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Oliver Was­ser­mann
So. 22. Sep. 2019

ドイツ歯科事情

ドイツの歯科治療の話になると、「すぐに歯を抜こうとするから行きたくない」「ドイツ人の大きな手で歯を治療されるのは嫌だ」「全身麻酔をすることもあるから怖い」と、事実かどうかは別として、ネガティブなイメージが先行しがちです。しかし、日独どちらも世界に誇る先進国。医療の基本は同じはずなのに、なぜこんなにも認識に差があるのでしょう。当コラムでは、実際の日本とドイツの歯科治療の違いや、国民性や社会的背景も踏まえてお伝えいたします。

歯科医師 宮川順充
1971年札幌生まれ。95年歯科医師資格、2003~07年オーストリア・ドナウ大学院大学の講師およびルドルフィナーハウス病院内歯科医院(ウィーン)勤務。08年歯科医療技術インスティテュート IDEA(カリフォルニア)顎機能矯正学部門講師。09~13年ランドハウス歯科医院勤務。14年より同院の経営パートナー。 www.landhausstrasse.com

歯の構造と成長あれこれ

歯は、人間に限らず多くの脊椎動物に備わっていますが、生物種によってユニークな形や性質を持っています。

例えば、ネズミやリスのような「げっ歯類」の動物は、対になっている前歯が一生成長し続けます。そのため、人間が爪を切るのと同じように、頻繁に硬いものをかじって歯を削り、歯の長さを自分で調整しています。それに対し、全く違う歯の性質を持つのは、鋭いノコギリのような歯を持つサメです。サメは歯根がないために、獲物を噛むと歯が抜けやすいのですが、顎の中には何列も歯があり、奥から押し出されるように、2週間に1組ずつ新しい歯列が生えてきます。

歯を削る機械とサメの顎骨
歯を削る機械とサメの顎骨

もしも、私たち人間がネズミやサメのような歯を持っていたら、虫歯ができたとしてもすぐに生え変わるので、歯医者いらず! ……かもしれませんが、残念ながら人間には乳歯と永久歯という2種類の歯しかありません。これは類人猿共通の特徴で、一生のうち乳歯は20本、永久歯は32本(親知らずを含め)生えてきます。

「げっ歯類」のネズミの歯は伸び続ける歯
「げっ歯類」のネズミの歯は伸び続ける歯

歯は何のためにあるの? と質問されれば、誰もが「食べるため」と答えることでしょう。もちろん食べ物を噛んだり、すり潰したりするのに歯は必要ですが、それ以外にも、顎骨の成長に歯の存在は不可欠ですし、さらに発声や人間特有の審美観や感情にも影響を及ぼします。

歯にまつわる言葉として、「歯が浮く」「歯が立たない」「歯切れが悪い」「歯がゆい」など、例を挙げると枚挙にいとまがありませんが、これは、歯や噛み合わせが人間の感情や感覚と密接に関連していることの表れです。

一般的に、ヒトの歯は生後数カ月で乳歯が生え始めますが、実は、顎の中では妊娠4カ月頃から歯の成長が始まり、永久歯も、6歳臼歯(前から6番目に生える、最初の永久歯)は出産前後に発生が開始されます。

歯は身体の中で最も硬い組織として知られていますが、その主成分はカルシウムやリンなどのミネラルのため、乳製品や魚類をたくさん摂取すれば歯が丈夫になる、と思っている方も多いと思います。しかし、戦争や飢饉などの長期にわたる食糧難、または全身疾患などがない限り、現代の栄養摂取状況では、食べ物によって歯の質が変わることはほとんどありません。むしろ、歯や歯周組織の質(歯周病や虫歯のなりやすさ)は遺伝的な要素に左右されることがほとんどです。また、興味深いのは、親が口腔の健康管理に気を付けている場合、子どもにもその習慣が自然に身に付き、後天的に虫歯や歯周病が少なくなる傾向があることです。

私たちの歯の数は限られているため、いかに長く健康な歯を維持できるかが重要ですが、平均寿命が80歳を超える長寿社会の現代では、次第にそれが困難になってきています。そのため、抜歯した親知らずを細胞を生かしたまま冷凍保存し、将来、虫歯や歯周病で歯が抜けたときに再利用する技術が実用段階に入っています。また、再生医療技術によって、自分自身の細胞を培養して本物の歯を作り、再び身体の中で機能させる時代がくると考えられています。

いずれにしても、いくら技術が進歩しようと、日頃のオーラルケアが一番大切です。健やかな海外生活のためにも定期的な歯のチェックを忘れずに!

 
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