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ロンドンのゲストハウス
Di. 20. Nov. 2018

ドイツ歯科事情

ドイツの歯科治療の話になると、「すぐに歯を抜こうとするから行きたくない」「ドイツ人の大きな手で歯を治療されるのは嫌だ」「全身麻酔をすることもあるから怖い」と、事実かどうかは別として、ネガティブなイメージが先行しがちです。しかし、日独どちらも世界に誇る先進国。医療の基本は同じはずなのに、なぜこんなにも認識に差があるのでしょう。当コラムでは、実際の日本とドイツの歯科治療の違いや、国民性や社会的背景も踏まえてお伝えいたします。

歯科医師 宮川順充
1971年札幌生まれ。95年歯科医師資格、2003~07年オーストリア・ドナウ大学院大学の講師およびルドルフィナーハウス病院内歯科医院(ウィーン)勤務。08年歯科医療技術インスティテュート IDEA(カリフォルニア)顎機能矯正学部門講師。09~13年ランドハウス歯科医院勤務。14年より同院の経営パートナー。 www.landhausstrasse.com

歯科治療費はなぜ高い?1

海外で長く生活している読者の皆様の中には「歯医者の治療費が異常に高かった」「見積書の金額に驚いた」といった経験がある方も多いのではないでしょうか。

実際に歯科治療費が高額になってしまうことは多いのですが、「つい最近、日本の歯科医院で診てもらった際は何も問題はないと言われたのに、ドイツの歯科医院ではいろいろと問題を指摘され、必要のない歯も治療されてお金を取られた」と、虫歯治療詐欺(!?)に遭ったかのような話を耳にすることも。

ドイツに住む日本人の方から歯科治療費に関する質問をよくされるのですが、一口で説明しようと思うと、これがなかなか難しい。というのも、その背景には歯科医学的性質や日本独特の思想、保険制度、その時代における社会的情勢など、さまざまな要素が絡み合っているからです。

歯科治療費は、患者さんにとって最も関心のある話題の1つなので、日独の社会・思想的背景の違いを踏まえて、ここでは「歯科治療費事情」について2回に分けてお伝えします。


歯科医療の特徴

● 風邪をひいて病院に通うと保険が利くのに、どうして歯科治療は自費なの?
● なぜ歯科治療だけ年間限度額(プライベート保険の場合)の設定があるの?

このような疑問を持ったことがある人も多いと思いますが、実は歯科治療費が高額になる根本的な理由はここにあるのです。

例えば、発熱と喉の痛みのために、かかりつけの診療所で診察を受けたとします。医師の診断を基に薬を処方してもらい、数日間の自宅療養の指示を受けますが、翌週には体調も良くなり、仕事に復帰することになりました。ここで重要なポイントは「薬が風邪を治した」のではなく、薬は身体の辛い症状を抑えるだけであって、あくまでも「身体の自己免疫力が風邪を治した」ということです。転んで骨折した場合も同様で、「ギプスが骨折を治した」のではなく「身体の治癒能力が骨折を治した」のです。

つまり、一般医療の場合、患者が自分で体調を回復させる能力があることを前提として、その「自己治癒のお手伝い」が目的になります。

一方、歯科医療の場合は事情がかなり変わります。歯は一度細菌の侵入を許すと、基本的に二度と回復することはなく、放っておくと虫歯菌が歯の内部に進行していきます。したがって、虫歯の部分は削らなければならないわけですが、一度削られた歯は自己治癒能力で元の形に回復することはありません。

歯周病の場合も同様で、細菌感染で弱った歯周組織は治療で病気の進行を止めることが目的です。また乳歯以外は新しい歯に生え変わることがないため、失った歯は永久に戻りません。そのため、歯科医療では失った歯や骨を、人工骨やインプラント、クラウンなどで補い、元の機能を取り戻すような治療を行います。例えば、脚を骨折した場合には患部にギプス固定を行い、自己治癒能力で骨が自然に繋がるのを待ちますが、脚を失った場合には義足(人工代替物) が必要になります。しかし義足といっても、その価格は素材や技術により10万円~数百万円の幅があるのですが、これが歯科医療に近いともいえます。

歯科医療は「自己治癒能力を期待する治療」ではなく「人工的な代替物に置き換える医療」なので、医師の手で最後まで回復させなければいけません。同じ「医療」ですが、その前提が根本的に違うところが歯科医療の特殊なところです。

dentalcare

 
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