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ロンドンのゲストハウス
Mi. 22. Jan. 2020

メルケル首相に衝撃! - AfDの躍進

2016年3月13日にドイツの3つの州で行われた州議会選挙の結果は、メルケル政権だけでなく、この国のすべての在来政党に強い衝撃を与えた。

メルケル(キリスト教民主同盟=CDU)の難民受け入れ政策に反対する右派ポピュリスト政党・「ドイツのための選択肢(AfD」が大躍進し、初の議会入りを果たしたのだ。

AfDが旧東独の州で第2党に

「難民危機をめぐる国民投票」と呼ばれたこの選挙で、多くの有権者がメルケルの難民政策に「ノー」の意思表示をした。日本の新聞社や放送局はこの選挙についてほとんど報じていないが、この選挙結果は来年の連邦議会選挙の行方を占う上で、極めて重要な意味を持っている。

今回、州議会選挙が行われたのは、旧西ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州、ラインラント=プファルツ州、旧東ドイツのザクセン=アンハルト州。

この内、ザクセン・アンハルト州では、約27万人がAfDを選び、得票率を24.2%に押し上げた。これは、第一党であるCDUの得票率(29.8%)に肉薄するものだ。この州では、有権者のほぼ4人に1人が、右派ポピュリスト政党を選んだことになる。有権者の3人に1人が、AfDに票を投じた選挙区もあった。

同州での選挙結果は、驚異的である。AfDの得票率が、現在ベルリンで大連立政権に加わっている社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)、リンケ(左派党)の得票率を大幅に上回ったからだ。この州では、前回の選挙の投票率は51.2%だったが、今回は投票率が10ポイント近く上昇して、61.1%となった。前回棄権した有権者10万1000人が、メルケルの難民政策に抗議するために投票所へ行ってAfDに票を投じたためだ。また、前回CDU、SPDなど5つの在来政党を選んだ有権者の内、11万2000人がAfDに鞍替えした。

旧西独でも2桁の得票率

AfDが躍進したのは、旧東ドイツだけではない。同党は、ドイツ南西部のバーデン=ヴュルテンベルク州でも15.1%、ラインラント=プファルツ州でも12.6%と、二桁の得票率を記録した。

バーデン=ヴュルテンベルク州でのSPDの得票率は、AfDよりも低かった。ガブリエル党首には、大きな屈辱である。同州では、実に80万9000人がAfDに投票。同党は、CDUから19万人、SPDから9万人、緑の党から7万人の票を奪っている。

投票率の増加は、バーデン=ヴュルテンベルク州(61.8%から70%に上昇)と、ラインラント=プファルツ州(66.2%から70%に上昇)でも見られた。難民危機は、多くの有権者を投票所へ駆り立てたのだ。

メルケルの難民政策への抗議

AfDが躍進した最大の理由は、同党がメルケルの寛容な難民政策に批判的な有権者の票を集めることに成功したからだ。AfDは、難民受け入れ数の制限を求めている。さらに、同党はユーロ圏からの脱退や、ギリシャへの金融支援の停止などを要求している。

だがAfDには、ネオナチに近い過激思想の持ち主も加わっている。今年1月末には、同党のフラウケ・ペトリ党首が「ドイツは国境を閉ざすべきだ。もしも難民が警官の制止にもかかわらず、国境を突破した場合、警察官は銃を使用してでも、難民の侵入を防ぐべきだ」と発言した。ドイツの法律によると、警察官は国境を越えようとする外国人に対して発砲することを禁じられている。この発言については、警察関係者やメディアから強い批判の声が上がった。社会主義時代の東ドイツ政府は、国境警備兵に対し、ベルリンの壁を越えて西側に逃亡しようとした市民を見つけた場合には、射殺してでも逃亡を食い止めるよう命じていた。ペトリ党首の発言は、民主国家ドイツを、社会主義時代の東ドイツのような国にすることを求めるものだ。党首がこのような発言をしたにもかかわらず、多くの有権者がAfDを選んだことは、いかに多くのドイツ人が政府の難民対応に不満を抱いているかを示している。

投票直前の2016年2月に公共放送ARDが行った世論調査によると、「連邦政府の仕事に満足している」と答えた回答者の割合は、昨年7月には57%だったが、今年2月には、19ポイントも下がって38%になった。

メルケル首相に対する支持率は今年1月には58%だったが、2月には12ポイントも下がって46%になった。また、「連邦政府は難民問題にきちんと対応していると思うか」という設問に「ノー」と答えた市民の割合は、81%にのぼった。

強まる右傾化傾向

バーデン=ヴュルテンベルク州で興味深いのは、緑の党が30.3%を確保し、州議会選挙で初めて第一党になったことだ。その理由は、現州首相クレッチュマン(緑の党)が、同州で保守・革新を問わず高い人気を集めているからだ。同時に、前回はCDUを選んだ有権者の内、メルケルの難民政策を支持する市民が、CDUの保守派が難民問題をめぐってメルケルを攻撃していることに不満を持ち、緑の党に鞍替えしたことも、緑の党の躍進の理由だ。この事実は、メルケルの政策がいかに緑の党に接近しているかを示している。

ただし全体的にみると、ドイツの有権者は右傾化傾向を強めた。移民に批判的な右派政党が支持率を増やしているフランスやオランダ、英国に似た現象がドイツでも起き始めていることは、残念である。

1 April 2016 Nr.1023

 

熊谷徹
1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題を中心に取材、執筆を続けている。著書に「ドイツの憂鬱」、「新生ドイツの挑戦」(丸善ライブラリー)、「ドイツ病に学べ」、「住まなきゃわからないドイツ」、「びっくり先進国ドイツ」(新潮社)など。
http://www.tkumagai.de
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