中で必ず辿らざるを得ない4つのステップを表しています(「生」は「生きる」ではなく「生まれる」を意味します)。しかし、私が考えているのは仏教思想そのものではなく、むしろ、現代社会において医療技術がますます発展し、昔は治療の対象ではなかった領域にまで医療が及ぶ中で、この「生老病死」の意味合いがどのように変化しているかということなのです。

特に私が強調したいのは、「苦」という語についてです。元来のサンスクリット語では、「人間の手によってはどうにもならないこと」という意味だったらしいのですが、現代の私たちが理解する「苦しみ」は、いわゆる身体的・精神的感覚から来る苦痛という意味だけになり(ドイツではその意味がもっと強く)、そして現代社会では、前者の意味は失われてしまっているということです。つまり、一昔前までは「生まれる」ことは天(神)からの「授かり物(贈り物)」であり、「死ぬ」ことは天(神)から「お呼びが掛かること」であったのですが、それが今では、「生まれる」のかどうか、「死ぬ(死んだ)」ことにするかどうかは、私たち人間が選択できるものとなっているのです。

老後

私たち人間が生死を選択できる時代になったと言っても、しばらく前(半世紀前くらいでしょうか)は、専門家である医師に判断を委ねるというのが普通でした。患者やその家族は何も分からない子どものようなもので、それに比べて医師というのは、医療に関しては全知全能のごとく何でも知っていて、常に正しい判断を下す一家の父親のように考えられており、すべては医師にお任せという時代でした。ところがその関係性が一転して近年では、「患者の権利」という名の下に、医師は情報提供をするだけで、最終的な決断は患者ないしその家族に委ねられるのが普通のこととなっているのです。

もはや、医師にお任せという時代ではなくなりました。治療方法は自分たちが納得した医療でなければならず、生きるか死ぬかの決定も人任せにはできません。場合によっては、そうするように強制されていると言えるかも知れません。本来、医療は「病気」の状態から「健康」な状態に戻すために発明され、発展してきた技術でした。したがって、元来「病気」ではない「誕生」や「死」の領域というのは、医療の対象ではありませんでした。ところが現代の医療は、生殖医療や終末期医療のように、「誕生」や「死」の場面にも介入し、「生まれる」ことと「死ぬ」ことについても、子どもが「生まれる」のかどうか、患者が「死ぬ(死んだ)」ことにするのかどうかは、「あなたが決める」ということになってきたわけです。

本来の「生老病死」という観点から見れば、人間の生の姿は大きく変貌しています。人々は皆、この問題を考えざるを得ない社会に生きています。臨床哲学は、まさにそのような問題に取り組んでいるのです。

次回も引き続き、「高齢者のための臨床医学」について掲載します。前回の「高齢者の共同生活」の続きは、翌々号の掲載となりますことをお知らせします。

 講演情報 

生きるということ 禅と臨床哲学の立場から自らの生老病死を考える

日時 11月16日(土) 14:00〜16:00(講演の後質疑応答〜16:45)
場所 デュッセルドル日本クラブ(Oststr. 86, 40210 Düsseldorf)
主催 日本クラブ、DeJaK-友の会
講師 浜渦辰ニ教授(大阪大学)
中川正壽老師(普門寺堂頭)
費用 会員2ユーロ 非会員4ユーロ
申込 0211-1792060(日本クラブ)
問い合わせ先 このメールアドレスは、スパムロボットから保護されています。アドレスを確認するにはJavaScriptを有効にしてください
浜渦辰二
静岡大学で17年間教鞭を執った後、大阪大学にて倫理学・臨床哲学を講義。現在は「ケアの臨床哲学」と題する研究会(専門の方々と市民の対話の場)を続行中で、この4年ほど「超高齢社会の中で◯◯を考える」というタイトルで、終末期医療、ホスピス、看取り、人工栄養、リビングウィルなどについて考えている。10月から12月末まで、交流協定に基づく交換講師としてハイデルベルク大学の教壇に立っている。
 

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