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世界の歯科医療事情 イタリアの場合

ドイツ人だけでなく日本人にとっても、イタリアは最も人気のある旅行先。魅力溢れた文化やファッションにおいしい食べ物やワイン、また陽気で人生を謳歌している国民性というイメージを持っている人も多いことでしょう。私もイタリアは個人的に好きな国の1つで、仕事やプライベートで訪問する機会も多いのですが、歯科医療に関してはイタリアの一般的な印象とは大きく異なります。

ドイツでは「歯科疾患は自己責任の病気」という前提があるため、日本に比べると公的保険でカバーされる範囲はかなり狭いという話を以前のコラムでご紹介しました(本誌1038号参照)。この認識はドイツのみならず欧州全体に共通したものなのですが、殊にイタリアではそれが徹底されており、公的保険でカバーされる歯科治療はほとんど無いというのが現状です。一部には低所得者層の人たちを対象に、公的病院で最低限の治療のみを保険適応としているケースがあるものの、全体的にはかなり限られたケース。そのためイタリアの歯科医療ほぼすべてが自費診療で、結果的に治療費は高額になっています。

実際に現場の話を聞いてみると、地域差はあるものの治療費はドイツの自費診療とそれほど変わらないようです。イタリア国内の歯科治療費の地域による違いは、ドイツと同様に経済力と概ね比例しており、北高南低の傾向が強くなっています。また、イタリアの富裕層は審美歯科治療に求めるレベルが非常に高く、中~北部イタリアでは世界的に有名な歯科医師や歯科技工士が活躍しています。

その一方、イタリアの一般的な年収は日本やドイツと比較すると60~70%程度と言われていますが、「イタリア人がどうやって高額な歯科医療を受けているのだろうか?」という疑問が出てきます。しかしそこはさすが(?)イタリア、その問題をクリアするさまざまな裏技や独特の歯科事情があるようです。

ドイツの歯科医院で自費診療を行う際には、予め治療の内容やプロセス、使用する材料、またその個別の価格など細かく記載した見積書を発行する必要があります。そのため、大掛かりな治療になると見積書だけで電話帳くらいの厚みになることも。そして治療を受ける側が見積書にサインすることによって治療を受けることに同意したとみなされ、そこで初めて「法律に則って」治療を開始することができます。しかしイタリアではそのような見積書に関する詳細な法律はないため、例えばクラウン治療であれば見積書に「クラウン治療費用1000ユーロ」と書かれた同意書にサインするのみで、また治療が終わればたった1枚領収書をもらうだけで済みます。

その点においては日本と同様なのですが、イタリアでよくあるのが患者側が「領収書はいらないので治療費を安くしてほしい」、また診療所側が「領収書は発行しない代わりに割引する」とお互いに値段交渉をすること。もちろんこれは脱税の一種なので法律に反しているのですが、実際のところそのようなことがよく行われています。また、地方では歯科治療を歯科医師ではなく、歯科技工士が行っているケースも。当然これも医師法違反ではあるものの、地方政府も違法治療の実態を分かっていながら、多くの国民が十分に歯科治療を受けられない現状を鑑みて、あえて見逃しているということもあるようです。

世界の歯科医療事情 イタリアの場合

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最終更新 Mittwoch, 27 November 2019 01:46  
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