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ロンドンのゲストハウス
Mo. 21. Okt. 2019

2014年のドイツを展望する - ユーロ圏経済に希望の兆し

夜空を焦がす花火と爆竹の音とともに、2014年が明けた。今年はドイツにとって、そして欧州にとって、どのような年になるのだろうか。

大連立政権に課題山積み

今年は、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党(SPD)の長い交渉の末、大連立政権がようやく本格的に仕事を開始する。昨年の連邦議会選挙前、メルケル首相(CDU)は、再生可能エネルギーの助成制度を抜本的に見直して、電力価格の高騰に歯止めを掛けることを「最優先課題」と位置付けた。産業界と市民は、脱原子力の方針には賛成しているものの、「エネルギー革命」の進み具合、特に再生可能エネルギー電力拡大のコストが増大していることについて、不満の声を強めている。メルケル首相が今後、どのような対策を打ち出すのかが注目される。

また大連立政権は、最低賃金制度を導入する予定だが、これは過去10年間に拡大した所得格差を是正しようとする動きの表れだ。近年、税収が改善しているドイツでは、2015年に財政均衡を達成し、2016年以降は財政黒字を生む予定だ。この国の労働者たちは、シュレーダー政権が断行した「アゲンダ2010」による、身を切るような改革に耐えてきた。第3次メルケル政権では、国富の一部を労働者に還元する政策を取ってほしいものである。

ユーロ圏の景気は?

景気の動向は、どうだろうか。ユーロ圏では、暗く長いトンネルのはるか彼方に、かすかな希望の光が見えつつある。2014年は、欧州経済がユーロ危機の悪影響から順調に脱却できるかどうかを占う上で、重要な年になるだろう。

国際通貨基金(IMF)は、ユーロ圏の経済成長率(GDP)が2013年に0.4%縮小した後、2014年には1%増加すると予測しているが、欧州連合(EU)統計局はIMFよりポジティブな見方を示し、「2014年にはユーロ圏加盟国17カ国のGDPが1.2%増える」と予測。ユーロ圏最大の問題児であるギリシャでは、6年間連続でマイナスだったGDP成長率が、2014年にプラスに転じる見込みで、2013年にGDPが縮小したフランス、スペイン、イタリア、ポルトガルでも、2014年には増加が見込まれている。

ユーロ圏で事実上の「独り勝ち」状態にあるドイツは、2014年にGDP成長率の大幅な伸びを予想しており、IFO経済研究所を含む4つの経済研究所は、「2013年に0.4%だったドイツのGDP成長率は、2014年には4倍以上の1.8%となる」という楽観的な見通しを打ち出した。欧州経済が不況の影響から脱却し始めるため、ドイツの輸出が増えると想定しているからだろう。ドイツでは今でも、高度なスキルを持つエンジニアなどの専門労働力が不足しているが、今年以降はこの人手不足がさらに深刻化するかもしれない。

EUとドイツの国旗

欧州金融監督庁が始動へ

2014年には、ユーロ危機対策の重要な柱の1つである欧州銀行同盟の創設へ向け、重要な一歩が踏み出される。それは、EU域内の大手銀行を監督する新しい規制官庁として始動する。

銀行同盟の創設は、単一通貨ユーロの誕生並みに重要な意味を持つ。理由は、それが再び金融危機が勃発することを防ぐための「防波堤」でもあるからだ。

EUは2014年に欧州中央銀行の中に欧州金融監督庁を設置し、域内の大手銀行約130行に対する直接の監督・規制を開始する。これらの銀行は、規模が大きい上に様々な金融商品を扱っているため、倒産した場合に世界中の金融市場に甚大な悪影響を及ぼすシステム・リスクとなりかねない銀行である。欧州金融監督庁は、これらの銀行のバランスシートを分析するとともにストレステストを実施するという。例えば、国債や株価の暴落といった異常事態が起きても、これらの銀行に破たんしない資本力とリスク管理体制があるかどうかを試すのだ。テストの結果次第では、いくつかの銀行は自己資本の増強を求められるだろう。

また、経営難に陥った銀行を破たんさせるか否かについて、現在は各国の金融監督庁が決定を下しているが、将来は欧州金融監督庁も発言権を持つことになる。

これまでユーロ圏の銀行規制は国ごとにバラバラだった。スペインとアイルランドの金融監督庁は、銀行業界で肥大しつつあったリスクを見抜くことができなかった。両国とも、不動産バブルの崩壊による不良債権の急増により、銀行が破たんの一歩手前まで追い詰められ、合計1850億ユーロ(24兆500億円、1ユーロ=130円換算)もの緊急融資が必要になった。

銀行業界では、EUに約1000人の職員を抱える巨大な規制機関が誕生することに対して批判的な意見もあるが、リーマン・ショックに続き、ユーロ危機でも銀行を救うために巨額の公的資金が投じられたことを考えれば、銀行規制の強化はやむを得ないだろう。

NSA問題の闇

昨年、ドイツ政界を揺るがした米国の諜報機関(NSA)による盗聴問題も、解明の途上だ。オバマ米大統領は、メルケル首相の携帯電話の盗聴について本当に把握していなかったのか。ドイツと米国は、互いの政府機関や経済界へのスパイ行為を禁じる協定に調印できるのか。調印したとしても、NSAは協定を本当に守るのか。

メルケル政権にとって、2014年も課題が山積みの1年になりそうだ。

3 Januar 2014 Nr.969

 
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熊谷徹
1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題を中心に取材、執筆を続けている。著書に「ドイツの憂鬱」、「新生ドイツの挑戦」(丸善ライブラリー)、「ドイツ病に学べ」、「住まなきゃわからないドイツ」、「びっくり先進国ドイツ」(新潮社)など。
http://www.tkumagai.de
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