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So. 23. Sep. 2018

クランプ=カレンバウアー CDU幹事長就任へ

最近のドイツの政界は、驚きに満ちている。2月19日にメルケル首相がアンネグレート・クランプ=カレンバウアー氏(55歳)を、キリスト教民主同盟(CDU)の次期幹事長に推薦したことは、政界と論壇をあっといわせた。

2018年ドイツの展望
2月19日、メルケル首相(右)と共に会見に臨むクランプ=カレンバウアー氏

次期首相を狙う?

その理由はクランプ=カレンバウアー氏が現在ザールラント州首相であるからだ。州政府の首相の座を捨てて一政党の幹事長になることは、形式的には地位が下がることを意味する。クランプ=カレンバウアー氏は、連邦議員の資格もない。それにも関わらず同氏がベルリンに行く決意を固めたのは、CDU幹事長の席がCDU党首そして選挙で勝てれば、連邦政府首相の座に通じているからだ。メルケル氏自身、コール元首相の不正献金事件に揺れるCDUで、1998年に幹事長に抜擢された後、2000年に党首に就任。2005年の連邦議会選挙で、社会民主党(SPD)と緑の党の連立政権を破って、大連立政権の首相に就任した。その意味でクランプ=カレンバウアー氏は、メルケル氏が歩んだのと同じ階段の手前に立っているのかもしれない。

ドイツのメディアは、早くもクランプ=カレンバウアー氏を「メルケルの後継者として最短距離に立つ人物」として取り上げ始めている。

CDU内では高い人気

ザールラント出身のクランプ=カレンバウアー氏は、1981年にCDUに入党。1999年にザールラントの州議会議員となり、2000年には女性として初めて州政府の内務大臣に就任した。その後同州で教育・家庭大臣や労働・社会福祉大臣などさまざまなポストを経験。ザールラントでは、2011年にCDU、緑の党、自由民主党(FDP)が三党連立政権(ジャマイカ連立政権)を構成した時に、クランプ=カレンバウアー氏は首相に就任した。クランプ=カレンバウアー氏のCDU内での人気は高い。2012年の党大会で執行部の役員に選ばれた時には、83.86%もの支持率があった。

同氏がドイツの中央政界で注目を集めたのは、2017年のザールラント州議会選挙だった。この時クランプ=カレンバウアー氏が率いたCDUは、40.7%の得票率を確保し、SPD(29.6%)に大きく水を開けた。この選挙はSPDがマルティン・シュルツ氏を党首に選んでから最初の州議会選挙だった。この選挙以降、シュルツ氏とSPDの支持率は下がっていく。当時クランプ=カレンバウアー氏が、まだ「シュルツ・フィーバー」が続いていたSPDを撃破して冷水を浴びせたことは、CDUで大きな功績とされている。

また2017年12月に世論調査機関フォルサがCDU党員を対象として行ったアンケートでは、回答者の45%がクランプ=カレンバウアー氏をメルケルの後継者として支持し、2位のユリア・クレックナー(ラインラント・プファルツ州議会院内総務)や3位のイェンス・シュパーン(前連邦財務次官)に水を開けた。人気の高さにもかかわらず、クランプ=カレンバウアー氏がCDU幹事長になる可能性が低いと考えられていたのは、州首相からの降格になるためだ。

難民危機でメルケル氏を擁護

メルケル氏は、クランプ=カレンバウアー氏について「非常に親しい友人であり、お互いに信頼できる関係にある」と語っている。クランプ=カレンバウアー氏はメルケル氏と同様にCDUの中道左派に属する。2015年9月の難民危機の際には「欧州連合がバラバラになるのを防がなくてはならない」とし、メルケル首相が多数のシリア難民らを受け入れたことを支持。

2017年の連邦議会選挙で、CDU・CSUは首位を確保したとはいえ、得票率を前回の選挙に比べて8.6ポイントも減らすという、惨憺(さんたん)たる結果となった。

CDUの地方支部や保守派からは、「メルケル氏が難民政策などにおいて、まるで緑の党のように左派的な政策を取ったことが、多くのCDU支持者たちを極右政党ドイツのための選択肢(AfD)の下へ走らせた」という批判の声が出ていた。このため、AfDに奪われた票を取り戻して支持率を引き上げるには、党の指導層の若返りだけではなく、保守的な思想の持ち主を幹事長にするべきだという声が強まっていた。その意味でベルリンの政界通の間では、メルケル首相の難民政策について批判的なシュパーン前連邦財務次官が幹事長に就任するという憶測が流れていた。これに対しメルケル氏は、シュパーン氏ほど保守的ではなく、自分の路線を継承してくれる女性を後継者として選んだ。

保守派の票を取り戻せるか?

クランプ=カレンバウアー氏は、保守派が喜ぶような毅然とした態度を見せたこともある。2017年3月に、トルコの政治家がドイツに住むトルコ人市民向けに選挙演説を行おうとした時、同氏は州首相として、ザールラントでそのような集会を禁じる方針を打ち出した。さらに保護者なしでドイツに来た未成年の難民に対しては医学的な年齢検査を行い、身元や年齢について嘘をついた難民については、国外追放を含めた厳しい措置を取るべきだという姿勢を打ち出している。

クランプ=カレンバウアー氏は、党大会で承認されて幹事長に就任した際には、CDUの政策プログラムを刷新する意向を明らかにしている。同氏にとっては、支持率が落ちているメルケル氏の影から抜け出し、独自の政策を打ち出すことによって、保守層の票を奪回できるかどうかが、最大の課題である。

 
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熊谷徹
1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題を中心に取材、執筆を続けている。著書に「ドイツの憂鬱」、「新生ドイツの挑戦」(丸善ライブラリー)、「ドイツ病に学べ」、「住まなきゃわからないドイツ」、「びっくり先進国ドイツ」(新潮社)など。
http://www.tkumagai.de
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