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mizkan
So. 17. Jan. 2021

コロナ第2波の猛威に部分的ロックダウン実施

新型コロナウイルスが、ドイツを再び危機的状況に追い込んでいる。新規感染者が激増するなか、メルケル政権は11月2日から30日まで、学校や商店などを除いて部分的なロックダウンを全国で実施することを明らかにした。

10月28日、記者会見で接触制限令を発表したメルケル首相10月28日、記者会見で接触制限令を発表したメルケル首相

厳しい制限措置を再び導入

10月28日にメルケル首相は、16の州政府の首相たちとのビデオ会議後、全国一律の部分的な接触制限令を発表した。11月2日から30日までは、公共の場での他人との接触は、別の1世帯に住む人々に限られる。つまり三つ以上の別々の世帯に住む人々が集うことは禁止される。しかも上限は10人。違反した場合には、罰金を科される。

レストラン、喫茶店、バー、ディスコ(クラブ)、フィットネスクラブなどの営業は禁止される(飲食店のテイクアウトやデリバリーは可)。さらに劇場、コンサートホール、映画館、プールなども閉鎖されるほか、見本市のような多数の人が参加するイベントもできなくなる。屋外、屋内を問わず、友人や親戚などを集めての宴会やパーティーも制限され、ホテルは観光客を宿泊させることを禁じられる。

これに対し、政府はロックダウンが子どもたちの教育に及ぼす影響を最小限にするため、学校や幼稚園は閉鎖しない。また商店や理髪店も営業を許される。

メルケル首相は、ドイツ全土で接触を制限する理由について、「現在と同じテンポで新規感染者が増え続けたら、ドイツの医療体制は数週間で限界に達する。したがって、今われわれは行動しなくてはならない」と述べた。「クリスマスに家族や親類が集えるように、一時的に厳しい措置を取る必要がある」と説明した。

さらに政府は、新型コロナウイルスに感染した場合に重症化する危険が高い高齢者や、持病がある人々を守るために、介護施設や病院などで簡易ウイルス検査を実施する方針だ。

新規感染者数が1万人を超えた

メルケル政権が部分的とはいえ、再びロックダウンに踏み切らざるを得なかった理由は、10月下旬以降、新規感染者数が急激に増えているからだ。ロベルト・コッホ研究所によると、10月中旬には1日の新規感染者数は4000~5000人前後だった。しかし10月22日に新規感染者数が1万1409人に達して以降、4日連続で1万人を超えた。10月28日には、1日の新規感染者が1万4964人と過去最高を記録。3~4月の第1波の時にもこのような現象は見られなかった。

ベルリン・シャリテー病院のクリスティアン・ドロステン教授は、今年6月にラジオのインタビューでこう発言した。「1918年のスペイン風邪では、米国での第1波は特定の地域に限られていた。だが秋から冬にかけて始まった第2波では、ウイルスが全国にくまなく広がった。ドイツでも秋以降はこのような状況が起こる可能性がある」。今ドイツで起きているのは、まさにドロステン教授が警告していた状況である。

第1波の時との違いは、若年層の感染者の比率が高いことだ。15~59歳の市民の間で感染者の増加率が最も高い。若年者は高齢者に比べると重症化の危険が少ないので、今のところ1日当たりの死者数は2桁で推移している。今年4月には、一時ドイツでも毎日200人を超える死者が出ていた。

だがドイツでも感染者数が急激に増えるなか、病院に収容される市民の数も増加しつつある。この国の病院には、人工呼吸器を使った集中治療が可能なベッドが約2万9000床あり、10月28日の時点で7700床が空いている。しかし医療関係者の間では「集中治療室で働くための技能を持つ看護師が圧倒的に不足している」という声が強まっている。楽観は禁物だ。

経済にも深刻な影響

ドイツの周辺国でもパンデミックが猛威を振るっている。フランスでは10月後半に入ってから、1日の新規感染者の数は3万~4万人に上る。このためマクロン政権は、レストランやバーの閉鎖や夜間の外出禁止を命じた。スペイン、イタリア、英国などでも毎日1~2万人ずつ感染者数が増加。ドイツの隣国チェコでは、10月下旬に直近2週間の住民10万人当たりの新規感染者数が一時1148人と世界で最も多くなった。ちなみに米国は244人、ドイツは107人、中国は0.02人だった。チェコ政府は、10月22日に学校閉鎖も含む全国的なロックダウンに踏み切っている。

約1カ月の部分的なロックダウンは、生命と健康を守るために必要な措置だ。しかし飲食店、旅行業界、イベント業界などを中心に、甚大な損害が生じることだろう。コンサートの中止で芸術家たちも苦境に追い込まれる。

国際通貨基金(IMF)が10月に発表した統計によると、ユーロ圏の今年の国内総生産(GDP)は前年比で8.3%、ドイツでは6.0%減ると予想されている。だがパンデミック第2波が何カ月続くかは誰にも分からない。部分的ロックダウンの延長が必要になった場合、ドイツ経済はさらに縮む危険がある。

欧州全体の行方も心配だ。ドイツの輸出額の60%は欧州連合(EU)加盟国向けである。今年のスペインのGDPが12.8%、イタリアでは10.6%、フランスでは9.8%も縮小することを考えると、ドイツの輸出産業への悪影響はさらに深刻化するかもしれない。

パンデミック第1波を比較的うまく乗り越えたドイツが今回もウイルスとの闘いで勝者となるかどうかは、未知数である。

 
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熊谷徹
1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題を中心に取材、執筆を続けている。著書に「ドイツの憂鬱」、「新生ドイツの挑戦」(丸善ライブラリー)、「ドイツ病に学べ」、「住まなきゃわからないドイツ」、「びっくり先進国ドイツ」(新潮社)など。
http://www.tkumagai.de
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