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Oliver Was­ser­mann
Do. 20. Sep. 2018

ドイツ歯科事情

ドイツの歯科治療の話になると、「すぐに歯を抜こうとするから行きたくない」「ドイツ人の大きな手で歯を治療されるのは嫌だ」「全身麻酔をすることもあるから怖い」と、事実かどうかは別として、ネガティブなイメージが先行しがちです。しかし、日独どちらも世界に誇る先進国。医療の基本は同じはずなのに、なぜこんなにも認識に差があるのでしょう。当コラムでは、実際の日本とドイツの歯科治療の違いや、国民性や社会的背景も踏まえてお伝えいたします。

歯科医師 宮川順充
1971年札幌生まれ。95年歯科医師資格、2003~07年オーストリア・ドナウ大学院大学の講師およびルドルフィナーハウス病院内歯科医院(ウィーン)勤務。08年歯科医療技術インスティテュート IDEA(カリフォルニア)顎機能矯正学部門講師。09~13年ランドハウス歯科医院勤務。14年より同院の経営パートナー。 www.landhausstrasse.com

歯科治療と金属について 1

歯科治療の現場と金属とは、切っても切れない関係にあります。金歯や銀歯、入れ歯の部品、インプラント、歯科矯正装置など、金属がなくては歯科医療そのものが成り立たないといっても過言ではありません。しかし近年、様々な問題から歯科業界ではメタルフリー(金属不使用)の傾向が広がっています。

今回は2回に分けて、歯科治療における金属使用の背景やその功罪について、掘り下げてお伝えしたいと思います。

ようやく春も終わり、花粉症による辛い鼻炎や、目のかゆみなどの症状から解放される季節になりました。日本に限らず、欧州や米国でもアレルギー疾患に悩まされる患者の数は年々増加しています。現在、日本では3人に1人が何らかのアレルギー症状を持っているともいわれています。

アレルギーは、花粉や食物、薬物、動物など、通常であればそれほど問題のない外来異物に対して免疫系が過剰に反応し、身体に様々な症状を引き起こす免疫機能障害です。

この厄介なアレルギーは、歯科医療とも深い関わりがあります。それは「金属アレルギー」です。金属アレルギーというと、ネックレスやピアス、指輪などのアクセサリーが皮膚に接触して皮膚炎などを発症することで知られており、おしゃれに気を使う女性にとっては大きな問題です。身体と接触する部位に金や銀、白金などの貴金属が使用されている場合は、比較的アレルギー反応を引き起こしにくいものの、それでもアレルギー性皮膚炎を発症する人はいます。

日本の歯科医療で一般的に使用される「銀歯」ですが、正確には「金銀パラジウム合金」という名称で、パラジウムが約25%含まれた合金です。歯科金属の中で一番優秀な材料は、耐食性や操作性に優れる金やプラチナで、これらを主成分とした金属で歯の詰め物を作製するのが理想的です。しかし、これらの貴金属は価格が非常に高いため、金属の詰め物を原則的に保険適用としている日本では、国の財政上、治療内容が制限されており、高価な貴金属を大量に使用することは困難です。そのため、貴金属ほど高くなく、また性質が似た金属ということで、パラジウムが使われ始めました。

しかしこのパラジウムは、貴金属に比べてアレルギー反応を引き起こしやすいことが分かっています。実際にドイツでは、歯科医療でのパラジウムの使用を禁止する勧告が出されており、スウェーデンでは妊婦と小児には完全に使用禁止です。また、パラジウム合金が溶け出し、歯肉に入り込んで刺青のように黒く変色させる「メタルタトゥー」を引き起こすことも問題となっています。

科学的には完全に証明されていないのですが、口腔がんや舌がんが、パラジウム合金と接触する部位に発生していることが多く観察されるため、発がん性の疑いがあることも使用禁止の理由の1つに挙がっています。

クラウンの金属の影響で歯肉が刺青のように紫色に変色
クラウンの金属の影響で歯肉が刺青のように紫色に変色

日本では政治的・社会的な理由から、現在でも厚生労働省によってパラジウムの使用が認められていますが、国民の健康を考慮すれば大問題であると、医療サイドは警鐘を鳴らしています。

一方、ドイツの歯科医療では、基本的に金合金による治療は自己負担となっていますが、一昔前までは、法定健康保険でほとんどの治療がカバーされるという恵まれた社会福祉環境でした。しかし、移民の大量受け入れによる歯科医療費の増加や、治療で施された金歯を外して売却し、再び治療を受けて新しい金歯を入手するということを繰り返す手口が問題となりました。その結果、貴金属による歯科治療は自費診療となったという背景があります。

 
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