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海外の歯科事情(中国の大学病院)

海外の歯科事情(中国の大学病院)

ドイツの長い夏休みが終わりました。この休み中に日本からドイツへ引っ越して、9月から学校や職場での新生活がスタートした人も多いのではないでしょうか。

外務省が報告する最新の海外在留邦人数の統計調査によると、外国に住む日本人の総数は約130万人(日本の人口の約1%!)を超えたそうです。ドイツには約4万2000人の日本人が居住し、その数はこの15年で2倍に増加。また国別では1位の米国(約42万人)や2位の中国(約13万人)に比べると少ないものの、それでも8位と長年上位をキープしています。

一昔前に比べると海外で生活することが身近になった昨今ですが、それでも外国に住む日本人に共通している一番の悩みは「医療」。「どこの病院に行けばいいのか」「言葉は通じるのだろうか」「きちんと治療をしてもらえるのか」「保険はきくのだろうか」と不安が尽きません。

私事ですが、この夏に仕事で中国へ行く機会がありました。現地の歯科事情についてもいろいろと話を聞いてきたので、今回のコラムでは中国の歯科事情についてお伝えしたいと思います。

向かった先は中国中央部に位置する四川省成都市にある四川大学口腔医学院。成都市はパンダや麻婆豆腐などの辛い料理、詩人の杜甫、また三国志の舞台として有名です。四川大学口腔医学院は110年前にカナダから招聘(しょうへい)された歯科医師によって、中国で最初に設立された歯学部です。中国国内の歯学部教授の多くが四川大学出身ということもあり、最も強い影響力がある大学の一つです。

四川大学口腔医学院
四川大学口腔医学院

近年はプライベート歯科医院も増加していますが、中国では政府が主導的に医療全般をコントロールしているため、現在でも大学や公立の規模の大きい病院が医療の柱。四川大学歯科病院は中国でも最大級の歯科医療施設で、その規模は日本の大学歯科病院をはるかに超えています。病棟内は診療用チェアー総数370台、病床数200、歯科医師数200人(学生を含めると400人以上)で、年間を通して約80万人の患者が受診します。また、矯正歯科だけでも年間5000人の新規患者が来院するとのことで、これは日本の歯科大学の10倍以上の人数です。

病院内には最新式のCT スキャンや歯科用3D プリンターなどが並び、中には高額なドイツ製品も多く見られ、先進国の大学病院にも引けを取らない医療機器を備えています。また、中国に駐在する外国人のための担当部署もあり、英語が堪能な歯科医師が外国人患者の治療にあたっているので、中国ではコミュニケーションさえ取れれば、充分に満足できる歯科医療サービスを受けることができます。

中国の歯科医療は、基本的に「自費治療」。中国人が歯科診療を受ける場合、所属している組織(公的機関)や比較的最近始まったプライベート保険でカバーされる部分もありますが、全般的にはやはり自己払いがほとんどです。

診療室の様子
診療室の様子

中国は貧富の差が極端に大きいため、歯科治療費を払う十分な経済力がない人が大多数です。貧困層の人達に歯学部学生が抜歯などの最低限の治療をしているかと思えば、隣の診療室では、裕福層に高級な治療を行っているという状況は、まさに現在の中国の世相を表しているようです。

最終更新 Dienstag, 20 September 2016 10:05  
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